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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第133話

お昼になったので学校は終わった。
特に部活などに参加していない麻生は、寮に帰るだけである。
彼は下駄箱で黒いスニーカーを履いて、学校の敷地の外へ歩きながら思った。

(そういえば、俺が寝ている時に何があったんだ?)

ふと、数分前の教室の風景を思い出す。
昨日の一件のせいでかなり寝不足だった麻生は、一〇分休憩の辺りからよく覚えていない。
気がつけば寝ていて、起きた時には授業が終わっていた。
起きた時には教壇で小萌先生は泣き顔で麻生を見つめていた。
おそらく、何度も呼びかけても全く起きなかったせいだろう。
ここまでは寝起きの麻生でも、把握する事ができた。
だが、上条と土御門と青髪ピアスは喧嘩でもしたのか、ボロボロな状態で席に座っていた。
さらに、先程から周りの視線が麻生に集まっていた。
原因が分からない麻生は前に座っている制理に尋ねる。

「おい、俺が寝ている間に何があったんだ?」

「な、何もないわよ!!」

と、顔を真っ赤にしながら制理は大声で言い返す。
突然、大声で怒鳴られたので少し唖然とする麻生。
その後、麻生が幾ら尋ねても制理は何も答えようとはしなかった。
泣き顔のまま小萌先生はホームルームを終え、今に至る。
教室を出る前に何人かのクラスメイト話しかけられた。

「な、なぁ、麻生。」

「何だ。」

「お前って、昨日・・・・・」

「昨日?」

「や、やっぱり、何でもない!
 悪かったな、呼び止めて。」

他のクラスメイトも呼び止めてはこのように会話を途中でやめて、立ち去って行った。
麻生は彼らが何を言いたかったのか考える。

(昨日の事について何か聞きたかったみたいだが。
 もしかして、寝ぼけている時に変な事を言ったんじゃないのか、俺。)

そう考えても、もう遅い。
言ってしまった事はもう変えられないので、考えるのを止める。
帰って何をしようか、と考えた時にふと思い出す。

(今日はあいつらの退院の日か。)

あいつらとは、とある病院に入院している芳川桔梗と一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)の三人である。
麻生は一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)の二人を愛穂と一緒に世話をしていた。
二人の大体の生活環境は把握している。
一方通行(アクセラレータ)も少し変わったので、『実験』のような事を手伝う事はないだろう。
少しあの二人がどのように過ごすのか気にはなる。

(まぁ、俺が考えた所で最後に決めるのはあいつらだし。)

残暑の名残りも、九月三〇日となれば完全に払拭されていた。
風力発電のプロペラを回す緩やかな風は、もうエアコンの冷房が不要になった事を示していた。
デパートの壁に取り付けられた大画面に映っている天気予報も、『熱中症に注意してください』から『季節の変わり目なので体調管理にお気をつけて』へと一言メッセージが変更されている。
そうした中。

「いたいたいたクソいやがったわねアンタ!!」

昨今の日本語は乱れつつあるのです、という言語評論家の意見を丸ごと証明してしまうような少女の台詞が麻生の元へと飛び掛かってきた。
麻生がそちらへ振り替えると、お嬢様学校で知られる名門常盤台中学の見目麗しい(はずの)女の子が高速で接近してくる所だった。
御坂美琴。
肩まである茶色い髪に、麻生よりも九センチほど低い背丈の少女。
今までの夏服と違い、今はベージュ色のブレザーに紺系チェック柄のプリーツスカートを穿いている。
昨日の今日でピカピカの冬服を受け取った筈なのに、すでにスカートは短くなっていた。
何ともお嬢様な事に、薄っぺらい学生鞄の他に今日はバイオリンらしき楽器のケースを携えている。
ちなみにだが、麻生の所にも男性用の常盤台の冬服が届けられている。
どうやら、常盤台の学園長は麻生の事がとても気に入っているようだ。
麻生は美琴を姿を確認すると、大きくため息を吐いた。

「また、面倒な事が起こりそうだな。」

「人の顔を見るなりその反応は何なのよ!!」

「ぎゃあぎゃあ騒ぐな。
 それで何の様だ?
 こっちは眠いから、手短に頼む。
 というより、無視して帰って寝て良いか?」

「ただでさえムカつく対応により一層の拍車がかかってるわね。」

美琴はわずかに首を横に傾け、唇を邪悪に歪めつつ言った。

「っつか、今のアンタにそんな大それたクチを聞くだけの権利があるとでも思ってんのかしらー?」

平べったい美琴の言葉に何やら邪悪な意思らしきものを感じ取った麻生は、直感が告げていた。
これはもの凄い面倒事に巻き込まれると。
そこへ常盤台中学のエース、品行方正(でないと困る)なるお嬢様は腕を組んで一言、告げる。

「罰ゲームよん♪」

やっぱり嫌な予感が当たった。
麻生は小さくため息を吐く。
罰ゲーム、というのは九月一九日から七日間にわたって繰り広げられた、学園都市総出の大規模体育祭『大覇星祭』で麻生と上条と美琴の間で取り決めを行った『賭け』にまつわるものだ(麻生本人は取り決めた覚えは一切ない)。
簡単に言って、順位の低かった方が相手の言う事を聞く、という内容である。
能力開発の街である学園都市では、体育祭でそういった能力を使用する事も許可されていた。
そして常盤台中学の面々は数億ボルトもの高圧電流の槍や風速八〇メートルもの突風の壁などを用いて対戦校を生徒達を薙ぎ払っていく、という自然災害みたいな戦法を取ってきたのだ。
麻生の高校と美琴の常盤台中学とは、三日目の直接対決があったが、その全容に関してはまた別の話で語ろう。
ともかく、総合的な順位も散々で完璧に順位負けした。
そんなこんなで、御坂美琴の『罰ゲーム』発言は正統な手順に従って放たれたものだったのだが。

「知らんな、そんな事。」

麻生は一言だけそう告げて、その場から立ち去ろうとする。

「なっ!?
 ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」

立ち去ろうとする麻生の前に回り込む。
麻生はそんな美琴を見て鬱陶しいそうな表情を浮かべる。

「あのな、あの開催式の時にお前と当麻が勝手に話を進めただけだ。
 それに俺を巻き込むな。」

「この後にきて言い訳のつもり!」

「言い訳も何も本当の事「まぁ、言い訳したくなるのも分かるわ。」・・・・・話を聞け。」

麻生の言葉を無視して美琴は話しを進める。

「今の今まで利子とかつけず待ってただけでも美琴さんに感謝しなさってのよ!!」

(完全に聞いてないな。)

この場をどうやって切り抜けようか考える麻生。
そして、名案が浮かんだ。

「おい。」

「何よ、今さら取り消す事なんてできなからね。」

「取り消すつもりはない。
 ただ、もう一人の方に全部清算してくれ。」

「えっ?・・・・どういう事?」

麻生は思いついた名案を美琴に説明する。

「だから、俺の他にもう一人いただろ。
 上条当麻。
 あいつの罰ゲーム分に俺の罰ゲーム分をプラスしておいてくれ。」

確かにあの時、罰ゲームを取り決める事になった時は麻生と上条と美琴の三人で決めた事になっている。
つまり、上条にも罰ゲームを要求する事が可能だ。
麻生は自分が受ける筈の罰ゲームを上条に押し付けるつもりなのだ。
もちろん、本人の了承など無視である。

「えっ・・・・でも、それじゃあ・・・」

確かに理にかなっている。
美琴自身、既にその話が進んでいるのだと思い込んだようだ。
美琴は困ったような表情を浮かべる。

「何なら今から電話で呼ぼうか?
 少し時間はかかると思うが。」

麻生の提案に美琴は全く反応しない。

(あいつの言っている事は別におかしくはない。
 ああ!!どうしてこの話を聞いた途端にむしゃくしゃするのよ!!)

正直、美琴は今日という日を待ち望んでいた。
それほどまでに麻生に屈辱的な罰ゲームをさせようと思っていたわけではない。
理由はよく分からないが、とても楽しみしていたのは確かだ。
そうなのに先程の麻生の言葉を聞いて、何だか胸の中がもやもやするのだ。

「おい、聞いているか?」

「・・・・・・」

「もしも~し、美琴さん?」

「ああ!うるさいわね!!」

「今のお前の方がうるさいと思うぞ。」

「そんなのはどうでも良いのよ!!
 ともかく、アンタは私の罰ゲームを受けるのよ!!
 分かった!?」

「お前は俺の話を聞いていなかったのか?」

「聞いていたけど今さら、自分だけ逃げようだなんてさせないわよ!
 きっちり、罰ゲームを受けて貰うんだから!」

顔を真っ赤にしながら美琴はバチバチ、と電流を身体から出しながら声を荒げて言う。
これ以上誤魔化すとさらに面倒な事に巻き込まれると思った麻生は大きくため息を吐いた。

「分かった。」

「最初からそう言えばいいのよ。
 とりあえず・・・・」

と、その時だった。
麻生のポケットから携帯の音が鳴り響いた。
ポケットから携帯を取り出して、通話ボタンを押した。 
 

 
後書き
辻堂さんの純愛ロード、面白いですね。あれをやっているとふつふつと妄想を浮かべてしまう私は末期。

感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。 
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