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ティーンネイジ=ドリーマー

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第二章


第二章

「それでその店をな」
「ええ」
「でかくしてやるぜ」
 煙草を吸いながら笑って言った。
「これまで以上に。もっとな」
「それがあんたの夢なの」
「御前の夢に比べたら小さいか?」
 別にそれでコンプレックスとかそういうのはなかったがそれでも引っ掛かるものはあった。
「家の店を大きくするのってな」
「いいんじゃないの?」
 何か俺と同じような返事だった。
「それならそれで。夢があるってことは事実だし」
「そうか」
「そうよ。それでそのお店を大きくしてどうするの?」
「御前外国に行くよな」
 すぐには答えずにこのことを聞き返した。
「そうだよな。それは」
「ええ。何度でも言うけれど」
 やっぱり答えは変わらなかった。
「そうよ。行くわ」
「けれどそのままじゃないだろ」
 俺はまた聞いてやった。
「そのまま。行ったきりじゃないよな」
「ええ。全部の国回って音楽聴いてもらってから帰るわ」
 ジャンボを見ながらにこりと笑って話す。
「それでね。それが終わってから」
「帰るんだよな」
「そのつもりよ」
「その時はこの街に帰って来いよ」
 俺は言ってやった。
「この街にな。いいな」
「えっ!?」
 俺の言葉に顔をジャンボから離す。そうして俺に顔を向けてきた。
「それってどういう意味!?」
「待ってるさ」
 俺は彼女の顔は見なかった。また一機空に旅立つジャンボを見ていた。目をそこから離さない。
「ずっとな。待ってるからよ」
「待ってくれるの?」
「ああ。ずっとな」
 俺はまた言ってやった。
「待ってやるさ。ずっとな」
「ずっとなの」
「だから。帰って来いよ」
 俺の目はそのままジャンボに向けていた。
「夢を適えたらな」
「そうね。夢を適えたらね」
「帰って来いよ」
 また言ってやった。
「待ってるからな。いいな」
「ええ、わかったわ」
 俺の言葉に頷いて答えてくれた。
「それじゃあ。夢を適えたらね」
「その頃には俺は店をでかい会社にしておくからな」
「会社にするの」
「ホンダやカワサキに負けない会社にな」
 実はそれが俺の夢だった。店を日本どころか世界の誰でも知ってるバイク会社にする。それだった。
「してやるさ」
「そうなる前に私の方が先に夢適えてるかも知れないわよ」
 くすりと笑っての言葉だった。
「それだけ大きな夢だったら」
「夢は大きくだろ?」
 俺も笑って言葉を返してやった。
「だからな。やってやるさ」
「あんたもそれだけの夢はあるのね」
「夢がなきゃ何の意味もないさ」
 俺は心からそう思っていた。
「何のな。意味はないさ」
「だから持ってるの?そうした夢」
「それもあるけれど実際そうしたいさ」
 本気でそう思っていた。嘘じゃなかった。
「俺の家の店。でっかい会社にしてやるさ」
「じゃあその時に帰って来るわ」
 また笑って俺に言ってきた。
「世界中に私の歌声を聴いてもらってからね」
「死んでも知らねえからな」
「死なないわよ」
 根拠はないが絶対の自信に満ちた言葉だった。
 
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