| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのは~過去を捨て今を生きる者~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

空白期編
  デバイス

 
前書き
タイトルに意味なんてない。
それはこれからも、今までも。

それではっ
 

 
あのあとオレたちは部屋に戻るのもなんとなく嫌だったので、通行人に屋上までの道のりを聞き、なんとか到着する。

「あーくそ、美愛がまっすぐっつってんのに右往左往するせいで無駄な時間使った」
「全くだよー。もう、一体どこの方向音痴の緑色っぽいショートカットの三刀流剣士だよって話だよねー」
「アリシア、それ危険。あと二人して酷い」

美愛の話はどうでもいいとして、オレたちは屋上の扉を開く。
そこには真っ黒なバリアジャケットに身を包んだ三人の子供がいた。

「あ、案外来るの早かったね」

三人の中で最も背の低い、声からして男の子が振り向きながら言った。

「でも、残念。タイムオーバーだよ」

男の子が言うと同時に、ほかの二人が屋上のフェンスから飛び降りた。
地球だったら事件だが、ここは魔法の存在する世界、ミッドチルダ。
三人ともバリアジャケットを着ていたようだし、魔導師なのだろう。

「さて、キミたちはヴァレスティアの関係者で間違いないよね?」
「・・・ああ。苗字は違うが、ヴァレスティアの血を受け継いでいる」

「なら、ドクターからの伝言を教えるね。「キミたちの母国、日本の時間に合わせたのだが、間に合わなかったのだろう。しかし安心していい。今からそう遠くない未来、私たちとキミたちは再び出会うだろう。その時まで春香・ヴァレスティアのことは諦めたまえ」だって。じゃあ、ボクはしっかりと伝えたからね」

男の子はそう言って二人と同じようにフェンスから飛び降りようとする。

「待てッ!」
「どうかしたのかな?しっかりと伝言は伝えたはずだけど?」
「お前らは、誰だ。どうして犯罪者に手を貸している!」
「・・・ボクたちが誰かは、ドクターに止められているから、まだ言えない。でも、後者には答えてあげる。ドクターに手を貸している理由。それはあの人がボクたちの恩人だから。それだけだよ」

男の子はそういうなり、フェンスを飛び降りた。


三人が屋上からいなくいなったあと、オレたちも屋上から社長室へと戻っていた。

「・・・そう、遅かったのね」

ヒントを持っている三人を逃してしまったことを言うと、カオリさんは表情を曇らせる。
会話なんかせずにバインドで抑えていれば。
美愛をいじらず、本気で屋上へ向かっていたら。
オレはそんなことばかり考えてしまう。

「ごめんね、カオリ・・・春香ちゃんを、助けられなかった」
「いえ、あなたたちはなにも悪くないわ・・・。悪いのは、あの犯罪者よ」

そう言ってカオリさんは机の引き出しからなにかを取り出した。

「? カオリ、それは・・・」
「前にイオリが話してた子供・・・美愛ちゃんって、あなたよね?あなたに、預けたいものがあるわ」

カオリさんは美愛にそのなにかを手渡す。

「・・・え?あの、これって・・・」
「来月の春香の誕生日までに仕上げて、渡す予定だったデバイスよ。美愛ちゃん、このデバイスを完成させてくれないかしら」

美愛が渡されたデバイスは、まだデバイスと言っていいのかわからないほどに未完成。
少し知識を持っているだけの美愛に渡し、完成させてほしいなどと言えるようなものではなかった。

「子供は再び出会うって言ったのよね?なら、その時に春香に渡してほしいの」
「でも、完成させることができるほど構造は知らないし・・・」

いつも楽観的な美愛でも今の状況を大変だとわかっているので、流石に戸惑う。

「イオリの娘であるあなたができないはずがないわ。時間がかかったっていい。ただ、春香に渡して欲しいだけ。それとも、こう言った方がいい?」
「春香を助けられなかったんだから、このくらい引き受けろ」

真面目な、真剣な声と表情でカオリさんは言った。

「ッ・・・わかり、ました」

美愛はデバイスを握り締め、絞り出すように口にする。
そんな風景を、長男であるオレはただ、見つめていた。
オレたちは一人の少女を、犯罪者のもとへ行かせてしまった。
変えようのない事実が、現実を見せていた。
その日、オレたちは始めて明らかな「失敗」をした。
 
 

 
後書き
始めてのお使いならぬ、始めての失敗です。
お父さんが登場してる割に会話をしない?
そんなの分かりきっていることだろーがッ!!
失礼、荒ぶりました。

それではっ
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧