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占術師速水丈太郎 五つの港で

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第三十五章


第三十五章

「本当に」
「あそこに何度も行かれてるのですか」
「はい、その都度ホテルに三日ばり泊まりまして」
「あそこのホテルに三日もですか」
「そうですが」
「だとしますと」
 小川はそれを聞くとであった。真面目な顔になって速水の方を見てだ。そうしてかなり羨ましそうに彼に対して言ってきたのであった。
「貴方はかなりお金持ちの方なのですね」
「お金持ちですか、私は」
「ハウステンボスに何度もですよね」
「年に一回か二回は必ず」
 その回数まで話す。
「その都度あそこのホテルに三日もですよね」
「そうですが」
「やはりお金持ちです」
 あらためてそうだと告げるのであった。
「我々にとってはそうはできない贅沢です」
「そうなのですか」
「探偵はそこまで収入があるのですか」
「普通の仕事ならそうはいきません」
「普通ならですか」
「普通でない仕事ならかなりの報酬です」
 実際のところ速水は本業である占い師よりもこうした怪奇事件の解決の方が遥かに収入がいいのである。その一回の仕事で普通の人間なら一年は遊んで暮らせるだけの報酬を得ている。そうした意味で彼は収入においてはかなり恵まれていると言えた。
「それは確かです」
「そうなのですか」
「はい、具体的には今の仕事です」
「事件の解決はそれだけお金になりますか」
「仕事次第ではありますが」
 実際に仕事によって報酬は変わっている。だがかなりの高額なのは事実である。
「それでもです」
「そうですか。我々自衛官はです」
「そうではないというのですね」
「船に乗っていればその分手当てはありますが」
 こうした給与の増額はあるというのだ。
「航空機の乗員であったりすればです」
「その分お金は増えるのですね」
「しかしそれでも」
 また苦笑と共に話してきた。
「ハウステンボスでそこまで遊べるだけのものはです」
「ありませんか」
「とてもではないですがありませんね」
 実際にそうである。自衛官は確かに安定した地位と収入があるがそれでもである。速水の様に金には全く困らないということはないのである。
「そこまでお金に不自由しないということは」
「自衛隊もですね」
「はい、それでなのですが」
 ここで、であった。話は本題に入るのであった。
「事件のことですが」
「それですね」
「まず述べさせてもらいますが」
「はい」
 ここでも饒舌な小川であった。速水は彼のその話を聞くのだった。
「かなり猟奇的で奇怪な事件でして」
「かなりですね」
「被害者の名前は河上健三郎」
 それがその被害者の名前だというのだ。
「魚雷の仕事をしていました」
「魚雷ですか」
「階級は海士長」
 その階級についても話された。
「頭を割られて死んでいました」
「頭をですか」
「こうですね」
 速水の方を振り向いてきてだ。帽子の上からその頭の上を真ん中に縦にラインを引いて放すのだった。
「一撃でざくりと」
「ざくりとですか」
「斧で切ったみたいにです」
 具体的な言葉になった。
 
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