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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第62話 調査を行いましょう



 まるで町中に響きわたっているかのような絶叫。
 そして、それは悲鳴をあげている者を見なくても判る、感じるのだ。その声には不吉が宿っていると言う事が。

「「「「!!!」」」」

 4人はその悲鳴を聞きつけ。素早く悲鳴の元へと駆け出した。

 その場所は町の中央広場。そう……、圏内だった。

 圏内においてそんな、悲鳴が起るような事などそうそうは無いはずなのだ。HPが減る様な事自体はデュエルでしかない。そして、睡眠時のPKならば、眠っている時に行う為 悲鳴など起こるはずもないし、目立つ様な場所でする筈もない。だから、4人共が何が起きているのか、想像が出来なかった為、現場につき、その光景を見た瞬間、唖然としていた。

 そう……、それは 誰もが悲鳴をあげてしまうのも無理は無い程の光景だった。


「う……うぅ………」


 まず、4人の目に飛び込んできたのは、建物のテラスに吊るされたプレイヤーの姿だった。所謂、首吊り状態となっていたのだ。現実世界では、この時点で死んでいるかのような光景。
 そして、何より生々しいのが、そのプレイヤーに、槍が突き刺さっている所だ。

「はやくその槍を抜けっ!!」

 キリトがそう叫んだ。槍が刺さっている限り、HPは減り続けるからだ。そして、現実と違って、剣を抜いたからといって傷口が広がり出血量が上がり………と言った点は無い。だから、武器によるHPの減少を止めるのはそれしかないのだが。

「う……あっ………」

 男は、うめき声を上げつつも、槍を必死に抜こうとするが抜けない。

「……くっ! 駄目だ、アイツにはもう力が残っていない!」

 リュウキがそう判断した。抜く力がないからこそ、抜けない。根元まで突き刺さり、体を貫いているその剣を抜ききるだけの力そしてHPがもう尽きてしまう可能性が高いのだ。

「っ! 3人は彼を受け止めて! 私が上に行くっ!」

 アスナは素早く建物へと向かった。地上からでは距離がありすぎるからだ。

「うんっ」
「任せろ!」
「わかった!」

 3人はそれぞれ返事をし、直ぐに、吊るされている彼の落下点へと向かったが。

 もう時は既に遅かった。

 アスナが建物に入ったその時、男の体はだらり……と力なくぶら下がっていた。生きようと抗っていた姿はもう何処にも見えなかった。その次の瞬間その身体が光り輝いた。
 そしていつ聞いても、不快感しか残らないそのサウンドと共に、その身体は青い硝子片となって、砕け散ったのだ。そして、その場所に残されたのはその場の人たちの悲鳴と。

 彼の身体が砕け散った事で、残され落ちてきた槍だけだった。

 衝撃の光景を目の当たりにした為、あたりは騒然とする。当然だろう、目の前で人一人が死んだのだから。

 それも、安全である圏内。街の中での悲劇だった。

(圏内で人が死ぬとしたら……それはデュエルしか……!)

 キリトはそう考えると直ぐに行動する。周囲を見渡しながら。

「みんな!今すぐwinner表示を探せ!!」

 キリトはそう叫んだ。先ほど、彼が吊るされている時にも、HPが減り続けているのであれば、まだ デュエルは終わっていないと言う事、そして、彼のHPが全損した事で、初撃決着モードではなく、ノーマルモード、もしくは制限時間モード、だと言う事も判明している。

 即ち、彼が消滅した瞬間、勝利のアナウンスである《winner》表示が現れるのだ。

 だからこそ、それを見つけてキリトは犯人を追おうとしたのだが。

「……いない」

 リュウキは、誰よりも早くそう言っていた。

「え……?」

 キリトは、そんなはずは無い……と困惑の表情でリュウキを見ていた。だが、リュウキは首を振った。

「……オレは、アイツが消えた後、直ぐに周りを視たが……表示は見られなかった。この場所にデュエルの勝者はいない」

 リュウキがそう答えた。……その表情も困惑に満ちていた。

――……ありえない。

 そう思ってしまうのも無理はない。圏内でHPを減らす事ができるのはデュエルのみ、それだけなのだ。そして、デュエルのモードは3点ある。
その3点を改めて説明すると。

・ノーマルモード
・制限時間モード
・初撃決着モード

 これらの3点だ。

 ノーマルモードとは、別名:完全決着モード。
 相手のHPが0になるまで戦い、相手を0にしたら勝ちというものだ。

そして、制限時間モードは互いに示し合わせて制限時間を決め、時間内にどれだけHPが残っていたかを競うもの。

 上記の2つは、この世界が、デスゲームとなってからは、PKしてしまう為 殆ど使われていないのだ。
だから、睡眠PKでもない限り、使われないモードだ。

「あの男は、睡眠中を狙われた類ではありえない…… デュエルも可能性は低いな。初撃以外のモードででしか、やらないだろう、だが、この場の全員はwinnerをしていない……。一体どういう事だ……」

 リュウキは考えを張り巡らせたが……、全く答えは出てこなかった。

「中には誰もいないわ!」

 その後、建物の二階……男がつるされいたテラスからアスナが顔を出した。あの場所にも誰もいないらしい。袋小路だが、万が一でも建物の中でデュエルが行われていたら?と淡い期待をしたが、どうやら それも外れの様だ。

「……とりあえず、アスナの所へ行こう」
「う……うん」
「……そうだな」

 騒然としているプレイヤーたちを尻目に……3人は建物の中へと入っていった。そして、4人は建物の上で合流した。どうやら、ここはただの倉庫らしい。
 特殊イベント等はなく、ただ破壊不能オブジェクトに囲まれているだけだ。

「……普通に考えたら、デュエルだよね」

 レイナはそう確認するように聞く。

「……でしょう。デュエルで剣を突き刺して、ロープを首に引っ掛けてここから突き落としたんでしょう」

 確かに、状況から考えたらそれが間違いないと思える。だが……それなら不自然な点があるのだ。

「なら、winner表示が出るはずだろ……? オレとリュウキで探したが、何処にも表示はなかった」

 そのキリトの言葉にリュウキも頷いた。

「……それは間違いない。あの場、あれだけ混乱の渦だったんだ。下手にその場を逃げようとしたら、かえって目立つだろう?……あの後、一応スキルでも確認したが、間違いなくあの場にはいなかった。相当の速度で、オレ達が集まる前に あの場から逃げたのかもしれないが……」

 リュウキがそういった。彼の言葉には説得力はある。そして、勿論それはキリトでもそう。ゲーム内屈指のプレイヤー2人。その2人が見つけられないとアスナとレイナは思っていたのだ。

「……でもありえないわ。圏内でダメージを与えるにはデュエルしか」
「そうじゃないと……混乱が起きてしまうよ?他にそんな方法があるなんて知れ渡ったら……」

アスナもレイナも心配そうに呟いていた。4人とも暫く沈黙する。

 そして、その後。

「どちらにしても、これは放置はできないわ」

 アスナが結論を言った。このままにしては置けないと言うものだ。

「確かに放置するには危険すぎる……な」
「ああ」

 リュウキもキリトも同意見であり、依存は無い。何をするのか、はっきりと判ったからだ。

「そうだよ。圏内PK技みたいなのを誰かが見つけた……なんてことあったら、外だけじゃない……街の中だって危険ってことになる」

 レイナも事の深刻さに、身震いすらしていた。唯一の安全地帯である各層の街中、通称:圏内。

 そこで殺人が行われるなど、殺人方法が拡がってしまうなど、そんな事が起きれば ただでさえ、この世界に閉じ込められていると言う状況に付け加え 殺されるかもしれない……そんな事になったら、人々の心が荒れていくだろう。
 いつかは、クリア出来ると信じて待っていてくれている人たちの為にも、直ぐにでも解決しなければならない事件だ。

「暫く前線からは 離れる事になっちゃうけど……しょうがないか」
「うん。こっちの方が重要だって思うし、団長も解ってくれると思うよ」

 アスナとレイナはそう判断した。
 彼女達はギルドの副団長だ、ギルドの事も勿論考えなければならない。勿論、攻略も大切なことだが、こちらの方が可及的速やかに取り掛からなくてはいけないことだと思えるから。

「なら、解決までちゃんと協力してもらうわよ」

 アスナは、リュウキとキリトにそう言った。その言葉にリュウキは頷いた。

「……しないなんて言わない。オレは構わない」

 リュウキも問題ないと答え。

「ああ、オレもだ」

 キリトも少し遅れて返事をした。どうやら、2人共、協力してくれる。その事が内心嬉しい2人だった。アスナは、少し恥ずかしそうにしていたが、それを振り払うかのように続けた。

「言っとくけれど、2人とも? 昼寝の時間なんかありませんからね?」

 アスナのその発言の後にリュウキの頭に《?》が浮かんだ。その事をキリトが代弁してくれた。

「寝てたのはそっちの方だろ……」

 キリトは、アスナに呆れ顔でそう言った瞬間。

「ッッッ!!!!」

 アスナは一瞬で、今の倍くらい顔を赤く染めた、と思ったその瞬間、手早くキリトに鉄拳制裁していた。

 真横で見ていたリュウキは苦笑いをする。キリトが吹き飛んでしまったのを見ると思わずにはいられない。

「それは、幾らなんでも理不尽じゃないか?」

 リュウキは、隣にいたレイナにそう聞くが、何故かレイナも頬を膨らませていた。

「もうっ、キリトくんが、女の子にあんな事を言ったからですっ!」

 どうやら レイナも、アスナと同じ気持ちらしい様だ。仮にリュウキが今の発言をしていたら、傍にいたレイナから鉄拳が飛んできそうだった。

「ああ……そう」

 リュウキは突っ込むのをやめた。こればっかりは、ほんとによく判らないからだ。難しい事件に巻き込まれたのだが……、それに負けないくらい難しい事だと、それがリュウキの正直な気持ちだった。





 
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