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気まぐれな吹雪

作者:パッセロ
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第二章 非平凡な非日常
  45、襲撃の犯人は黒曜生?

「はあ? 並中生が襲われたぁ?」

9月9日。

なんとも普通に登校してきたオレだったが、恭によって衝撃の事実を聞かされた。

この土日で、本当に突然だったらしい。

しかもどいつもこいつも風紀委員ばかりを狙って。

「命知らずな奴だなぁ。つか、風紀委員に恨みでもある奴の犯行?」

「どうやら、そうとも限らないようだね」

「はい?」

応接室の入り口には、風紀委員の下っ端(て言うか諜報部)が立っていた。

つーことは、よくない情報ってことだよな。

「一般の生徒も襲われたらしいよ」

っかー。

めんどくせぇことになってきたなぁ。

つかマジでさ、恭がいる並中に手ぇ出すなんて、ホント命知らずだぜ。

それからは、襲撃事件は止まるところを知らず、次々と犠牲者が出てくる。

恭は情報集めに出て、オレは放送や見回りを通して校内から出ないようにと指示を出した。

もしこれが通り魔の類いだとしたら、並中にいる限りは安全であると踏んだからだ。

そして、

「要、出掛けるよ」

「どこに?」

「決まってるでしょ。敵の本拠地だよ」

遂に恭が敵の尻尾を掴んだ。

決め手となったのは、今のところ最後の被害者である笹川兄。

他人と鍛え方の違った彼はすぐに意識を取り戻し、更に相手の事を覚えていたのだ。

結果的に、犯人が隣町にある黒曜中の生徒であることが判明した。

ん……てーことは、黒曜中にでも乗り込むってのか?

確か凪と入江も黒曜中だよな。

うっわ、出くわしたら気まずっ。

「何してるの。早く行くよ」

「へーい」

ソファにかけてあった学ランを掴むと、すぐに袖を通す。

バイクを停めてある駐輪場へと向かい、キーを回してエンジンをかけた。

あははーなんだか上がうるさいなー。

ここの上ってオレのクラスだよなー。

見えないなー。

千鶴が手ぇ振ってるだとか長谷川がこっち見てるだとか見えねぇなー。

「知るか」

キックを蹴って走り出す。

道中、オレと恭は無言だった。

それなのに、恭の後ろ姿を見るだけでこいつがワクワクしているのが伝わってくる。

「見えたよ」

「あれか? 確か……」

「黒曜ヘルシーランド」

目の前にそびえ立つ建物。

昔は複合娯楽施設として賑わっていたものの、数年前に潰れたらしい。

建て替えの話もあったが台風によってその計画さえも潰れたとか。

なんにしろ、廃墟には間違いない。

正面突破してやろうと、スピードをあげた、その時だった。

「っっ!?」

目の前にいた恭が消えた。

恭だけじゃない、黒曜ヘルシーランドもまでも。

いや、違う。

“オレが”違う場所にいるんだ。

「どこだよここ」

見渡せば、そこにあるのは小川の流れる草原だった。

小鳥の囀りや小川のせせらぎが優しく響く。

一体何がどうなっていやがる。

確かにオレはさっきまで恭と一緒に黒曜ヘルシーランドの目の前まで来ていた。

なのに、何でこんなところなんかに。

そう言えば、オレが乗っていたバイクも見当たらない。

しゃりっ

草を踏む音で振り返る。

「お久しぶりです、霜月要」

そこには、藍色の髪の少年がいた。



†‡†‡†‡†‡†‡



ガシャンッ

大きな音が鳴り響く。

その音に驚いて、思わず振り返った。

全く、敵陣の目の前だと言うのに何をしているんだ。

文句を言おうとした。

しかし、

「……要?」

そこには、ライダーを失ったバイクが転がっているだけだった。  
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