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ソードアートオンライン~性別不詳の槍術士~

作者:araiittetu
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1.ソードアートオンライン

 
前書き
初作品となります。
どうかゆるりとお楽しみくださいな。 

 
「姉御!おはようございます!」
「姉御!今日もお美しい」
「姉御!今日こそ踏んでください!」

 町を歩けば聞こえる声、声、声。

 根城にしている50層の『アルゲート』ではよく見られる光景であり、周りの奴も知ってか知らずか苦笑いを返している。

 ……なんでこんなことになったかなぁ

 ため息をつきたい気持ちをぐっとこらえる。一度同じ場面に遭遇した時は、皆が何を勘違いしたのか「姉御があんな表情を……まさか、恋!?」などと妄言を吐いたので、しっかりと拳のお話し合いを懇切丁寧にしたものだ。あれで懲りてくれれば俺としても嬉かったのだが。

 そんなわけで俺ことサクは不特定多数から『姉御』と呼ばわれ慕われている……らしい。らしいというのは俺個人的には冗談だと思いたい。思わせて欲しい。

 なぜって?簡単なことだよ。

「俺は男だぁぁぁぁ!!!」

 そんなこんなで俺ことサク(男)は、この勘違いの中必死に生きています。



第一話:ソードアートオンライン


「お、おぉぉぉぉ~」

 両手を動かし、体の隅々までを余すことなく見つめながら、俺は感動に胸を震わせていた。

 腕が、手が、足が、身長が。いつもの自分とまったく違うもう1つの体を動かすなんて今まで思いもしなかった。どこかに鏡があれば、それがいつも見知った顔ではなく、先ほど作り上げたどこぞの王道主人公のような容姿をしていることだろう。

 周囲を見渡せば、中世を思わせる石畳にレンガで造られた壁。目の前に鎮座する城とも思える巨大な建築物。そして上を見上げれば、空に浮かぶ巨大な鉄の板が、ここが現実ではないことを如実にあらわしていた。

 巨大浮遊城『アインクラッド』

 全100層からなる石と鉄でできたこの世界こそが、VRMMORPGソフト『ソードアートオンライン』の全てだ。『ナーヴギア』と呼ばれるヘルメット状の機械を用いて作られたバーチャルリアリティ ――理論は良く覚えていないが、実際に体を動かす方法と同じ情報を脳から受け取り、この機械でこのバーチャル世界に出力しているらしい―― 
による『フルダイブ』体験が味わえる。用は実際に物語の中に入って動けると言う夢のような機械なわけだ。

 発売当初はこのスペックを生かしきれるソフトが発売されず、多くの利用者を苛立たせたらしい。

 しかし、それも先週まで。

 ネットワーク対応ゲームであるこの『ソードアートオンライン』が発売し、その苛立ちは期待と興奮に変わった。まぁその結果。初回1万本は飛ぶように売れてしまったため、これを手に入れた人は相当ラッキーと言わざるを得ないだろう。

 まぁ、俺を含め大多数はこのゲームが発売されると聞いてそろえたのだが。

 そんなわけで、今現在この『はじまりの町』にいるプレイヤーたちは幸運を勝ち取った猛者であり、世界に先駆け夢の世界を堪能している幸せ者なのだ。

 その幸せをしっかりと味わう為にも、見るだけじゃなく武器とポージョンを買おう。ここはあくまでもRPGの世界。ならば戦闘を体験しないことには始まらない。俺は心なしか軽い足取りで、この広場を後にした。



・・・・・・NOWLOGING・・・・・・



 長期間の熟考の末選んだものは両手用のロングスピアだった。運動なんてここ最近やっていない俺の運動神経では、剣やメイスといった近接武器は扱いきれない。実際に体を動かすゲームだからこそ、ここでの失敗は後々響くだろう。だからこそ初心者にも扱いやすく、敵にそこまで近づかなくても戦えるリーチの長い両手槍だ。

 最初のうちはイノシシみたいなMobにもボロボロにさせられていたが、回数を重ねるうちに被弾も少しずつ減っていった。そこまでの境地に至るのにどれほどの時間がかかったのかは聞かないで欲しい。

 おかげでポーションの類はすっからかん。手にしたものと言えば少しばかりの経験値とコルと呼ばれるゲーム内通貨。それとイベントリ一杯のドロップ品といったところだ。まぁ初日ならばこの程度が妥当なのだろう。ホントはクエストも受けようかとも考えたが、いかんせんどれから取れば良いか分からないほど多いと聞く。まぁ明日からでもいいか。

 そうと決まれば戻らないとなぁ。現実時間はそろそろ5:30。寮暮らしだからこその夕食に間に合わない場合に体験する惨めさは嫌と言うほど分かっている。右手の人差し指と中指をまっすぐ揃えて掲げ、真っ直ぐ下に下ろすと、メニュー画面が展開される。その中にある『ログアウト』ボタンさえ押せば……

「……あ、あれ?」

 ログアウトボタンが、ない?

 い、いやいやいや。そんなはずはない。きっとどこかにあるって。というかないと夕食抜きが確定なのですが、竜田揚げが俺の手から離れていくのですが!?

 焦りながらも様々な場所を選択し開いていく。ステータス、イベントリ、装備品、フレンドその他諸々。

 ……余談ではあるが、こういうときは『GMコール』というものを押せば解決NPCが向かってくるらしい。まぁ、今回は利用できなかったらしいので知っていても駄目ではあったけど。

 そんな事をしていると、フィールド中に鐘の音が響いた。この鐘が何を意味するものなのか、今の俺にはわからない。

 けれど

 何か不吉な音色のように感じたのは、きっと気のせいではないのだろう。
 
 

 
後書き
ということで第1話はゲーム開始の風景です。
MMO初心者はこんなものだろう。中に入ると説明書読めないしね。

というわけで、次回は茅場さんの登場シーン。原作キャラはもう少し待ってね?
感想、お待ちしております。 
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