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ドラゴンクエスト5~天空の花嫁……とか、

作者:あちゃ
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第13話:身内の事なんだから、重い腰上げろよ!

(ドワーフの洞窟)

「エルフのお嬢さんが来たと言う事は……やはり孫の事ですかな? ザイルがしでかした例の事件ですかな?」
俺の目の前に居るアメリカ映画に出てくるバイカーギャングのボスみたいな、厳つい老人が問いかけてくる。
ドワーフだから背は低いのだが、その体付きが凄い。筋肉モッリモリ……

「はい。貴方のお孫さんが事件に関わってると噂を聞いたので、その調査に伺いました。事実でしょうか? もし事実なら、何故そのような事に……」
老人の見た目にビビッちゃってる俺の代わりに、ベラが礼儀正しく話しかける。
どうして俺の時は、こんな風に礼儀正しく話しかけてくれなかったんだろう?

「儂の孫が……ザイルが関わってるのは事実です。理由は妖精の村の村長への恨み……いや、逆恨みからです」
「さ、逆恨みとはどういう事ですか!?」
俺……原作の時から思ってたんだよね。

この爺さんがザイルにちゃんと説明しとけば、こんなアホ現象は起きなかったと……
礼儀正しいベラに、丁寧に経緯を話す爺さんを眺めながら、今回の事件がめんどくさく感じだしてる俺ちゃん。

「……ですが、ポワン様はお爺さんを追い出してはいないでしょう!?」
「えぇ……ですから先程も申し上げました。ザイルの逆恨みなのだと! それに儂は追い出された訳ではない。先代の村長に自ら申し出て、“鍵の技法”を生み出した儂を追放処分にしてもらったんです」
おや、新事実か?

「偶然とはいえ、簡単な錠前なら開ける事の出来てしまう“鍵の技法”を生み出した儂を、村から追放する事で“鍵の技法”自体に悪のイメージを植え付け、それを手に入れようとする者を悪人に見せる。そうする事で本当の悪人以外、“鍵の技法”に近づかなくさせ守りやすくしました」

えー……
つー事は、下手に“鍵の技法”を手に入れると、妖精さん達からは悪人扱いされちゃうのかな?
イヤだなぁ……大人になって再度妖精の村を訪れたら、周囲から白い目で見られるのは勘弁してほしいなぁ……

「人間の少年よ! 妖精達の姿が見え、モンスターを共にする事が出来る少年よ! 君になら“鍵の技法”を安心して託せるだろう……この洞窟の奥に封印してあるので、それを使ってザイルに気付かせてやってくれ! あいつは勘違いをしているだけなんだ……どうかそれを気付かせ、助けてやってくれ!」

勝手に押し付けるなよぉ~……
俺だってそんなのイヤだよぉ~……
それに黒幕は『雪の女王』なんだから、“鍵の技法”より戦力をくれよぉ~……

「それはお断りさせてくださいお爺さん。俺に“鍵の技法”は荷が重いですよ……それにお孫さんを気付かせるのは俺の仕事じゃありません。それは家族であるお爺さんが行うべき事ですよ。俺達と一緒にザイル君の下に行き、彼に真実を告げ気付かせてあげましょうよ!」
そう……そして俺の戦力の一部になれ。その筋肉を俺の為に存分に役立てよ!

「しかし儂はもう歳で……とても“氷の館”まで行けるかどうか……」
ふざけんなよ! 筋骨隆々のそのボディーがあれば、俺達が徒党を組んで進撃するよりも、遙かに難易度が低くなるだろう!

「でも俺は“鍵の技法”を受け取る気がないんです。信用してもらってる様ですが、何時か悪用してしまうかもしれない……そんな重圧には耐えられないんです! でも生み出したお爺さんなら、“鍵の技法”の封印を解かなくても使用できるはずですから……」
そして俺の戦力になれ!

「……………」
爺さんは目を閉じ天を仰ぎながら考えてる。
良いんだよ考えなくても。良いんだよ原作なんて無視しても。
主人公である俺への危険度が下がれば、それが一番良い事なんだよ!

「少年よ……確かアルス殿と申しましたな?」
「あ、はい。アルスです」
出会って早々に自己紹介したのに、年の所為で忘れそうになったのか?

「君は清い心の持ち主のようだ……封印を解き危険度を上げることなく、今回の事件を解決させようと試みる。分かりました、儂は貴方に賭けてみましょう! 儂自らがザイルの下に赴き、この愚かな行為をやめるよう説得してみましょう!」
しょっしゃぁー! これでザイルが暴れても、爺さんパワーでガツンとKO!
雪の女王が相手でも、俺ちゃん安全に高みの見物!

「ところでお爺さん……先程仰った『氷の館』って何ですか?」
「ん? おぉそうでしたな! 氷の館とは……ザイルが立て籠もってる秘密基地の事です」
秘密基地って……ガキか!?

「何故……お爺さんはザイルがそこに隠れてるって知ってるんですか?」
「うむ……事件が起きて直ぐに、ザイルが一度だけ帰ってきてな……『爺ちゃん。もうすぐ爺ちゃんの汚名を晴らしてやるから! 俺が氷の館で全てを解決してやるから!』と叫んで出て行ったのだよ。だからそこに居るだろうと……」

愕然としたね俺!
知ってて何故に何もしないのかって!
『老体だから何も出来ないんですぅー』って傍観してないで、孫の説得にくらいは行こうよ!
きっと誰かが何とかしてくれるなんて思ってないで、身内の恥として事件解決に尽力しようよ!

「ではお爺さん……私達と一緒にお孫さん(ザイル)を説得し、春風のフルートを取り戻しましょう! 素直にフルートを返してくれれば、きっとポワン様も寛大な心で許してくれるはずです」
俺なら許せないな……これ程大事(おおごと)になるまで放置しておいた、このジジイを許すことは出来ないだろう。

「おぉ……ポワン様も許してくださいますか!? そうであるのなら儂も頑張らねばならないでしょう!」
そう言うと爺さんは“よっこいしょ”ってな感じで立ち上がり、部屋の隅に立てかけてあった『バトルアックス』を手に取り、旅支度を開始する。

正直……バトルアックスを見るのは初めてだ。
だからアレが本当にバトルアックスなのか判断できない。
見た目はバトルアックスなんだよ……でもね、大きいんだよね。

全長150センチ……きっと重さは10キロ以上あるだろう。
背の低いドワーフの爺さんの倍はある大きさ。
それを軽々と片手で扱ってる爺さん……何が『儂はもう歳で……』だよ!?
そんな化け物戦斧を扱えるんだから、俺達必要ねーだろが!

チラリとベラの事を見たのだが、俺の持つ疑問など微細も感じておらず、共に旅立つ事になった新戦力を、輝く瞳で見詰めている。
きっと馬鹿なんだろうなぁ……そうじゃなきゃ老け専筋肉フェチだろう。

「お待たせしました。それでは氷の館へ参りましょうぞ!」
「はい! 頑張って事件を解決させましょう。そうすればお爺さんも、また村で暮らせるようになると思いますから!」

うわぁ、どうしよう……今にも抱き付きそうな勢いで、ベラは爺さんに近付いて行く。
どうやら彼女は老け専筋肉フェチみたいだ。
だから出会い頭から対応が違ったんだ……俺は真逆のタイプだし、全然態度が違う理由に納得がいくよ。

折角可愛い顔なのに残念で仕方ない。
俺に惚れろとは言わないけど、もっとお似合いな男だって居るだろうに……
これならサンタローズのシスター……俺の事を冤罪でビンタしたシスターの方が、よっぽど男の趣味は良い!

「ほらアレス…… 早くザイルのとこまで行くわよ! ボーッとしてないでよね」
爺さんと共に出口に歩むベラは、振り返り俺を急かしてくる。
ピタリと爺さんに寄り添いながら急かしてくる。

俺にはビアンカが居るから良いけど、勿体ないよなぁ……



 
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