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ドラゴンクエスト5~天空の花嫁……とか、

作者:あちゃ
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プレイバック Part.1 その2

ビアンカの視点
(レヌール城)

はぁ~……
この子の勇気に……心意気に希望を託したのだけど、ここ(レヌール城)へ着くまでの間に後悔へと変わってた。
私が冒険に必要な物を、買ったり家で見つけ出したりして揃えたのに、いざ町の外へ出たらガクガク震えて頼りにならない。

唯一、私が何も考えず近道の森を通過しようとした時だけ、視界の悪い場所は危険だからと言って、安全ルートを提示してきた事だけが頼りになると思えた時だった。
ただ……途中で『帰ろう』と言わないのだけは評価出来るわね。

まぁ流石に私もレヌール城の威圧感に気圧されたけども、アルスの手前それは見せられない。
足早に正面入り口等を調べ、入れる箇所を見つけ出そうと動き回る。
幸い直ぐに入り込む箇所は見つかった。
裏手にあるハシゴを登り、最上階からの侵入だ。

先に進む私に遅れまいと慌てて付いてくるアルスの姿は可愛かった。
だが、それは長続きしないもので……
城内へ入った途端、入り口が閉まってしまい閉じ込められたのだが、その時の音に驚いたアルスが、事もあろうか私のスカートの中に隠れようとしたのだ!

あまりの出来事に最初は為す術がなかったんだけど、彼を殴りつける事により何とか事態を収拾出来た。
ハッキリ言って信じられない!
いくら恐いからと言って私のスカートに隠れるなんて……己のエッチな心を満たす為、ワザと起こした行動だと私は思ってる。

「こ、こんな所に何時まで居ても仕方ないわ……猫ちゃんを助ける為にサッサとオバケを退治しなきゃ!」
今後も何かある度に怖がってるフリをしてスカートに隠れられては堪らないので、私はアルスから距離を置こうと考える。

その為、彼を置いていくかの様に先へ進もうとする私。
だが、それが失敗だったのかもしれない……
突如周囲が暗くなり、四方からガイコツが襲いかかってきて、私を何処かへ連れ去って行く!

気が付けば狭く光の存在しない場所に閉じ込められていた。
何とか事態を改善しようと、闇の中で動いてみるが……
身体を動かすのも困難な程狭い場所の為、私の力では何も出来ない。

恐怖と不安から涙が出てきそうだったが、それを何とか堪え身体を動かして抵抗してみせる。
何時か何らかの隙間が出来るかもしれない……
そんな希望に縋って私は闇からの脱出に身を藻掻かせる。

どのくらい藻掻いてたのか解らない……
突如頭の上で重い何かが動かされる音が聞こえてきた。
極度の不安と恐怖で泣きそうだったけど、そんな弱いとこを見せる訳にはいかないから、何とか堪えて頭上を睨み付けている。

するとそこには……今にも泣きそうなアルスの可愛い顔が!
安心と喜びから彼に話しかけようとしたのだが、その隣に奇妙な物体を発見し私は言葉を飲み込んでしまう。

「ア、アルスの……友達?」
何というか……土偶の様な……ハニワの様な……奇妙な物体を見て、とても間抜けな質問をしてしまう私。
さっきまでの恐怖感は全て吹き飛んでしまったわ。

「え~と……ビアンカを助ける為に墓石を一緒に押してくれたんだ……」
どうやらアルスも困ってるのだろう。
些か戸惑い気味に隣の変な奴の事を話してくれる。

「あの……僕達これからこの城に居るオバケを退治するんだけど……一緒に行く? 君の仲間かもしれないけど、オバケ退治を手伝ってくれる?」
どうやら今し方から付き纏ってきたらしく、アルスも怯えながら話しかけている。

(ズズズ!)
すると動く石像はアルスに間合いを詰めてきた。
でも攻撃するとか、襲いかかるとか、そんな感じではなく、何となく自己表現みたいな感じに思える。
多分イエスの合図なのだろう……

「じゃぁ私達は友達ね。よろしく、私はビアンカよ! そしてこの子がアルス」
助けてくれたのだし、敵意は感じられないのだし、お友達が多いのは良い事なので、私は元気に自己紹介を済ませる。

するとコイツは視線だけを私に向けてアルスへと詰め寄った。
何だろうかコイツ? あまり私には懐いてない感じがするわ……
もしかして……コイツはメス? 見た目だけは可愛いアルスに気があるのかしら?

参ったわね……私は恋のライバルじゃないのに……
どうにかして恋敵的ポジションから逃れないと……
う~ん……そうだ!

「ところでこの子……名前は何て言うの?」
「え、知らないよ」
それはそうだろう。喋れないみたいだし、名前があるのかも疑問だ。

「でも友達になったのに名前が無いんじゃ呼ぶ時に不便よね……考えてあげましょうよ!」
「う、うん……ビアンカには何か良い名前があるの?」
あるわよ。良い名前を付けて、私は敵ではないと印象づける、名前があるわよ!

「そうねぇ……石のお人形だから“ストーンドール”ってのはどう!?」
絶対に見た目からして、そんな格好いい名前は似合わないんだけど、私は味方である事を示す為に、媚を売る様な名前を提案する。

「それだと長すぎだよ」
そんな事はどうでも良いのよ!
「何よ……じゃぁアルスには何か良い案があるの!?」
変な名前で私に敵意を向けさせないでよ

「じゃぁ“ストーンドール”を略して“スドー君”ってのはどうかな?」
“スドー君”かぁ……男の子っぽい名前に聞こえるけど、下手に女の子である可能性を示唆しても、話がややこしくなりそうだし、アルスが命名したのならコイツも納得しそうだから、あえて反論しなくても良いか。

「へー良いじゃないスドー君って! あなたはスドー君と呼ばれるのでも良いかしら?」
一応確認しては見るが……怒ってる様子は見当たらない。
それどころか、何となくだが頬を染めてアルスに寄り添ってる様に見える。

「どうやら気に入ってくれたみたいよ。良かったわねアルス」
本当に良かったわ。
これで私が恨まれる事はなくなりそうだし……



暫く城内を捜索していると、図書室の様な場所で女の幽霊に遭遇する。
その姿があまりにも恨みがましく恐ろしかったので、取り敢えず臨戦態勢で挑んでみる。
しかしアルスは危険がないと言い切り、その幽霊が導くままに進んで行く。

渋々付いて行くと王様達のお部屋みたいな場所に連れてこられた。
そこではさっきの幽霊が、か細い声で何かを訴えてくる……
あまりにも聞き取りづらく内容を把握出来ない。

聞き返そうにも幽霊の表情(前髪で顔を半分隠してる感じ)が恐く、何度も聞き返せないし、近付いて声をハッキリ聞こうとも思えない。
兎も角恐いから此処から早く立ち去りたいわ……



今度は王様らしき幽霊に遭遇する……と言っても、私は最初気付かなくって、アルスの言葉を信じて付いていっただけなんだけど。
ただ、こっちの幽霊は見た目の怖さはなかったわ。
でも一方的で不愉快な人物(幽霊)であることは間違いない。

女の幽霊とは違う理由で会話が成り立たない為、これまた早々にコイツの側から離れオバケ退治に没頭する私達。
それに会話こそ成り立ってないが、王様幽霊は色々とヒントをくれたので、それに従って行動する事が出来た。

つまり、一旦地下へ行き松明を見つけたら、それを使って真っ暗闇な4階で、オバケの親玉を退治するって事!
明確な目的さえあれば、物事の解決なんて簡単よ!
私達は軽くなった足取り(スドー君は“ズズズ”と引き摺ってるが)でボスの所へ辿り着きました。

「ふぇふぇふぇ……こんな夜更けに人間の子供が何用かな?」
「ぼ、僕達はこの城で悪さをするオバケを退治しに来たんだ!」
見た目がガイコツみたいな骨と皮だけのオバケに、大分怯えながらアルスが律儀に答えてる。

「ふぇふぇふぇ……随分と勇ましい子供だのぅ……どれ、ワシがお前等にご馳走してやろう。もうちょっと近くに来るといい」
「いえ、遠慮します。知らない人から物を貰っちゃダメって言われてますから」
確かにそうだが、今はそう言う事を言ってる場合じゃないと思う。

「ふぇふぇふぇ……何じゃ、ワシが恐いのか? 臆病なガキ共じゃ!」
「な!? こ、恐くなんて無「はい、とっても恐いです。特に顔が!」
今の私には恐い物なんて存在しなくなっている。それなのに予想外の侮辱を受け反論しようとしたのに、アルスが怯えながら遮り勝手に怯えてる事を認めてしまう。

「ちょっとアルス! 私は恐くなんてないわよ!」
アルスはそうかもしれないけど、私は恐くなんてない!
「ビアンカは黙ってて! アレを恐くないって、感覚おかしいよ!」
だがアルスからの反論は、更に私を侮辱する様な内容で怒りが増してきた。

何かを言い返そうと思いアルスを睨み付けていたのだが、突如剣を手にすると床をコンコン叩いて歩き回ってる。
オバケのボスは何かを言っているのだけど、アルスはそれを気にする事なく、不思議な作業を続けてる。
疑問に思いながらもアルスの後に付いていきながら、辿り着いた先はボスの真横だった。

まるで何かを避ける様な感じにボスの側までやって来たアルス。
そんな彼を見たボスは「え、えぇ~い……礼儀を知らぬガキ共じゃ! 目上の者に対し横から話しかけるとは何事じゃ! しょ、正面に回って話しかけよ!」と言って怒ってる。

「ヤダよ……だって落とし穴に落ちたくないモン!」
だがアルスは突然奇妙な事を言い出した。
落とし穴……? 何のことを言ってるのだろう?

「な、な、な、何を言ってる……お、落とし穴なんて此処にはないよぉ!」
アルスの言葉にあからさまに動揺するボス。
「でもコレ……スイッチでしょ?」
そしてボスの事を無視する様に、手摺りのスイッチを押すアルス。

「ほら……スイッチ押した途端、落とし穴が開いたよ。あなたの正面に居たら、僕達は落とし穴に落ちてたよ。こんな間抜けな罠に引っかかる奴居ると思ってたの?」
「何故だ……何故この落とし穴の存在を知っていた!?」
そうだ……何故だ!? 何でアルスはそんな事を知っているのだろうか?

「僕達はここへ来る前に、地下の台所に行ったんだ。其処ではガイコツ達が大きなお皿に料理の準備をしていた……とても普通の食材が乗るとは思えない。で、食材は人間……それも子供だろうと考えたんだ」
「だ、だが……それと落とし穴と何の関係がある!?」

「オジサン馬鹿だろ! あの大皿の位置は、オジサンが座ってる玉座の前の真上なんだよ! オバケ達に怯えていても、僕は周囲の状況をちゃんと見ているんだ! オジサンが今にも押したくて手すりのスイッチを撫でてたのも、ちゃんと見てたんだよ!」

凄いわ……この子は戦う事だけ出来ないけれど、それ以外の事には頭が回る凄い子なのね!
そう言えば森を抜けず安全なルートを提示したのもこの子だし、頭は良い子なのかもしれないわ。
だからこそ戦闘が恐く感じるのよ。

「くっ……」
作戦を見破られたボスは、悔しそうにスイッチを押す予定だった指を睨み付けている。
こんな小さな子供に見破られたのだから、相当にショックなんだろう。

「僕はオジサンと違って臆病なんだ。オバケは恐いし、地下に居たガイコツも恐い。今だってオジサンの事が恐くて仕方ない。でもね……馬鹿ではないんだよ。オジサンと違ってね!」

更なる嫌味で精神的ダメージを増大させるアルス。
うん。コレが目的でさっき私に対して失礼な事を言ったのなら、今回は許してあげようと思います。
だっていい気味だし!

「こ、このガキぃ!(ツルッ!)あ、あぁぁぁぁ………(ぐちゃ!)」
勿論激怒したのはオバケのボス……
怒りにまかせて立ち上がると、暗くて見えなかったのか自らの落とし穴に落ちて行く……

「お、おい! 親分が落ちてきたぞ!」
「何だって!?」
「親分、大丈夫ですか!?」
「おい、返事しねーぞ……」
「ま、まさか……」
「親分がやられた! 逃げろー!!」





(アルカパ)

全てが無事片付き、私達はスドー君を引き連れ町まで帰ってきた。
しかし朝日が既に昇っており、人々もその日の生活を開始していた。
当然だが入り口の兵士さんも働いており、私達は夜に外へ出て危ない事をしていたのがバレてしまいました。

アルスも戦闘を頑張ってくれれば、もっと早く帰ってくる事が出来ただろうけど……
まぁアルスのお陰でオバケのボスを簡単に倒せたから、その事は言わないでおきます。
結局、一番美味しいとこを持ってったのはアルスだからね。

ある程度お説教が終わった所で、直ぐに猫さんの下へ向かいます。
と言うのも、一旦家に帰ったら絶対にお母さんとパパスおじ様のお説教が待ってると思うの。
この点はアルスと意見が合いました。
だから時間を無駄にしない為、先に猫さんを救出し目的を達成させようと思います。

「お、お前達スゲーな……」
「あぁ本当にレヌール城のオバケを退治してくるなんて……」
例の小島には、悪ガキ二人が猫さんを連れて待ってました。
まさか本当にオバケを退治出来るとは思っておらず、心底驚いて居るみたい。

「そんな事は良いから、約束通り猫さんを渡してよ!」
目的を早く達成したいアルスは、些か焦り気味に猫さんを渡す様訴えます。
気持ちは解るけど落ち着いてほしいわ……

「あ゛ぁ!?」
だけど悪ガキには、アルスの言い方が気に入らなかったらしく、怒りを露わに威嚇してきます。
だけどその瞬間、僅かにスドー君が彼らを威嚇する様な動きをして牽制します。

「ふん……まぁいい。お前等も頑張ったみたいだし、この猫をやるよ!」
どうやらスドー君の威嚇に気付いた様で、動揺しながら猫さんを私達に渡してきました。
猫さんしか見てなかったアルスは気付いてないでしょうけど、完全にアルスの虜になってるスドー君です。

「良かったね猫さん!」
「さぁこんな奴等から離れて、あっちに行きましょう猫ちゃん」
猫さんを助け出したアルスは凄く嬉しそうだ。
私も勿論嬉しいが、スドー君が問題を起こす前に彼らから離れた方が賢明だと思い、アルスを家まで連れて行こうとしました……でも、

「でも変な猫だよね。僕本で読んだ事があるんだけど……この子は猫じゃないよ。地獄の殺し屋と呼ばれてる『キラーパンサー』の子供『ベビーパンサー』だよ!」
と言って猫さんの正体を暴露しました!
え、嘘!? その猫さん……そんなに危険な存在なの!?

「きっとまだ子供だから、相手が子供とは言え人間2人を相手に勝てなかったんだね。まぁあと数ヶ月もすれば、この子も成長し人間の子供2人くらいはペロリと平らげちゃうだろうね。何せキラーパンサーってのは頭が良いから、何時までも苛められた事は憶えているらしいから……」

ちょっと……私達は大丈夫なの!?
確かに苛めてないけど、野生の本能に従って襲われたりしないの?
アルスは安心しきってるし、大丈夫って事よね……?

「さぁ猫さん。これからは僕の家で一緒に暮らそうね! 僕の住んでる場所はね、このアルカパより東のサンタローズって村なんだ。子供の足じゃ時間かかる距離だけど、君の足だったら1時間で行ける距離なんだよ」

アルスは猫さんから手を放す……
だが私の事は勿論、悪ガキ共の事も襲いそうな素振りは見られない。
スドー君の様にアルスの後を嬉しそうに付いて行く……

どうやらアルスはモンスターに好かれる素質を持っている様だ……
と言う事はアルスと仲良くし、尚且つ猫さんとも仲良くなる必要があるだろう。
間違っても襲われない様に……好かれておく必要が大いにあるだろう!
どうするか……どうすれば好かれるだろうか……?
そうだ!

「そうだ……何時までも猫ちゃんて呼ぶのは可哀想よね。私達でこの子にも名前を付けてあげましょうよ!」
とっても素敵な名前を付けて、私が良い子だというのをアピールしよう!
スドー君でも成功した方法だ……きっと大丈夫よ。

「じゃぁ私が幾つか名前を上げるから、アルスが良いと思ったのに決めてね……先ずは『ボロンゴ』ってのはどう?」
スドー君の時と同じように、私が提案をしてアルスがそれに修正を加える……
完璧ね。

「ねぇビアンカ……申し訳ないけど、この子女の子だよ。せめてもっと可愛らしい名前を候補に上げてよ……」
しくじった!
今回はスドー君とは違い、男女の区別が付きやすく、アルスにダメ出しをされてしまった。

チラリと猫さんを見ると、どことなく怒りが籠もってる様に見えてくる。
ちょっと……そんなに牙を剥かないでよ!
私は敵ではないのよ……

「あら……女の子なの。じゃぁ……『チロル』ってのはどう?」
慌てて代わりの名前を提示する。
我ながらチロルは良いと思う。咄嗟に思いついたにしては良い名前だと本当に思う!

「うん。チロルっての良いね! この子可愛いからピッタリだと思う、流石ビアンカだね……凄くセンスが良い! だから僕ビアンカが好きなんだ」
しかもアルスが賛成してくれた。チロルを見ると、アルスの賛成に上機嫌だ!

「あ、ありがと……」
ホッとしたわ……本当に良かったわ。
この後、お母さんとパパスおじ様が私達を迎えに来たのだけど、安心感が大きくて殆ど何も憶えて無い。

ただ、お説教がそれ程長くなかった事と、アルスとパパスおじ様は即日出立してしまった事だけ。



 
 

 
後書き
次話からまたアルス視点再会です。
暫く話が進んだら、またプレイバックシリーズで誰かの視点を書きたいと思います。 
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