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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第百話




「どういう事じゃッ!!」

「そのままの意味です袁術殿。我が主の劉備玄徳は皇帝の位に就きました」

「じゃが皇帝には玉璽が必要なはず」

「玉璽はありますとも」

「何ッ!?」

「漢中を攻略した際、張魯が隠し持っていました。そして劉備様は魏を占領した時に改めて漢王朝の再興をして皇帝の位に就いたのです」

「むぅ……」

「それではこれからが本題です。仲は魏の曹操を招き入れてませんな?」

「……何故じゃ?」

「曹操は我が蜀の宿敵。曹操を隠していれば我が蜀は仲を攻めなければなりません」

「残念じゃが……曹操は来ておらんのじゃ。我が仲でも曹操は宿敵なのじゃ」

「そうですか。噂では曹操と仲が良いと聞いていましたが……」

「それは無いのぅ。それは嘘じゃな」

「……分かりました。その言葉、信じましょう」

 使者は美羽に頭を下げて玉座から退出するのであった。

「……あの様子だと気付かれてますね」

「うむ、厄介な事になったものじゃな」

「それでどうしますか?」

「……劉備の皇帝は認めんのじゃ。確かに血筋はあるが、あれは飾りくらいなのじゃから劉協殿が相応しいのじゃ」

「ですが、向こうが聞き入れます?」

「……無理じゃな」

 七乃の言葉に美羽は溜め息を吐いた。

「……長門を呼んでくれないかや?」

「はぁい分かりました」

 七乃は長門を呼びに行くのであった。



「それでどうしたんだ美羽?」

 急に玉座へ呼び出されたけど……。

「うむ、実はのぅ……」

 そして俺は美羽からの説明を聞いた。

「……仲が曹操を匿っているのは向こうも粗方気付いている可能性は大だな」

「そうなのじゃ。そしてそのまま……」

「蜀と仲の戦いか。美羽はどう思う?」

「……正直に言うと蜀には勝てんと思う。例え撹乱作戦をしたとしてもじゃ。結局は数の差で押しきられると思うのじゃ」

「……だろうな。それで? 何か策はあるんだろ?」

「……それは長門も気付いておるじゃろ?」

「まぁな……言い方を代えれば転進か」

 思いっきり旧軍だがまぁ良いや。

「何処に転進する気だ?」

「……一ヶ所だけ心当たりがあるのじゃ」

「……それってまさか……」

「その通りじゃ」

 俺の言葉に美羽はニヤリと笑うのであった。



 そして蜀は成都から都機能を洛陽へ移して、劉備は漢の皇帝として位に就いた。歴史学者の中ではこの漢は後漢として前漢、中漢、後漢として後世に語られている。

「そうなんだ、仲には曹操さん達はいなかったんだね」

「あぁ、と言いたいが袁術からの態度からはそう見えないと思う」

 北郷はそう言った。実は北郷、劉備達には無断で変装して使者の一員として健業に行っていたのだ。

 勿論、これを最初から知っていたのは軍師二人だけである。

「え? それじゃあ袁術さんは嘘をついていたの?」

「その可能性は大だ」

「成る程、ですが御主人様。無茶な行動はしないで下さい」

「済まない愛紗。以後気を付けるよ」

 関羽の言葉に北郷は済まなそうな表情でそう言った。

「それで袁術さんはどうするの?」

「桃香様、私達は漢に服従を誓う事を使者で出すべきだと思います。袁家と言えど、元は漢の臣下であります。それに此方は玉璽がありますので向こうも手は出せないはずでしゅ」

 孔明が説明するが、最後のところで噛んでしまう。

「だが、向こうは袁家だ。袁家の財力で兵力も多くあるし孫呉の者もいる」

「それについては大丈夫でしゅ。張三姉妹の公演で兵士の募集をしていましゅので逐次増強されていましゅ」

 関羽の意見にホウ統はそう答えた。

「鈴々は分からないから任すのだ」

 能天気な張飛はそう言うのであった。

「御主人様、話し合いで何とかならないかな?」

「恐らくは……無理だろうな。向こうには大砲があるから強硬になるかもしれないな」

 北郷は反対意見を出した。

「確かにその通りですね。私も反董卓・袁術連合の時に大砲の威力は知っていますので国境に軍を派遣して警戒すべきだと思います」

 五虎大将軍の筆頭である関羽はそう言った。なお、蜀の五虎大将軍は関羽、張飛、黄忠、厳顔、張任だったりする。

「う~ん……分かった。取りあえず国境に軍を派遣して警戒しようっか」

 劉備はそう決断をして仲との国境付近に三万の軍勢(大将は関羽)を派遣するのであった。




「……朱里、抜かりは無いな?」

「はい、問題ありません。準備は完了しています」

 とある部屋で北郷は軍師二人と話をしていた。

「分かった、作戦を発動してくれ。ただし、此方の証拠は残さないようにな」

「はい、分かりました」

「よし、今日は二人で可愛がってあげるよ」

「はわわわ」

「あわわわ」

 そして暫くの間、部屋からは喘ぎ声が聞こえるのであった。




 関羽を大将にした軍勢三万は仲との国境付近である長江の江夏に布陣していた。

 長江を越えると直ぐに仲領であり、仲側は詠と恋が警戒していた。

 そして夜半、突然江夏から火の手が上がった。

「何事かッ!?」

「何処からかの軍勢の攻撃でありますッ!!」

「何処からかの……? まさかッ!?」

 関羽は急いで服に着替えて迎撃を始めた。幸いにも攻撃は三十分で終わり、関羽は敵の死体を収容した。

 死体は仲の鎧を着ており、仲の旗がそこらかしこに捨てられていた。

「仲が渡河をして我々を攻撃したに違いないッ!! 直ちに抗議の使者と桃香様へ知らせるのだッ!!」

 二人の使者は直ぐに向かったのであった。



 
 

 
後書き
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