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ワンピース*海賊と海軍、七武海と白髭。「永久の愛を」《1st》

作者:斎藤海月
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第一章
*エースとの別れ*
  雷が泣いた日。2

ミィル『これじゃあ・・・治らない・・・!!』


リノ「そんな・・・!!」


今の現実を受け止めたくなくてエースを見た時、


あたしじゃ到底分からない痛みを感じているはずなのに


肩で息をしながら優しく微笑んでいた


リノ「…エー…ス…?」


ルフィ「エース…!!」


エース「ハァハァ…大丈夫だ…」


蛆虫船長が今にでも泣き出しそうな顔で少しずつこっちへ向かって来ると


盾の外から聞こえる爆発音にミィルが身体を小さくさせた


ミィル『…リノ…』


リノ「っ……レオンを呼んで。

レオンたちに時間稼ぎをして貰う」


ミィル『分かった!!』


力強く頷いたミィルが盾の中から飛び出していった後で


エースの片手を優しく握った


リノ「どうしよう、血が…!


ミィル…早く戻ってきて…!」


エース「…もう、いい」


ルフィ「エース…何言ってんだよ…!!」


リノ「もう少しの辛抱だから…!!」


さっきまでは止まったはずの涙がポロポロ溢れて来ると


エースがもう片方の空いた手であたしの目にあった涙を拭いた


エース「…もう…いい…」


今の現状を認めたくなくてずっと我慢していた涙が溢れかえると


エースは仕方ねぇなって言ってあたしを抱きしめた


今こうやって思い返すと


どうしてあの時にもっと優しく出来なかったんだろうって思って


何も言い返す事が出来なかった


どうしてもっと傍に居てあげれなかったんだろうとか


どうしてもっとエースと話をしなかったんだろうっていう後悔の言葉だけがあたしの中で渦巻いて


抱きしめてくれるエースの手から伝わる気持ちに何も言えずにただただ泣いていた


ルフィ「エース…!!」


エース「ルフィも…リノも…今までありがとな…」


リノ「そんな事言わないでよ…!!」


『リノ!!』


あたしの声が盾の中で一瞬だけ響いた後でレオンを連れて来たミィルたちが盾の中に入ると


レオンは何も言わずにエースの後ろに回り込み、エースの身体を支えた


リノ「レオン…!!」


レオン『……』


あれだけあたしがエースと一緒にいる事を最初は反対していたレオンが


何も言わずにあたしを見た後でエースの傷跡を見た


エース「すまねェーな…レオン…」


レオン『…気にすることはない…』


リノ「ありがと…レオン…」


レオン『…ああ…』


数週間の間でレオンとも一緒にいたからなのか、


エースがレオンの気遣いに嬉しそうな顔をすると話し始めた


エース「リノ…ルフィ…」


ルフィ「…なんだ…?」


リノ「どうしたの…?」


エース「俺の…最後のって言うと…変かもしんねーけど…聞いてくれねェーか…?」


握っていたエースの手に少しだけ力が入るとあたしは何も言えなかった


ルフィ「最後って…言うんじゃねえよエース!!」


ミィル『こんなのってないよ…』


ルフィ「エースは…俺が…俺が…!!」


蛆虫船長がエースの腕を強く掴んで揺さぶると


エースはただただ何も言わずに首を横に振るだけで遠く見つめるように盾を見た


本当はわかってた


エースが手を握り返した時からエースの気持ちは何となくわかってた


エースだって〝最後〟って言いたくない


…けどそう言わないとあたしが、


蛆虫船長が今の現状を受け止めたくなくてそう言ったって思っちゃうんだ


あたしの勘違いかもしれない


それでも思い込みだとしてもそうとしか考えられない自分がいる


エース「なぁ…ルフィ…

同じ男として…俺の弟として…こんな事、言いたくはねェーけどよ…

…っ…俺の…ッ…俺のせいで…リノが泣いてたら…傍に居てやってくれ…ッ」


リノ「!」


ルフィ「…ッ…何…言ってんだよ…!!


"アイツだけは絶対に守る"って言っただろ!!


"これ以上、リノに悲しい思いはぜってェさせねえ"って言っただろ!!?」


あたしが初めてコイツに会った時は仲間を侮辱した事で怒ってて


その次からはずっと笑ったりしてた蛆虫船長が


涙を我慢してエースの腕を掴んでいた


ルフィ「そんな事言ってんじゃねーよ!!エース!!」


エース「ッ…」


ルフィ「エース!!何か言えよ…!!」


エース「頼む…ルフィ…」


涙を我慢していたあたしにはエースの声しか聞こえなかった


けど声からして分かったのはエースが無理をしていた事


エース「頼む…ルフィ…!!お前にしか…頼めねーんだよ!!」


少しだけ冷めていたエースの手が無くなった後で


エースが蛆虫船長の胸ぐらを掴んでいた事が分かると


あたしもミィルもエースを抑えた


リノ「エース止めて!!傷が!!」


ミィル『このままだと…!!』


エース「ルフィ!!」


エースは傷跡から血がどんどん流血していくとしても


気にもとめずに蛆虫船長の胸ぐらを掴んで全く離そうとはしなかった


エース「ぐッ」


口から出た血が蛆虫船長の頬に付くと


蛆虫船長は何も言わなかったけど声を上げずに泣き始めた


そんな蛆虫船長の行動にエースは嬉しそうな顔で頷くと


さっきと同じようにレオンに寄りかからせた


ミィル『…リノ…この人は…もってあと数分だよ』


リノ「ッ…エース…」


冷たくなったエースの手を両手で軽く握ると


エースがあたしを見て軽く微笑んだ


エース「少し、二人に…させてくれ」


レオン『……ああ、コイツは連れて行くぞ』


リノ「…うん」


ミィルが蛆虫船長を押して少し離れた場所へと行くと、


レオンが座りやすいように盾の外から持ってきた岩にエースが苦痛そうな顔で岩に寄りかかった


リノ「エース…!!」


エース「大丈夫だ…


リノ…今まで…ほんとにあり…がとな」


リノ「っ…」


エースが何かを気にして蛆虫船長たちの方を見ると


泣きまくる蛆虫船長にレオンはひたすら「泣くな、男だろ」と言っていたものの


レオンの言葉が分かる訳じゃないから蛆虫船長はひたすらに泣いていた


それにミィルは心配そうな顔で泣く蛆虫船長を見ていた


リノ「っ待ってて・・・こんなので役に立つのかは分からないけど・・・」


あたしはミィルと違って何でもかんでも治すことは出来ない


・・・けど痛みを止めるぐらいなら出来る


エース「・・・ああ、さっきよりはだいぶ・・・マシになってきた」


リノ「よかった・・・」


少しだけ顔色が良くなったことが分かると


例え今ここで倒れたとしても気にせずに力を使った


エース「…リノにずっと…渡したかった…ものがある」


リノ「え…?」


エース「ッ…ぐはッ…」


リノ「エース!!」


エースの右手に付いた血を見てあたしが大きな声で言うと


ミィルがあたしたちのとこへ来ようとした時に盾がミィルの行く手を阻んだ


ミィル『リノ?!』


リノ「あ、あ、あたしじゃない!!」


エース「盾が俺たち・・・の邪魔を・・・させたく…ねーみてーだな(笑)」


リノ「…//」


絶対にエースが冗談で言ったかと思ったのに


それでも来たがるミィルの行く手をひたすらに盾が阻んでいた


…どうしてこういう時だけ守ってくれるのかは分からないけど


エース「リノに渡してーもんは…これだ」


リノ「え?」


あたしが軽く首を傾げると


エースの空いた左手の中で炎が弱々しげにユラユラと揺れたかと思うと


綺麗な指輪が二つ、炎の中から出てきた


リノ「!?」


エース「前に…こういうの欲しい、って・・・言ってたろ?

・・・その前にこんなのでいいのか・・・分かんなくてよ・・・」


涙が溢れて何も言えないあたしは頷いた


あたしだけがまだエースの事を警戒していた時、


アラバスタへ向かう途中の小さな村にあった指輪のお店で


ナミとビビの三人でこんなのが欲しいって話をしてた時があったけど


まさかその時の話を聞かれてたなんて…


エース「〝高価な物じゃなくてもいい、ダイヤじゃなくてもいいから自分にあったモノが欲しい〟って…言ってただろ?」


リノ「グスッ…うん…」


エース「俺さ…リノと付き合いだした時から…何かをあげようとしても何あげればいいのか分かんなくてよ…」


あたしはエースさえいれば何もいらないよ、って言おうとしても何も言えなかった


まさかエースがここまで思っててくれてたなんて知らなくて


嬉しい気持ちで沢山だった


ナミ『え~?それってどういう意味?』


ビビ『ダイヤじゃない何か、って事ですか?例えば?』


リノ『例えば?ん~…あたしって雷じゃん?』


二人『うん/はい』


リノ『雷の形をしたモノがダイヤの代わりに乗ってて欲しいなって事』


二人『あ~…成程…』


数ヶ月前の話なのにナミとビビの会話が数日前の記憶みたいに甦ってくる


その後でエースってば妙に深刻そうな顔をしてたんだよね


その時はエースから離れる事を考えてたあたしは何も聞かなかったし、近づかなかったけど


まさか指輪のことで悩んでたなんて…


エース「この…赤く燃える炎は…俺、


それから…これは…リノだ。」


優しく笑うエースが赤い指輪をあたしの左手の中指にはめると


嬉しそうな顔より満足そうな顔で指輪を見下ろした


エース「その炎は…水に触れても…消えないんだぜ?」


指輪の上で小さく燃える炎の上に右手の人差し指を少しだけ当てると


火傷しそうな熱さじゃなくてほんのり指が暖かくなって


嬉しすぎてエースに抱きついた


リノ「エース…ッ…ありがと…!!」


エース「…リノ…」


リノ「ずっとずっと…大事にする…!!」


何度言っても言い足りないぐらいに〝ありがとう〟を言うと


エースは照れくさそうにはにかんだ


エース「そうしてくれると…嬉しいぜ…


お前は、俺の……女だ」


リノ「うん……!!ずっとずっと…大切に使う…!!」


あたしの背中にエースの大きな腕が回されると


エースが優しくだったけど強く抱きしめて


少しずつエースの腕が震え始めた


エース「リノ…このまま聞いてくれ。


…俺はもう少しで死ぬ…もう…お前の傍には居てやれない」


リノ「ッ」


エースの腕がスルリと無くなったかと思うとあたしの腕を掴み、


エースが自分のおでこにあたしのおでこをくっつけて


自分の姿が見えるようなモノをすぐに破壊したい気分だった


絶対にあたしの顔は赤いって分かってたから


エース「リノ、あん時…お前の話を聞かずに別れようとか言って…ごめんな…!!」


リノ「あたしも…嘘ついてごめんね…!」


エース「あん時…悲しかったろ…?

海軍の人間になりたくなかったって…言ってたのに俺はそんなのも知らずに…」


リノ「もう…いいの…もう気にしないで…!!」


エース「リノ…!!」


あたしがもういいんだよ、って言っても


全く聞こうとしないエースはひたすらに謝った


口から血が出て来たとしても気にせずに


抱きしめて止めようとしてもエースはひたすらに謝った 
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