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ドラゴンクエスト5~天空の花嫁……とか、

作者:あちゃ
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プレイバック Part.1 その1

 
前書き
この「プレイバック」編は、此処までの別視点物語です。
簡単に言えば、サンタローズの洞窟で大怪我し「ビアンカの為に……」を連呼してたアルスは、ビアンカからしたらどう見られていたかを書いてます。

今後もチョイチョイ「プレイバック」シリーズを入れていきますのでヨロシクちゃ~ん! 

 
ビアンカの視点
(サンタローズ)

昨晩は運良く、パパスおじ様の帰宅に遭遇した。
お父さんの病気を治す薬を買いに来たのだが、何時もより時間がかかった為、偶然立ち会うことが出来た。
あのエロガキだったアルスも、2年ぶりに帰ってきた……随分と疲れ切ってたから以前(まえ)の様にベタベタしてこなかったけど、私のことを忘れちゃってるのかな?

まぁあの子に忘れられてても問題ないから構わないけど、パパスおじ様が一瞬判ってくれなかったのはショックだわ。
でもその後で、『美人になってたから判らなかったよ』って言ってくれたの♥
おじ様に美人って言われて凄く嬉しいわ!






昼前にアルスが私とお母さんの泊まる宿屋に遊びに来ました。
アルスの言い分では、昨晩は疲れ切っててちゃんと挨拶出来なかったから、日を改めてやって来たらしい。
その際、私に抱き付きベタベタする……2年前と変わってないわ。

2年間もパパスおじ様と冒険に出てたのだから、もう少し男らしく変わってると期待してたのだけど……
オッパイやらお尻を触ってくるエロガキぶりは未だ健在だ。
この子に男らしさを求めちゃダメなのかしら?

「僕ね……ビアンカの事が大好きなの♥ 大きくなったらね……ビアンカと結婚するのー♥」
だが彼は男らしさ云々より、トンデモない発言をしてきた。
私と結婚!? だったらもっと頼りがいのある男になって貰わねば……

「おやおや、良かったねぇビアンカ……可愛い弟が出来て。ところでアルス、パパスは……お父さんは今何してるんだい?」
顔に出てたのかもしれない……お母さんは私が嫌がってると気付いたのだろう。
“弟”と言って有耶無耶にし、この話を打ち切る様に逸らしてくれた。

「うん。お父さんはね、朝早くから何処かにお出かけしちゃったみたいだよ。何か用があるみたい……」
「そうかい……時間があれば洞窟に道具屋の主人を探しに行って貰いたかったんだけどねぇ……」
そうなのだ……道具屋のオジサンが帰ってこず、予定を3日も過ぎている。

「……ビアンカは、その道具屋のオジサンが居ないと困っちゃうの?」
アルスは私にキスでもしそうな程顔を近付けて、私の心配をする。
この子は大人しくしていれば凄く可愛い子なのだ……エロガキで無ければ問題ないのに。

「うん……私のお父さんが病気でね、お薬がないと困っちゃうのよ」
「じゃぁ僕、お父さんを探してお願いしてくるね!」
私が顔を背けながら困り事を告げると、元気よく私から離れパパスおじ様を探してくれると宣言する。
色んな意味で助かるわぁ~……





サンタローズの村が大騒ぎだ。
何があったのかというと、アルスが一人で洞窟に入り込み、大怪我をして帰ってきたのだ!
どうやら道具屋のオジサンを探してくれたみたいで、オジサンに抱かれながら帰ってきた。

助けに行った相手に助けられるってどうなの?
自分の実力を把握出来てないのって危険じゃ無いの?
何でパパスおじ様に頼まなかったのよ……私達はそれをお願いしたのに!

とは言え、少なくとも原因の一部を担ってる私達は、慌ててアルスの下へ駆け付ける。
すると彼は血だらけでパパスおじ様に抱っこされていた。
その際懸命に「ビアンカが困ってたから……」とか「どうしてもビアンカの力になりたかったから……」とか訴えてます。

冗談では無い。
“余計なことを!”とは言わないが、最初からパパスおじ様への取り成しを頼んだのだから、勝手に洞窟入って大怪我こさえて、それを私の所為みたいに言うのは止めて欲しい。

道具屋のオジサンも帰ってきたし、これで明日には薬を手に入れられるから、助かったと言えば助かったことなんだけど……
同じくらいの迷惑を被ったことも事実だろう。

パパスおじ様がアルスの怪我をホイミで治し、安心感からか気絶してしまったので、そのまま彼は自宅へと連れ帰られた。
私達も宿屋へ戻ります。

その際にお母さんが言ってたわ……
「助かったのだけど……あの子には下手なことが言えないねぇ……」
はぁ~……溜息が出ちゃう。





夜が明け、朝一番で道具屋のオジサンが薬を届けてくれた。
お母さんは勿論お金を払おうとしたのだけど……
「いやぁ~……今回は随分と遅れちまったから、お代は結構です。その代わりなんですが、アルスボウヤに優しくしてやってくれ。あの子が居なかったらワシはあの場で死んでいたかもしれないのでな……ビアンカ嬢ちゃんの為と言って、アンタ等を困らせてたけど、どうか許してやってほしい」

お母さんは「勿論! あの子には感謝しきれないさ!」と居てったけど、私としては了承しかねる。
昨晩は村の人達に“あんな小さな子供に危険なことをさせて……”的なムードで見られ続けたのだ。
頼んでも無いのに勝手に大怪我されて、その責任を押しつけられるのは困る。
お母さんが感謝してると宣言しちゃってるから、私も口に出しては言わないが……

あの子は見た目だけは凄く可愛いから、大人達の受けが良いんだ。
本人もその事を意識してるらしく、常に手鏡で自分の容姿を確認している。
所謂ナルシストってやつだ! 私は……嫌だなぁ……

さて薬も手に入り、やっとアルカパに帰ることが出来る。
不本意ながら騒動を起こさせてしまったので、アルスの居るパパスおじ様の家にご挨拶に行きます。
朝早いから、あの子が寝ててくれると助かるんだけどなぁ……



だけど世の中巧く行かないの。
尋ねた時は寝てたんだけど、大人が会話をしてる最中に起きて来ちゃった……
でも気まずい感じで居るのはパパスおじ様に失礼だから、「アルスおはよう。昨日はありがとうね」って声をかけたんです。

せめてこれくらいは言わないと……
実際私の為に大怪我をしたのだからね。
本当はこれで当分のお別れのはずだったのに……

「アルス……今朝早くに薬が届いた為、ビアンカ達はこれからアルカパに帰るのだが……女性2人だけでの道中は何かと危ない。送って行こうと思うから、お前も来なさい」
ってパパスおじ様が提案してきたの!

おじ様ダメよ……それは迷惑よ!
だってこの子、足手纏いでしょ!?
おじ様だけで送ってくださるのなら、嬉しくて空を飛んでしまいそうになるけど、この子を連れて行くのは……





(アルカパ)

何とかアルカパに戻って来れた私達……
道中、アルスが妙な行動を取り大怪我をするんじゃ無いかと不安でいっぱいでした。
だから勝手に動かない様に、私がずっと手を握り行動を制限してました。

でも、それはそれで嫌だったわ……
あの子は私の手の感触を満喫するんです。
親指で私の手の甲を撫でたり、手を放した時に匂いをかいだり……

この子……私に対する執着心が気持ち悪い。
それとも美少年に好かれているのだから、女としては喜ぶべきなの?
家に着いて手を放して清々したわ。

でも……お父さんのお見舞いをしてくれてる時、病気が感染(うつ)らない様にとアルスだけ遠ざけたのだけど、その間ずっと私のお尻を眺めてるの。
どんだけエロいのよ……そのうち私、押し倒されるんじゃないの!?

「アルス……暇だったらアルカパの町を見学してきなさい。町の外に出ないのであれば、自由にしてて構わないから」
私のお尻にかぶり付きそうだった彼に、パパスおじ様が町への外出を許可する。

正直助かったわ。
流石おじ様よ……私のピンチを見捨てない。
でもね……身内が私を地獄へ落とすとは思わなかったわ。

「ほらビアンカも一緒に行っておやり。アルスが迷子にでもなったら大変だからね」
確かにこの子を一人で行かせたら、どんな騒動を巻き起こすか判ったモンじゃない。
判断としては正しいのだけど、私が付きっきりで面倒見なければならないのには憤りを感じる。



渋々だがアルスの手を引いてアルカパの町を案内する私。
何て優しいんだろ、私。何て良い子なんだろう、私。
そんな事を考えながら町を歩いていると、私の視界に無視出来ない事件が映り込んできた。

町の南にある公園……そこの池の中央に島があるのだが、そこで知り合いの悪ガキ共が奇妙な猫を苛め遊んでいた。
コイツ等は何時も碌でもない事ばかりして遊んでいる。
今日もそうだ……猫を苛めて遊ぶなんて許せないわ!

「ちょっとあなた達! その猫ちゃんが可哀想でしょ……今すぐ放してあげなさい!」
「な、何だよビアンカ……コイツ面白い声で泣くんだよ。ビアンカも一緒に遊ぼうぜ!」
確かに随分と変な声でなく猫ではあるけれど、それを理由に苛めて良い訳ではない。
何とかしてコイツ等から猫を取り上げないと!

「いじめちゃ可哀想だよ……その猫さんを放してあげてよ」
どうするかを悩んでいたら、アルスも猫を放す様訴えてきた。
解ってるじゃない……弱い者イジメなんてダメだって事を!

「何だよチビ! うるせーんだよ……俺達が何をしようが勝手だろ!」
「勝手じゃないわよ、弱い者イジメをするなんて最低よ! 今すぐ猫ちゃんを放してあげなさい!」
こんな小さな子にも解る事を、大きなお兄ちゃんがするべきではないわ!

「じゃ、じゃぁレヌール城のオバケを退治して来いよ……そうしたらこの猫をあげるよ」
しかし2人も後には引けないらしく、身勝手な交換条件を突きつけてきた。
ムリよ……レヌール城のオバケは、この辺では有名で凄く恐い存在なのよ。
それを子供だけで退治するなんて……

「分かったよ……レヌール城のオバケを退治してくれば良いんだね。でもその間、猫さんはどうするの? また苛めるんだったらダメだよ。絶対にオバケは退治してくるから、先に猫さんを放してあげてよ!」
私がオバケの存在に怯んでいると、アルスが勝手に話を進めて行く。

どうしてこの子はオバケ退治を了承出来るの?
私より弱いのに……町の外でモンスターを見かけただけで、凄く怯える程臆病なのに、どうして簡単にオバケ退治を引き受けちゃってるの!?

(ポカリ!)
「うるせー、お前等のオバケ退治が先だ! 出来もしない条件に、何で俺達が従わなきゃならないんだ!? いいから黙ってあっち行け馬鹿チビ!」
「うわぁ~ん!!!!」

事態について行けず困惑していると、猫の解放をしつこく迫ったアルスが、イジメっ子の一人に頭を殴られ大泣きする。
こんなにも弱い子なのに、猫さんを助ける為自らを犠牲に出来る意思を持ってるんだ……

だがらサンタローズでも無茶をして……実際大怪我までして洞窟に入り、道具屋のオジサンを助けに行ってくれたんだ。
私は少し誤解してたのかもしれない……この子は弱いけれど、臆病ではない。何かの目的があれば、凄い勇気が沸き起こってくる。

「アルス、もう泣かないで。私と一緒にレヌール城のオバケを退治しに行きましょう」
大泣きするアルスの頭を撫で、私も決意する。
あの猫を助け出す為に、今夜レヌール城へ行きオバケを退治してみせる!

「良いあなた達! 絶対に猫ちゃんを苛めてはダメよ! 私達は直ぐにでもオバケを退治してくるのだから、その間は優しく世話しなさいよ!」
「うるせー早く行けよブスビアンカ!」
私は念を押し猫の安全を約束させる……が、ムカツク暴言で返された。

「ビアンカはブスじゃない! 謝れ馬鹿デブ!」
だけど泣いていたアルスが反論。
「なんだと馬鹿チビ!?」
でも体格が大きい相手の威嚇に、ビクッと身を縮めている。

「わっはっはっはっはっ……ビビってやんのこのガキ。こんな臆病者にオバケ退治が出来る訳ねーよ」
確かにその不安は大きいが、それでも私はアルスに掛けてみようと思う。
恐くても猫の為に決意出来るその勇気に……
恐くても私への侮辱を許さない心意気に……



 
 

 
後書き
私は思う。
エロさは立派な男らしさだと! 
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