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正義と悪徳の狭間で

作者:紅冬華
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導入編
覚醒
  導入編 第一話 目覚め

 
前書き
警告 強姦、殺人の描写が出てきます。ご注意ください 

 
鈍い痛みがする

固いベッドに転がされてナニカサレテル

訳がわかんねぇ

ここはいったい…いや第一私は誰だ…痛みがまたやってきた、息苦しい、重い

眼に入るのは汚い天井、目線をずらせば手を伸ばせば届きそうな所にガン…

ああ、今更ながら私は裸のようだ、豚野郎の汗ばんだ素肌が気持ち悪い



…え?

ここまで来てやっと理解する

ワタシハオカサレテイル

豚がいっそう強く打ち付けて来る…ああ、『また』汚されちまう

痛みの原因が脈動してナニカを私に注ぐ…変態豚め






唐突に引き出される記憶の断片






黄昏時に不潔な倉庫街で若い日本人の男女が四人組のクソッタレに撃ち殺される

『私』が呆けて、パパ、ママって呟いた







押さえつけられ、力任せに服を引き裂かれ、あるいはナイフで切り裂かれる

ヤメテサワラナイデ







殴られ、無理やりくわえさせられる

イヤダモウイヤダ






懇願も聞き入れられずむしろ嬉々として散らされる私の蕾

絶叫







笑いながら状況をより悪くしてくださるクソッタレ

幼い穴とケツを引き裂かれながら口にも突っ込まれてる





全身を弛緩させたままで腕だけに力が入る。

気付けば私の中で果てた豚にガンを突き付けていた。

ヤリ過ぎて疲労困憊なのか気付きもしねぇ

…引き金を引く寸前、理由はわからないが指が止まる。



何かが足りない…ああ、わかったこれじゃあ殺せない。

記憶でこいつがしたようにセーフティを外し、こめかみに押し付け、引き金を引いた。

脳髄が飛び散り、全身で豚の最期を感じる…うまくいった。



豚の下からなんとか這い出た直後、扉が開いた。

「もう殺っちまったのかよ」

銃がおいてあった台のかげでクソッタレが仲間の死体にそう言ったのを聞いた。

さっきの豚ほど簡単じゃあないだろうが全員殺るしかない、
銃声をさせた事を咎めない時点で警察は期待できないだろうから。

まあいいさ、あのまま良いようにされて殺されるよりは足掻いて死んだ方が幾分ましだ。

「まあ、育ちが良かったおかげで楽しめたが壊れるのも早かったからな」
汚い言葉で糞な事を言ってられるのもあと少しだ

「マックス?どうした?」
異常に気付いた、今しかない

飛び出して二度撃つ

二発目が頬をかすった。

「このガキ!」

ヤバい、三発目と同時に横に転がる。
刹那、何かが髪を掠め、続いて何かが倒れた。

起き上がって見てみると男は血を流しながら呻いてやがった…近付き、頭に一発撃ち、銃を奪う。

着るものは…あとでいいか

扉を出るとヘッドホンを着けながら銃を分解して男がいた…こいつもだ

近付いて…

「ん?もう飯か、少し待っ・・・」
気付かれた

「くそガキが!」
飛びかかって来たそいつに引き金を引く

一発目…肩を掠めたが止まらない

二発目…外れ

ヤバイ

三発目を撃つ前に腕を握られ、あさっての方向に無駄弾を撃つはめになった。

「形勢逆転ってな、お嬢ちゃん。銃はガキが片手でぶっぱなしたってそうそうあたるもんじゃねえんだよ、覚えとけ、次はないけどな」

四発、五発目、左手の方で胸部に撃ち込む

「ありがとよ、確かにこれだけ近くないと当たらないみたいだな。あんたの遺言大事にするよ」

血のシャワーを浴びながら言い返す。事切れる前に聞こえたかは微妙だが…倒れた男に念のため頭に一発、確実に殺す。

詳しい装弾数は知らないが最初に奪った方の弾切れが近い筈だ。

私の両親らしき人を殺したのは四人組、最低まだ1人は居るはずだ。

回りをみる

ピザやら酒瓶やらの食べ残しに卑猥な雑誌、吸い殻の山、先程の寝室への扉以外に3つ扉がある。
さっきの部屋から出た時を基準に右が玄関、手前右側がバスルーム、正面が窓で左が…わからないが多分普通の部屋だ。
…玄関の施錠を確認し、バスルームをチェックしてもうひとつの部屋を調べようか。

玄関の鍵は…かかっていた。

バスルーム…トイレつき、誰もいないが水滴がついてる。

最後の部屋…嫌な気配がする。一気に扉を開けて飛び退く。

…ベッドのバリケードとそれを盾にした二人組と目が合う。

ヤバい

「なんでてめぇが!」
横に飛び退く、連続した銃声、右腕の焼け箸を押し当てられた様な痛み…かすっただけで耐えられない事もない。
幸い壁は厚いらしく、弾は貫通してこない。しかしヤバい状況なのは何一つ変わらない。

何か無いかと部屋を見渡すと手榴弾らしき物がさっき殺した男の脇にあった…使ってみよう。
拳銃は一挺目と二挺目は同じ銃に見える。ならばテストをかねてこうしようか。

壁に隠れながら弾切れが近い一挺目の銃を銃身だけつき出して部屋の中に二発撃ち込む。

撃ち返してくる

次は一発、また反撃の雨

手榴弾のピンを抜いてレバーを握る、さらに三発、私が思っていたより拳銃の装弾数は多いらしい。

反撃を凌いで二発…撃とうとして一発だけ飛び出して弾切れ、わざとさらに数回空撃ちする。

「あの肉奴隷、弾切れしやがった!なぶり殺しだ!」

…単純で助かる。

手榴弾を部屋に転がり込ませ、最初の部屋まで引く。

爆発音

「トム!クソッタレが!」

部屋から銃弾が飛び出してくる。上手くいった様だ。
それに先程からの会話から察するに目があった二人組で最後だろう。
今のうちに二人目に殺した男の服を引き裂いて撃たれた所に巻く。

…私がなんなのわからないが知識の中の普通とはかけ離れてるな。
素っ裸、血塗れで銃撃戦をしてる、さらに最低三人、恐らく四人殺しておいて何も感じやしない。

さて、後は…暫く根比べをしながら手を考えようか。







駄目だな。物を転がしたり、バスルームでシャワー音を立てたりしてみたが出て来ない。
のこのこ出てきた所を撃つつもりだったが慎重な事だ。おかげさまで血が乾いてしまった。
連続した銃声に異常を感じて防御を決めたのはあいつだろう。

玄関は奴から射撃を受ける…互いに逃げられない。

新たに見つけた武器は手榴弾が二個に果物ナイフが一本、それに卓上に拳銃弾入りの弾倉が三つ…

ためしに弾切れを起こした方の銃の弾倉を交換しようと少し試してみたらできた。
おかげで景気よくぶっ放すことができた。

都合、弾倉一本分(15発)を打ち尽くしてまたリロードする。

よし、やろう。














畜生、なんだっていうんだ。

麻薬の取引中に俺の人払い魔法を越えて来た親子がいて、その両親をぶっ殺して娘を拉致したまで良い。
まあ、なんで効果がなかったかはともかく、さらった女になり始めたか怪しいガキを五人で回して楽しんだのももちろん良いことだ。
んで、ガキが精神的に壊れて反射以外の反応を示さなくなったあたりで俺は抜けた。

でだ、シャワーを浴びて気持ちよく寝てたら近い銃声に起こされた。
マックスがガキを殺したと思った。

まあ、パーツごとか丸ごとか別にして売れば金にはなると思えばもったいないが、この街に来てかなり儲かっている事を考えればそこまででもない、マックスにおごらせて話はおしまいだ。

…が、銃声が四発続き、少しして一発。
嫌な予感がよぎり、隣でまだのんきに寝てるトムを起こす。
「あ?なんだよ、飯か?」
「しっ、手伝え、ベッドをバリケードにする」
「なにを寝ぼけたこ」

銃声が三発、二発と計五発響く

「…わかった。」
トムも納得したらしく、手伝ってくれた。

拳銃とマガジンを用意し、部屋の入り口を警戒する



扉が唐突に勢いよく開くがそこにいたのはあのガキだった。

あの壊れた筈のガキが両手に銃を持ち、血塗れで立っていた。
「なんでてめぇが」
トムが銃撃、私も続くが奴は飛び退く。
なぜか私はまるでそこに悪魔が居たかのように手が震えていた。

様子を伺っていると奴は壁に隠れながら銃だけつき出して部屋の中に二発撃ち込んできた。
うち一発は私の耳元を通りぬける。偶然だとは思いたいが得体の知れない恐怖を覚える。

暫く銃撃戦をしていると奴は弾切れに気づかないのか、から撃ちを数回繰り返した。
「あの肉奴隷、弾切れしやがった!なぶり殺しにしてやる」
トムが叫んでバリケードを飛び出す。
そして気づく。奴はもう一挺持っていたじゃないか!
制止しようとした直後、手榴弾らしき物が部屋に転がり込んでくる。

爆発音

「トム!」
トムは破片と爆風をもろに浴びて倒れる…生死不明だが助けに行けば撃ち殺されるだけだ。
「クソッタレが!」

なぜ日本人の、それも壊れていた筈の奴がこんなにも戦いなれている様に振る舞うのだ?
…まさか正義かぶれの魔法使い?

いや、それならば既にでかい魔法で吹っ飛ばされているだろう。

それに、俺はこの街に入る前から今回みたいな不幸な事故を避ける為の、おまじないレベルの認識阻害以外はほとんど魔法を使ってない。
この程度でわざわざ魔法秘匿のために借りに来るとは考えにくい。

第一、死体も本物だった筈…とにかく壊れた振りをしていたと考えて警戒すべきだ。







クソッタレ!あのアマ、露骨に誘ってやがる。
物を投げ込んで来たり、あからさまにシャワーの音をさせて…しばらく静寂を保ったと思ったらまた銃撃して来たり…

また来た。

ピンを抜く音がし、パイナップルが床に転がって来た!
とっさにバリケードに隠れる

ん?

奴が動く気配がする。

コン

背後で音がして、何の音かと思い振り返った。

「…げっ」

パイナップルをバリケードの中に投げ込まれた。
いったい何が…
兎に角、俺は貧弱な魔法障壁を全力展開し、身を縮めた。

直後、爆発が起きた。
「っあ…いてえがなんとかなったか」
魔法学校に通えるような連中ならこれぐらい楽に防げるんだろうが、俺のは半ば我流の独学で拳銃弾すら防ぎきれない代物だ。
「なってねえよ、ボケ」
背後からあの餓鬼の声が聞こえた…ああ、これでお終いか…
「悪魔…」
思わずそうつぶやいていた。

バン

銃声がなった
















手は単純だ。
手榴弾のピンを抜いて、もうひとつの手榴弾を床に転がして囮にし、隠れさせてからバリケード内に投げ込み、爆発後に止めをさす。
それだけだ。

そんな手が通用するかは微妙だが、
ついさっき奴の仲間が目の前で爆死(まだ生きてるかもしれないが動きは無い)し、その死体が私達の間に転がっているのだ、可能性は十分にある。

爆発

一拍おいて部屋に飛び込みバリケードを回り込む
「っあ…いてえがなんとかなったか」
呑気な事を言うバカがいた。想像よりずっと軽症だが手傷はおってる。
「なってねえよ、ボケ」
後頭部に銃を突き付けた。
「devil…」
てめぇらにはいわれたくねぇ

引き金を引いた。
脳と体液が飛び散る…それは私への祝杯にも思えた。

「さて、これからどうするか」
四人目の『死体?』を確実に『死体』にしながら私はそう呟いた。

とりあえず、この部屋を探索することにし、掃討終了を確認した。
そのあと、死体を最初の部屋に集め、シャワーを浴びた。

なんとか髪や肌にこびりついた血を落とし、体の中も洗えるだけ洗った。
傷がしみて痛い…興奮状態が解けて痛みが段々酷くなってきやがった。
意識もぼやけてくる。

かなりの時間、犯され続けていた事になるはずだから疲労は当然か。

全裸のまま、シーツと拳銃をつかみ、一番安全だと判断した場所、
死体を集めた部屋のベッドの下に潜り込むと直ぐにシーツにくるまって丸くなる
自分のむせかえるような甘い血の匂いと吐き気がする臓物の臭いの中、私の意識は堕ちていった。





























「ん…」

柔らかいベッドの上で目を覚ます。

懐かしい夢をみた。
正式にこの街の住人になった晩にあの街の住人になった日(より正確にはあの街で生まれた日)の夢をみるとはなかなか皮肉が効いている。
だがそれはある意味必然なのかもしれない

あのロアナプラとここ麻帆良は掲げる物こそ違えど表の国家権力の影響力を排除し、自分達のオリジナルの法をもって支配していると言う点で一致している。
さらに言うならば情報の閉鎖性ではあの街よりもこの街の方が幾分上だ。

あの街が全てを飲み込むマフィア達の背徳の楽園だとすれば、この街は様々な、時には相互に矛盾する正義を掲げる魔法使い達の隠れ家とでも言うべきだろうか。

軽く伸びをして回りを見渡す。

汚れのない白い壁紙

シンプルな勉強机と椅子

それにデスクトップ型の最新式のパソコンが一台

本棚…中身は半分ほど埋まっていて日本語の教科書やその関連書に漫画が少し、あとは英語の軍事、経済及びコンピュータ関連の本だ

さらに大きな箪笥と全身がうつる鏡

先月までの巣穴である窓に(防犯用の)鉄格子がついた小汚ない下宿か、事務所の地下にあるコンクリートむき出しの仮眠室と違い、明るく清潔な部屋。

予定通りなら最低三年はこの部屋で暮らす事になるわけだ。

枕元の改造エアガンと着替えを持って浴室に行く。

このエアガンは一見ただの合法的なオモチャだが、気か魔力を通すと違法な威力を発揮する。
さらに威力増強用の術式付加を施したBB弾を装填すればアサルトライフル位の威力は簡単に出る。
…いまは暴徒鎮圧用のゴム弾程度しか出ない物を装填してあるが。

なんにせよ、自分の部屋の中でも手元に武器が無いと不安で仕方ない。
どこに居ようとも私はロアナプラの住人なのだと思い知らされる。

そんな事を思いながらシャワーを浴び、キッチンで水を飲む。

この部屋は三人部屋で鍵がかかる寝室が三つとリビングとダイニングキッチン、それに共用のトイレと浴室がついた俗にいうと3LDKいう奴らしい。

ルームメイトは私と同じような外様の魔法関係者が二人、一人は今日の午後、もう一人は明日の午後入居予定と聞いている。
明後日が入学式でそれまでに入寮するように定められているのだからそんなものだろう。

髪を乾かし、ここ麻帆良学園の女子中等部の制服に着替える。

私服の方が動きやすいのだが今日は麻帆良の支配者である関東魔法協会の理事にして、裏の麻帆良の最高権力者でもあるMr.近衛への挨拶がある故しかたがない。

そこからさらに改造エアガン二挺とナイフ1本を装着する。
予備弾倉は持たない。
それが必要になる状況ではそもそも一般人も殺せない弾などあっても無駄だ。

かと言ってこの街を取り仕切る魔法使いに面会するのに、公然と殺傷グレードを持ち込むのは単純な理由以外にも、相手の面子からして不味い。

従って亜空間倉庫や魔法使い社会のガンナー御用達技術である異空弾倉に頼る事になるわけだ。

装備と身支度を整え、鏡で確認する…上出来かな。

スチャッ

抜き撃ちの動作確認を行い、銃を納めて私室を出て鍵をかける。

居間に午後に入居予定のルームメイト相手に夕方まで戻らない旨をメモで残し、靴をはく。
…昔は私にとってもこれが当たり前だったという記憶は所有しているのだが、
『私』の主観では、室内では靴を脱ぐという奇妙な習慣に不思議な違和感しか感じない。

私は玄関をくぐり、正義を掲げる魔法使いたちが支配する閉鎖都市、麻帆良に繰り出した。
 
 

 
後書き
次話から暫くはもっと平和(?)な話が続きます。 
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