| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Element Magic Trinity

作者:緋色の空
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

1番のギルド


幽鬼の支配者(ファントムロード)最強の女、シュランを今度こそ倒したクロスは、真っ直ぐナツ達に向かって歩いていく。
足場はかなり悪いが、さすがはティアの弟、身体能力はかなり良いらしく全くふらつかない。

「大丈夫か?」
「おうっ!サンキューな、クロス!」
「あい!さすがクロスです!」

ナツとハッピーが感謝と称賛の声を上げるが、クロスは少し俯き・・・頭を下げた。

「・・・すまない」
「え!?」
「何が!?」
「謝る事なんてないですよ。だってクロスさんはシュランを・・・」
「そういう事じゃない」

そう言うと、クロスはギルドに目を向けた。
無残にも崩れ去り、ほぼ瓦礫と化した仕事を仲介してくれる場所であり、彼等の帰る場所。

「俺達はギルドを守りきれなかった。お前達はこれ程までに頑張ってくれたというのに・・・すまない」

申し訳なさそうな表情をするクロスに、ティアが溜息をついた。

「バッカじゃないの?」
「ティア!」

ルーシィが声を掛けるが、ティアは見事なまでにスルーする。

「アンタは精一杯、己の力を全て出し切ってギルドを守ったのでしょう?」
「・・・あぁ。だが」
「ならそれでいいじゃない」
「は?」

双子の姉の意味不明な言葉に、クロスはどこかマヌケな声を出す。
近くの瓦礫を机代わりに頬杖をつき、ティアは続けた。

「過ぎた事をどうこう言ったって、意味なんてないでしょ。アンタは精一杯頑張った。それでいいじゃない」
「・・・姉さん。だけど」

尚もクロスは謝罪の言葉を口にしようとするが、その口は開かなかった。
もう何も言うなというように、ティアがクロスの頭に手を乗せたのだ。

「よくやってくれたわ。さすが私の双子の弟ね、クロス」

口元を緩めるだけの、いつもの笑みともそうでないとも取れる表情に、クロスはぎゅっと唇を噛みしめる。
そして、口を開いた。

「・・・姉さんがそう言ってくれるのなら、嬉しいよ」







「クク・・・よく暴れる(ドラゴン)だ」

一方、ここはナツ達のいる場所とは別の場所。
そこでは幽鬼の支配者(ファントムロード)のギルドマスター・ジョゼとエルザが対峙していた。
その近くには気を失っているグレイ、エルフマン、アルカ、ミラ、ルーがいる。

「ナツの戦闘力を計算出来てなかったようだな・・・わ、私と同等か、それ以上の力を持っているという事を・・・」

そう言いながら剣を構えるエルザ。
今の彼女は一撃の攻撃力を上げる、黒羽の鎧を身に纏っていた。

「フン、謙遜はよしたまえ妖精女王(ティターニア)。君の魔力は素晴らしい。現にこの私と戦い・・・ここまで持ちこたえた魔導士は初めてだ。ジュピターのダメージさえなければ、もう少しいい勝負をしていた可能性もある」

ジョゼは不気味に微笑む。

「そんな強大な魔導士がねぇ・・・」

そして、右手をエルザに向け、かざした。

「マカロフのギルドに他にもいたとあっては気にくわんのですよ!」
「うあああっ!」

ジョゼの魔法が直撃し、エルザは悲鳴を上げる。
ドカッと壁に直撃するエルザ。

「なぜ私がマカロフを殺さなかったかお解りです?」

バッとジョゼが右腕を横に広げると同時に、エルザの左の地面からマグマのように魔力が溢れ出る。
それは至る所で起き始めた。

「絶望。絶望を与える為です。目が覚めた時、愛するギルドと愛する仲間が全滅していたらどうでしょう。くくく・・・悲しむでしょうねぇ」

そう言いながら、ジョゼは笑みを浮かべた。

「あの男には絶望と悲しみを与えてから殺す!ただでは殺さん!苦しんで苦しんで苦しませてから殺すのだァ!」
「下劣な・・・」

そう呟いて、溢れ出る魔力を避ける。

幽鬼の支配者(ファントムロード)はずっと1番だった・・・この国で1番の魔力と1番の人材と1番の金があった」

攻撃を仕掛けながら、ジョゼは語り出す。

「・・・が、ここ数年で妖精の尻尾(フェアリーテイル)は急激に力をつけてきた」

ジョゼは目を見開く。

「エルザやラクサス、ミストガンやギルダーツ、ティアの名は我が町にまで届き、火竜(サラマンダー)の噂は国中に広まった。いつしか幽鬼の支配者(ファントムロード)妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこの国を代表する2つのギルドとなった。気に入らんのだよ。元々クソみてーに弱っちいギルドだったくせにィ!」
「この戦争はそのくだらん妬みが引き起こしたというのか?」

エルザは剣を振るいながらジョゼにそう問いかける。
ジョゼはそれを軽々と避け、言葉を続けた。

「妬み?違うなぁ、我々はものの優劣をハッキリさせたいのだよ」
「そんな・・・そんな下らん理由で!」

エルザが怒りの叫びをあげた瞬間、エルザはジョゼの魔法に捕らわれる。

「前々から気にくわんギルドだったが、戦争の引き金は些細な事だった。ハートフィリア財閥のお嬢様を連れ戻してくれという依頼だ」
「う・・・く・・・」

ジョゼの言葉に呻き声をあげながら、エルザはルーシィを思い浮かべる。

「この国有数の資産家の娘が妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいるだと!?貴様等はどこまで大きくなれば気が済むんだ!」

ギ、ギギ・・・と音を立て、エルザを捕らえるジョゼの魔力が強くなっていく。

「ハートフィリアの金を貴様等が自由に使えたとしたら・・・間違いなく我々よりも強大な力を手に入れる!それだけは許しておけんのだァ!」
「がっ!」

ジョゼが魔力を上げると、エルザの拘束が強くなる。
・・・が、エルザは苦しそうな呻き声とは対照的な、挑発的な笑みを浮かべた。

「どっちが上だ下だの騒いでる事自体が嘆かわしい、が、貴様等の情報収集力の無さ、にも・・・呆れる、な・・・」
「何だと?」
「ルーシィは家出、して来た、んだ・・・家の金など、使えるものか・・・」

それを聞いたジョゼは目を見開いた。

「家賃7万の家に住み、私達と同じ、ように、仕事をして・・・共に戦い、共に笑い、共に泣く・・・同じギルドの魔導士だ・・・」

そう言うエルザの脳裏には、ナツ、ハッピー、グレイ、ルー、アルカと笑い合うルーシィの姿が思い浮かぶ。
それをエルザは遠くから眺め、ティアは興味ないと言いたげに頬杖をついて魔法書を読んでいる。

「戦争の引き金だと?ハートフィリアの娘だと?花が咲く場所を選べない様に、子だって親を選べない。貴様に涙を流すルーシィの何が解る!」

エルザの怒りの叫びに対し、ジョゼはうっすらと笑みを浮かべる。

「これから知っていくさ」

シレっと言ってのけるジョゼを、エルザが睨みつける。

「ただで父親に引き渡すと思うか?金がなくなるまで飼い続けてやる。ハートフィリアの財産全ては私の手に渡るのだ」
「おのれぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「力まん方がいい・・・余計に苦しむぞ」

怒りの叫びをあげるエルザに向かって、左手をぐっと握りしめるジョゼ。

「ぐああああああああああっ!」

その握りしめられた左手から、強力な魔力がエルザを襲う。
その空間に彼女の断末魔の叫びが響いた、その時!

「!」

エルザを拘束していた魔法が・・・何の前触れもなく、誰かが触れた訳でもなく、消えた。
ドサッと床に落ちるエルザ。

「魔法が・・・!?誰だ!?」

突然魔法が消えた事に、エルザだけでなくジョゼも驚愕する。
土煙に、1つの人影。

「いくつもの血が流れた・・・子供の血じゃ」

その人物は、ゆっくりと口を開く。

「出来の悪ィ親のせいで、子は痛み涙を流した」

その声を聞いたジョゼは驚愕で目を見開く。

「互いにな・・・」

エルザも目を見開いた。
何故なら、声の主は『ここにはいないはず』なのだから。

「もう十分じゃ・・・」

土煙が晴れ、そこから声の主が姿を現す。







「終わらせねばならん!」






「マスター・・・」

そう。
そこにいたのは彼ら妖精達にとってギルドマスターであり、親であり、家族である・・・マスター・マカロフだった。

「天変地異を望むというのか」

ジョゼの背後で怨霊の様に不気味な魔力が漂う。

「それが家族(ギルド)の為ならば」

マカロフの背後で雷のように激しい魔力が漂った。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
遂にファントム編もそろそろ終了・・・あぁ、惚れながら勝負する可愛いジュビアを書いたのを遠い昔に感じる・・・(そりゃ毎日更新してたらそうだろーよ)。
って事はもうすぐ楽園の塔編・・・あれ、シモンに泣けて泣けて・・・書ける自信が無いです・・・。

感想・批評、お待ちしてます。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧