| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

黄昏アバンチュール

作者:どるちぇ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

新入生歓迎会

6.


今日は土曜日。
一年生が入部をしてから一週間ほどたった。一年生も大分部活に慣れてきたようで、準備などの手際がだいぶ良くなっていた。

入った一年生は荒川悠人、篠宮春樹、伊藤菜月、溝口愛梨の四人だ。なかなか個性が強いメンバーだ。

土曜日は学校がないので午前か午後、どちらかに練習がはいる。ただ、今日は新歓があるので午後の練習だ。


新歓といっても、この前演技をした新歓ではなく、みんなでご飯を食べに行く、というものだ。どちらかというと大学生などがよくやっている新歓というやつかもしれない。
卒業した先輩たちも来るので普段の部活よりもたくさんの人がいてとても賑やかだ。
去年の新歓は本当に楽しかった。一年生達にも楽しんで欲しいものだ。



新歓は部活が終わったあと6時からはじまる。
場所は学校から一番近い町、三郷町だ。私たちの学校は打ち上げなど、なんだかんだを全部三郷町でやっている。そんな伝統のようなものがずっと続いているのだ。


三郷町に向かう電車の中、みんなそれぞれ好きな話に花をさかせていた。
浅尾と三浦は相変わらずゲームの話をしている。このふたりはいつもそうなのだ。ほおっておくしかない。

そして黒瀬くんは一年生にまじって、話をしていた。まだ一年生は入ったばかり、行事やテスト、学校生活が不安で仕方ないのだろう。


私はいつもどおり話に入らず窓からそとの景色を眺めていた。

「そと、おもしろい?」いつの間にか黒瀬くんがこっちに来ていた。
「おもしろいよ、毎日見てる筈なのにさぱっと外見ると全然どこかわからないの、こんなとこみたことないって思っちゃう、ねぇ、話はいいの?

「そんなことかんがえたこともなかった。でも、あるね、寝て起きたりするとどこかわかんないこと、なんか一年生先生たちの話にし始めちゃってよくわかんなくなってきたからさ」
「そっか…先生違うものね」
いくら同じ学校といっても、教わる先生は全く違ったりするので学年がちがうと話が通じない、なんてことはよくあることだ。
「ねえ、もうすぐ着くよ、ほら」
もう、地下に入って外が真っ暗になていた。
三郷町は何本もの路線が走っている大きな駅だ。地下化もされているので、地上に出るまでがまるで迷路のようで大変なのだ。


「ねぇ、どこだったかおぼえてる?あの店」
店は去年私たちがいったところとおなじ、お好み焼きともんじゃの店、宿り木だ。少し辺鄙なところにあった、お客さんも少ないせいか食べ放題なのに時間制限がないのだ。
「E5じゃね?」
「えっと…あっちか」

雑踏の中を大人数でぞろぞろと歩いていく。その上、においがつくから、と全員ジャージのままだ。目立つことこの上ない。


「あった!!」
やっと店が見えてきた。すると、店の前で手を振っている人達がいる。先輩達だ。


「お久しぶりです、結城先輩」
「先にごめんね、みんなもうたべてるよ」
「大丈夫です。すぐ行きます。」

結城日和先輩は私たちが部活を一緒にやったことのある唯一の先輩だ。二学年上なので、私たちが一年生のとき三年生、受験もあるので夏までしか一緒に活動できなかったが、私達二年生にとってはとても印象深い先輩である。
結城先輩以外にも男子が二人と女子が一人いる。今日も来てくださる、と結城先輩からメールできいていた。


中に入るともんじゃ焼きとお好み焼きのいい匂いがした。
それぞれ学年もばらばらで席に座る。折角いろいろな学年の先輩に会える機会なので、学年別には座らないようにしよう、という先輩方の配慮だった。

とりあえず私は黒瀬くんと一年生、そして結城先輩の席に座った。
とりあえずメニューを頼んでしまうと話が始まった。

「どうして体操部にはいったの?」
「昔やっていたので」と言ったのは溝口さん「経験者なんだ、それは有利だね」
「新歓にひかれて」と言ったのは伊藤さん。「やってればすぐにできるようになるよ」「本当ですか?」「ちゃんと練習すればね」といって結城先輩は笑った。

簡単に謂うが結城先輩は経験者、その上本当に体操が上手い。先輩のようにはいかないよ、と私はこっそり二人に釘をさす。

もんじゃ焼きのもとも運ばれてきて、全員で焼き始める。そうすると食べることに忙しくなって話すどころではなくなってしまった。
この宿り木は安い分、焼くのはセルフサービスだ。食べるのと焼くのに忙しくて、話す暇などなかった。


みんな大体食べ終わってしまうと、またみんなで話始めた。
ここで必ずでる話は恋バナ、というやつだ。
みんなかならず先輩に恋人がいるかどうかを聞きたがる。まあ、私達も去年先輩に聞いたりしたのでなんとも言えないのだが…

「黒瀬先輩って彼女いるんですか…?」
「…う、うん、まぁ…」
「やっぱり!!先輩かっこいいですもんね、いいなー…どんな人ですか!?というか、誰ですか!?」
もう、1年生たちは本当に楽しそうだ。黒瀬くんはたじたじだ。
「まあまあそこはね…」
「莉子でしょ?(あずま)、E組の」
「なっ…」してやったりだ。黒瀬くんの焦る顔はみているとなんだか楽しくなってしまうのだ。
「そういう和泉さんだってさ、いるじゃん彼氏」
「まあ、そういうことにはなってるけど、君たちみたいにいちゃついたりしてないし、ほとんど会ってないし」
「意外とやるな、お主も」
気がつけば黒瀬くんは酔っ払った先輩たちに絡まれていた。彼女がいると言う話は先輩たちにさらに勢いをつけさせてしまったようだ。そして、黒瀬くんは先輩たちに攫われていった。


「で、どんなひとなんですか?黒瀬くん先輩の彼女って」
「残念ながら良く知らないんだよね」
「そうですか…というか、先輩彼氏いたんですか!?」
「一応ね…友達みたいな感じだよ、そんなに頻繁にあったりしないし、二ヶ月に一回くらい」
「それ、自然消滅じゃないですか…?」
「そういうわけでもないんだよね、メールとかそんなにするわけでもないし、よくわかんない」
「でも、羨ましいです、私も欲しいなー彼氏」

「他の一年とかは?どう?」
「「ないです、絶対」」
「それに、彼女いるんですよ、篠宮って」
「ほんとに…やりおるな、あいつめ。でもなんだかわかるようなきもする」
「顔はかっこいいですものね、顔は」
「みてるみてる」と結城先輩が笑った。


時計を見るともう八時になっていた。
「そろそろ帰ろうか」
「あ。お会計」と言ってお財布を出そうとする一年生を制する。
「今日は、わたし達のおごりだから」
去年からこれがいいたかったのだ。

「お、俺が言いたかったのにー」いつの間にか浅尾が片付けを終えていた。
本当にあの二人、今日は存在感が薄かった。



実際には大体は先輩が払ってくださるのだけど、半分くらいはわたし達も払っているので、おごりだと言ってもいいはず…だ。

先輩たちはもっと遅くまでいるそうなので、お金を払って先に店を出る。
外まで結城先輩が送りに来てくれた。

「今日はありがとうございました。」
「いいのよ、また、練習いくからね」
「ありがとうごさいます、お疲れ様でした」


駅に行くと、それぞればらばらになってかえった。私と黒瀬くんと、溝口さんは途中まで一緒に帰った。

こうして、新入生歓迎会は終わった。
一年生達はちゃんと、楽しめただろうか…?









 
 

 
後書き
まだ、今までの話の編集をしています。
一話分を読みごたえのあるものにしようと、頑張りました。
今回は長くかけたかな?でも、その分時間がかかってだめですね… 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧