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モンスターハンター ~厄災の狩人達~

作者:島原
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ロノフィンは何処に?
明星の英雄
  ロノフィン組②

 
前書き
風邪っぴきの中ロノフィン組続きでおます(´‘ω‘`) 

 
「…ん、っくぁ~よく寝た。」

陽光差し込む中、目を覚ましたロギア
上質な毛皮で作られた布団から起き上がりまず目に入ったのは

「…。」

先日テッツイ加工工房で強化してもらった幻夢悲壮刀【黒力白夢】

『―よいか?この刀を持ったまま、古龍に憎悪を抱けばオヌシの感情は飲まれ、死ぬことになるぞ。―』

ロギアの脳裏にテッコウの言葉がフラッシュバックした
本来神器として祀られるべき物、それを扱っている自分。
黒力白夢に自分を重ね合わせようとしてもできない。

「やめよう。朝から葛藤するとその日が暗くなっちまう。」

考えることを諦め、別の方を向いた
中々凝った造りになっている部屋
何かの皮に轟竜の鱗が散りばめられた物が壁紙代わりに使われている

「あ、起きてましたか。」

何者かの声を聞いてその方を向くと

「おはようございます、ロギアさん。」

違う部屋に寝ていたワーノルドが部屋にやって来た
先ほど起きたらしくまだ寝間着に身を包んでいた

「どうします?今日にでも捜索に出ますか、ロノフィン。」

「いや、まずは情報収集だな。アルフレッドの話だけでは情報量に乏しい。」

「確か…ここドンドルマとフラヒヤの間でしたっけ?」

「ああ、地図で言うところのな。そしてその二点を直線で結んだ線上に存在するんだそうだ。
 そこでガムロスを見たという目撃情報が多数あったそうだ。」

ワーノルドと話をしながら準備を始めるロギア

「まず、メゼポルタ広場へ行こう。そこならこのドンドルマ周辺を行き来しているハンターも多い。
 早く準備をして行こうじゃないか。」

「あ、はい。」

ワーノルドは自分の部屋へ戻っていった。







「あれ?ロギアさん、ロビー装備持ってたんですか。」

「ん?ああ、仕事柄こういう装備も着なくてはならんからなあ。」

ロギアが装備しているのはギザミLシリーズ
鎌蟹と呼ばれるショウグンギザミの素材を使ったシリーズ防具である。

「ああ、そういえば思い出しましたよ!」

「ん?何だ。」

「最近セクメーアとラティオの方で見たことも無い甲殻種が目撃されるんだそうです。」

「ほう、学会はもう名前をつけてあるのか?そいつらに。」

「ええ。確か、『銃蟹 テンノウガザミ』と『岩殻蟹 サイジンタビラ』でしたかね…。」

「そうか…一刻も早く対峙してみたい物だ。よし、まずは交流区へ行くか。」

「分かりました。」

ロギア達は退館手続きを済ませ、メゼポルタ広場へと向かった。






「うぉ~、さすがはドンドルマの街!活気だってるなー。」

ロギアはメゼポルタ広場の人の多さに驚いていた

「ん?ワーノルドはドンドルマに来たことないのか。」

「ええ、村を転々とする生活ですからこんな街には来た事がないんです。」

二人は話しながら調合屋の前を通り過ぎる
そしてやってきたのは

「なんです…?ここ…。」

到着したのは大タルが置かれただけの場所

「ああ、ここは腕相撲会場だ。この辺のハンターは暇な時に他のハンターと腕相撲をして遊んでるんだよ。
 稀に骨折者が出るがな…。」

「どんだけ脆いんですか…。」

その場でしばらく話し込んでいると

「よぉ!ロギアじゃねえか、どこ行ってたんだ。」

知らないハンターが数人声をかけてきた。

「おお、お前らか。ちょうどいい、ちょっと聞きたいことがあるんだ。」

「何だ?遠慮なく言ってくれ。」

「お前ら、古の都ロノフィンって聞いたことあるか?」

ロギアはストレートに質問した。

「ちょっ、いいんですかロギアさん!?そんなストレートに聞いちゃって!」

慌ててワーノルドが小声でロギアに聞いた。

「別に構わんだろう。どうせ隠し通せるものでは無いしな。」

落ち着き払ってロギアが返す

「ロノフィンかー、聞いたこと無いなー。」

「すまねえ、俺もだロギア。」

ハンター達はロノフィンの所在を知らず、首を振っていた。
礼を言い、次を当たろうとロギアが口を動かし始めたその時、

「カルヴォだったら何か知ってんじゃねーか?」

一人のハンターが別の人物を挙げた。

「カルヴォか。確かにアイツだったら何か知ってそうだな。」

ロギアも、カルヴォという人物は知ってるようだった。

「そうか、今カルヴォはどこに居る?」

「二十分くらい前に決戦場へアカムトルムを狩りに行くと言って出発してったからもうそろそろ戻ってくる頃だろう。」

「そうか、ありがとう。ああ、紹介が遅れたな。ワーノルド、こいつらは俺が入ってる猟団『古龍バスターズ』の仲間だ。
 左から順に太刀使いのドレイク、弓使いのサラム、ハンマー使いのオルテカだ。」

ロギアが淡々と紹介を済ませる

「えっ、えー!?」

「んで、皆。こいつはワーノルド。狩猟笛を使ってるヤツだ。」

「よろしくな、ワーノルド。」

「こちらこそ…。」

初対面であるにも関わらず、親しく挨拶を交わしたワーノルドとドレイク達。

「ほぉ~、戦神埜宴を使ってるのか。俺もそいつは使ったことあるが、中々癖のある狩猟笛だったな。」

ハンマー使いのオルテカが言った。

「まあ、武器の話はほどほどにしよう。そろそろカルヴォが帰ってくる頃だ。」

サラムが話を中断させた。





それからほどなくしてメゼポルタ東大手門にカルヴォが帰ってきた。

「おっ、ロギアじゃないか。どこに行ってたんだい?」

「わりぃわりぃ。あれ?武器変えたのか。」

「ああ。前の双剣では使いにくくってな。で、用件は何だい?」

「それなんだが、カルヴォ。古の都ロノフィンというのを聞いたことはあるか?」

「う~ん…。噂は耳にしたことがあるが、所在までは分からないな。
 すまないな、役に立てなくて。」

「いや、その話が聞けただけで万々歳さ。」

「何故だい?と聞きたいとこだがここで立ち話もなんだし、猟団部屋へおいでよ。
 っと、そちらのハンターさんは…。」

「ああ、今一緒に行動してるワーノルドだ。」

「どうも。」

「そうか。ロギアと一緒に行動してるということはもう猟団仲間も同然だな。
 ちょうどいい、君も来ると良いよ。」

「(今度は置いてかれずに済みそうだ…。)」

内心ほっとしたワーノルド。










猟団部屋に入ってすぐ、カルヴォは着替えに戻っていった。
待つこと数分

「待たせてしまってすまない。少しロビー装備に変えるのに手間取ってたんでね。」

「あ、いえおかまいなく…!?」

ワーノルドは自分の目を疑った。

「カルヴォさんって女性だったんですか!?」

「あー、言ってなかったか。ごめんね。」

「カルヴォは見た目がゴツい装備が好きだからな。てかその割りにロビー装備がアスールってどういうことだよお前…。」

「ん?それは、好意を寄せてる人の前ではアピールをするものだろう?」

「冗談キツいぜカルヴォ…。」

傍に擦り寄ってきたカルヴォにロギアが冷や汗を掻く。

「それより、なぜ古の都ロノフィンを探してるんだ?」

「ああ。それだが、俺が今少し足を伸ばしているエイン村という所が古龍災害の予兆を受けてるんだ。
 北エルデ地方に伝わる古い伝説のようなのだが…。」

「ああ、北エルデの古い言い伝えなら聞いたことはある。一応これでも学者の端くれでね。」

カルヴォは少し自慢げに言った。
そんなことには気も留めずロギアは話を続ける

「で、その北エルデの災厄が起こるまで後十六日ってとこだ。」

「なるほど。確かにいつだったか聞こえてきたな、龍の宴が。」

カルヴォが少し俯き考え始めた。それから数分の後

「よし、決めた!私もその古龍災害とやらのキーパーソンとなろうじゃないか。」

「ちょっ、待てよカルヴォ!」

突然、話を黙って聞いていたドレイクが立ち上がった。

「お前までどっか行っちまったらどうすんだよ!
 次の入魂祭どうすんだ!勝てる気がしねえぞ!」

「あの、入魂祭って何ですか?」

ワーノルドがロギアに尋ねる。

「ああ、入魂祭は狩人祭の内の一つでな。
 具体的に言うと狩人祭は、登録祭、入魂祭、集計祭、褒章祭の順に進んで行く大きな祭なんだ。
 何でも祭りにすれば良いってもんじゃない、と参加しない猟団も多いんだが…。
 で、個々のモンスターに魂数というのが決まっていてな。当然強い個体種に多くの魂が振り分けられてる。
 入魂祭は条件を達成し、実際に入魂をする祭なんだ。
 まあ、詳しいことはまたドンドルマに来た時に話そう。」

「ああ、はい。」

「別に、入魂祭に私とロギアだけが参加するわけじゃないだろう?
 それに、君達だってちゃんと実力があるんだから気合いでなんとかできるだろう。」

「うぐっ…。」

痛い所を突かれたドレイク。
更にカルヴォが追い討ちをかける。

「それに、祭なんだから勝とうが負けようが関係ないだろう。
 楽しんだ者勝ちだし。」

「チッ、分かったよ。好きにして来い。」

ドレイクが折れた。

「その代わり、条件を付ける。エイン村の土産、山ほど買ってこいよ!?」

「ああ、分かってるさ。」

ドレイクは猟団部屋から出て行った。

「さあてロギア。積もる話は山ほどあるが、それもこれも今からのコトでチャラにしようじゃないか。」

「おい、待てやめてくれよカルヴォ。冗談だろう?…そうだ、ワーノルド今から」

「ワーノルド…だったかな?君はこのドンドルマの街を色々見て周ると良いだろう!
 ここには面白いところが山ほどあるよ!」

カルヴォから街見物を進められ戸惑うワーノルド。
ロギアは凄い視線でワーノルドを睨んでいた。
その視線をどう捕らえたのか

「それもいいなぁ…、じゃあロギアさん。俺ちょっと街見物にでも行ってきます!」

あっさり承諾してしまった

「おい、ちょっと待てってワーノルド!」

「はいはい、悲鳴なら奥の部屋で聞くよ。」

「おいっ、誰か助け…アッー!」

ロギアの叫び声をよそにワーノルドは古龍バスターズの猟団部屋を後にした。






「…すげぇ、すげぇすげぇすげぇ!」

ワーノルドは改めて街の景観に歓喜した。

「家具屋に調合屋、食材屋に雑貨屋。釣り場に何か怪しげなテント…。
 どれも今までに行った村には無い物ばかりだ!」

メゼポルタ広場を練り歩くワーノルド。
ここには書いてないが、ロギアの叫びは五分おきにワーノルドの耳に届いていた。
だが、戻るに戻れず困りに困った末、今に至る。

「おや?あれは…。」

ワーノルドが発見したのは先ほど猟団部屋から出て行ったドレイク。

「お、ワーノルドか。」

「ああ、どうも。…何してたんですか?」

「いや、今は登録祭だから申請してたんだ。団長のギルドカードを借りてな。」

「いいんですか?そんなことしちゃって。」

心配するワーノルドをよそにドレイクは手続きを済ませた。

「別にいいんじゃないかな。本人の意思だし。」

「そういえば、団長って誰なんですか?」

「んあ?聞かされてないのか。団長はお前がここまで一緒に来たヴォルカノ=ロギアだよ。」

「あ、そうだったんですか。」

そんなに驚かないワーノルドにドレイクは関心を持った。

「ほう、あまり驚かないんだな。」

「なんとなく察しはつきましたからね。」

笑いを交えながら言う。

「気に入った!今から何かクエストに行こうじゃないか。」

「いいですねぇ、行きましょう行きましょう!」

ワーノルドとドレイクはすっかり意気投合し、クエストを受注しに行った。



「アッーーー!」



ロギアの叫びをよそに。







「この依頼なんか面白そうじゃないか?」

ドレイクが一つのクエストをワーノルドに勧めた

「んーどれどれ…。依頼主は古龍観測局の重鎮、依頼内容は…
 セクメーア砂漠の一角にて銃蟹が目撃されたのじゃが、
 今ギルドナイトは出払っていて調査に出る者がおらん!
 誰か向かってくれんか!?
 ですか…。」

「目標は最近見つかった銃蟹テンノウガザミ一体の狩猟。
 やってみたくはないか?ワーノルド。」

「いいですねえ。これにしましょう!」

二人はクエストを受注し、メゼポルタ東大手門の前に立った。





「でっ、伝令!伝令!北エルデ地方より正体不明のモンスターが飛来!
 古龍観測局、応答せよ!北エルデ地方より正体不明モンスターが飛来!」

「落ち着け、こちらでも把握している!
 バリスタ射撃隊全隊臨戦態勢をとれ!街に待機しているギルドナイト全員に出動命令を出せ!」

「だめです、団長!現在ドンドルマの全ギルドナイトは他地域の調査に向かっており一人もいません!」

「クソッ!こんな時に…。何をしている!撃龍槍の昇圧作業を急げ!」

「ハッ!」





「…大変だな、古龍観測局というのも。」

「ええ、そうですね…。」

ワーノルドとドレイクはメゼポルタ広場を出た。







「アッーーーーーー!」









砂漠ベースキャンプ
広大な砂漠の中心にある狩りの拠点。ネコタクから二人のハンターがこの地に足を下ろした。

「着いたな、セクメーア砂漠。」

「意外と短時間でしたね、移動時間。」

「ここからは二手に分かれて探そう。俺はエリア二の方を、ワーノルドは地底湖の方を探ってくれ。」

「分かった。」

二人のハンターはそれぞれ動き始めた。







「…いないな、ここでは無いか。」

エリア二。灼熱の太陽が照りつける砂漠地帯。ここではガレオス等の小型魚竜種やヤオザミ、ゲネポスなどが生息している

「何も居ないな…。」

はずなのだが今日はモンスターの気配はおろかヤオザミの食事跡すら見当たらない。
オアシスの方へ足を運ぼうとしたその時

「この匂い…、ペイントボールか。」

ドレイクが微かに流れたペイントボールの匂いを嗅ぎ取った。

「あそこの日陰のエリアから流れてきてるという事は、地底湖の方からか?」

ドレイクは踵を返し、エリア四へと向かった。






「うっわあぁあぁぁ!」

ワーノルドは慌てて緊急回避をする。
だが、敵は容赦なく次の攻撃を繰り出す。

「このままじゃ持たないっ!」

敵の足元を回転回避で通り抜けるワーノルド

「悪い!待たせたなワーノルド!」

「ドレイク、危ない!」

「ぬおわっ!?」

前方から飛んできた物体を緊急回避でかわすドレイク。

「あっぶねえ…、何だあいつは!?」

ドレイクは物体が飛んできた方を見て驚愕した。
青い触角、暗緑色の甲殻、轟竜の頭殻をヤドとしているその姿。
何より驚かされたのはそのモンスターの爪。

「なるほど、爪の間にあるあの穴から飛ばしてやがったのか。」

ショウグンギザミのあの鎌のような爪が片方の腕に対になって生えており、その間に弾丸を発射する穴のようなものが確認できた。
そんな腕がやはり、他の甲殻種のように対になっている。

「アイツが…アイツが銃蟹テンノウガザミか!」

熱砂の狙撃主テンノウガザミ。

「ワーノルド!とりあえずあの小さな崖の上に登れ!俺が奴の動きを探る間にその笛を吹くんだ!」

「分かった!」

ワーノルドは急いで小さな崖の起伏を登り始めた。
その間、ドレイクは背中に収めていたボルタ=テーゼを抜いた。
ボルタ=テーゼは重厚な飛竜種の骨をベースに、舞雷竜の尖鉤爪や雷電袋を使い史上最高電圧を実現させた太刀。
非常に高電圧なため、そのまま使用する事は不可能な雷撃刀。

「よし、登りきった!…よいしょ!」

起伏を登りきったワーノルドは古龍笙【戦神埜宴】を構え、吹き始めた。
流れる音色は幾多の狩人を癒し、護り、そして奮い立たせる。
更に竜の声を無力化し、風や自然をも味方につける。古龍が成せる業を忠実に再現した古龍笛

「良い音色だ!…クッ!」

ドレイクはテンノウガザミの連続爪攻撃をたてつづけにかわす。
テンノウガザミの攻撃がひとしきり終わった後で、ドレイクはボルタ=テーゼで斬り払い間合いを取った。
テンノウガザミも間合いを取り、爪をドレイクに向けた。

「おいおいまさか?」

ドレイクの嫌な予感は的中、テンノウガザミは爪の間の穴から水弾を乱射し始めた。

「うおおおおおおおおおお!なんて出鱈目に撃ってきやがんだあの蟹は!」

狙うという概念が全く無いかのような撃ちっぷり。
しかし、テンノウガザミの奇想天外な行動はまだ続く。

「なんだ?キノコを引っこ抜いたぞ。」

テンノウガザミはキノコが生えている場所からマヒダケを引っこ抜いた。
それをおもむろに口へ運ぶ。そして、

「ぐあっ!」

その後に発射した水弾が地面に着弾した瞬間、周囲に着弾していた水弾と反応を起こし、電撃が散った。
麻痺効果も付加されていたらしく、ドレイクはその場に倒れこんだ。

「ぐっ…クソッ。」

その時、ワーノルドの吹く戦神埜宴の音色が響き渡った。

「お?どういうことだ、体の痺れが取れた…。」

ドレイクは立ち上がり、ワーノルドの方を見る。

「一体あの狩猟笛はどれだけの旋律を奏でられるんだ…。
 おっと、今はアイツに集中しないと。」

ドレイクは再びテンノウガザミに向き直る。
だが、テンノウガザミは爪をだらりとぶら下げ虚ろげにしていた。

「しめた…。疲れているな?ワーノルド、そろそろ降りて来い!コイツは疲れているぞ!」

「すぐ行きます!」

ワーノルドは戦神埜宴を担いだまま断崖から飛び降りた。
その瞬間

「ぐぉあ!?コイツ…っ!」

テンノウガザミがドレイクへ爪攻撃を行い、真っ先にワーノルドの方へと向かった。

「図ってやがったのか…。狡賢いヤツめ…!」

テンノウガザミは脚を巧みに操り、ワーノルドへ迫る。

「もう一度登るんだワーノルド!今なら間に合う!」

だが、ワーノルドは逆にテンノウガザミに歩み寄る。
そして戦神埜宴を演奏の構えに持ち込み、吹き始めた。

「なん…だ?この音。」

今戦神埜宴が発している音色は先ほどドレイクの麻痺を拭い去った時の音色とは一風違った音色。
雄大な、しかしどこか悲壮が漂う音色。
少しの間聴くなら問題ないが、ずっと聴いていると鬱になりそうな音色だった。

「さっきの音色とは全然違う…?それにヤツの動きもおかしくなっているな。」

テンノウガザミの詰め寄る速度は次第に遅くなっていき、最終的には痙攣しながらその場へ倒れこみ眠ってしまった。

「ワーノルド、お前は一体…?」

「―――古龍武器とは本来神器の一つとされ、祠を建て祭られるべき物。
 実は俺、その祠を代々管理してきた一族の末裔なんです。」

「な…なんだって?」

ワーノルドは戦神埜宴をしまい、爆弾を設置し始めた。

「ああ、心配要りませんよ。祠の方にはレプリカを飾ってあるんで。
 この戦神埜宴は、俺がハンターになる時親父が『持ってけ。』と言われて持ってきた物です。」

「そうじゃない!古龍武器がなんだって話だ!」

「―――龍より創られし得物、龍の御加護を受け地を滅ぼし天を返す。
 竜より創られし得物、使いし者の思念を受け龍を滅ぼす。―――
 祠にあった碑文です。親父はこの碑文の名を『神器名器之碑文』と言ってました。」

「『神器名器之碑文』か…。で、お前はその【戦神埜宴】で一体何をしたんだ?」

「俺はただ、神器としての本来の力をほんの少し解放させただけです。
 元々この古龍笙【戦神埜宴】はその昔、東方の国で王に仕えていた使用人が王の眠れない日に吹く笛だったんです。
 その笛は王に安眠をもたらす代わりに、周囲を護る衛兵達の眠気を吸い取ってたんだそうです。」

「どうしてこうなった…。」

それはこっちのセリフです。と突っ込むのはヤボだった。

「さ、話は後々。爆弾はもう置きませんか?」

「いや、今日は持ってきてないんでな。」

「そうですか、それじゃあその太刀を少し拝借できますか?」

「ん?ボルタ=テーゼで何をする気だ?」

「まあ見ててくださいよ。」

ワーノルドは爆弾からそう遠くない位置に爆雷針を設置した。

「屋内だから使えんだろう。何をしてるんだ。」

「それがそうでも無かったり。」

直後、ボルタ=テーゼの切っ先を空に向けて構えたワーノルド。
切っ先から爆雷針へと落雷が起こり、その衝撃で爆弾が爆発した。

「ありがとうございました。さぁ、ここからが本番ですよ!」

「そんなこと分かってるさ。これで終わる方が不気味な位だ。」

爆発の衝撃でダメージと共に起きたテンノウガザミは少し間合いを取ると、爪を打ちつけ始めた。

「なんだ?自身の爪を研いでいるのか?」

「ショウグンギザミじゃないから違うと思いますが…。」

そして、自身の真上に爪を掲げ思いっきり打ちつけた。

「くぁ…っ!耳が…!」

「これは…バインドボイス!?」

突然のバインドボイスに怯む二人。テンノウガザミは容赦なく怯んでいる二人に照準を合わせる。

「危ない!」

と、どこからともなく誰かが二人の前に立ちはだかった。
そして、テンノウガザミの爪の間から射出された水弾をガードした。

「アンタは!?」

「自己紹介は後!まずはコイツを片付けるぞ!」

「お、おう!」

その狩人はランスを使っていた。
鋭電槍【天雷双舞】。幻獣キリンの鋭電角、舞雷竜ベルキュロスの尖鱗、金獅子の鋭電牙を使った雷撃槍。

「おおらぁぁ!」

ドレイクはボルタ=テーゼをテンノウガザミの甲殻に斬り込ませていく。
史上最高電圧を誇るその雷撃刀はテンノウガザミの甲殻を斬り裂き、電撃を散らす。
脚を斬っていたドレイクとは反対側の脚を正体不明の狩人が鋭電槍【天雷双舞】で突いていた。
雷撃槍がテンノウガザミの外殻を貫き、紫電を這わせる。
そしてワーノルドが戦神埜宴で頭を殴りつつ音色を奏でる。
相変わらず、神器としての力を解放しつつではあるが。

「危ないっ!離れろ!」

謎の狩人が突然叫んだ。
その叫び声に反応し、各々回避行動をとった。
テンノウガザミは突如白い泡を吹き出し回転しながら水弾を発射し始めた。
謎の狩人は水弾をガードしつつ歩み寄り、他の二人は回転回避を続ける。
その後テンノウガザミはドレイクに歩み寄り、跳びはねて一回転した後爪を思い切り叩きつけた。

「グハァッ!」

「ドレイクー!」

ドレイクがその爪の下敷きになり、攻撃を喰らってしまった。
すかさずワーノルドが生命の粉塵を使う。

「助かったぜ…。」

ドレイクは爪の下から脱出し、爪を斬り始めた。
しばらくテンノウガザミが動く気配はなく、爪を斬り続けていると

「うおっ何だ!?」

テンノウガザミの爪が関節からはずれ、落下した。
その後、テンノウガザミはゆっくり体制を整え地面にもぐり始めた。

「…移動か。」

それぞれ武器をしまうと、今まで加勢してくれた謎の狩人の方に向き合った。

「さ、聞かせてもらおう。アンタは何者だ?
 …と、聞くのはヤボか。アンタ、任務遂行中のギルドナイトだな?」

謎の狩人は少し俯き

「…フッ、ああ。私は確かにギルドナイトだ。
 ドンドルマギルドナイツ第34部隊所属、エリクスだ。」

エリクスは鋭電槍【天雷双舞】を背中にしまい、装備していた兜を外した。

「…あー!」

ワーノルドは驚愕。
何せ兜を外したエリクスは…

「カルヴォさんそっくり…ですね。」

「ん?何だ君達、カルヴォを知ってるのか。
 カルヴォは私の妹でな。妹ながら狩猟のスキルは高くて…。」

「エリクス、妹談義は後にしてもらいたい。とりあえずこの依頼を終わらせる。
 テンノウガザミの所在は分かるか?」

「ああ、ここから四時の方角の砂漠に居る。
 付近にはドスゲネポスも居て非常に危険だな。」

「ドスゲネポス…、麻痺牙を持つあいつですか。」

ワーノルドがモンスターリストを見つつ、武器を研いでいた。

「ああ、偏狭の村ではドスゲネポスを
東方の国に生息するサソリという生物に例え、『アンタレス』と呼ぶ事もあるそうだ。」

ドレイクが少し得意げな顔をしたも、エリクスはそれを無かった事にし、

「今ドスゲネポスの方からこちらに向かってきている。
ワーノルド、君はドスゲネポスに向かい合って右側の顎をその笛で殴ってくれ。
ドレイク、ワーノルドが攻撃を行った後、ドスゲネポスの左脚第二関節を。
残る私が最後に左腕結合関節を突く。」

「…何かあるんですか?」

「まあ、やってから驚いてみようか。さあ、来たぞ!」

碧色の鱗に縞模様の体表皮、二本の牙に一対のトサカ
―――鳥竜ドスゲネポス

ドスゲネポスは断崖を勢いよく飛び降り、ロギア達を見つけ、喚いた。

「そおりゃっ!」

ワーノルドが初撃をエリクスの言ったとおり右側の顎にクリーンヒットさせる。
直後、ドスゲネポスは半目になりながらフラフラし始めた。
その後、ドレイクがボルタ=テーゼで左脚第二関節を斬る。
そして、エリクスが左腕結合関節を貫きドスゲネポスを瞬殺した。

「い、今何が起こった?」

ワーノルドはまだ事の次第を把握していない。

「ドスゲネポスの向かって右側の顎は、麻痺毒を流す腺が無い為
非常に衝撃が脳に届きやすい。要は打撃による脳震盪を起こし易いという事だ。
次に、左脚第二関節はドスゲネポスが麻痺毒を循環させるための神経細胞が張り巡らされている。
そこを突くという事は麻痺毒を封印するということ。
万一私がトドメをさし損ねた場合の対策さ。
最後に私が突いた左腕結合関節、そこにはドスゲネポスで言う即死のツボの様な物があるのさ。」

「そうですか、ギルドナイトすごいですね。」

ワーノルドは白々しく言った。

「いや、それほどでもないさ。」

落ち着き払ってエリクスが返す。その時、

「ぬおっ!?」

「何だ!?」

地鳴りとともに地面が揺れた。
まあ、当たり前といえば当たり前だが。

「とりあえず、この場所は危険だ。外の砂漠に出るぞ!」

「ああ!」

三人はテンノウガザミが居るエリアへと向かった。




「一体…何があったんだ?」

そこには大量の水を注がれたらしく、地質が変化して地形が変わった砂漠と
何かしらの攻撃を受け、泡を吹いて怒っているテンノウガザミの姿があった。
逃亡の際、抜け落ちた爪も今は再生している。

「何があったかは知らないが、今ならヤツを潰すチャンスだ。
少し実験してみたい事がある。」

「この際、使える作戦は何でも使おう。で、内容は?」

三人はしゃがみながら作戦を打ち合わせる。

「まずドレイク、君はガザミが食事を始めたら両方の爪を斬り下がりで斬ってくれ。
ワーノルドはドレイクが攻撃を行った後ヤツの左側の頭部を。
残った私が顔面にある触覚の間を突く。」

三人は一斉に走り出した。
ガザミは地面をハサミで突いて餌を探していた。

「せぇやっ!」

ドレイクはボルタ=テーゼで斬り下がり、間合いを取りつつ爪を斬った。
すると、

「ぬおっ!爪が落ちた?」

ガザミの関節部から一対の爪が抜け落ちた。

「次ッワーノルド!」

「あ、はい!」

ワーノルドが古龍笙【戦神埜宴】で言われた箇所をぶっ叩く。
たちまちガザミは体制を崩した。

「最後ォ!」

そしてエリクスがガザミの触覚の間を貫いた。
それ以降、テンノウガザミが動く事は無かった。



「どうやら、倒したみたいだな。」

「ああ、その様だな。」

ほっと一息。

「それじゃあ、さっきの作戦のトリックを聞かせてもらおう。」

「分かった。
まず、両方の爪。これは全ての甲殻種に見られる現象で、爪の関節部に衝撃を与えると反射で関節部から爪が外れる仕組みになってる。
次に左側頭部、ここはハンターで言うこめかみの部分が居座ってるところでこちらも脳震盪を起こし易い部位だ。
最後の触覚の間、ここも即死のツボだな。」

「一体ギルドナイトはどんな訓練を受けてるんだろう…。」

ワーノルドが空を見上げながらぽつり。

「さあ、ドンドルマに戻るぞ。」

三人は帰路についた。









――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――









「何か…外が…騒がしいな…。」

「その…ようだね…ロギア…。」

猟団部屋特設腕相撲部屋。

「コトってのは…、俺らが開発した五十連続腕相撲の事か…。」

あなた方はなんということをしてるのでしょうか。
と、二人が息を整えていると

「おい、団長!カルヴォ!」

「どうしたー、サラム。」

息せき切って扉を開けたサラムは、落ち着いてから一言。

「古龍が、このドンドルマ上空に居座ってやがるんだ!」

「なんだとぉ!?…いや、別に驚くことではないな。
で、何が来たんだ?ルコディオラか?テオか?」

「それが…、見たことも無い古龍なんだ。」

「ダニィ!?」

どこの破壊王子ですか。

「と、とにかく広場へ向かうぞ!」

「ああ。」









「あいつは…!」

上空に居座っていたのは雲を纏っている陽龍ガムロス。
その下には

「バリスタ隊、弾丸発射!」

ドンドルマのギルド直営防衛隊がバリスタを撃っていた。

「やめろ!撃つんじゃない!」

ロギアの忠告も空しくバリスタはガムロスに命中した。
キュウと風が唸る音の後、バリスタ発射隊に鋭い風のブレスを放った。

「グァァァッ!」

隊員は見るも無残に吹っ飛ばされた。

「クソッ!撃つなと言ったのに!
おいお前ら!ボウガン使ってるやつはとにかく刺激すんな!
閃光玉も使うんじゃねえぞ!」

と、そこに

「な、何だ?どうしてあんなとこにガムロスが!?」

ワーノルド達が戻ってきた。
ガムロスはワーノルドの方へ一度向き直りその後、空中で舞い始めた。

「…なるほど、よし!カルヴォ、ガムロスを追うぞ!」

「古龍を追う?どうやってさ!」

「南大手門に使ってないアプトノスの荷車があるはずだ。
それを使う。おーいワーノルド!今すぐ南大手門の荷車を一台押さえてくれ!」

「は、はい!」

ワーノルドは再び大手門の奥へ消えていった。

「カルヴォ、ついてこい!」

「フッ…ああ。どこまでもついて行くよ!」

二人も南大手門へ走って行った。




傍観していたサラムが一言

「あれって地味にプロポーズだよなぁ…。団長って案外鈍感だな。」














荷車の揺れる音。
サボテンの生えている潤砂漠地帯を走り抜けるアプトノス。

そして空中を駆け抜ける陽龍ガムロス

「クソッ、もっと速くならないのか!」

ロギアが荷車の床を思い切り叩く。

「ムチャですよ!これでも結構速くしてる方なんですから!」

手綱を握りながら叫ぶワーノルド。

「ほう、あれが陽龍ガムロス…。噂に聞いてただけだが、実物を見るとなんとも神々しい…。」

「感傷に浸ってる場合か!」

腕組みをし、遠い目でガムロスを見つめるカルヴォ。
三人は上空に現れた後、ある方角に向かって飛び始めたガムロスを追っている最中だった。

「しかし何でまたガムロスを追うなんて言い出したんです?」

「考えてもみろ、龍除けの粉塵の材料を探すため旅に出た俺達をガムロスが嗅ぎつけられると思うか?」

「言われてみれば…。」

「それにだ、ワーノルド。今走ってるこの場所、地図で言うとどの辺だ?」

「どの辺って…今フラヒヤ直通線を通ってますから…あっ!」

「そう、古の都ロノフィンの予測座標はドンドルマとフラヒヤ山脈の間。
そして今走ってるのはドンドルマから伸びるフラヒヤ直通線。後は分かるな?」

「このままガムロスを追っていればいずれはロノフィンに辿り着く、そういうことだねロギア?」

「ああ、そうだカルヴォ。」

ガムロスは依然として雲を引いて飛び続けている。
荷車で走り続ける事数十分、カルヴォが何かの気配を感じ取った。

「ワーノルド、少し荷車を止めてくれ!」

「カルヴォ!?今はそんな暇は」

「いいから止めてくれワーノルド!」

ワーノルドはカルヴォの言う通りに、荷車を止めた。

「何だって荷車を止めたんだカルヴォ!」

「周囲を見てみるんだロギア。さっきまで生えていたサボテンがないだろう?」

「何っ…!?ホントだ。」

数分前、あたりに群生していたサボテンがこの周囲には生えていない。

「この近辺はディアブロスのテリトリーである可能性が高い。
それも、今は繁殖期。気性が更に荒い雌個体のかもしれない。」

「こりゃいよいよもってマズイか…。ガムロスは?」

空中を飛んでいたガムロスは少し離れたところで、ドンドルマの上空にいた時と同じように舞っている。

「全員、臨戦態勢をとっておけ。地中から突き上げられたら最悪徒歩移動だ。」

「分かった。ワーノルド、荷車を進めてくれ。」

「はい。」

ワーノルドは手綱を張った。











それから数分、ディアブロスの出現は無く。ガムロスの移動速度も低下した。

「どうやらロノフィンはもうそろそろの様だな。
しかし、村のような集落はどこにも見えん。一体どうなってるんだ?」

その時、ガムロスが急にその場で高速回転しだし、巨大な竜巻を作り上げた。

「なっ!?マズイな…このままだと竜巻に吸われちまうぞ!」

「いや、このまま行きましょうロギアさん。」

「おいおい正気か…、いやおかしいのは俺の方だったようだな。」

ガムロスは竜巻の傍で舞っている。

「そのまま突っ込め!」

「はい!」

ワーノルドが手綱を思いっきり張り、音と痛みに驚いたアプトノスが我を忘れて竜巻に飛び込み始めた。

「おおおおおおおおお!!!」














「…ん、ここは…?」

ロギアが目を覚まし、起き上がったのはある民家の中。
屋根は藁葺きで、壁は東方の国で用いられる漆喰という物で固められている。

「何だってこんなとこに…。」

その時

「気がつきましたか?」

ロギアが声の方へ振り返ると、そこには竜人族らしき人が見慣れぬ布に水を浸しながらこちらを見ていた。

「あの…ここは?」

ロギアはどこで痛めたかも分からない場所の痛みに顔をしかめながら尋ねた。

「ここは古の都ロノフィン。龍と交わり、助け合い、発展してきた場所。
貴方達はエイン村から来たのね?」

「なぜそれを知っている?」

「ガムロス様がそう教えてくれたわ。決して危害を加えぬようお告げ下さったのもガムロス様よ。」

ロギアはガムロスという言葉に反応し、慌てて外に出た。
そこに広がっていたのは雲ひとつ無い澄んだ空に周囲を森林に囲まれ、人と人とが陽気に毎日の生活を謳歌している都だった。
頭の上を竜に乗った人が飛び回り、先ほどの人が言っていた事が本当だったのが見て取れる。

「あの…、お連れの方々なんですが。」

それを聞いたロギアは

「そうだ、すっかりあいつらのことを忘れていた。どこにいるんだ?」

「今恐らく長老に謁見している頃だと思われます。
謁見なさるのであればここから真っ直ぐ歩いて家が連なっている所の向かって一番左端が長老の家です。」

「ああ、教えてくれてありがとう。」

と、ロノフィンのど真ん中に位置する大きい道を歩いて行った。









「ここか、長老様の家ってのは。」

と、中から笑い声が聞こえた。
ドアを叩き、中からどうぞと声がしたので入ったロギアを迎えていたのは

「ようこそ、龍と共に栄えた街ロノフィンへ。私が長老のバースクリント=リデントだ。
まあ、気楽にバース爺さんとでも呼んでくれればそれでいいわい。」

ロノフィンの長老、バースクリントと

「大丈夫だったか?ロギア。丸一日寝込んでいたようだが…。」

「とりあえず、長老からの歓迎の印だそうですのでこれを。」

ワーノルドから差し出されたのはどうやら酒のような物。

「お心遣いありがとうございます、長老。
それで少しお話が…」

というと、長老はロギアの前に手のひらを差し出し

「皆まで言わんでも良い。すでにこの者達から、そして陽龍様より言伝は頂いておる。
確かにここ最近ワシも生きた心地がせんだわい。
お主も空を見た時、飛び交う多数の龍を一緒に見たであろう。
あれらは全てこの都の民のものが他の街と交流するために遣っている竜。
そやつらが竜の宴と共にめっきり動こうとせんようになってしまった。」

「長老様は、北エルデの古記について何か知っていますか?」

「ファッファッファ!当たり前じゃ。この古の都ロノフィンには大陸中の古記、神話伝、口授伝が残っておる。
他の街ではロノフィンは『学者の楽園』とまで言われておるらしいがの。」

「そうでしたか…では陰龍ネヴィアの存在も…?」

ロギアがカルヴォの隣に座る

「うむ。そうじゃ、お主らに時間が無いのはこちらも重々承知しておるが、
歴史学者も知らぬ爺の戯れ話に付き合ってくれぬか。」

「是非、お願いします!」

身を乗り出したのはカルヴォ。

「そういえばお主は学者の卵と言っておったな。よろしい。
時は数百年前まで遡る…。」

長老は遠い目をしながら語り始めた。

「この世がまだ繁栄の字も、混沌の字も知らぬ、平和に満ち溢れておった時の話じゃ。
一人の冒険家がこの世の未開の地を探し、旅に出た。
この冒険家が後にタレミシア大陸の地図を完成させる男じゃ。
その男が今で言う北エルデ地方に差し掛かったとき、突然竜の咆哮を聞いた。
始めはその辺に居るモンスターが縄張り争いでも始めたんじゃろうと高をくくっていたが、実はそうではなかった。」

「それがこの世に響いた最初の龍の宴というわけですね?」

察したカルヴォが一言。

「うむ。他の者も理解が出来てるようじゃから先を話す。
その冒険家は勘違いしたまま北エルデ山脈に登山してしまったのじゃ。
当然、龍の宴の最中だったガムロス様はお怒りになりその者を龍の御力で吹き飛ばした。」

「なるほど…確かに講義でも研究でも講演でも聴かなかった話だ。
この話、まんざら嘘でもなさそうだよロギア。」

「言われなくても分かってるさ。そもそもこうしてロノフィンがあることで
御伽噺じゃないってのが目に見えてる。」

ロギアは長老の下に寄り

「長老、我々にガムロス様と話せる龍の使いを同行させてはくれませんか。」

「む、その事はヌシらがココにきた頃から判っておったわい。
アリデシア、こちらに来なさい。」

長老の呼ぶ声に従い居間に現れたのは

「どうも、さっきぶりですね。
アリデシア=ルートアージです。」

ロギアを看病していた人だった。

「このアリデシアは正式にガムロス様に仕えるルートアージ一族の末裔じゃ。
アリデシア、この者らに付いて行って災厄を止めることを務めとす。」

「分かりました、長老。」

アリデシアはスッと立ち上がり

「そうと決まったらついて来て!今から竜に乗るから!」

「オイオイ!俺達は竜神族じゃないんだ、竜になんか乗れるわけが…!」

数十分後

「うっ、うおおおおあああああああ!!!!!」

今ロギア達が居るのは竜の背中の上。
厳密に言うとリオレウスの背中の上である。

「な、何でこのリオレウスは暴れないんだ…。」

「毎日竜と話し仕えていれば、竜は応え力を貸してくれます。」

「なんだかそれに近いのを東方の国で聞いたような…確かポケ―」

「アリデシアはこの竜にもう何年仕えているんだ!?」

恐らく言ってはいけない言葉を口に仕掛けたロギアのその口を塞ぎながら
問いを変えるワーノルド

「私は生まれた時からこのリオレウスにお仕えしてます…。」

「そ、そうかい…。」

ロギア達を乗せたリオレウスは北エルデの方角へ陽龍ガムロスを引きつれ飛び去っていった…。







陰龍による災厄まで残り十五日…
 
 

 
後書き
(´‘ω‘`)漢方苦いお

(´‘ω‘`)ども、鼻がぐずぐずの島原です

(´‘ω‘`)最近この顔文字にハマりました。

(´‘ω‘`)次の投稿予定はセージ&ガイルの最終話です 
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