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モンスターハンター ~厄災の狩人達~

作者:島原
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フラヒヤ山脈へ
明星の英雄
  フラヒヤ組道中②

 
前書き
ユクモ村の訓練所寮にての夜が明け、セージ&ガイル達一行はいよいよフラヒヤ山脈の麓の村
皆もおなじみ"ポッケ村"へ旅立つ

ちなみに道中の表記はこのポッケ村に辿り着くまでを道中としております。 

 
ユクモ村ハンター訓練所生活寮
朝間もない頃、セージは目を覚ました。

「ふぁぁ、よく寝た。」

そして気づく。

「うっ!隣の部屋から酒の臭いが漏れてる…。」

どうやら部屋の臭いが隣にいるガイル達の酒臭さに占領されているようである。
というのも、部屋の何から何までユクモの木をメインに作られているが
臭いを吸収し切れず隣に漏れるというのはよくある話である。

「とりあえず起こしにいこう…。」

セージは隣で寝ているガイルを起こしに行った。
ドアを開け外に出ると、ガイルの部屋の前にユクモ村ハンター訓練所の教官が立っていた。

「おはようございます、教官。」

「む、おはよう。貴様はガイルとは違いキチンと挨拶するな。」

「まあ、父のような人間にはなりたくありませんから。」

「ヌハハハハ!…さて、目的はどうやら一緒のようだな。」

「ええ、そのようで。」

ふと教官の右手に目をやったセージ。
教官の右手に握られているのは消臭玉。
この地では素材玉と、霜降り草という珍しい草で出来る。

「じゃあ、我輩が消臭玉を投げながら開けるから貴様はガイルの耳元に
 音爆弾を。」

「分かりました。で、万が一暴れだしたら。」

「このオオマヒシメジを口に突っ込むと。」

どうやら二人が立てているのはガイルを起こすための作戦らしい。
言わなくても分かると思いますが、オオマヒシメジを人間の口の中につっこまないように。

「行くぞ?…三…二…一…それっ!」

教官はドアをあけ、瞬時に二人の足元に消臭玉を投げた。
投げつけられた消臭玉は勢いよく弾け、霜降り草の成分を空気中に撒き散らす。
その間にセージがポーチから音爆弾を取り出し部屋の中に投げ入れた。

「閉めてください!」

セージの声と同時に教官がドアを閉め、二人は耳を塞いだ。
直後部屋の中から高周波数の音波が聞こえた。

「起きたかな…?」

セージが確認のため、ドアに耳を近づけると

「何かが開く音がしましたね。」

何かの開閉音を聞き取った。

「…いかん。セージよ、早くドアから離れるのだ。」

「え?」

セージが教官に言われたとおりドアから離れると、突如扉が開き頭をスカルSヘッド
それ以外は見覚えあるリオソウルZシリーズに覆われた男が立っていた。

「なんだ、父さんか。起きたかい?」

「…。」

「よけろ、セージ!」

咄嗟に教官が言った一言に反応し、セージはガンランスの抜刀時によく使うステップ回避でその場から離れた。
と、セージの元居た場所をガイルの雷刃ヴァジュラが空を切った。

「ちょ、父さん!?」

「ガイルがスカルSヘッドをつけている時は、マジギレしてる時だ…。」

「本当…ですか?」

「うむ、後で話す。とにかく落ち着け、ガイル!」

「…うるせぇアオアシラ。」

ようやく口を開いたガイルの一声は暴言。
それも今教官が最も気にしている言葉。

「…ガイルよ、つくづく思っておったが貴様ちょっと目上の者への礼儀がなってないんじゃないか?」

「知るか。礼儀なんぞちぎって捨ててイビルジョーにでも食わせとけ。」

「貴様の息子は、貴様のことを思って少し派手な起こし方をしただけだ。
 それがなぜ分からぬガイルよ。」

「…USDA」

ガイルは不可解な言葉を残し部屋へと消えた。

「教官、なんですか?父さんが言った最後のUSDAって。」

「おそらく、Uはうっせえ、Sはさっさと、Dはどっかいけ、Aはアオアシラ
 の略語だろう。」

「アハハ、父さんもひどい人だ…。」

「セージよ、貴様の母親に言っておいてくれんか?」

「なんです?」

「ガイルにひどい事をされたら、我輩が訓練所のモンスターを全部つれて家に乗り込むと。」

「伝えておきます…。」

セージは苦笑いしながら

(この人軽くアオアシラって言われたこと根に持ってるな…。)

と思うのであった。




その数時間のち

「あー頭いてえ。おいセージ、お前俺の頭に何か入れたか?」

「そんなこと出来る訳ないじゃないか父さん。二日酔いだよ。」

ようやく正気に戻ったガイルと他のハンター達を連れ、ユクモ村の門前に停まっていた荷車に乗りこんだ。

「ガイル、二日酔いによくきく薬を覚えているか?」

「あー、確かジャンバリア水没林にいるズワロポスの垂皮油だっけ?」

「そうだ。ちゃんと濾すのを忘れずにな。」

「あー、わぁってるって。そうだ、生活寮使わせてくれてありがとな。」

「礼には及ばん。次くるときはついでに訓練もしていけ。」

「ああ、考えとくよ。じゃあなー!」

「お世話になりましたー!」

「帰りに寄ってきたら特上の酒用意しとくぞー!」

「おーう!頼むわー!」

アプトノスの引く荷車はゆっくりと車輪を動かし始めた。
フラヒヤ山脈組の本日の主なルートは
まずユクモ村の門前にある小道を道なりに進み、その後フラヒヤ直通線という最近になって整備された道を行く。
本来ならこのフラヒヤ直通線は依頼を受けたハンターが乗る荷車が通る道なのだが、遠方からフラヒヤ山脈の麓の村に
里帰りをしたいが、道が分からないという住民やハンターの要望のもと、整備された道である。
付近には景色美で有名なドール渓谷があり、見るものを癒してくれるという。
だが、そんなドール渓谷にもモンスターは生息している。

「近くのドール渓谷にはどんなモンスターがいるんだい?父さん。」

セージは父であるガイルにドール渓谷の生態系を尋ねた。

「んん?よせよせ。聞くだけでチビるぞ。事実俺も駆け出しだった頃はチビったからな。」

「そんなに恐ろしいやつがいるのかい?」

「聞くな聞くな。後になって思い出すだけでも恥ずかしい。」

「仕方ないなあ…。すいません、何か知らないですか?」

と、セージは質問の対象をガイルから近くに居た太刀使い―――レオに話を聞いた。

「ドール渓谷の生息モンスターですか…。いろいろいますよ。
 例えば、鳥竜種のドスジャギィとか
   牙獣種のアオアシラとか
それと、牙竜種のジンオウガとかですね。」

「ジンオウガって、あの加工屋のおじいさんの言っていたジンオウガかい?」

「ええ、なんでも近年マゼラティア地方発見と同時に『狩りに生きる』の地質調査員が発見したらしいんです。
 詳しい生態は今のところ調査中なんですが、すでにハンターの間でも噂になってるんですよ。」

「ふぅん。それは一度でも狩ってみたいね。」

「やめとけやめとけ。ラオシャンロンに潰されに行くみたいなもんだ。」

期待に踊るセージをガイルは冷たくあしらった。
そんな最中急に天候が悪くなりだした。

「なんだ?急に曇ってきやがったな…。」

空は急速に暗くなり、やがて小雨が降り出した。

「ついてないなぁ…。ん?」

セージがユクモ村で買ったお土産用雨傘を頭にかぶっている時、

「なっ、なんだっ!?目の前に急にモンスターがっ!」

ガイルが焦って荷車の進行方向を変えた。
アプトノスはガイルの指示に従って速やかに進行方向を変える。
だが、その者の姿はガイル達の目に焼きついた。

「アイツは…?」

頭部に生えた黄金色の二本角、鮮緑色の鱗、そして白く逆立った体毛、何より特徴的な物が

「アイツの背中に雷光虫がいるぞ!」

まるでそのモンスターの背中を巣にしているかのような雷光虫の群れ。その数や百はくだらなかった。
そしてそのモンスターは更に周囲の雷光虫を呼び込んだ。

「雷光虫を集めている!?」

「いったん逃げるぞ!」

ガイルが縄を勢いよく張った。
アプトノスが音と痛みに驚き速度を上げた。
ガイル達の後方に居たモンスターは雷光虫に刺激されたか、飛竜種のそれに劣るものの、咆哮をあげた。

「あれが、ジンオウガ。雷狼竜ジンオウガ。ユクモ村専属のハンターはアイツを"無双の狩人"と呼ぶらしいんだ。」

「無双の狩人…雷狼竜ジンオウガか。」

セージは身震いした。

「ますます狩ってみたくなった!」

だが、逆に闘志に火がついたようだ。

「急いで災厄を終わらせてアイツ狩りに行こう、父さん!」

「ああ、災厄が終わったら、な。」

と、ガイルがポーチから小瓶を取り出した。
アルフレッドからもらった強走の粉塵の小瓶だった。

「え、今使うのかい?」

「災厄を終わらせるんなら一刻も早く移動したほうがいいだろ?なら使い惜しんでなんていられるかってんだ!」

アプトノスの息が元に戻りさらに速度が増した。







フラヒヤ直通線。
タレミシア大陸図でいうところの西から東にかけて約八百キロに及ぶ直通線。
付近には様々な宿場町があり、案の定ギルド出張所がある。
雷狼竜ジンオウガとの遭遇から丸々一時間が経過しようとしているところだった。

「いやぁ、モンスターもあまり飛び出してこないし順調に進んでるし、平和だなぁ。」

ガイルが呑気なことを言いながら前をボーっと見ていた。

「確かにいろんな意味で平和だけど、飛竜種にとってはそうでもないみたいだね。」

「セージ、そりゃ一体どういうことだ?」

「父さんの視力でも見えるだろうから、そのまま北東を見てみてよ。」

「うーん北東…。なんだありゃぁ!?」

そこには川があったが、その川辺に横たわっていたのは飛竜種の亡骸。
ざっと見ただけで二十や三十はある大規模なもの。
そしてその亡骸の死肉を貪るヤオザミやガブラス、恐暴竜の姿が…。

「あれはひでぇな…。これも古龍災害の余波か。」

「恐らくそうだね。古龍災害によって草食動物の数が激減し、餓死した飛竜種の亡骸だろうね。」

だが、荷車に乗っていたセージ達は思いもよらない光景を目にする。
なんと、転がる亡骸の中に防具を纏ったハンター達の姿があった。
それもまだ新米ハンターに見えた。

「おい、アイツら何やってんだ!近くにイビルジョーがいるんだぞ!?死にてえのか!」

だが、ガイルの言葉を敏感に聞き取ったのだろうかイビルジョーはその新米ハンター達の居る方に視線を向けた。

「あーっもうったく!」

ガイルはポーチから閃光玉と眠り生肉を取り出した。
先に投げられた閃光玉から強烈な光が撒き散らされた。
そして荷車の上に立ち上がり、

「なぁにやってんだぁ!死にてえのかぁ!?さっさと逃げろぉ!」

と、大声で川辺に居た新米ハンターに警告した。
ガイルの警告を素直に聞き入れたのか、新米ハンター達はその場を走り去った。
その後、イビルジョーはようやく視界を取り戻し近くに落ちていた眠り生肉を食べ眠った。

「ったく、最近の新米ハンターって奴は…。災厄をチャンスか何かだと勘違いしてやがる。」

それから数時間、モンスターが出ることがなければどこかで休憩を取ることもなく
ただただ荷車に揺られながら時を過ごした。

「うーん…、眠い…。ん?」

何を思ったか、セージは突然双眼鏡を手にし南東を見た。

「…アルフレッド?」

セージは双眼鏡の映す先にいる人物をアルフレッドと呼んだ。

「よせよせセージ、眠すぎて幻覚でも見たんだろう。荷車は俺が切り盛りしとくからお前は寝とけ。」

「そうするよ、父さん。」

とセージは横になって眠り始めた。
セージが眠り始めてすぐにガイルの目に何かが映った。

「ん…?」

ガイルは慌てて目をこすり、よくよく見てみたが。

「あれはどう考えてもガノトトスにしか見えねえよなぁ…。」

ガノトトスが陸上にいるのが見えていた。
ガノトトスは水竜と言われ、竜という謂れにそぐわず水中で生活している。
長時間陸に居続けると鱗が乾燥して呼吸が出来なくなりそのまま死んでしまうと学会の生態研究報告書には書いてある。
するといきなり

「のわっ!?」

目前のガノトトスが水ブレスを発射してきたが

「…おお?」

何らダメージもなく、周りの状況も変わらない。
ガノトトスはそのまま陽炎のように消え去った。

「一体あのガノトトスは何だったんだ…。」









そのまま三時間。
ようやくフラヒヤ山脈の麓の村。ポッケ村に辿り着いた。

「おー、さすがはポッケ村。…寒い!」

そりゃフラヒヤ山脈は有名な雪山ですから寒いでしょうね。例え麓と言えど。

「おやおや、遠方からよくぞこのポッケ村においでくださったな。村民一同心から歓迎いたしますぞ。」

出迎えてくれたのはこのポッケ村の村長とギルドマネージャー。村長は雪藁子を被り、暖かそうな毛皮の毛布のようなものを着たおばあさん。
ギルドマネージャーは竜人族の若い女性のようだ。少し淡めの赤と白で彩られた竜人族伝統の着物。
名前は竜人族の言葉でラヌンヒス(伝統衣料)。(アルフレッド談)

「あいにく宿はないものの、集会酒場を狩人の皆様に自由に使ってもらっているので、そちらを活用してください。」

と、ギルドマネージャー。

「そうですか…。それではお言葉に甘えて使わせて頂きます。」

と、セージ。
なだれこむように荷車に乗っていたハンター達が集会所の中へ流れ着いた。

「あれ?人がいねぇな…。」

ふとガイルが中から入り口にかけられていた看板を見ると

「第二十四番集会所…?」

看板には番号が振られていた。

「このポッケ村には遠方より数々のハンターが足を運ぶでのう。
 集会所はたくさんあったほうがいいのじゃ。そうじゃな…。
 この二十四番集会所はたしか三代目の村つきハンターが初めてティガレックスを倒した記念に作ったものじゃな。
 ほれ、そこにティガレックスの頭殻とそのハンターが倒した時に使っていた得物のレプリカが飾ってあるじゃろう。」

そこには確かに頭部部位破壊の成立したティガレックスの頭殻と、骨刀【竜牙】のレプリカがかざってあった。

「すいません、じゃあこの二十四番集会所使わせて頂きますね。」

「ああ、構わんよ。ようよう自分のお好きなようにの。」

ポッケ村の村長は杖をついて集会所からいなくなった。

「さて、こっからどうする?」

ガイルが机に頬杖をつきながらかばんに入れてあったビンを取り出す。

「またザザミソで酒かい?父さん。」

「バーローちげぇよ。酒飲んだ後はこれ飲めってパティオの藪医者から言われてんだ。」

「藪じゃないだろ父さん。それに、あの人は数々の不治の病に対する特効薬を作ってきた世界的に有名な医者だし…。」

「るせぇ。俺が藪だって思ったらその医者は藪だ。あんな病気、生命の粉塵かケルビの角煎じて飲んでりゃよかったんだ。」

「…。こりゃ教官が怒るのも無理ないや。」

とセージがボソッ。

「聞こえたぞセージ。」

ガイルはそれを聞き逃さなかった。

「ちょっと外の空気吸ってくる。」

セージは逃げるようにその場を去った。






外は気持ちのいい空気で満たされており、セージの肺を満たした。
だが、その反面嫌な噂も聞こえてくる。

「近くにドスギアノスが出たって本当かい?やだねぇ最近のモンスターは。」

「それだけじゃないぜ?今フラヒヤ山脈はフルフルとティガレックスが縄張り争いをしてるって話だ。」

「村つきのハンターさんが大怪我して引退しちまった今、あたしらにはどうすることも出来ないのかねぇ…。」

「遠方のハンターさんも素材目当てにちまちま狩っていってはくれるけど、到底数は減らないなぁ。」

どうやらポッケ村は未曾有の危機に直面しているらしい。

「ドスギアノスにフルフル、ティガレックスか…。」

と、伸びをしながら集会所に戻っていった。





「ウォーミングアップがてらフラヒヤ山脈に素材調達してくるよ。」

「ん?もう行くのかセージ。調達する素材の確認はしたのか?」

「ああ、まだだった。確か、雪山草とアルビノエキスだっけ?」

「雪山草は俺がついてかねえと貰えねえから先アルビノエキスだけ取った方がいいだろう。」

「そうするよ。このガンランスで行けるかな?」

「うーん…。ドスギアノスとティガレックスには有効だろうが、フルフルには砲撃メインになるだろうな。」

「そうだね…。…え?」

セージはガイルの方を凝視した。

「聞こえてたのかい?父さん。」

「いや、ユクモ村で風呂行くまでに拾った奴でよ。こいつ持ってたら大体のモンスターがどこにいるかなんとなく分かるんだよな。」

「それで、ポッケ村について早々に」

「その三体の気配を感じたと。」

セージは多少驚いたものの

(どうせ酒に酔った勢いで頭のどっかが狂ったんだろうな…。)

とあえて当てにせず鵜呑みもせず。

「とりあえずコイツで行ってくるよ。」

「おう、ムチャはすんなよ。」

と、夜の雪山に出発した。

 
 

 
後書き
(。・д・。)やあ
さあ、ついにセージ達フラヒヤ山脈組が目的地に到着し、行動を開始しました。
さてここで嬉しい報告が一つ。
やっとこさ、「組」の変換が正しくなりました。
どういう意味かって言うと、
前まで「ぐみ」ってうつと「組み」と変換されてたんですよ。
それがココ最近一発変換で「組」と表示されるようになったので
非常に作業速度が節約できています。
ちなみに噂話に登場したモンスターは、MHP2Gの集会所上位大連続狩猟クエスト「猛る雪月花」から取っています。 
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