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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第61話 圏内も危険はあります


 日も沈みかかり、辺り一面が夕日で照らされる。後少しで、太陽の光も届かなくなり、街明かりのみの漆黒の世界となるだろう。
 そんな時だった。

「くしゅん……っ」

 後ろで声、くしゃみが聞こえてきた。キリトが振り向いて見ると。

「あ……あれ?」
「う……んーー……ん?」

 アスナとレイナの2人とも同じタイミングでおきたみたいだ。漸く起きたか……と思っていたキリトだったが、その場には修羅場が訪れるなんてことはこの時、キリトに知る由も無かった。




 そして更に暫くして。
 59層の街道を歩いてくる者いた。

「やれやれ……、アルゴ……大切な用事があると言われて行ってみれば……。なんだよアレは……。別にオレがいなくても大丈夫だろうに……。専属アドバイザーって訳じゃないんだぞ……」

 それはリュウキだった。
 ほんの数十分前のこと、メッセージでアルゴに呼ばれ、呼び出しに答えていたのだ。そのリュウキは、ため息をしながら帰ってきた。あの場所を離れたのはほんの数十分程度。まだ2人は眠っていたと記憶していたから、3人とも移動しているとは考えにくい。
 だから、戻ってきたのだが。

「……んん?」

 リュウキは場の異様さに気が付ついた。何やらもの凄い殺気を感じたのだ。それは、まるで、迷宮区内の様な気の強張りも感じられる。
 いや、或いはBOSS戦前の攻略会議の空気と形容出来るだろう。

「……これはいったいどういう場面だ?」

 リュウキが近づいて、改めて確認した。気配の根源は恐らくはアスナだ。何故なら、彼女は腰に挿してある細剣の柄をアスナが握り締めていたのだ。
 まるで抜刀の構え、閃光の名に相応しい速度の出る技。

 そして、その隣ではレイナが拳をぎゅっと握り締めていた。
 客観的に見ても、間違いなく、この空気の根源、殺気はアスナからの様だ。

「あ、お、おかえり……、りゅうき、ははは、オレにもよく……」

 完全に萎縮してしまっているのはキリト。何故こうなったのか、この場にずっと居た筈のキリトにもよくわかってないようだ。 

「あっ……、リュウキ……クンも……見た?」

 リュウキが戻ってきた事に気がついたレイナは、身体を震わせながら聞いていた。……震わせている、つまりは怒っている様だ。ここで、訂正しなければならない。

 この異様な空気、それはアスナだけの殺気じゃなく、アスナとレイナ、7:3の割合の殺気のようだった。だが、リュウキが来た事で、その割合が一変した。
 レイナの怒りも増したらしく、その対比が5:5になった、と感じたのだ。

「……? 一体何のことか知らんが……何を怒ってるんだ?」

 怒ってる理由は判らないけれど、別に悪い事をした覚えが無いリュウキだから、そう普通に聞いていた。それに前もこんなのがあったような気がして。

「べ、別に…怒ってないよっ! リュウキ君も! キリト君と一緒!! 何でも食べ物奢って! 一回っ! それでチャラだよ!! どうっ??」
(食べ物……?? 奢って……?? チャラ??)

 だから 今来たばかりだからはっきり言ってリュウキは意味がよくわからない。そして、客観的に見たとしても、会話を聞いたとしても、何処からどう見ても明らかに怒っている。アスナもそうだし、レイナもだ。

「だから、何を怒っていr「も、もう 刺激しない方がいい……」ん??」

 リュウキは聞き返そうとしたのだが、とりあえず、キリトに諭された。そして、キリトを先頭に美味しい店なる場所へ向かったのだった。





~第57層・マーテン~


 時刻はまだ日も落ちきっていない夕刻。丁度夕食を食べる時間帯だから、多数のパーティが揃っていた。それにここは最前線のプレイヤーしかいないのだ。だから……リュウキは、周囲に認知されているからあまり乗り気ではない様だ。攻略会議では流石にそんな問題は起こらないから素顔を出しているが……。街中ではやはり遠慮したい。
 そして、指でウインドウを呼び出したその時。

「あっ!」

 リュウキが右手を振ろうとしたその時、レイナがそれに気づいて、リュウキの手を叩いた。
 ウインドウを呼び出す所作だが、それを妨害されたのだ。当然だが、ちゃんと識別されなかった為、ウインドウは可視化されなかった。

「な……なんだ?」

 少し困惑しながらリュウキはレイナの方を見た。

「リュウキ君……、今フードかぶろうと、装備し直そうとしたでしょ? 駄目だよっ! 街中でフード禁止! そんなの付けてたら、逆に怪しまれちゃうよ?」

 レイナは、ピンっと人差し指を立てながらそういった。
 ……なぜだろうか、このレイナの言動に少しだが悪意を感じたリュウキ。先ほどキリトの言うとおりにした方が良いだろう、と リュウキは、あまり刺激をしない方が良いと判断した。
 因みに、リュウキの感覚は間違えてはなかった。

「え……じゃあ、ここに入ってもか?」
「とーぜんだよっ! 付けちゃ駄目! 私たちはつけてないのに、一人だけやったら、逆に目立っちゃって仕方ないでしょ?」

 レイナはそうきっぱりと言い放った。

「…………」

 その事に、露骨に嫌そうなのはリュウキだった。

「……と言うより、もういい加減なれた。とか言ってなかったか?フードかぶらなくてもって。なぁリュウキ」

 そして、更にキリトが余計な事言うから。

「ん……。じゃあ決まりねっ!」
「………はぁ」

 本人の意思はそっちのけで、勝手に決定されてしまった。リュウキがため息をつくのも無理はない。下の層では、自身の話題も少ないから脱ぐのは吝かでは無いのだが、この層付近の町じゃ認知度は明らかに違うのだから。

「別に良いじゃない? 迷宮区とか以外でも……たまには街でもその格好で。頭からすっぽりずっと覆ってたら、本当に不審者だって思われるわよ?」

 アスナが加わってきて、そう追撃。それもごもっともなご意見だった。

「お姉ちゃんナイス♪」

 レイナも親指を立てて、サンズアップをしながらそう言った。アスナもニコリと笑った。その仕草を見たらよく判る。やはり、姉妹、息がぴったりなのだと。
 確かに飲食店でも そんなスタイルはどうかと思うっと考えているのも事実だった。

「……はぁ、わかったよ」

 観念したようにリュウキはそのままの装備で中へと入っていった。レイナは、リュウキの顔を見てお話したいとずっと思っていたから。出来れば、ずっと普通の装備でいてほしいと思っているのだ。
 その事がリュウキからしたら、悪意があると感じられてしまったのだった。

 
 そして当然ながら、 中に入って席で座っていると。場がざわつく。

「あれ……。血盟騎士団のアスナとレイナじゃないか?」
「あれが……双・閃光の……。最強姉妹……」
「珍しいな、でもあの2人以外で、他の誰か連れているなんて」

 まずは、美人2人の話題があがる。
 前線での姉妹プレイヤーは彼女達だからだろう。そして、双子……ほどは似てなくとも、パッと見はそっくりなのもそうだ。そして話題は変わっていった。
 そんな有名人である2人と一緒にきている2人の事が気になったのだろう。

「わぁっ……隣の男の人って……。かっこいい……」
「え……ええ、まさか……あれって、あの銀髪って……白銀のリュウキ……かな?」
「えっ うそっ あの……リュウキ? 出現率最悪の?? はぐれメ○ルの!」
「ソロプレイヤーでしかも最強って噂の……。」
「あれ?それに隣の黒の剣士は……?」
「……でも、アイツって あれだろ?βテスト上がりの中では最強ってことだろ?」
「ふん……最初の層から、情報やらクエストやらなんやら独占しまくって、それで強くなっただけじゃねーか」
「けっ……」

 アスナたちと違って、妬みの声もある。元βテスター。つまりビーターの異名はまだまだ広まっているようだと感じた。あの事からもう1年以上経つと言うのにだ。
 
 ……特に最前線付近のプレイヤーが集うここでは。

 だが、ビーターより酷い犯罪者ギルドや殺人プレイヤーの存在があるから、ビーターの風当たりは以前よりはマシと言えばマシだろう。暗殺ギルドとのやり取りでも、彼は大いに貢献していたから。
 それでもネットゲーマーは嫉妬深い。その根深さは拭いきれるものではないのだ。

「やれやれ……、やっぱり これだ、……来なきゃ良かったか?」

 それを訊いていて、ため息を吐いていた。
 リュウキは、正直言ってこういった類に絡まれるのは、やっぱりめんどくさいのだ。愚痴ならば、聞こえない所でやってもらいたいものだと思っている。聞こえるようなところで言うから精神的な攻撃となるのだが、リュウキはそう言った事は考えていなかった。
 ただ単純に面倒くさいっと思っているだけだった。

「む~~……」

 レイナはと言うと、睨みを利かせながら周囲を見ていた。自分としては、素顔のリュウキの事を見ていたかっただけ。こう言うつもりじゃなかったんだ。
 だけど、自分の認識が甘かった、配慮が足りない、と言う他はない。

 でも、好き勝手に言っている連中に言ってやりたいと思っていた。

「リュウキ君はそんな人じゃないのに~……」

 ぼそっ……とだが、そう言う。
 大声で言い、そして斬りかかりたい衝動にもかられたが……、自分は血盟騎士団でもトップの地位に所属しているんだ。下手なことは出来ない。

「レーイ」

 アスナは、レイナの頭に手を載せる。どうやら、それで落ち着いたのか、レイナはとりあえず殺気?を収めていた。

「まあ、3人とも有名だからな。こんなのも仕方ないんじゃないか?」

キリトはそう答える。

「………ああ、そうかキリト。これが 羨ましいなら、代わってやるぞ? ……と言うか、頼むから代わってくれ。なんなら金だしてもいい。言い値で売ろう。この名声?を。オレには要らん」

 リュウキは面倒くさそうにだが、若干真剣にそういった。この男が……こんなに頼むのは初めてかもしれない……とキリトは一瞬驚いていたが、キリトの答えは決まっていた。

「いやしかし、断る。オレも勘弁だ」

 キリトに丁重に断られてしまった。

「まぁ………そうだよな」

 リュウキは、無理もないことだと早々に折れた。
 そもそも売買出来る様な事ではない……と重々承知だからだ。

 そして、ある程度食事も済んだところで……。

「ま、それよりもさ……。今日はありがと……。私達をガードしてくれて」

 先に口を開いたのはアスナだった。どうやら、礼を言いたかった様だ。

「あ……ああ」

 キリトは半ば連行されてきたようなものだから、まさか礼を言われるとは思ってなかったようだ。そして、キリトと同じ感想のリュウキは首をかしげる。

「……ん? 礼を言われる場面だったのか? さっきのは」

 リュウキは不思議そうにそう聞いていた。
 あの殺気で礼を?と。

「……ええ、そうよ?」

 アスナは、普通にそう返していたが。

―――……嘘つけ。

 と、リュウキが思うのは仕方ない事だろう。だが、アスナ達、本人が言うなら別に必要以上に疑いはしなかった。

「リュウキ君も、ガードしてくれてたんでしょ? 私達を」

 今度はレイナがそう聞いた。起きた時あの場にリュウキはいなかったけど、すぐに戻って来たのだ。
なら、少し離れていた……だけなのだろうとわかる。

「……まあそうだな。呼び出しがあって、少しあの場から外していたが」

 リュウキはそう答えた。
 彼女達が起きたタイミングにはいなかったから。

「街の中は安全な圏内だから……誰かに攻撃されたり、PKされたりする事は無いけれど……眠っている時は別だから」

 アスナは……少し深刻そうな表情で言っていた。そう、それはリュウキとキリトが先ほど話していた事だった。

「……デュエルを悪用した睡眠PK……だな」
「この世界も現実もさほど変わらない。いつの時代、何処の世界にも性質の悪い事を考える奴は出てくるものだ」

 リュウキもこの件に関しては、考えた奴にたいして、憎悪のようなものも浮かんでいるのだ。

「ほんとに……同じ境遇の人がする事と思えないよ。眠ってる相手にデュエルを申し込んで……、勝手にOKさせて、それで一方的になんて……」

 レイナも同じ気持ちだった。
 同じ境遇の人……というより、同じ人間がする所作じゃないと強く嫌悪感と怒りを覚えていたのだ。

「……この世界では、人を殺しても本当に死んだかどうか確認する事ができない。だから、遊び感覚でやる連中が増えるんだろうな」

 それは、決して認めたくは無い事だ。だが、以前のタイタンズハンドの件もあるのだ。あの女が言っていた台詞。

『ここで人を殺したって ホントにその人が死ぬ証拠なんてないし。そんなんで 現実に戻ったとき 罪になるわけないわよ』

 その言葉が頭の中で蘇る。従来のオンラインまでは、ただ悪を気取って遊ぶだけ。それだけだったんだ。だが、この世界はゲームではあっても遊びじゃない。

「そう……ね。だからその……2人とも、ありがと」

 アスナは改めて礼をいい、レイナも同じように言っていた。

「構わない。もともと、誘ったのはキリトだしな」

 リュウキはキリトを指差してそう言った。

「だから、お前も教唆しただろう……」

 キリトも負けじと言い返していた。

「あはは…… ほんとに2人とも仲がいいね?」
「うん。そうだね」

 アスナとレイナはそんな2人を笑いながら見ていたそんな時だった。



『きゃあああああああ!!!』



 夕日に照らされた街中で、悲鳴が聞こえてきたのだ。





 
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