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気まぐれな吹雪

作者:パッセロ
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第一章 平凡な日常
  28、お正月……のはずだけど

ちっす!

新年おめでとうだぜ!

1月1日、つまり元旦。

さすがに恭は、風紀の仕事をなしにした。

さーってと、何しようかなぁ。

あ、そうだ、原作傍観やめた!

疲れるし、なんかもう原作と違いすぎるし、てかタイミング外れのキャラと仲良くなっちゃったし。

ふと、ポケットからケータイを取り出した。

そこについている大きめの金属板のストラップ。

表には『Takeshi』、裏には『Kaname』と彫ってある。

誕生日の時に武からもらった小包の中身だった。

ついていた手紙には、親友の証だぜ、何て書いてあった。

Prrr Prrr

「ん、メール?」

〈Dear 要
 From 武
 なぁ、今日暇か? 川原にいんだけど、一緒に遊ぼーぜ〉

武からのメール。

川原。

なるほど、チビ介の仕業だな。

「お前はどうするんだ?」

声をかけると、予想通り白い靄が現れた。

そこから現れた、市丸擬き姿の銀。

糸目だったはずなんだが、スッゴい目がキラキラしている。

〈Dear 武
 From 要
 どうせチビ介に言われたんだろ? ま、どうせ暇なんだし、構わないぜ。あと、知り合い連れていくからよろしく〉

「て言うかお前、あいつ等に名前聞かれたらどーすんだ? 名字ねぇのってかなり不自然だと思うんだが」

「んー。心配ねーよ」



†‡†‡†‡†‡†‡



「知り合いと来るってさ」

「サンキューな、山本」

川原にいたのは、キャバッローネファミリーとリボーン一行。

要の予想はドンピシャに当たっていた。

「小僧が呼んだってバレてたけどな」

「……そうか」

この時、リボーンの目が怪しい輝きを持ったのは言うまでもない。

と、

「よー」

バイクの音が響き、声が聞こえる。

それは、要だった。

バイクから降りてヘルメットを外す。

後ろに乗っていた銀は、心なしか、顔が青ざめている。

「酔った」

「ダサ」

どうやら乗り物酔いらしい。

なんとも情けない神様である。

ちなみに、今は着替えてジーパンに灰色の長袖シャツ、白いパーカーを着ている。

要は青いシャツに黒のパーカーだが。

「霜月さん、あけましておめでとうございます」

「よっ、あけおめだな、武」

「だな」

そして、要が声をかけるのは、あくまで山本only。

リボーンはもちろん、ツナや獄寺には目もくれない。

見事にスルーされたやちるに関しては、それとなくツナが慰めていた。

「なぁ要。後ろの奴は?」

ふと、山本が銀を指していった。

それに対し、銀はニコッと笑った。

「初めましてだな。オレは弥生(やよい)銀だ」

「銀さんって、霜月さんと住んでる人、だよね?」

「ツナ知ってんのか?」

「いやっ、小学校の卒業式の日に霜月さんと家に入るところを見ただけって言うか……」

要の顔色を窺いながら、しどろもどろに話すツナ。

当の本人は、ビミョーな顔をしていた。

そして、苦笑した。

「50%正解だな。正確には、たまに集りに来る友人だ」

「なるほどな。それじゃ始めるぞ、ボンゴレ式お正月」

リボーンの台詞に「オレはボンゴレじゃねぇ」とキレ気味に突っ込む要だったが、綺麗にスルーされてしまった。

「霜月と弥生はキャバッローネの方に入れ」

「あー、そっすか」

「よろしくな、キャバッローネの皆!」

なんとも順応の早い銀である。

そんな彼に呆れつつも、要は渋々ながらにキャバッローネの方に向かった。

「お前が噂の霜月だな。オレはディーノだ。よろしくな」

「噂のってなんだよ……」

「弥生銀だ。銀って呼んでくれ!」

そしてまたまた順応の早い銀である。

能天気なのかわざとそうしてるのか、とにかくお気楽な奴だ。

何て考えながら、要は彼らを見ていた。

「勝ったチームには賞金、負けたチームには罰金が待ってるぞ。因みに100万だ。第一戦はおみくじだぞ」

リボーン曰く、大吉から凶までに点数をつけ、引いたくじの点数を競うと言う。

ツナのチームからは了平が出、大量に取り出すも、全て(マイナス)と言う結果で大撃沈。

一方のキャバッローネチームは、普通に大吉(プラス)を一枚引いて大きく引き離した。

「第二戦は羽根つきだ」

「あ、じゃあオレ行くー」

そう名乗り挙げたのは、銀だった。

訝しげな表情の要に見送られつつ、ツナのチーム代表の山本と対峙した。

「手加減はしないっすよ」

「同じく」

試合が始まると、一同は息を飲んだ。

山本のずば抜けた運動神経はもちろん、それに遅れをとらない銀も注目を集めていた。

常人を越えるハイレベルなラリーが延々と続いた。

この試合のオチは、本気を出しすぎた山本が羽を遠くに飛ばしてしまったことで付いた。

「第三戦はカルタだ」

「しゃあね。オレが行く」

名乗り出たのはなんと、要だった。

その本心は、「イタリア人にカルタなんて任せたら……」の不安一点でしかないのだが。

対するのはハル。

今回が初登場なんて、気にしたらダメ。絶対。

結果から言うと、要の完全勝利である。

ハルはどうも正座が苦手らしく、開始から数分でダウンしてしまった。

代わりで京子が入るも、一枚残らず要の手に収まってしまった。

因みに要、座ってすぐにカルタの配置を記憶してしまっていた。

恐るべし天才。

その後も、福笑いやら凧揚げやらと何戦かやったが、全てキャバッローネが勝利を納めてしまった。

「次で最後だ」

「嘘ー!?」

ツナの絶叫も空しく、最後の競技に入ろうと言うときだった。

ディーノが待ったをかけた。

「確かにオレ達も大人気なかったし、ハンデくらいやろうぜ」

その時リボーンの目が怪しく光ったのをツナは見逃さなかった。

「なら今までのはチャラだ。次の勝負で負けた方は1億な」

「金額上がったー!?」

「最後は餅つきだ。オレにうまい餡ころ餅を食わせろ」

この瞬間、ツナは勝利を確信した。

何故ならキャバッローネは皆イタリア人。

正しい餅つきなんて知るはずがない。

そう思っていた。

しかし彼は見逃していた。

要と銀と言う存在を。

「お前ら、負けたくなかったらオレの言う通りにやれ。うまい餅の作り方教えてやる」

そして、図らずして要と銀による餅つき教室が始まった。

数分後。

各々で作り終え、お披露目となった。

「まずはツナのチーム」

ツナが箱を開ける。

が、そこから立ち上ったのは紫色の煙。

そう。

いつの間にやらビアンキが参戦していたのだ。

「ディーノ、早く出せ」

ちょいキレ気味のリボーンに言われ、慌ててディーノは箱を開けた。

中にあったのは、綺麗に整えられた餡こ餅。

「うむ、やはり霜月をそっちに入れたのは正解だったな」

「てことは」

「キャバッローネの勝ちだぞ」

そんなわけで、ボンゴレ式お正月は幕を閉じた。

気付けば、空は茜色に染まっていた。

「んー……そろそろ晩飯の用意しねぇとな。銀、食ってくか?」

「ああ」

「そっか、霜月さん独り暮らしだもんね」

ツナが心惜しそうに呟いた。

その言葉に、山本も寂しそうな顔をする。

まだ遊んでいたい、それが本音なのだ。

しかしまぁ、空気が読めない人間と言うものが必ず一人はいるわけで。

「あなたが一人暮らしと言うのは、初耳ですね」

もちろん、始めにスルーされて以来一言も発していないやちるである。

と言うより、要の一人暮らしなど彼女と少しでも関わりがあれば知っている事実なわけで。

「やちるちゃん、知らなかったんだ……」

ツナを含む殆どが、それこそ初耳だったりするわけで。

「西条考古学院のこともありますが、随分と長い間独り暮らしのようですね。なぜ親御さんと暮らさな……」

突然言葉を切ったやちる。

いや、正確には“切らされた”のだ。

夥しい量の、要から放たれる殺気によって。

ただでさえ寒い1月だが、なぜか急に一気に気温が下がった。

その場にいた全員が、指一本動かすことができなくなる。

まるで凍りついてしまったかのように、体の自由を奪われてしまったのだ。

それは、超一流の殺し屋であるリボーンや、一大ファミリーのボスであるディーノに限っても、同じことだった。

一般人でしかない京子やハルに至っては、気絶寸前だった。

「 オレは……オレの家族は……ッッ」

要が小声で何か呟いている。

しかし、俯いている上にこの重圧の中、それを聞き取ることができない。

「要」

声をかける銀。

それでも要は呟き続け、更に殺気が増幅する。

心なしか、草が根本(ねもと)から凍りついて見えた。

「要!」

ドンッ

空気を震わせる衝撃音と共に、要がゆっくりと倒れた。

それを優しく抱えたのは、銀。

そう、あの中で唯一動くことのできた銀が、手刀で要を気絶させたのだ。

同時に辺りを支配していた殺気が消え去り、全員が動けるようになった。

京子やハルは、倒れる寸前のところを、ビアンキやディーノに支えられていた。

ツナは腰が抜けてしまい、地べたにへたり込んでしまう。

「今日は、ありがとな」

それだけ言うと、銀は要を背負い、彼らが乗ってきたバイクごと“消えた”。



†‡†‡†‡†‡†‡



「…………要」

あの日から3日が過ぎた。

要は、一向に目を覚まさない。

時折辛そうに(うな)される要を見るたび、オレの心が痛んだ。

「……………………」

恐らく今、要はクラッシュ状態に陥っている。

もっとも触れられたくない話題を、もっとも触れてほしくない人間に言われた。

それが要の精神を壊してしまった。

もしかしたら、目を覚ますことがなくなるかもしれないのが、現状だ。

『銀』

突然頭の中に響いてきた声。

この声は……。

「お、大神様」

オレたち神様の頂点に立ち、オレの唯一の上司、大神様こと惣右介様。

『惣右介でいいよ』

「惣右介様、一体何事でしょうか」

『君も分かっているだろう? そこにいる女、霜月要のことで話がある』

「はい」

『それと、君の部下を召喚したあの女のことだ』

その一言に、冷や汗が流れる。

バレてたんだな……。

当たり前だ、この人に隠し事なんて通じるわけがない。

だって彼は、創造主なのだから。

「わかりました、今行きます」

そう言うと同時に、目の前の空間に裂け目ができた。

惣右介様のもとへと繋がる唯一の空間。

オレは、要を一人残し、そこへと足を踏み入れた。

















「父さん……母さん……」 
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