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大人の階段登る君はビアンカ……

作者:あちゃ
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淡い恋、悲しい別れ

 
前書き
幼き日……アルカパでリュカと別れてから、この物語が始まります。 

 
<アルカパ>


ちょっとスースーして恥ずかしいな。
リュカとパパスおじさまのお見送りには、お父さんとお母さん以外に、出入り口を番する兵隊さんも来ていた。
何故か悪ガキ二人組も来ている。
小声で『早く帰れ』とか『もう来るな』とか言っている。
頭にくるわねぇ!

パパスおじさまもみんなとの話が終わり、リュカを誘い町の出口へ歩き出す。
リュカも私の方を見て、手を振り別れを告げる。
私は、堪らなくなりリュカの元へ走り寄り、
「リュカ、また一緒に冒険しましょうね。きっとよ!」

本当は、もっと違う事を言いたかったけど、みんながいる前では恥ずかしくて言えなかった。
でも、そのかわり私はリュカにキスをした。
リュカの唇は柔らかかった。
リュカのキョトンとした顔が可愛かったが、またすぐにいつもの笑顔に戻ると、
「またね」
って、優しく微笑んでくれた。
絶対約束だよ……


「おやおや、ビアンカはリュカの事が好きになっちゃった様だねぇ……」
私がリュカの姿を見えなくなるまで見つめ続けていると、お母さんが嬉しそうに話しかけてきた。
「そ、そんな……わ、私は……ただ……その……」
しどろもどろになりながら、私は顔を真っ赤にして俯いてしまった…
だって、私はリュカの事が大好きになっちゃったから…

「うん……大好き……」
そう言うしかない……恥ずかしいけど、好きだと言うしかないの。
「そうか……じゃぁ、もっと良い女にならなきゃね! あの子(リュカ)は間違いなく良い男になるよ! ビアンカも負けてはられないよ!」
「うん!」
そうよ…次逢うのが何時になるか分からないけど、リュカはもっと格好良くなるわ。
私はリュカの隣を一緒に歩いても、誰にも笑われない様にならないと!
(リュカ)と釣り合いが取れる女に頑張ってなるわよ!


次の日から私は自分磨きの為に、今まで以上の努力を行いだした。
料理を始めに、家事全般をお母さんに教えてもらう。
でもそれだけじゃダメ……
リュカは大人になったらどんな職業に就くか分からないけど、もしかしたら冒険者になるかも知れないので、私も魔法の勉強を頑張り出しました。

今までは魔法の勉強は必要とは思って無かったけど、リュカと共に……いえ、リュカの傍らに居る為には、魔法の事をしっかりと学ばないとダメだと気付いたの。
リュカの唱える魔法の威力は桁違いだ。
しかも魔法をその場に合わせて改造する事までやってのける!
これはリュカが魔法の基本的な知識を網羅しているから出来るのだろう。
将来、リュカと共に冒険をするのなら、足手纏いにならない様、私も魔法の事を完璧に知る必要があるのだ。
だから私は教会へ通い、神父様に魔法の事を教わるのだ。

教会で勉強していると、ジャイーとスネイが近寄ってきて『そんな詰まらない事してないで、俺達と遊ぼうぜ!』って、声をかけてきたの。
私は教会にある魔道書を読みながら、その内容を一生懸命に理解しようと頑張っていたので、悪ガキ2人の顔をチラッと見て『そんな暇は無いわよ!』って突き放してやったわ。
その時の2人の顔は忘れられないわね……

私もリュカが教会で、この魔道書に熱中している時に、彼等と同じ顔をしていたから……
今だから分かる……リュカは勉強家だ!
いくらパパスおじさまが、リュカに剣術や魔法を勉強させても、本人にやる気が無ければ、あそこまで強くなる事は出来ないだろう。
何時も可愛く平和を望む一方で、常に自分を向上させる事に余念が無い……
か、格好いい……

どうしよう……年下なのに格好良くって頼りになって、そして可愛くって……
私、リュカの事を考えると、変な気分になってきちゃうの……
好きで……好きすぎて……こう……胸が熱くなってきちゃうの!
リュカがサンタローズへ帰ってから、まだ1週間も経って無いのに、もう逢いたくなってしまっている。
リュカも私の事を思ってくれているかな?
そうだったら嬉しいな。






リュカと別れてから2ヶ月が経過した頃、王都ラインハットでとんでもない事件が発生した!
何と王子様のヘンリー殿下が、何者かに攫われ行方不明になってしまったと言うのだ!
しかも、その何者かって言うのがパパスおじさまだとラインハットは言っているみたい。
そんなワケ無いじゃないの!
パパスおじさまが誘拐なんてするワケないわ!

でも一緒についていったパパスおじさまの息子……つまりリュカも、犯人と言われているパパスおじさまも行方不明で、親子でヘンリー殿下を攫ったと専らの噂になっている!
でも、きっと違うわ!
リュカ達が行方不明なのは、ヘンリー殿下を攫った犯人を追いかけているからよ!
結構な強敵で、直ぐに帰る事が出来ないでいるのよ!
でも周りの大人達は、リュカ達が誘拐犯だと頻りに言っている…

昨日なんか町長さんが尋ねてきて、お父さんとお母さんに言っていたわ……
「お前さん達はパパス殿と親しい間柄だ。私も町民も、お前さん達を疑う事は無いのだが、ラインハットは疑って来るだろう……そうなれば、この町を滅ぼす為に兵を寄こすかもしれないのだ! もしそうなれば、私はこの町を守る為に、お前さん方を全員差し出さざるを得ない……申し訳ないが、今の内から他へ移り住む準備を始めてくれないか。そして、なるべく早くに余所へと引っ越して貰いたいのだ……私達には、それ以外の方法でお前さん達を救う事が出来そうにないのだ……」

私はお父さん達がお話をしている部屋の外で静かに聞き耳を立てていた……
町長さんの提案に、私は声を押し殺して泣いていた……
私は此処で……アルカパで、リュカとパパスおじさまが悪いヤツをやっつけて、また私に逢いに来てくれる事を期待していた……
でも、それも出来そうにない。

私達は、慣れ親しんだこの町を捨て、別の土地で身を潜めて生きて行かねばならないのだ……
リュカに逢いたい……直ぐに逢えると思っていた……
でも、もう逢えないのだ。
町長さんが席を立ち、帰ろうとこちらに近付いてくるのが見えた。
慌てて私は自分の部屋へと逃げる……そして枕に顔を埋め、声が漏れない様に泣き出した。
もうリュカに逢えない……もうアルパカに帰れない……
何もかも失った気がして、何もかも不幸に思えて……
私は泣く事しか出来なかったのだ。

気が付くと私の隣にお母さんが居た。
何時の間に入ったのか、ベッドに腰掛け私を見つめていた……
「ビアンカ…聞いていたのね……」
私は顔を上げると、涙が止まらない状態のまま黙って頷いた。

「そう……じゃぁ良く聞きなさい。この事で泣くのは今日で最後にしなさい! アルカパを離れる事は悲しいわ……リュカ達に逢えなくなる事も凄く悲しいわ……でもね、その事を悲しみ不幸だと泣く事は、リュカやパパスが誘拐犯だと認めるのと同じ事なのよ!」
私はお母さんの言葉に驚き目を見張る!

「お母さんはね……リュカもパパスも犯人では無いと思っている。むしろ犯人を追いかけて、何らかの罠に嵌ったのだと考えているわ! でもね、あのパパスの事だから、きっと何時の日か本当の犯人を捕まえ、自らの名誉を回復し、私達の前に姿を現すはずよ! ビアンカ……貴女が本当にリュカの事を好きなのなら、全世界がリュカの敵になっても、貴女だけは味方で居続けなさい!」

大好きなリュカの為に……そうよ!
リュカもパパスおじさまも、そんな事をする人じゃないわ!
私が信じないでどうするの!
私は顔を上げ、溢れ出る涙を何度も拭い、お母さんを見つめ大きく頷いた。
リュカは何時の日か必ず私の前に現れてくれる……
アルカパから出て行かなければならないのは悲しいけど、それはリュカの所為じゃ無いわ……
これ以上悲しんだら、リュカは自分の所為だと苦しんでしまう。

私はもう一度涙を拭い、お母さんに抱き付いた。
泣く為では無い……お母さんに勇気を貰う為に。
今はまだ無理だけど、もっと魔法の勉強をして、私からリュカ達を探しに行ける様になろう……
リュカやパパスおじさまを信じる……でも待つつもりは無いわ!
私が彼等を助けるの!
必ず助けてみせる!

そして私はリュカと……



 
 

 
後書き
募るリュカへの想いが、ビアンカを美しく成長させたと思います。
そんな綺麗な物語に出来れば幸いです。 
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