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舞台神聖祝典劇パルジファル

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第二幕その五


第二幕その五

「一体」
「だからこちらが聞きたいけれど」
「そうよ。何なの?」
「貴方は誰なの?」
「わからない」
 また同じ返答だった」
「僕は誰なんだ」
「何もわからないのね、相変わらず」
「けれどこの子って」
「そうよね」
 ここで彼女達も気付いたのであった。
「顔は奇麗で」
「背も高いし身体もしっかりしてるし」
「いい顔してるわよね」
「そうよね」
「好みよ」
 こう言ってまた近付く彼女達だった。そうしてだった。
「ねえ」
「いいかしら」
「ちょっとね」
「ちょっとって?」
 若者は戸惑いながら女達に応えたのだった。
「何があるっていうの?」
「何かがあるから尋ねるのよ」
「いいかしら、それで」
「こっちに来て」
「遊びましょう」
「遊ぶ」
 そう言われてもであった。きょとんとするだけの彼であった。
 そのうえでだ。また呆けた顔になって彼女達に問うのであった。
「遊ぶって何を」
「遊ぶことも知らないの?」
「まさかそうしたことも」
「何一つとして」
「香りがする」
 若者にもこれはわかった。
「君達からもいい香りがする。これは」
「そうよ。私達の香りよ」
「それなのよ」
「それはわかるのね」
「わかる」
 それはだと返すのであった。
「けれど僕は」
「まあそれならいいわ」
「わかったのならね」
「さて」
 それを聞いてまた話す女達であった。若者の周りで賑やかに踊ってさえいる。そうしながらさらに話をしていくのであった。
「いいかしら」
「遊ぶことを知らないのなら教えてあげるわ」
「私達がね」
「教える」
 その言葉もわからなかった。
「何を教えてくれるんだ、いや」
「いや?」
「何なの?」
「教えるって何なんだ?」
 それもわからないのであった。
「何を教わればいいんだ、僕は」
「だからね。それはね」
「つまりはね」
「聞いて覚えることなのよ」
「感じ取ってもね」
「聞いて覚えて」
 言葉をそのまま反芻する。
「そして感じ取る」
「そういうことよ」
「わかったかしら」
「わかってないみたいだけれど」
「わかった」
 一応はこう答えた若者だった。
「それじゃあ」
「ええ、それじゃあ」
「いいわね」
「遊びを教えてあげるから」
「君達は花なのか?」
 若者はここでも感じ取ったままで答えた。
 
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