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ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜

作者:カエサル
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GGO編ーファントム・バレット編ー
  58.外の決意

 
前書き
第58話投稿!!

キリト、シノン、シュウが戦う覚悟を決めた中、現実世界でも決意を決めたものたちが!! 

 


不安感で押しつぶされそうになるが、じっとその時を待ち続けた。

イグドラシル・シティの部屋から現実世界に戻ったアスナさんが戻ってきたのが一分前の出来事なのにその時間は、何倍にも長く感じる。

「アスナたちちょっと落ち着きなよ......って言っても、無駄だよね」

ソファーの隣に座るリズさんがそう声をかけてきて、アスナさんが小さく息を吐き強張った声で応える。

「うん......ごめん。でも、なんだか.....嫌な予感がするのよ。キリトくんとシュウくんが、わたしたちに《ラフィン・コフィン》のことも言わずにあの世界にコンバートしたのは、きっと何か大変なことが起きてるからだわ。ただの因縁とかだけじゃない......現実の危機、みたいなものが......」

「考えすぎ、とはあたしももう言えないな......。さっきのアレを見ちゃったら.....」

「そう.....だよね。シュウくんが言ってたこともあるしね」

シュウくんの言葉があの世界で何かが起きているということを証明している。

『テメェの目的は何だ!何が目的でプレイヤーを殺してやがる!答えろ!!』

『プレイヤーを殺している』.....この言葉が引っかかる。
まさか、SAOのようにゲーム世界で死んだら現実世界でも死ぬということなのだろうか。だが、そんなことはありえない。アミュスフィアは、ナーヴギアのように人を殺すことは出来ない。

部屋にいるアスナさん、クライン、リズさん、シリカちゃん、レイナさん、私も何も喋らずに待ち続けた。何が起きてるかをある程度知っているはずの人物を。

部屋のドアがノックされたのは、その約一分後だった。ドアが開いた瞬間にリズさんが叫んだ。

「遅ーい!」

「.....こ、これでもセーブポイントから特急で飛んで来たんだよ、ALOに速度制限があったら免停確実だよ」

開口一番、そんなとぼけた台詞を発したのは、アスナさんと同じウンディーネの魔法使いだ。ひょろりとした長身を簡素なローブで包み、マリンブルーの長髪は片分けで銀縁の丸眼鏡をかけている。
男のキャラネームは《クリスハイト》。

現実世界での名は、菊岡誠二郎。よくは知らないがお兄ちゃんや集也くんにバイトを頼んでいる人ということは知っているがその以上のことは、よくは知らない。

クリスさんが後ろ手にドアを閉めると、アスナさんがすぐに問い詰める。

「何が起きているの?」

ん、ん、と軽く咳払いする。

「何から何まで説明すると、ちょっと時間が掛かるかもしれないなぁ。それにそもそも、どこから始めていいものか.....」

誤魔化そうとし、私とアスナさんが迫ろうとすると、テーブルのグラスの陰からユイちゃんが現れる。

「なら、その役はわたしが代わります」

普段の愛くるしい表情とは違い、その顔は、キリトくんのように厳しい顔を浮かべる。

「《ガンゲイル・オンライン》世界に、《死銃》または《デス・ガン》と名乗るプレイヤーが最初に出現したのは、二〇二五年十一月九日の深夜です。彼はGGO首都《SBCグロッケン》内の酒場ゾーンで、テレビモニタに向かって銃撃を行い.....」

ユイちゃんが何が起きているかについてを話す。その内容は、恐るべきものだった。
仮想世界の弾丸が現実世界の肉体を貫き、死亡したという事件だ。

「.....各社の報道では、死亡者がダイブ中にVRMMOをプレイしていたことしか触れていないので、そのタイトルがGGOであるか否かまでは判断できません。しかし、死亡状況があまりにも酷似していることから、検案を担当した監察医務院のネットワークに侵入を試みずとも、彼らが《ゼクシード》及び《薄塩たらこ》であることの類推は可能です、ゆえに私は、六分四十秒前に《死銃》が回線切断させたプレイヤー《ペイルライダー》も、現実世界に於いて既に死亡していると判断します」

そこでユイちゃんが口を閉じ、グラスに寄りかかる。アスナさんは素早くてを伸ばすと、掌に包み込み、胸に抱いた。

アスナさんは両手の中のユイちゃんに「ありがとう」と囁きかけた。

受けたショックの大きさは、部屋にいる全員同様だ。しばし誰も喋ろうとしなかった。
沈黙を破ったのは、クリスさんの囁き声だった。

「.....これは、まったく驚いたな。そのおちびさんはALOのサブシステムの《ナビゲーション・ピクシー》だと聞いたけど......この短時間にそれだけの情報を集め、その結論を引き出したのか。どうだい君、ラー.....いや、《仮想課》でアルバイトする気はないかな?」

とぼけたことを言うクリスさんを睨みつける。すると両手をさっと持ち上げ、降参するような感じだ。

「いや、済まない。この期に及んで誤魔化す気はないんだ。おちびさんの説明は......事実だよ、全て。《ゼクシード》と《薄塩たらこ》は、《死銃》に撃たれたその時刻近辺で、急性心不全にて死亡している」

「.....おい、クリスの旦那よ。あんたがキリトとシュウの奴のバイトの依頼主なんだってな?ってことは手前ェ、その殺人事件のこと知っててあいつらをあのゲームにコンバートさせたのか!?」

バーカウンターから飛び降り、詰め寄ろうとしたクラインを、右手の軽い動きで押しとどめた。

「ちょっと待った、クライン氏。殺人事件ではない。それが、その二件の事例についてたっぷり話し合った、僕とキリトくんとシュウくんの結論なんだ」

「ン....だと......?」

「だって、考えてみたまえよ。どうやって殺すんだ?アミュスフィアはナーヴギアではない。それを最もよく知っているのは君たちだろうに。ありとあらゆるセーフティを設けて設計されてや、機械と直接リンクしていない心臓を止めることなど不可能だ。僕らは先週リアルでたっぷり議論し、最終的にそう結論づけた。ゲーム内から銃撃で、現実の肉体を殺す術は無い、と」

クリスさんの言葉に再び静寂が訪れる。わたしが静寂を断ち切った。

「クリスさん。なら、あなたはなんで、お兄ちゃんと集也くんにGGOに行くように頼んだんですか?」

クリスさん....菊岡さんに詰め寄る。

「.....あなたも感じていた.....いえ、今も感じているんでしょ?あたしたちと同じに、何かある、って。あの死銃ってプレイヤーは、何か凄く恐ろしい秘密を隠している、って」

「........」

ついに菊岡さんは、黙した。そんな中、アスナさんは、衝撃の発言を投げかけた。

「.....クリスさん。《死銃》は....私たちと同じ、SAO生還者よ。しかも、最悪とも言われた殺人ギルド、《ラフィン・コフィン》の元メンバーだわ」

「.....本当かい、それは」

「ええ。名前までは思い出せないけど、わたしとクラインは《ラフコフ討伐戦》に参加してるから。つまり.....死銃がゲームの中で人を殺すのは、今回が初めてじゃないのよ。これでもまだ、全部偶然だって言い張るつもり?」

「だ....だが.....。ならば、アスナ君は、こう主張するのかい?超能力や呪いが実在する、と。死銃はSAO時代に何らかの超常の力を身につけ、そのパワーで今また人を殺しているんだ、と」

「.....それは.....」

一瞬の間に、今度はリズさんの声が割り込んだ。

「ね.....ねえアスナ、クリスハイトって、SAOのこと知ってるの?確か、リアルでは何かネットワーク関連の仕事してる公務員さんで、VRMMOの研究がてらALOやってるって話だったけど......」

するとすぐに菊岡さんを頷いた。

「リズベット君、それはその通りなんだが、昔は別の仕事をしていたんだよ。僕は、総務省の《SAO事件対策チーム》一員だったんだ。......と言っても、対策なんて何もできない、名ばかりの組織だったんだが....」

わたしやレイナさんにはわからないSAOのこと。対策チームが何をしたのかも、《ラフィン・コフィン》のことも何もわからない。

するとアスナさんが静かに菊岡さんに語りかけた。

「.....クリスハイト。わたしにも、死銃はどうやって人を殺しているのかわからない。でも、だからと言って、キリトくんとシュウくんが過去の因縁と戦おうとしているのをただ見ているわけにはいかないの。あなたなら、死銃を名乗るプレイヤーの、現実世界での住所や名前を突き止められるんじゃないの?簡単じゃないんだろうけど、《ラフィン・コフィン》に所属していた生還者を全員リストアップして、今自宅からGGOサーバーに接続しているか、契約プロバイダに照会すれば.....」

「ま、待ってくれ。それは不可能なんだよ」

アスナさんをなだめるように両手を持ち上げた菊岡さん。

「仮想課にあるSAOプレイヤー諸君のデータは、本名とキャラクターネーム、それに最終レベルだけなんだ。所属ギルド名や、その.....殺人回数は一切判らない。だから、元《ラフィン・コフィン》という情報だけで、現実の住所氏名までは突き止めれないんだ」

「........」

言葉を失うアスナさん。

「ーーお兄ちゃんと集也くんは、きっと、その名前を思い出すために、今あの戦場にいるんだと思います」

少し震えそうになる手を体の前で握り合わせ抑え込みながら続ける。

「ゆうべ帰ってきた時、お兄ちゃん、凄い怖い顔してた。集也くんも朝あった時に凄く悩んでました。たぶん、昨日の予選の時点で気づいていたんです。GGOに《ラフィン・コフィン》に入ってた人がいること。そしてその人が、どうやってか本当にまた人を殺しているのかもしれないこと。.....だからきっと、決着をつけにいったんです。昔の名前を突き止めて、《PK》をやめさせるために」

お兄ちゃんと集也くんが何かに巻き込まれていることは、今朝の時点で気づいていた。けど、わたしは止めることはせず二人を見送った。
信じていたから......。かならず二人ならまた帰ってきてくれると......いつものように。

「バッ.......カ野郎がぁ......!!」

クラインが、叫びながら左手で力任せにカウンターへと叩きつけた。

「水くせぇんだよ!言ってくれりゃ.....ひとこと言ってくれりゃあ、行き先がどこだろうとオレもコンバートしたのによう......」

「そうですね......。でも、キリトさんたちなら言わないです。少しでも危険があると思ったなら、私たちを巻き込もうとするわけもない。そういう人です......」

泣き笑いのような顔でそう呟いたシリカちゃんに、リズさんが微笑みかけながら頷きかけた。

「.....そう、よね。昔っから、そういう奴よね....。それどころか、今の大会中にも、敵のはずの誰かを守ったりとかしてそうだしね」

「......そうよね。どこまでもお人好しな二人だからね。あり得ない話じゃないよね」

レイナさんのその言葉を聞き、全員が吸い寄せられるように壁の大スクリーンを見た。
マルチ画面のそこかしらで、銃口の眩しいエフェクトがほとばしる。

画面の右端のプレイヤーリストには《Kirito》と《Siu》の名はあり、他の出場者たちが【DEAD】ステータスになる中、彼らは【ALIVE】のまま。でも、わたしたちは誰もお兄ちゃんと集也くんのアバターの外見を知らないのだ。シュウくんみたいなアバターは、いたがそれが本当に集也くんかはわからない。

すると不意にアスナさんが訊ねてくる。

「リーファちゃん。キリトくんは、自分に部屋からダイブしてるんじゃないのよね?」

「ええ、そうです。でもあたしも、都心のどこかから、とだけしか知らないんです」

「キリトとシュウがどこからダイブしてるかなら知ってるよ」

レイナさんが手を上げる。

「ほんと、レイナ!」

レイナさんは頷く。

「千代田区のたしか.....お茶の水の病院だよ」

「千代田区の病院!?それってもしかして、キリトくんがリハビリで入院してたっていう!?」

「ああ、そうだが......」

菊岡さんが頷く。

「わたし、行きます。現実世界の、キリトくんのところに」

「あたしも行きます」

もうじっとしてられなかった。
シュウくんが......集也くんが戦ってる中でわたしにできることは、彼を支えることだ。

「じゃあ、準備してて直葉。ログアウトしたらバイクですぐ行くからさ」
 
 

 
後書き
次回、最終決戦へと近づいていく!!

死銃と最終決戦へ!


更新がかなり遅れてしまい大変申し訳ありません。
さらに今回の話もほぼ原作のまんまになってしまっております。 
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