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ダリア

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第五章

「ここに来てね」
「?ここは」
 マルカーノはその赤いバツの場所を見て言った。
「私の実家の近くの酒場ですね」
「そこなんですか」
「うん、そこだよ」
 まさにだとだ、マルカーノは一緒に地図を観るヒメネスに答えた。
「何でここなのかな」
「行けばわかるわ」
 やはり多くは言わない美女だった。
「そこにね」
「そうですか」
「ええ、じゃあね」
 こうしてだった、話は決まったのだった。しかし。
 マルカーノにはどうしてもわからない、それで美女が去った後にヒメネスに言うのだった。
「どういうことだろうね」
「さて」
 ヒメネスもだ、訳がわからず首を捻るばかりだった。
「これは」
「何が何かわからないね」
「酒場に行けばあの美人さんが告白とか」
「そんな展開かな」
「だといいですよね」
「だから、そんなハッピーエンドはね」
 現実には、とだ。マルカーノはヒメネスにここでもこう言った。
「ないよ」
「ですよね、現実は」
「いつも言ってるけれど現実はシビアなんだよ」
 だからだというのだ。
「それはないよ」
「そうですね、それじゃあ」
「一体何をするのか」
 ハッピーエンドは否定してもだった、マルカーノは何があるのか全く想像がつかなかった。ヒメネスも同じである。
 そのヒメネスにだ、マルカーノは言うのだった。
「よかったら君もね」
「一緒にその酒場に行っていいんですね」
「うん、そうしてくれるかな」
「お酒飲めるんですよね」
「酒場だからね」
 このことは当然だとだ、マルカーノは答えた。
「そうなるだろうね」
「じゃあ喜んで」
「お酒好きなんだね、君も」
「飲める方で」
 笑顔で言うヒメネスだった。
「それじゃあですね」
「一緒に行こうか」
「はい」
 こうしてヒメネスも一緒に行くことになった、そしてその日にだった。
 マルカーノはヒメネスを連れてその酒場に向かった、その道中もいぶかしむ顔でこうお供の役の彼に言うのだった。
「まあ悪魔や蛇が出るとは思えないね」
「そうですね、それは」
「いきなり借金で店を差し押さえとかは」
「うちのお店そこまで経営悪くないですよ」
「実家の方もね」
 この不吉な予想は否定された。
「それはないだろうね」
「そうですね、流石に」
「確かに不況で辛いけれど」
 それでもだった、マルカーノの花屋も実家の方の花屋も。
「そこまではないよ」
「それに酒場でそんなこと言ってこないですね」
「わざわざ呼んでね」
 借金取りの方から来るというのだ、そうした時は。 
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