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ドラゴンクエスト5~天空の花嫁……とか、

作者:あちゃ
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第12話:心ない言葉に心は傷つく

(妖精の世界)

子供の頃は雪が降ると嬉しくてはしゃいでた。
大人になって雪の邪魔さを理解し、観光地(スキー場とか)以外での雪を嫌う様になった。
身体は子供だが頭ん中は大人な俺は、現在進行形で雪が大嫌いになっている。

寒いわ歩きづらいわで良い事なし!
それに荷物までも増えてしまい、俺の動きを制限する。
まぁ荷物というのはチロルなんだけど……

どういう事かというと、素足(肉球?)のチロルには、雪の中を歩くのは拷問だろうと思うんだ。
最初はね、外的刺激に平気そう(鈍感?)なスドー君の上にチロルを乗せて、この豪雪地帯を突き進んでたんだけど……
スドー君の移動の仕方が、小刻みジャンプなんだよね。

つまり、雪が深くて摺って進めないから、ジャンプしながら移動してんだよ。
考えてみ……そんな物の上に乗ってたら酔うよね!
ゲロゲロに酔った状態で敵が出現してくると、チロルってば俺以上に役立たずなんだ! いや、俺も同じくらい役に立ってないな……まぁそれは良いとして!

妖精の村を出て10分で大ピンチだぜ!
目を回してるチロルを抱き上げ、ダッシュで村まで逃げ帰ったよ。逃げ足だけはチャンピオンクラスだからね!
そして色々考えたんだ……この事態をどう乗り切るか。

一番良いのはチロルに靴(またはそれに類する物)を穿かせて、雪道での移動を可能にする事なんだけど……
チロルの武器って爪じゃん!
攻撃力激減なんだよね……

それに俺……お金持ってないし。モンスターを自力で倒した事ないから、お金を手に入れた事がないんだ。
永遠の冬を回避する為、こんな子供が頑張ってるんだから、妖精の村内では買い物ただにしてくれても良いと思わない!?
連中、金取んのよ!

だから、まだ普通の猫と変わらない大きさのチロルを俺が抱っこし、村内で仕入れた情報に従い雪の中を西へ進む俺達なのです。
敵が現れたらチロルを離し、存分に戦って貰ってます。

さて、何で西に向かっているかというと……
妖精の村で集めた情報に“西に住むドワーフの孫が関係しているらしい”的な事を言う人が居たから。
まぁ複数人の情報を整合させたら、この情報に辿り着いたんだけどね。

俺は元々答えを知ってるし、即座にその情報が真実であると言い、ベラを納得させてドワーフのとこへ向かってます。
出会いは悪かったけど、実は良い()だから助かってます。
この寒い土地でギラを使えるのは、本当に便利ですしね!



(ドワーフの洞窟)

雪原を抜けドワーフの住む洞窟に辿り着いた俺達は、ここまでの寒さに大分まいっている状況。
洞窟に着くなり用意しておいた薪等にベラのギラで火を点け、取り敢えず暖をとってます。
本当は直ぐにでも奥に行きたいけど、身体を温めないと動けそうになかったから……

「ところでアルスって不思議な子よね」
何だ突然!?
とっても無礼な事を言いそうな雰囲気……この()ってばKYだからなぁ。

「私ね、あの村に……サンタローズに1週間程前から居たんだけど、貴方の事を最初に見た時は驚いちゃったの。丁度2日目だったんだけど、モンスターを連れて歩いてるじゃない! だから近付くのが恐くて、私の事を見つけてくれる人に出会えるのが遅くなっちゃった」
それはポワンより託された任務が遅延してしまった責任を俺に擦り付けてるのか?

「モンスター=悪い子って決め付けてたからダメなんだよ! チロルもスドー君も俺の友達で、凄く良い子なんだからね!」
見た目で勝手に判断して、責任を俺に押しつけるな!

「うん。それは分かったわ……今ではもう大丈夫。村の人達の会話から、チロルとスドー君が悪い子じゃないのは確認したから。それにアルスの事も色々聞いたしね……」
俺のこと? 何だろう……気になるなぁ。

「村の人達は俺の事を何て言ってたの?」
「き、聞かない方が……ほ、ほら。人の噂なんていい加減でしょ!?」
何で焦ってんだよ!? 俺の評価を聞いてるだけなのに……

「……でも、ベラは人の噂を当てにして俺達の事を安全だと認識したんだろ? 非常に気になるんだ……村人達は俺の事を何て言ってたの!?」
焚き火を挟み対面していたベラの横に俺は身体を移動させ、彼女の瞳を覗き込むように問い詰める。

「えっと……その……わ、私が言ったんじゃないわよ! そこんとこ勘違いしないでよね!」
「何だよぉ……喧嘩売られても、非力だから買えないよぉ……」
何やら言い訳ぶっこいて、ベラは俺の事を語ってくれる。

「端的に言うと、アンタの村人からの評価は……“お父さん(パパス)の頼りない息子”って事らしいわ。お父さん(パパス)は色々問題を解決させ頼りになるけど、その息子は弱々しく問題を起こしてる存在……モンスターを連れ帰ってきた時は皆さん驚いたみたいだけど、弱すぎてモンスターにも同情されてるんだって納得してたわ。数日前に、アンタが一人で洞窟に入り大騒動を巻き起こした事が、今の評価へと繋がってるみたいね。あぁ、それと……アンタんちの前の井戸端で焚き火している男性が言ってたわ。『何時も手鏡を持ち歩き、身形をチェックするナルシスト……イタイ子だよなぁ』って……」

よ、予想以上だ……
皆さんから“情けないガキ”と思われている事は薄々感づいてたけど、6歳児相手にそこまで酷い感想を持つなんて……
俺はガッツリ落ち込み項垂れる……

「あ、あの……その……ごめん……」
ベラが悪い訳ではないのだが、気を遣って謝ってくる。
それが更に俺を落ち込ませるんだけどね……

「ンナァン」
でも、チロルとスドー君が俺に寄り添い、温かい瞳で慰めてくれた。
そうだよね……今はまだ活躍してないけど、ラインハットに行きヘンリー誘拐を阻止すれば、俺の評価も上がるよね!
だって俺には、チロルとスドー君がついてるんだもん!

「大丈夫だよチロル……ありがとうスドー君。俺は大丈夫だから……二人が居てくれれば勇気100倍だから」
柔らかいチロルを抱き上げ、堅いスドー君の身体に頭を付け、二人の存在を強く感謝する。

「あ、あのぅ……凄いじゃん! アルスってば二人に凄く好かれてるじゃん……だ、だからかなぁ……私たち妖精を見る事が出来たのは!?」
泣きそうな俺を見て、ベラが一生懸命フォローする。
俺が聞き出した事だからベラに対して怒りはないし、そんなに気にする必要はないのだけど……

「ありがとうベラ……」
俺はベラの心が嬉しくて、彼女の身体に抱き付き礼を言う。
しかし……彼女の心地よい香りと柔らかさに、思わず理性を失ってしまい、彼女の胸に顔を埋め頬摺りしてしまった。

「きゃぁエッチ!」(ゴスッ!)
勿論そんなセクハラ行為を彼女は許すはずもなく、力任せに後頭部を殴られ地面とディープなキスをする事に……

「シャァー!!」(ズズズズズッ)
それを見たチロルとスドー君が、完全威嚇体制でベラに迫ってゆく!
「ちょ……私が悪い訳じゃないわよ!」
その通り、ベラは悪くない。スケベ心が勝ってしまった俺が悪い。

「やめてチロル、スドー君! 俺が悪いんだ……思わずベラの胸に顔を埋めちゃった俺の所為なんだ!」
慌てて起きあがり二人を押さえ込む。
まだ後頭部がズキズキするけれど、二人にベラを攻撃させる訳にはいかないからね。

だって、彼女のギラは便利だもん!



 
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