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エネミーワールド

作者:そうん
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2章 これが「異能者、無能者の会」
  第十一話「仲間」

 
前書き
前回からの続きです。
あ、それと9話の「負の連鎖」~12話までこの話を持っていくことになりました。
ひとくくりにすると、「記憶編」とかそこらへんになりそうですね。まぁひとまず記憶編と呼びますか。正直パッとしないんですが、とりあえずはそういうことにしましょう。
後々まとめたいと思いますね。 

 
第十一話「仲間」

僕は今、部の部屋の前にいる。過去を思い出し、改心する。
身勝手すぎた自分の行動に悔いを感じた。
そして、過去の分の悲しみも背負っている。もう僕は迷わない。自分が今あるべき姿を見せるだけだ。本来あるべき姿…それを僕はどう受け取るか…。僕は…自然、あるがままの状態を見せる。それだけだ。

ガチャリ…。

ドアノブに手を触れた時、内側から聞こえてくる音響は止んだ。急な静寂に僕はさらに緊張する。堂々と開こう。そう…それがいい。

シャイン
「…た、ただいま。」

ついに僕は一線を超えた。
その時の光景は今も覚えている。ある意味、衝撃的だった。

メル
「ごめんなさい。」

ユウタ
「すみませんでした。」

シィラ
「すみません。」

一同から返ってきた言葉は謝罪の一言だった。
僕は今にも泣きそうだ。謝罪されるような人間ではないのに…むしろ僕が謝らなければならないと言うのに…

シャイン
「すみませんでした‼」

この一言に尽きた。僕が唯一できること。それだけだった。

ユウタ
「ぇ…今なんて…」

シィラ
「なんで謝るの…?悪いのは私たちなのに…」

二人は驚きと申し訳なさを混ぜ合わせたような微妙なそぶりをしていた。むしろこちらの方が複雑な心境だ。

シャイン
「いや…僕も悪かったよ。唐突に出てちまって…。」

ユウタ
「…。それより…メル、見てくださいよ。」

シャイン
「!?」

僕はその衝撃を忘れない。かつてないインパクトを感じた。今までとは考えられない。
メルは…僕の方を向いたまま、ずっと頭を下げていた。その地べたには水滴のようなものが落ちてきていた。僕は…初めて見てしまった。メルの泣顔を…。

メル
「ごめんなさい…全部私のせいよね…私が身勝手だから…」

シャイン
「それは違うよ…。それは違う…。」

僕は否定する。こんなメルを見るのは初めてだが、僕が見たかった皆の姿とは相反するものだった。改めて知る…僕のしでかした有様を…。

メル
「いえ、私が悪いの…皆に迷惑かけて、それでもまだ足りなくて…」

シャイン
「いや、いいんだ‼それでいいんだ。メルはメル以外ありえない。いいんだよ。ありのままの自分で…。」

メル
「でも…それなら…」

僕はこの見苦しいような雰囲気が嫌いだってことが今思い知る。僕が望んでいたのはもっと明るく…もっと…生き生きとした部活だったはずだ…。僕は何をしている…僕は…

メル
「えいっ‼」

シャイン
「ぇ!?な、何を!?」

いきなり飛びつかれ、動揺せざる負えない。さっきとは打って変わって明るく、生き生きと…ありのままを見せているような…そんな一番の笑顔を露わにした。

メル
「だってありのままの自分って言ったじゃない?それとも嘘…だったの?」

シャイン
「いや、それは…。」

思わず目をそらしてしまう。というより、僕にそういう耐性は一切ない。顔が近いんだよ。ともかく…。それと抱きつかないでくれ…。

シィラ
「あらあら…。」

ユウタ
「やれやれ…先輩、よかったですね。」

抱きつかれている僕に二人はクスクスと笑い拍手を送る。

シャイン
「いや、お前らもなんとかしてくれっ‼く、苦しい…。」

本当にヤバイ…。首がし、締まるっ‼し、死ぬゥ‼

ユウタ
「ぁっ!ちょ、メルそれはアカンって‼」

ユウタが慌てて駆け寄るがその時…

ポキッ…。

今、聞こえてはいけないような何かが聞こえてきたような…幻聴?いや確かにヤバイ…。首…ぁあ…。

シィラ
「もう遅いわね。もうポックリ逝っちゃってるわね…これ…。」

首を締め付けられ、とうとう意識が保てなくなる。ぁー、神様…僕は本当にこんなことで死んでしまうのでしょうか…?





目が覚めると…僕は、皆に囲まれていた。どうしたんだろう…。あれ、僕何してたっけ…。

メル
「う…ぅ…。」

目の前には、メルらしき人物の顔が映る。あれ…なんで泣いてるんだ?

シャイン
「ん…ここは?」

ユウタ
「はぁ…やっと起きましたか…といっても十分しか経ってないんですけどね。」

は?十分?何がだ?

シャイン
「ん、どういうことだ?」

僕の発言にユウタとシィラの二人は仕方が無いと言わんばかりに頭を掻いていた。

シィラ
「はぁ…。やっぱりね…。何も覚えてない…と。」

ユウタ
「ハハハッ‼面白いこと言うじゃねぇか。一種の記憶障害ってやつか。」

覚えてない?記憶障害?何言ってんだこいつら?僕を舐めてるのか?

シャイン
「一体なんなんだよ…。」

僕は身体を起こそうとしたが…うまく身体が動かせない…少し麻痺?しているのだろうか…。しかしなんで?

ユウタ
「どうやら、身体も動かせないようですね。まぁ、無理もないですけど…。ね?メル。」

満面の笑みでユウタはメルに視線を浴びせる。
その瞬間、僕は恐ろしいものを見てしまった…気がする。

ユウタ
「うぐぁっ!?」

メルのエルボーが火を噴いた。その瞬間速度はまさにマッハ並みの鋭い突きだった気がする。
もちろんユウタは腹を抱えて立てなくなった。

メル
「ん?何が無理もない。ですって?誰が、どこのどいつが言ったのかしらね?」

シャイン
「ひ、ひぇええ…」

メルは容赦無く、腹を抱えるユウタを踏みつけにしていた。しっかし恐ろしい。その凶暴性は増しているどころか日に日に著しく物騒になっている。

メル
「ふぅ…邪魔者は片付いたわ。さて…。」

シャイン
「ぇ、何するのさ!?」

思わず僕は彼女の手を引く…。いや、せざる負えなかった。だって瀕死状態のユウタをなぶり殺そうと言わんばかりに、ソファーを片手にとっていたからだ。あれ、この光景…どこかで見たような…。

メル
「何って、始末するんじゃない。」

シャイン
「いやいやいや、そんな物騒な事軽々と言わないでくれよ。」

メル
「どうしても?」

シャイン
「あぁ…どうしてもだ。」

メルは潔くソファーから手を置き、ため息を吐くと同時に背もたれにもたれかかった。

メル
「はぁ…。」

こんなにしょぼくれたメルを見るのは今学期初めてだ。それにしても…僕の知っているメルは…どこに行ってしまったんだろうか。

シャイン
「メル…どうしたんだ?そんな顔して、いつものお前らしくないじゃないか。」

すると物凄い視線を僕に浴びせた。メルの目には、怒りに満ちていそうでそうでない相反する、哀しみの目をしていた。僕は思わず目を逸らす…。僕の視線の先には…片手で頭を抱えるシィラの姿があった。

メル
「何よ…。本当の私を知らないくせに…ありのままの私を…。もういいわ、帰る‼」

シャイン
「ちょっと‼」

バタンッ‼

メルはひどく赤面し、部屋から出た。
僕はどうすることもできなかった。ただただ立ち尽くすだけしかできなかった。彼女は確かに涙を流していた。気のせいじゃない。確かに彼女は今、僕に裏切られたんだ。僕のして欲しくないことを、僕がしてしまった。

シャイン
「メル‼」

シィラ
「早く行ってあげてよ‼このバカっ‼姉御の気持ちをちっとも理解しないで…ホントにあなたって人は…。」

僕は、後悔する。僕はありのままであろう彼女の姿を受け入れず、ただ「変だな」と軽率に思っていた。僕はどうしようもない人間だ。自分を想うばかりで他人には全くもって面と向き合う事はなかった。それくらい僕は愚かだ。

シャイン
「…ハ…ハハハ…。ホントに僕はバカだ・・・」

シィラ
「何笑ってんのよ‼早くしてよ‼姉御を‼姉御を止めて‼早く‼」

シャイン
「…。わかった。僕が、止めて見せる。絶対に…。」

僕はまた走る。走る。今度は、自分のためではなく…友のために…。僕を友人と言ってくれた彼女のために…。例え力尽きようとも…僕は諦めない。絶対にだ。仲間なんだから…大切な仲間の一人だから・・・僕は諦めたりしない。 
 

 
後書き
次回、記憶編完結。ということで新しい話へと物語は進行します。
ここで次回予告をしてみたいと思います。次回予告なんて(´・ω・)イラネとか思ってる方も少なからずいたりすると思うので 少しだけ・・・なんと、とある事情で姿を現さなかったあの彼が、戻ってきます。 あえて人物は公表していないのですが、もうお分かりですね。そうです、あの方です。
これ以上言うとアレなんでここらへんでやめておきましょう。では次回でお会いいたしましょう(ヾ(´・ω・`) 
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