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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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ジェラール


「うぅう、うぅあう・・・!」

ショウ達4人がエルザとハッピーを連れ去った後、ミリアーナのチューブに縛られているルーシィは苦しい呻き声を上げた。
しばらくバタバタしているうちに、ショートパンツのポケットから星霊の鍵の束が出てくる。

「ひ、開・・・巨蟹宮、の、扉・・・」

すぐさま鍵を拾い、ハサミを持つキャンサーを呼ぶルーシィだが、何も起こらない。

「あ・・・あれ?」
「このチューブは魔法を封じる力があるみたいなんだ」
「そんな・・・どう、すれば・・・?んあっ!」

魔法が使えないとなると、ルーシィが自力でどうにかする事は出来ない。
ナツのようにバカ力があれば引きちぎれるだろうが、ルーシィは至って普通の女の子だ。
そんな力がある訳が無い。

「大丈夫だよ、ルーシィ」

そんなルーシィを安心させるようにルーが微笑み、どこから持ってきたのかナイフを見せる。

「そ、それ・・・どこから、持ってきたのよ?」
「ん?落ちてたんだよ?」

こてっと首を傾げてそう言うと、ルーシィの手首辺りのチューブを切りにかかる。
数秒後には、ルーシィの手首のチューブは切れていた。

「ありがとう!助かったわ」
「どういたしまして。それより、皆を探さないと!」
「うん!」

拘束から解放された2人は、他のメンバーを探しにカジノ内を走る。

「ナツー!グレーイ!」
「ティアー!アルカー!」

声を張り上げ、必死に4人を探すルーシィとルー。
そんな2人の目に飛び込んできたのは・・・

「!グレイ・・・」
「ティアっ!」

鉄のパイプの様なもので胸を突き刺され、額から血を流し壁に寄り掛かる様にして倒れているグレイと、アルコール類の割れた瓶の欠片の上に俯いた状態で、さらに口と額から血を流して倒れているティアの姿だった。

「嘘でしょ!ねェ!ちょっと!」
「どうしよう。グレイの体、冷たいよ・・・!」

体が冷たい・・・その事が示すのはただ1つ。
それを理解した2人は顔を見合わせる。
ルーの目にうっすらと涙が浮かび始めた、その時。





パキパキ・・・





「「え?」」

突然グレイの体に亀裂が入り始め・・・





パキィン!




粉々に砕け散ってしまった。

「きゃあああっ!」
「うわあああっ!?グレイ、遂に氷になっちゃったんだ!氷の魔法使うから!うわーん!」

突然砕けたグレイを見てルーシィは悲鳴を上げ、ルーは完全に混乱する。
いつもなら「そんな訳ないでしょ!」とルーシィがツッコむのだが、ルーシィも慌てていてツッコみどころではない。

「安心してください」
「ひっ!」
「わっ!」

すると、その近くに倒れていたジュビアがゆっくりと起き上がる。

「あ、あんたは!?」
「エレメント4の・・・!」

かつての敵であるジュビアを見てルーシィは目を見開き、敵であり、尚且つ戦った相手にルーは戦闘態勢を取る。

「ルーさん。ジュビア、戦うつもりはありません」
「ほえ?」

予想もしていなかった言葉にマヌケな声を出すルー。
その間にもジュビアがゆっくりと起き上がっていき・・・

「グレイ様はジュビアの中にいました」

そう言ったと同時に、ジュビアの中からグレイが姿を現した。

「な、中・・・あは、あはは・・・」
「うわーん!グレイ、無事でよかったよー!」

ジュビアの荒業にルーシィは苦笑いを浮かべ、ルーはそんな事お構いなし、とにかくグレイが無事だったという事に大喜びする。

「貴女ではなく私の中です」
「う、うん・・・そうね・・・」

そして勝手に恋敵とされているルーシィだった。

「突然の暗闇だったからな。身代わり造って様子を見ようと思ったんだが」
「敵にバレない様にジュビアが水流拘束(ウォーターロック)でグレイ様をお守りしたのです」
「余計な事しやがって!逃がしちまったじゃねーか」
「ガーン」

グレイの辛辣な言葉にショックを受けるジュビア。
すると、グレイの目に俯き倒れるティアが映る。

「オイ・・・俺達はともかく、ティアはどうなんだ?」
「!」

慌ててティアの方に目をやる。
ピクリとも動かず、ただ俯いているだけ。

「ジュビア!ティアは中にいないの!?」
「そ、それが、ジュビアがグレイ様をお守りしてティアさんも、と思った時には、ティアさんはいなくて・・・」
「いない!?じゃあ、あれは・・・」

全員の目がティアに向かう。
周りのガラスの破片を慎重に退かしながら、ルーがティアの肩を揺さぶった。

「ティアっ!ねぇ、ティアっ!起きて!」

必死に揺さぶっているが、ティアは動かない。
すると・・・

「!?」
「え?」
「は?」
「あら?」

スルッ、と。
ルーの右手がティアを突き抜けた。
全員が一瞬言葉を失い、ルーの口が悲鳴を上げるように丸く開いていく。

「わああああああっ!?ティアが、ティアがおかしくなっちゃったよーーー!」
「ルー!お、落ち着いてっ!」

頭を抱え叫ぶルーをルーシィが宥めていると・・・









「誰が、おかしくなったですって?」










声が1つ。
その声に反応した4人が声のする方を向くが・・・そこには誰もいない。
強いて言うならば、グレイが身代わりに造った氷の人形の欠片だけだ。

「声だけ聞こえる・・・」
「まさか、ティア・・・」
「ついに魂だけの存在に・・・」
「人を勝手に殺すんじゃないわよっ!」

ルーシィ、ルー、グレイの言葉にティアの声がツッコみを入れる。
が、声のする方には誰もいない。

「ははは・・・遂に僕、幻聴が聞こえるように・・・」
「ルー!戻って来い!いろんな意味で戻って来い!」

もう混乱状態のルーを必死に揺さぶるグレイ。
すると、ゆっくりと『それ』は形を『取り戻していった』。
青い光と共に『それ』は元あった形を取り戻し、先ほどまでの様に壁に寄り掛かる様に倒れる。

「・・・グレイだ」
「正確には俺の身代わりな」
「な、何・・・?」
「魔法、ですか?」

グレイの身代わりの胸辺りに青い光が集結し始める。
そして・・・









「よ・・・っと、やっと出られたわ」









ティアが出てきた。
グレイの、正確にはグレイの身代わりの胸辺りから、腰辺りまでを外に出している。
両手をついてスルッと身代わりの中から姿を現し、身代わりは再び割れた。
しゅるるる・・・と、俯き倒れていたティアがティアの右指先に吸い込まれるように消えていく。

「「「えーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」」
「ティアーーーー!?ど、どうして、氷の中にいるの!?」

これにはさすがのルーも目を見開いて驚く。
髪を耳にかけ、ティアは至って冷静に口を開く。

「氷は水が凍ったものだからね。少しくらいなら中に留まっている事が出来るわ。で、丁度いい所に氷があったから、少し借りただけよ」

しれっと言ってのけるティアに思わず言葉を失う4人。
『あぁ、そうだった・・・ティアはこういう常識外れな事をしれっとやってのける人だった・・・』と思ったのは言うまでもない。

「それよりナツやアルカ・・・エルザは?」
「ナツとアルカは解らない・・・」
「エルザは・・・」

グレイの問いかけに言いにくそうに言葉を詰まらせるルーシィとルー。
「何も出来ずにさらわれちゃったの」なんて簡単に言える訳が無い。
2人が言いにくそうにしている、その時だった。





ドゴォォォォォォォン!




ルーレットと書かれた飾りやルーレットそのもの、近くの瓦礫が2つの火柱によって打ち上げられる。
思わずその炎の方に目を向けたと同時に、ナツが飛び出して来た。

「痛えーーーーーーーーーーーっ!」
「ナツ!」
「ぶはァ!」

ダン、と着地し、銃弾をぶちこまれた口を開く。

「普通口の中に鉛玉なんかぶち込むかヨ!?ア!?痛えだろ!下手すりゃ大怪我だぞ!」
「普通の人間なら完全にアウトよバカナツ。アンタが常識外れの獣でよかったわね」
「んだとコラァ!」

こんな状態でもティアの言葉につっかかる元気はあるようだ。
と、その奥からのそのそとアルカが現れる。

「何なんだよ、あんの四角・・・背中に銃弾ぶち込みやがって」
「アルカ!大丈夫なの!?」
「んー?あぁ、アルカさんはピンピンしてますよー。熱風纏って銃弾燃やしてやったから。ま、相手にバレねぇよう身代わりに銃弾喰らわせたがな。ふー、大地(スコーピオン)使えてよかったなー。あれなかったらマジ死んでたかも」

ぶつぶつと呟きながらアルカはルーシィ達の近くに着地する。

「あんの四角やろォォ・・・!」

ナツは凄まじいまでの怒りの表情を浮かべる。

「逃がすかコラァアアーーーーーーーーーー!」

そして、叫びながらナツは走って行った。

「あのバカナツ!待ちなさい!私もあの巨漢一発殴ってやらないと気が済まないわ!」

普段なら冷静に後からナツを追うティアも、あのシモンを許せないのだろう。
こちらも凄まじいまでの速さでナツを追いかけていった。

「追うぞ!」
「追うって言ってもどこにいるのか」
「大丈夫だって。ナツの鼻の良さは獣以上だかんな」
「よーし!いっくぞぉー!」

そしてグレイ達もナツを追いかけていったのだった。










海に塔が1つ。
カ=エルムの近海に。
その塔の名は『楽園の塔』。
その一室では、玉座に座り、フードを被った青年と、地面に届くまでの長髪の男が向き合っていた。

「ジェラール様。エルザの捕獲に成功したとの知らせが。こちらに向かってるようです」

男の報告に、ジェラールと呼ばれた青年は静かに口角を上げる。

「しかし・・・何故今更あの裏切り者を?」

男の言葉に、クス・・・と小さい笑い声を漏らすジェラール。

「あなたほどの魔力があれば、始末するのはたやすかったはずだ」
「ふふ・・・ははは・・・それじゃあダメだ」

男に問われ、ジェラールは小さく笑いながらその問いに答える。

「『この世界は面白くない』」

その言葉はどこかで誰かが言っていた気がするが・・・気のせいだろう。

「はぁ・・・」

ジェラールの言葉の意味が理解できないのだろう。
男は不思議そうに首を傾げる。

「しかし『楽園の塔』が完成した今、これ以上生かしておくと面倒な事になりかねん。時は来たのだ」

そこまで言うと、ジェラールは一呼吸おいて、再び口を開く。









「俺の理想(ゆめ)の為に生け贄となれ。エルザ・スカーレット」









その楽園の塔に向かう船で、エルザは目を覚ました。

「くっ!どこだ、ここは!?」
「船の中だよ、姉さん」
「ショウ」

ミリアーナのチューブで、エルザの手首はくくられている。
そして柱の1本に腕を回す状態の為、自由に動けない。

「船?」
「そう・・・楽園の塔へと向かう船の中さ」

ショウの言葉に言葉を失うエルザ。
しばらくして、溜息をつく。

「そうか、そうだったな・・・」

伏し目がちに俯く。

「ほどいてくれないか?抵抗する気はない」
「そうはいかないよ。姉さんは裏切り者だからね」
「くっ」

試しに手首を動かしてみるが、逆にキツくなるだけで、メリットはなかった。

「無駄だよ。ミリアーナの(チューブ)には魔法を封じる力がある。自分の力じゃどうにもならないよ。いくら姉さんでもね」

そのチューブを自力で引きちぎった男が1人いるが・・・。
まぁ、あれはルーシィのピンチに反応したからその反動か何かで引きちぎれただけかもしれないが。

「わ、解った・・・じゃあ、せめて鎧に換装させてくれないか。怖いんだ・・・あの塔へ戻るのが・・・鎧を纏っていないと、不安で・・・」
「その服も似合ってるよ、姉さん」

不安げに呟くエルザを、ショウはがしっと抱きしめる。

「ショウ・・・」
「本当はこんな事したくなかったんだよ。会いたかったんだ・・・本当に・・・」

そう言いながらエルザの肩辺りに顔を埋め、涙を流す。

「姉さん」

・・・が、ショウの声色が、一気に変わった。

「何で・・・俺達を・・・」

涙がショウの頬を伝うのを、エルザは至近距離で見た。
怒りで血管が浮き、目を見開いている。











「ジェラールを裏切ったァ!」










(ジェラール・・・)

ショウの言葉に、エルザの脳裏に過去の記憶が蘇ってきた。










「姉さん!こっちだよ!早く!」
「ショウ!でけぇ声出すんじゃねェヨ!」
「ウォーリーの方が大きい声ーみゃあー」
「へへっ、すまねぇミリアーナ」

幼きショウがエルザを呼び、その声の大きさを注意するウォーリー(ちなみに四角くはない)。
が、ミリアーナに逆に注意され、デレーッと笑みを浮かべる。
どうやらウォーリーはミリアーナに甘いようだ。

「エルザ・・・急がねぇと奴等に見つかっちまう」
「う・・・うん・・・」

シモンがエルザの方を向きそう言うと、幼きエルザは震えながら返事をする。
脚はガクガク震え、びくびくと、ぶるぶると恐怖で全身が震えていた。

「も、もし・・・もしも見つかったら・・・私・・・見つかった子がどうなったか知ってる・・・」

もし見つかったら自分がどうなるか・・・。
それを知っているエルザは恐怖で一歩を踏み出せなかった。

「大丈夫・・・怖くないよ」
「!・・・ジェラール・・・」

そんなエルザにジェラールが声を掛ける。
エルザの頬がカァァァ・・・とその緋色の髪の様に赤く染まっていった。

「俺達は『自由』を手に入れるんだ。未来と理想(ゆめ)を」

そしてジェラールは優しげな笑みを浮かべ、真っ直ぐにエルザを見つめた。
青いウェットな髪に、顔の右側にはよく解らない赤い紋章・・・。




「行こう、エルザ」




「うん」

ジェラールの言葉に安心したのか、エルザも笑みを浮かべて頷いたのだった。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
最近アニメのフェアリーテイルを見て、すぐにその話の妄想をするんですけど。
今日の「凶瑞」を見てから、Cチームがあったらどうなるかなーって考えたんです。
・・・どう考えても負けないのは、オリキャラに負けてほしくないと考える思考があるからでしょうか。悪くて引き分けなんですよね・・・おっかしいなぁ。

感想・批評、お待ちしてます。 
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