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真剣で武神の姉に恋しなさい!

作者:炎狼
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休養

 
前書き
今回は休養回です 

 
「あー……落ち着くわー……」

 鉄心との死合いの2日後。

 千李は一人ゴロゴロと畳の上を転がっていた。因みに、現在千李がいる所は川神院ではなく、湘南の極楽院である。

 すると奥の方から急須と湯呑みをお盆の上に乗せた三大がやって来た。

「まったく……いきなり来て暫く匿えなんて言うから何事かと思ったら報道に追われてるからだなんてねぇ……。それでも鉄心ちゃんを倒した女かい?」

「うっさいなー、だってしょうがないじゃない。引っ切り無しに報道が来るし、終いにゃ海外からも来てんのよ? めんどくさいったらありゃしない」

 気だるげにため息をつきながら千李は仰向けになる。

 そう、千李がなぜ極楽院に居るかと言うと、鉄心との死合いの後、報道陣が詰めかけ質問攻めに合うのに嫌気がさしたからだ。勿論千李だけではなく、瑠奈もいるが今は外で遊んでいる。

「それで? 学校はいいのかい?」

「まぁ大丈夫でしょー」

「いいのかねぇそれで。……ホラ、お茶淹れたよ」

「ん、ありがと。瑠奈ー! お茶が入ったから来なさーい!」

 千李は縁側の方を見ながら瑠奈を呼ぶと、「はーい!」という瑠奈の元気な声が聞こえた。

 縁側からやって来た瑠奈は千李の横にちょこんと座る。

「ねぇおかあさん? いつまでおばあちゃんのとこにいるの?」

「そうねぇ……とりあえずはほとぼりが冷めるまではいましょうかね」

「ほとぼりって?」

「うーんなんというべきか……。まぁあと2、3日はいるってことよ」

 瑠奈の疑問をうまく説明できなかったからなのか、千李は若干苦笑しながら告げた。瑠奈はそんなことを気にした様子もなく、暫くここにいられるということがわかったからか、両手を挙げて喜びをあらわにしている。

「ふむ……だけど瑠奈はともかくとして千李ちゃんは外に出るわけにはいかんよなぁ。湘南でも話題にあがっとるみたいじゃし」

「そうよねぇ。まっ、行くとしたって大の家ぐらいだから平気じゃない?」

 三大の心配を他所に千李は軽々しく答える。三大はそれに小さく溜息をつくと、

「まぁあんまり面倒なことにならんようにな」

「あいあいー。じゃあ瑠奈、お母さんと一緒に遊びましょうか?」

「うん! あそぶー!!」

 千李は瑠奈と手を握りながら庭へと歩いていった。




「ねぇねぇおかあさん」

「ん?」

 瑠奈と遊び始めて少しして、瑠奈が千李に問いかけてきた。

「わたしね……ぶどうのけいこつづけようとおもうんだ。おじーちゃんとおかあさんがたたかってるのみてかっこいいっておもったし、それにぶどうをやっていることでなにかがてにはいるかもしれないし」

 毅然とした態度で言い切る瑠奈を見て千李は小さく笑みを浮かべる。その目には嬉しさとやさしさが満ちていた。

 すると千李は瑠奈の元にしゃがみこむと瑠奈の小さな手を握りながら、

「ありがとう、瑠奈。……でもこれだけは覚えておいて、戦いに呑まれてはダメ。自分が何のために戦うのか、きちんと理解をしないといつか身を滅ぼすことになるわ。貴女は昔の私のようになってはダメよ」

 千李の口調は優しいものだったがその中には確かな強さと、凄みが感じられる。それを感じ取ったのか、瑠奈も顔を少し緊張させながら静かに頷いた。

 瑠奈がうなずいたのを確認した千李は、柔和な笑みを浮かべながら彼女の頭を撫でる。

 すると、瑠奈が思い至ったように「あっ」と声を漏らした。

「ねぇおかあさん。ワンちゃんだして!!」

「ワンちゃん? ……ああ、気獣のことね。ちょっと待っててね」

 千李は立ち上がると右腕に気を集中させる。数瞬の後、千李の右腕から白銀色の狼が現れる。今は戦闘中ではないからか、その狼の表情はどこか柔らかく見える。

 狼は意思を持つかのように耳の裏を掻く素振りを見せる。

 ……結局この気獣って意思あんのかしらね?

 小首をかしげながら千李が気獣である狼を眺めていると、

「やっぱりかわいー」

「へ?」

 瑠奈が気獣に近寄り頭を撫でていた。

 気獣は頭を撫でられたことにより、気持ちよさそうにその目を細めている。その姿は、はたから見れば、生きた動物そのものだった。

 ……触れるんだ……。あ、でもジジイの毘沙門天も一応触れるんだからありえるっちゃありえるのかしら。

 顎に手を当てながら考え込む千李とは裏腹に、瑠奈と気獣はなかよく戯れている。気獣自身鉄心との戦闘の時の凶暴さは何処かに行ってしまったかのようにおとなしい。

「ねぇねぇおかあさん。このこ、おなまえあるの?」

「え? 名前? いや……考えてなかったわね」

「じゃあわたしかんがえるー!」

「いいわよ。好きなカッコイイ名前付けてあげてね?」

「はーい」

 千李は笑いながら縁側に腰をかけると、気獣の前でうんうんと悩んでいる瑠奈を見つめる。

 時折、気獣の周りをぐるぐると回っては頭を捻る瑠奈が可愛く思え、千李は頬を緩ませる。

「それにしても、気を形にするとは恐れ入るねぇ。そんなことができるのは鉄心ちゃんぐらいだと思っていたが」

 いつの間にか千李の隣に来ていた三大が、腰を下ろしながら呟いた。

「まぁ、私だってできたのはほんのつい最近だし」

「それでも十代でアレだけの気を凝縮できるんだからすごいもんだけどねぇ。それに、瑠奈も少し見ない間にかなり成長したみたいだねぇ」

「一応川神院で鍛えてるしね。気はあまり使わせないようにしてるけど」

「それがいいだろうね。あの歳で気を使い始めたら、昔のアンタのようになるのは明白だ」

 それまで笑顔だった三大が少しだけトーンを低くした声で千李に告げた。千李もそれに頷きながら、

「ええ、わかってる。あの子だけは昔の私のようには絶対にさせない」

「……がんばりな」

 三大の静かな激励に千李は無言で頷いた。





 瑠奈が遊びつかれて寝てしまった後、寝かしつけた千李は極楽院を後にした。行き先は長谷家である。

 髪形を変えて多少変装をしているものの、実際はポニーテールをツインテールにし、伊達目眼を着用しただけである。

 ……にしても、この歳になってツインテとか……。

「――やっぱり若干恥ずかしいわね……」

 顔を俯かせながら、僅かに頬を赤らめる千李は本当に恥ずかしそうだ。

 そうこうしている内に、千李は長谷家の前に到着した。時刻は午後四時半、高校も既に終わっている時間だろう。

「いなかったらその辺で待ってればいいしね」

 千李はそのままインターホンに手を伸ばす、すると、

「あれ? もしかして千姉ちゃん?」

「ん? あ、大。偶然」

 千李が振り返るとそこには両手に買い物袋を提げた大がいた。彼は小首を傾げながら、

「うちに何か用?」

「ええ、ちょっとね。正確には大や冴子さんに用があるんだけど」

「じゃあ、あがってく? 姉ちゃんもそろそろ帰ってくると思うし、コーヒー淹れるよ」

「そう、ありがとね」

 大は笑顔で答えつつ、玄関の鍵を開けた。

「お邪魔します」

 千李は軽く頭を下げつつ、長谷家に入る。

 大の後に続いていくと、リビングに案内され、ソファに座っていてくれと言われた。

「少し待っててね。コーヒー淹れるから」

「あいあいー」

 ソファに腰を下ろしつつ、キッチンに消える大の姿を見送りながら、無作法であると思いながらもリビングを見渡した。

 ……綺麗に片付いてるわねー。冴子……いや、大でしょうね。

 リビングは思った以上に綺麗に片付けられていた。きちんと整理整頓がなされていて、埃一つ見当たらない。

 長谷家は三大から聞いた話によると、現在冴子と大の二人暮らし状態らしい。両親は仕事の関係上帰って来れないとのことだ。

 ……冴子がこんな綺麗にしとけるわけないでしょうし。

 苦笑しつつ千李はキッチンに立つ大を見つめる。彼はコーヒーを作るためお湯を沸かしつつ、ペーパードリップで作ろうとしているのか、カップにペーパーを取り付けている。

 やがて、お湯が沸き大はカップとポットをお盆に乗せてやってきた。

「お待たせ。本当はペーパードリップじゃなくしようと思ったんだけどね」

 お湯を注ぎつつ大は苦笑する。同時にお湯が注がれた影響か、部屋に濃密なコーヒーの香りが蔓延った。

「おー、いい匂いねー」

「でしょ? 千姉ちゃんは何か入れる?」

「ブラックで大丈夫よ。それにしても随分と手馴れたもんねぇ」

「まぁ毎朝淹れてるしね」

 大はコーヒーを作りつつ、千李に褒められたことが嬉しいのか、少しにやけている。

 そしてコーヒーができあがり、二人はそれを一口のみ深く息をついた。

「美味いわねー。コクがいい……」

「ありがと、それで千姉ちゃん、ニュースで聞いたけどなんだかすごいことになってるっぽいね」

「あー……まぁね。大も知ってると思うけど私のじいちゃん。川神鉄心を私が倒しちゃったもんだから報道陣が押しかけてきてねー」

「それで極楽院に避難?」

「そんなところ」

 肩をすくめながら千李は苦笑する。大もそれに笑っているが千李と同じく苦笑いだ。

「それでツインテールにしたり、眼鏡かけてるんだ」

「変装にすらなってない気もするけどね」

「確かに、でもツインテールにしてるからか若干幼く見えるね」

 大はにこやかに笑いながら千李を見る。千李はそれにげんなりとしながら、

「さすがにこの歳でツインテは精神的にやばいわよ……」

「そうなの?」

「男はわかんないでしょうけどねー」

 明後日の方向を向きながら、千李はふてくされる。だが、それによりさらに幼く見えた大は声を出して笑ってしまった。

 だが、千李の鋭い眼光に睨まれ、すぐに声を押し殺した。

「そ、それで千姉ちゃん話って?」

 軽く咳払いをしつつ、大は話題を変える。千李もそれに小さく息をつきながら答えた。

「まぁ話っていうかただ単に遊びにきただけなんだけどね」

「なんだ、そうなの」

「昔話を三人でしようかと思ってね。そういえば冴子さん教師やってるんだって?」

「うん、俺が通ってる高校でね。信じられないでしょ?」

「うん、信じられない。だってあの冴子さんでしょ? 元ガキ大将の」

 千李はコーヒーを一飲みしながら大に投げかけるように掌を向ける。それに対し、大も怒ることもなく小さく笑っている。

「どんな授業してんの?」

「科目は数学。学校だと結構人気があってさ、生徒からも信頼されてるよ。まぁ猫被ってるんだけど」

「フフッ、冴子さんらしいわね」

 二人が笑いあってると、

「ただいまー」

 玄関の方で女性の声が聞こえた。

「ヒロー! 誰か来てるのー?」

 その声とともに、リビングと廊下を隔てる扉が開けられる。

 リビングにやってきたのは、栗色の髪を後ろで一括りにし、白のシャツを格好良く着ている優しげな女性だ。

「おかえり、姉ちゃん」

「お邪魔してます、冴子さん」

 二人は女性ににこやかに声をかける。

 この人物こそ、幼少期、千李と大喧嘩を繰り広げた長谷冴子、現在の大の義姉である。

 冴子は扉を開けたまま、態勢もそのままに固まってしまっている。

「? 姉ちゃん? どうかし――」

「ヒロー!! お、お姉ちゃんがいない間にこんな女の子連れ込んで何してんの!!?」

 大が冴子の様子を見に行くため、近寄った瞬間、大は胸倉を掴まれた。

「ね、姉ちゃん! 落ち着いて、これにはわけが!!」

「何が訳よ!! おとなしい顔してると思ったら裏でこんなことしてたなんて!! この、淫獣!!」

「ちょ!? お願いだから話聞いてってば!!」

 大は何とか弁解しようとするものの、冴子がそれを許さなかった。すさまじい剣幕で大に詰め寄るのもそうだが、胸倉を掴んだままかなりの速度で大を揺さぶっている。

 それを見ていた千李は小さく溜息をつきつつ、

「冴子さん、いい加減その辺で」

「アンタは黙ってなさ――!? あれ? アンタ……」

 冴子は千李を睨んだかと思ったら、大をつかんでいた手を離し、千李の顔をじっと見つめる。

 千李はそれに小さく笑うと、眼鏡と縛っている髪を一旦解き、もう一度ポニーテールを作り直す。

「お久しぶりです、冴子さん」

「せ、千李!? あ、アンタなんでここに!!?」

 冴子はポニーテールの千李の姿を見て幼少の頃を思い出したのか、素っ頓狂な叫びを上げる。

 すると、冴子の手から落とされた大が腰をさすりつつ、説明を始めた。

「ホラ、ニュースでやってたでしょ? 千姉ちゃんが川神鉄心さんを倒したって。それで報道陣に追っかけまわされてるから、極楽院に避難してるんだってさ」

「ああ、なんだそういうこと。じゃあヒロ、アンタもっと早く説明しなさいよ!」

「えー……、だって姉ちゃんが間髪入れずに俺に掴みかかってきたんじゃん……」

「口答えしない! ……それにしても懐かしいわねー千李。つーかアンタデカイわね……背だけじゃなくていろんなところが……」

 冴子は千李を見つつ、落胆とも取れるような声を上げる。

 千李はそれに苦笑しつつ、

「冴子さんは相変わらずですね。つーか、教師やってるってことが信じらんないんですけど」

「なにおー。ていうか千李さ、その敬語やめてくんない? なんかアンタに敬語使われると気持ち悪くって」

「そうですか。じゃあ改めまして……久しぶり、冴子」

「うん。やっぱりアンタとはタメで話したほうがしっくり来るわ」

 冴子は納得がいった様にうぬんと頷くと、ソファに腰を下ろす。

「ヒロー。ビールー」

「はいはい」

 だらりとしながら、冴子は大に告げる。大もそれに慣れた様に冷蔵庫からビールを冴子に渡す。

「ぷはーっ! 生き返るわー……」

「まだ夕方だろ、それに明日も学校なんだから少しは抑えときなよ?」

「わかってるってー。そういえば千李? アンタ学校は?」

「特別休暇。少し羽を伸ばして来いってじーちゃんに言われてね」

「えー、ずーるーいー!」

 冴子は足をバタつかせながら駄々をこねる。それに肩をすくませながら千李は大に耳打ちする。

「……いっつもこんな感じなわけ?」

「そうです……」

「こらそこー! 何ヒソヒソやってんのよー!!」

 二人の様子に気付いた冴子がむすっとしながら千李と大を睨んでいた。千李はそれにくつくつと笑いながら、大は呆れ顔で溜息をついていた。

 その後、冴子をなだめつつ、三人で幼少期の話をしながら時間は過ぎていった。




「っと、もうこんな時間ね。そろそろ帰るわ」

 千李が時計を見ると、既に時刻は午後六時半になっていた。

「送るよ」

「ん、サンキュー大。またね冴子」

「うーい、また来なさいよー」

 ソファで横になりながら手を振る冴子を置き、千李と大は外に出た。

 そして、極楽院に向け歩き出そうとした時、千李が声を上げる。

「あ、そういえば夕飯どうしよう」

「だったら孝行いってみる?」

「孝行?」

「うん、ホラ子供のとき千姉ちゃんたちと一緒に遊んでた武孝田よい子さんって子がいたでしょ? その子のところが惣菜屋さんなんだよ。凄く美味しい惣菜があるからいいんじゃない?」

 大に提案に千李は顎に手を当てながら、幼少期の記憶を掘り起こす。

 ……よい子、って、あー……あの気の弱そうな子ね。行った事なかったから惣菜屋なんて知らなかったわ。

「うん、じゃあ案内してもらっていいかしら?」

「いいよ。こっち」

 千李は大に続いて歩き出した。

 数分歩くと、住宅街の一角に賑わう所があった。同時に空腹を誘う芳しい香りが鼻腔をつき始める。

「よい子さん」

「あら、ヒロくん。今日は家で買って行ってくれるの?」

「ああえっと、俺じゃなくてこっちの……」

「久しぶりね、よい子」

「え……?」

 千李の声によい子は一瞬怪訝そうな顔をする。しかし、何か思い出したように手を合わせると、

「もしかして千李ちゃん?」

「正解。よく覚えててくれたわね」

「まぁ冴ちゃんとアレだけ喧嘩してればねぇ……。必然的にも覚えちゃうかな」

 よい子は口元に手を当てながらクスクスと笑う。

「そんなもんかしらね。じゃあ、オススメ適当に見繕ってもらえるかしら?」

「あ、はーい。そういえば千李ちゃんテレビのニュースで見たけど凄いね」

「まぁ報道から逃げるために極楽院に来てるんだけどね」

「なるほど。だったらあんまり街中はうろつかない方がいいかもね」

 よい子は千李と談笑しつつ、惣菜をとりわけて行く。

「はい、こちら当店のオススメです」

「どーも。ハイお金、じゃあそろそろ行くわ。よい子、またねー」

「はーい」

 千李と大は孝行を後にし、極楽院への道を歩きだす。

 が、

 長谷家の前まで来たところで、千李が大に告げた。

「大、アンタは先に帰りなさい。冴子が腹空かして待ってるでしょ?」

「え、でも……」

「いいから、行きなさいって。前みたいに早くは帰らないから」

 千李は食い下がろうとする大の肩を持ち、家に向かわせる。大もしぶしぶといった様子で家の中に消えていった。

 大が消えたのを確認した千李は、軽く息をつくと極楽院に向けて歩き出した。




 極楽院に戻り、三大や瑠奈と夕食を済ませた千李は、風呂を済ませた後、今で三大に聞いた。

「ねぇ三大ばあちゃん。マキって気を感じられるの?」

「どうだろうねぇ。気を使うことはできんだろうが、感じることぐらいはできるんじゃないかねぇ」

「ふーん。じゃあもしかして私が湘南に来るたびに喧嘩売られるのって……」

「おそらく、センちゃんの気を感じ取っているか……。または単純に野生の勘ってやつかもしれんね」

 お茶を啜りながら三大は告げた。

 一方千李は顎に手を当てつつ、頭の中でマキの行動を思い返しながら考える。

 ……どっちもあるかもしれないわね。
 
 実際、マキは千李が来た時は確実に何処からか嗅ぎ付けて喧嘩を売ってくる。その速さたるやまさに獣のようだった。

「……明日辺り来るかもしれないわね。さてと、じゃあ瑠奈寝ましょうか?」

「はーい」

「じゃあ、また明日ね三大ばあちゃん」

「うむ。ゆっくり休みな」

 千李と瑠奈は寝室に消えていった。

 寝室で瑠奈と一緒に布団に入った千李は瑠奈の頭を優しく撫でつつ、静かに告げた。

「瑠奈。今はいいけど、川神院に戻ったら今までより鍛錬が辛くなることもあるかもしれないけど……大丈夫?」

「うん。わたしもうきめたんだから! おかあさんみたいにつよくなるって!」

 にこやかに答える瑠奈に千李は柔和な笑みを浮かべながら、

「そう、なら私もがんばらないとね。じゃあそろそろ寝ましょうか。明日もいっぱい遊びましょう」

 最後にそう告げると瑠奈は元気よく頷きそのまままぶたを閉じた。

 千李もまた瑠奈の手を握りながら眠りについた。 
 

 
後書き
今回の後もう少しだけ湘南でのお話が続きます
辻堂さんとも絡ませるのでそれなりに期待してくださいw

感想などお待ちしております。 
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