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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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裁きの女王


ナツの「火竜の炎肘」を喰らったユウカは凄い勢いで吹っ飛ばされていく。
一度ゴツゴツした岩の上で小さく跳ね、完全に気を失った状態で倒れた。

「まず1人」
「おおーん。お前、スゲーな」
「次はお前にスゲーの喰らわすぞ」
「くらわねぇよ。俺はユウカより強いんだぞ」

そう言うと、トビーはスゥッと胸の前でバツ印を作るように両手を構えた。
両手の爪がシャキンと音を立てて伸びる。

「麻痺爪メガクラゲ!この爪にはある秘密が隠されている」
「麻痺か?」
「なぜ解った!?」

ガーン、と落ち込むトビー。
自分が最初に『麻痺爪』と言ってしまっていた事には全く気付いていない。

「くそぅ・・・とんでもねぇ魔導士だぜ」
「うわ・・・どうしよう・・・バカだ」
「バカって言うんじゃねぇよ!」
「おっと」

バカ、という言葉にキレるトビー。
爪を振るうが難なく避けられる。

「この爪に触れたら最後、ビリビリに痺れて死を待つだけだっ!」

そう叫びながらぐわん、シャアアア・・・と空気を斬る音と共に爪を振るう。
それを聞いたナツは何かに気づいたような表情を浮かべた。

「つーかちょっと待て。ここに何かついてるぞ」
「おお?」

ナツは左手で自分の額を指す。
それにつられてトビーも自分の額に触れた。
プス、と小さく音がして・・・。

「おおおおおお・・・!」

自爆した。
麻痺爪が生えた状態で額に触れるなど、自爆行為である。

「やっぱバカだ」

パタン、と倒れたトビーを無視し、ナツはとある場所に視線を向ける。
そこにはつい先ほどまでボボの墓があった。
ユウカが蹴り飛ばした岩を土台の上に置く。

「ひでー事するよな、こいつ等。でも村も皆も絶対元通りになる。絶対だ。お前の仇は俺がとってやるから」










一方その頃、ここはガルナ島の村から少し離れた森。
その森のとある所に、巨大ネズミが倒れていた。
その傍らにはルーシィが倒れている。

「あいたたた・・・あれ?あの女は?」

きょろきょろと辺りを見回すルーシィ。
すると、目の前の岩場から声が響いた。

「よくもやってくれましたわね。お嬢さん」

声の主、シェリーはボロボロ涙を零している。

「これで零帝様の私に対する信頼はガタ落ちです。もう愛されない!」
「愛!?」
「その上、アンジェリカまで・・・」

ぐしっと涙をぬぐい、ルーシィを睨む。

「許しませんわ!」
「上等!掛かって来なさい!」

立ち上がるルーシィに向かって、シェリーはバッと右掌を向ける。
すると、ミシミシ音を立てながら、近くに生えていた木が動き始めた。
ご丁寧に顔のような穴が幹に開いている。

木人形(ウッドドール)!」
「木が・・・動いた!?」
「サァーーーーーーーーーッ!」

シェリーが叫ぶと同時に、人形と化した木はルーシィに向かって腕を振り下ろす。
バランスを崩したルーシィに、もう片方の腕が伸びた、が。

大空風翼(アリエスエーラ)!」

突如ぽわぁ・・・と緑色の光がルーシィを包み、その体は一気に上昇する。
木の腕では空を切り、地面に激突した。

「何者ですの!?」

シェリーは慌てた様子で空を見上げる、と、そこにいたのは言うまでもなく。

「やっほー、え~っと・・・キャバ嬢その2?」
「シェリーですわっ!」
「OK。覚えておくよ」

ルーだった。
背中から風で造られた羽を生やし、羽の消えたルーシィを抱えている。
トッと綺麗に着地すると、ルーシィを降ろした。

「大丈夫?」
「う、うん・・・でも今はそれどころじゃないの!」
「解ってるよ。あの木人形(ウッドドール)をどうにかしないと・・・」

2人の目線の先には木人形(ウッドドール)
ルーシィは金色の鍵を1本構えた。

「開け!金牛宮の扉、タウロス!」
「MOォォォォーーーーーーーーーー!」

呼び出されたタウロスは斧で気を一刀両断。

「星霊魔法!?しかも黄道十二門!?」
「わ~、牛だ~!ハコベ山の時はありがとね~!」(第3話参照)

この状況が解っているのかいないのか、ルーは相変わらず呑気だ。

「ナイス、タウロス!」
「MOーーー!ルーシィさんのボディ最高ー!」
「星霊にそんな事言わせて喜んでるなんて、淫らもいいとこですわね・・・」
「言わせてないし喜んでないわよっ!」
「MOー!」
「え~・・・何この牛・・・エロいんですけど」

先ほどまで感謝の言葉を述べていたとは思えないほど、ルーは引いていた。

「けど・・・星霊魔導士は私と相性が悪すぎますわ」

シェリーが小さく笑みを浮かべて呟いた。

「タウロス!やりなさい!」
「MO!」

所有者(オーナー)のルーシィに命令されたタウロスはシェリーに向かっていく。
が、すぐにくるっとルーシィの方を向いた。
その目は獲物を見るようにルーシィを見ている。
シェリーがニッと笑った。

「え?」
「ルーシィ!」
「MOーーーーっ!」

呆気に取られるルーシィをルーが抱いて跳び、そこにタウロスが斧を振り下ろす。
あと少しルーが遅かったら、ルーシィに斧が直撃していたかもしれない。

「ちょっと!タウロス!どうしたの!?」
「MOォオォオ!」
「んあっ」
「しまったぁっ!」

避け終えルーシィを離したルーが苦虫を潰したような顔をする。
タウロスはルーシィの左腕を掴み、自分の右手でルーシィの首を絞めていた。

「ル、ルーシィさん・・・か、身体が・・・言う事を聞きません・・・」
「くっ・・・うっ・・・」
「人形撃か!」
「そう・・・私の魔法『人形撃』は人間以外のものを操る魔法。それは星霊だって同じ・・・人間ではないのですもの」
「そ・・・そんな・・・」

首を絞められながら呟くルーシィ。

「タウロス、服を引ん剥いてさしあげて」
「よ、喜んで!」
「アンタ、本当に操られてるの!?」
「僕が牛を倒せばいいんだけど・・・牛だって仲間だし・・・」

ビリビリとルーシィの服を引ん剥き始めるタウロスにルーシィがツッコみ、ルーが頭を抱える。

「MOうし訳ありません・・・ルーシィさん・・・自分の意志では・・・体が、どうにも・・・」

そう途切れ途切れに言う間にもタウロスはルーシィの服を引ん剥く。

「閉じろ!金牛宮の扉!」

ルーシィが閉門を試みたが、タウロスは消えない。
その力は徐々に増していく。

「星霊魔法の(ゲート)は互いの同意の上で開閉するのではなくて?」
「閉じて!タウロス!」
「一方的に閉じるなんて出来ませんわよ」
「タウロス!」
「MOォォォォ!」
「あうっ」
「ルーシィっ!」

ルーが叫び、辛そうな表情で左手に緑色の光を灯す。
ひゅおおおお・・・と音を立てて、風が左手に集まっていく。

「お願いっ!閉じて!」
「所詮妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士といっても、こんな程度ですのね」

そのシェリーの一言がルーシィに力を入れた。
今日で1番声を張り上げ、叫ぶ。

「閉じろ!金牛宮の扉!」

その声に反応し、タウロスの姿が揺れる。
次の瞬間、タウロスは煙のように消え去った。

「なっ!?」
「強制閉門・・・」
「で・・・出来た。強制閉門が出来たっ!」

強制閉門。
その名の通り、強制的に(ゲート)を閉じる事。
所有者(オーナー)が望めば、星霊が望んでいなくても閉門できる。
今回のような場合において、かなり役立つものだ。

「ま、まさかそんな事が出来る魔導士がいたなんて・・・計算ミス・・・ですわ」
「あたし・・・成長してる・・・」

ルーシィは自分の手を見る。
そして微笑んだ。
右手の甲に刻まれているのは大事な仲間の証。それがルーシィを強くする。

「そうよ!あたしだって妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員なんだからね!」








所変わって、ここはデリオラの封印場所である月の遺跡。
氷漬けの悪魔デリオラの前に、『零帝』ことグレイの兄弟子であるリオンがいた。

「零帝様」

デリオラを見つめるリオンに声が掛けられる。
声を掛けたのは先ほどまでのリオンの様に仮面をつけた男だった。

「あのグレイとかいう小僧をなぜ殺さなかったので?」
「別に意味はない。俺が血を好まんのは知っているだろ」

それを聞き、仮面の男はくるっと背を向ける。

「いえいえ、そうおっしゃいますが、村人は皆殺しになさるお人だ。どうも弟弟子には情があるご様子ですな」

それに対し、リオンの声はいたって冷静だ。
感情の見えない冷たい声。

「くだらん・・・あれだけ打ち負かせば歯向かう気もおきんさ。それでも邪魔をするようなら、その時は躊躇なく殺してやろう」

それを聞いた仮面の男は、顔だけをリオンの方に向けた。

「本当に?」










「さすが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士といったとこかしら」
「勝負はこれからよ」
「そうだそうだー!」
「でもお忘れにならないように。あなたの星霊は私には通用しませんのよ」

それを聞いたルーシィは、何やらルーにひそひそと囁く。
そして顔を見合わせ頷き、ルーシィは1本の鍵を構えた。

「どうかしら?まだまだ強い星霊はいっぱいいるのよ!」

そして(ゲート)を開く。

「開け!小犬座の扉・・・プルー!」
「プーン」

呼びだしたのはプルーだった。

「人形撃、操り人形!」

そしてシェリーは先ほどのタウロス同様、プルーを操る。

「ププ、プーン!」

プルーの目がキュピーンと光り、腕を回しながらルーシィとルーに向かって駆けて行った。

「プーン!ププーン!ププーン!」

そしてルーシィとルーの足を交互にポカポカと殴る。
・・・それだけだ。

「!」
「引っかかったわね!ルー!」
「うん!大空大鷲(アリエスイーグル)!」
「くっ!」

飛んで来た風の鷲をギリギリで避ける。

「しまった!ザコ星霊か!操り解除!」

プルーが正気に戻る。
そう。プルーは黄道十二門のような攻撃を得意とする星霊ではない。
銀色の鍵の星霊でも戦える場合もあるが、プルーに至っては愛玩星霊。
つまりはペット的な存在なのだ。
どれだけ操って攻撃させても、大した攻撃にはならない、という事である。

「人形撃、岩人形(ロックドール)!」

シェリーの後ろの岩がゴゴゴゴゴ・・・と音を立てて形を成していく。

「イタチごっこにしかならないわよ。あたしの星霊がそれを壊して、操られたら閉じるだけ」
「・・・でもさ、ルーシィ」
「壊す?この岩を?」

そう。
その岩人形(ロックドール)はかなりの大きさで、普通の岩を壊すのだって難しいというのに、こんなに大きくなってしまってはますます難しくなる。

「岩ー!?」
「ルーシィ!岩を壊せる星霊は!?」
「い、いないわよっ!ルーの魔法で何とかできないの!?」
「僕の魔法は後方支援重視だからね。これがティアみたいな攻撃する事に特化した魔法なら話は別だけど・・・っと!」

振り落された岩人形(ロックドール)の拳を跳んで避ける。

「うわわわっ!」
「・・・ルーシィ!しっかり掴まっててよ!」
「へ?・・・きゃあっ!?」

言うが早いがルーはルーシィを横抱きに抱え、走り出す。
まぁ、早い話が『姫様抱っこ』というヤツだ。

「ちょ、ちょっとルー!?」
「ごめんルーシィ」
「な、何!?」
「石に躓いた」
「こんな時にー!?きゃっ」
「あぎゅっ」

ずてーんと見事に転ぶ2人。
ルーシィが顔を上げると、そこには海が広がっていた。

「海・・・ここならアクエリアスが呼べる・・・けど・・・」
「もう逃げ場はありませんわよ」

すぐ後ろにシェリーを乗せた岩人形(ロックドール)が迫ってきている。
すると、ルーシィは何を思ったのか海に入り、バッと金色の鍵を構えた。

「開け!宝瓶宮の扉!アクエリアス!」

海に差し込まれた鍵穴からアクエリアスが現れる。

「アクエリアス!?そんな強力な星霊まで持っていらしたの!?」
「敵はあの女!あーゆーのキライでしょ!?やっちゃって!」

ルーシィがシェリーを指さし叫ぶ。
それに対し、アクエリアスは・・・。

「ちっ」

舌打ちした。

「相変わらず態度悪いわね!いいから早くやりなさいよ!」
「お前も相変わらずうるさいな。そんなだから彼氏出来んのだ・・・」
「ほっといてよ!」
「何あの人魚・・・感じ悪ーい」

再びルーは引いた。

「人形撃、操り人形!」

ビキビキと光がアクエリアスに伸び、アクエリアスも操られた状態になる。

「フフ・・・これでアクエリアスは使えませんわ。とっとと帰らせなさい」

普通ならこれで『はいそうですね』と返すのだが、ルーシィにはある策があった。

「いやよ。これ・・・あたしの切り札なんだから」
「なっ!?」

それを聞いたシェリーは驚いたような表情を浮かべ、すぐに笑った。

「だったらその海の力で砕け散るが宜しいですわ!アクエリアス!その女を消してさしあげて!」
「あ」

シェリーの声にアクエリアスが返事とも取れる声を発する。
そして。

「言われなくてもやってやるァァ!」

大事そうに抱えていた水瓶を勢いよく振るった。
海が一気に荒れる。

「うあああああっ!」

当然、ルーシィはその荒れ狂う波に巻き込まれる。

「ふふ・・・本当におバカ・・・!」

得意げに笑っていたシェリーだが、波がこぷっとシェリーにかかる。

「え?ちょっ・・・」
「なーんか危なそうだね・・・逃げよっ!」

ルーは危ない空気を察知し、風を纏って一目散に逃げ出した。

「あああああっ!」
「きゃあああああっ!」

置いていかれた2人はアクエリアスの起こした波に巻き込まれる。
ズザザァ・・・と音を立てて、波が落ち着いた。

「ふふ・・・何が強制閉門だ。私は自分で閉じちゃうんだから♪バーカ」

アクエリアスがスゥゥ・・・と消える。
砂浜には意識はあるが倒れているルーシィとシェリー、岩人形(ロックドール)が残る。

「うふふ・・・」

ルーシィは震えながら笑い声を零し、ふらっと立ち上がった。

「アクエリアスは敵味方関係なしに大波を起こすのよ」

そう言うルーシィの目はグルグル渦巻いている。

「キー!迂闊でしたわ・・・」

そう悔しそうに言うシェリーの目もグルグルだ。

「しかし岩人形(ロックドール)は倒せなかったようですわね」
「それが何?操り人形は操る人がいて初めて動く・・・」

そう言いながらお互いがお互いを指さす。
・・・実際には、お互いが背を向けた状態で立っている為、指さす先には誰もいないのだが。

「つまり岩人形(ロックドール)は倒す必要ないの。アンタさえフラフラに出来ればね」
「ぬぬぬ・・・」

まぁ、相手をフラフラにするには自分もフラフラにならなければいけないのだが・・・。

「これが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士よ」
「引き分けに持ち込むなんて・・・」
「引き分け?あたしの勝ちよ!」
「何をおっしゃいますの?アンタだってフラフラ・・・」

・・・と言いながら、先ほどのプルーの様にお互いをポコポコ殴る2人。

「じゃあこれで・・・どうかしら!」
「んぎょ!」

ルーシィが右腕をシェリーの首元に叩き込む。

「わ、私・・・が・・・負け・・・」

呟きながらシェリーが倒れる。
それと同時に岩人形(ロックドール)が音を立てて崩れ始めた。

「たとえ私の命の灯が消えようと・・・零帝様への愛に偽りなし」
「死にゃしないわよ!大げさなんだからっ」
「アンジェリカ、私の仇を討って・・・」
「チューーーーーーーーーーーーー!」

シェリーの声が聴こえたのか、アンジェリカが勢いよく飛び出す。

「え?コイツ・・・人形じゃなかったの!?ルー!何とか・・・って、あれ?」

横を向くが、そこにルーはいない。

「アイツ、逃げたのっ!?」

そう叫んだと同時に、ルーシィが膝をつく。
波に巻き込まれた衝撃で足が動かないのだ。
その間にもアンジェリカはルーシィに向かって落ちていく。

「ああああああ・・・!」

ルーシィが叫び、アンジェリカが口を開いた、その時だった。

「チュウウウウウ~!」

アンジェリカの痛みを耐えるような声が響く。
ルーシィがゆっくり顔を上げると、そこにいたのは2人の女性。
いや、1人は女性というには早い・・・でも少女というには大人びた雰囲気だ。
1人は鎧を纏い「HEART KREUZ」と書かれた剣を持つ。
1人は大きめの白い帽子を被り、水で造られた剣を持つ。
その2人を見て、ルーシィは喜びに似た声を上げた。

「エルザ!ティア!」

アンジェリカがズシィンと音を立てて落ちる。
落ちたのを耳で確認した2人は、同時にルーシィを睨んだ。

「・・・さん」

思わず普段はしない「さん付け」をするルーシィ。

(そうだ!あたし達ギルドの掟破って、勝手にS級クエストへ来ちゃったんだ!)

先ほどの歓声はどこへやら。

「私達がなぜここにいるか、解っているな」
「あ・・・いや・・・その・・・連れ戻しに・・・ですよね?」

思わず正座するルーシィ。
そこにバットタイミングでハッピーがやってきた。

「良かったー!ルーシィ、無事だったぁ?」

だが、その飛行が止まる。
ハッピーの目に映っているモノが確かなら、そこには正座して震えるルーシィの他に、自分達が1番怖れていた存在がいる。それも2人も。
それを見たハッピーは慌てて逃げる、が。

「ティア」
「解っているわ」

短い言葉を交わし、ティアは一瞬にしてハッピーを捕まえた。

「ナツはどこだ」
「ちょっと聞いて・・・!」

ルーシィは説得を試みる。

「勝手に来ちゃったのは謝るけど・・・今、この島は大変な事になってるの!」

その言葉に2人は真っ直ぐルーシィを見つめる。

「氷漬けの悪魔を復活させようとしてる奴等がいたり、村の人達はそいつ等の魔力で苦しめられてたり、とにかく大変なの!あたし達・・・何とかこの島を救ってあげたいんだ」

これが通常の依頼だったなら、エルザもティアもそれに賛成しただろう。
だが、この場合、2人の目的は島がどうこう云々の話ではないのだ。

「・・・島が大変なのは解ったわ」
「!じゃあっ!」

ティアの言葉にルーシィの顔が輝く。
だが、ティアの言葉はここで終わりではない。

「でもアンタ、ギルドの掟も守れない分限で何を言っているの?」
「・・・え?」
「私達の目的は掟を破った愚者を連れ戻す事よ。それ以外に興味なんてないわ」
「私も同意見だ。興味が無いな」

ルーシィが目を見開く。

「じゃ・・・じゃあ、せめて最後まで仕事を・・・!」

全部言い終える前に、エルザがルーシィの喉辺りに剣を突き付ける。
ティアも魔法鞭(マジックウィップ)を手にし、棘のついた鉄球付き+刃が鞭中に生えた鞭を構えていた。

「仕事?違うぞ、ルーシィ」
「アンタ達はマスターを裏切ったの」

そう言う2人の目は氷そのもののようだ。
ティアに至っては普段から冷たい目が更に冷たくなっている。
まるで、「この仕事を続けるようなら躊躇いなく殺す」とでも言うように・・・。

「ただで済むと思うなよ」
「無傷で済むとは思わない事ね」

それを見たルーシィは、ただただ恐怖を感じていた。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
うわー!もう10月が終わるー!つい昨日始まったばかりだと思っていたのにー!
・・・なんて考えている今日この頃。

感想・批評、お待ちしてます。 
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