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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-6 第23話

 
前書き
今回はオリキャラが出ます。なんと、……。 

 
Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-6
決戦
第23話

竜王城地下は暗闇で覆われている。今まで見た洞窟よりも暗く感じる。
ハルカのレミーラだけでは心もとないのかもしれない。
暗闇が嫌いなわけではない。ただ、何も見えないのが不便なのだ。
そんな場所でも魔物は現れる。
ハルカの仇ザクレスに似た、鎧姿の魔物も居た。
ハルカは彼を見るたびにラリホーと叫ぶ。
恐怖と恨みと、先に進みたいと言う気持ちと。
様々な気持ちがハルカの中で渦巻いていた。
ハルカは僕は死ぬわけには行かないと何度も何度も呟いていた。
ロトの鎧からいつもの鎧に変える。ずっとロトの鎧でもよかった。しかし、ずっとそれに頼ってばかりではダメなのだ。体力を回復するときは着ることはあるが。
ハルカは注意深く、レミーラで灯しながら、奥へと進む。

竜王へたどり着くにはあと、どれくらい降りればよいのか、ハルカにはわからない。
暗闇でさんざん迷わせて、ハルカの体力を奪おうとする作戦なのかもしれない。
しかし、ハルカは迷いつつも順調に、奥へ進むことが出来た。
一人で、言葉も発さずに、黙々と魔物と戦いつつ、歩く。
時が分かる物など存在しない。時間感覚などとっくに失っている。
内部は「正直言うと、ジメジメする」。不快感も感じる。癪気なのか湿度なのかわからない。
(……冬のくせに)
不快な空気にハルカは悪態をつく。だからといって引き返すわけがないのだが、それでも悪態をつく。
(畜生!)

竜王城の魔物は今までより強い。ストーンマンは破壊力が強い。ゴーレムと競い合えるぐらいの力。
魔物と戦った後、洞穴のような場所に腰を下ろした。
ハルカは袖をめくって、痣が出来ているのを知った。しかし、慌ても焦りもしなかった。
「ベホマ」
いつの間にか、ハルカはそのような呪文を覚えていた。ベホマは回復呪文のもっとも高等なレベルの呪文である。ベホイミよりも回復力が強い呪文。無意識に唱えたら成功したと言うのだ。
痣は消える。ハルカは袖を戻すと、立ち上がる。簡単な食事はするが、眠りはしない。
いくら動いても動いても、眠気は襲ってこないからだ。
(僕の感覚がおかしくなっているのかもしれないけれど)
何かのせいにはしない。ただ、ハルカは竜王を倒すことしか、考えなかったからだ。
その意思がハルカを動かしている。
足に何者かが通っても、ハルカは悲鳴を上げなかった。ネズミかどうか……いや、はぐれメタルだった。
(何でこいつが)
溶けた体のメタル糸のスライム。ただ、アレフガルドからは去ったと聞いたはずである。
逃げ遅れたのだろうか?それとも、こっそり住み着いているのだろうか?
そう考えていると、はぐれメタルが顔を出す。
「お前は何故ここにいるの」
「あ、……僕を倒さないの?」
おどおどとした態度であった。
「気になるからさ。はぐれメタルはアレフガルドから去っていったと僕は聞いたんだよ」
「……僕は、ここが好きだから。ここを、離れたくないんだよ」
このはぐれメタルはどうやら後者の方らしかった。
「昔からここに?」
「うん。でも僕のご先祖様はリムルダール周辺に居たんだ。でも、仲間のほとんどはリカントにころされたんだ」
「リカントよりここの魔物の方が物騒だと僕は思うけど」
「確かにね。でも、こっちの方が住み心地はいいんだ」
何故はぐれメタルがこんなところにすんでいるか、話してくれたものの、ハルカには理解できなかった。
洞窟の環境のせいなのか?しかし沼地の洞窟の方がまだ…。
ハルカは、僕等人間と価値観が違うのだなと自分に言い聞かせた。
「ねえ、勇者さん。勇者さんは僕を倒すの?」
「いや。お前は倒さないよ。良い心を持っている感じだからね」
魔物すべてが悪ではない。悪から逃げた魔物もいるのだ。
「良かった。勇者さんは強いから、僕を倒さなくったって、強いよね」
「ありがとう。ねえ、先に行っていい?」
「うん。ごめんね。無駄足だった?」
「いいんだ。少し落ち着いた」
ハルカははぐれメタルに礼を言った。はぐれメタルは嬉しそうに溶ける仕草をする。
(魔物も悪の心を捨てれば、可愛いものだな。キメラ便のキメラもそうだ)
「はぐれメタル君、僕は行くね」
「うん。バイバイ。……竜王、倒してね」
最後の声が少し悲しそうだった。それが何を表しているのかは、解らなかった……。

ここにははぐれメタル以外の、悪意のない魔物はいない。
当然だ。そこが、“ラストダンジョン”だからだ。
竜王の悪意に染まり、勇者ハルカを襲う。
ハルカは当然迎え撃つ。剣、魔術。
削れた体力は魔術で回復した。時々は、ロトの鎧の力も借りた。
削れた魔力は祈りの指輪で回復した。ラダトーム倉庫から大量に見つかったと、トルコ石の月に、国王から貰ったものだ。
ハルカは生きている。いや、死ぬわけにはいかないのだ。
「僕が、竜王を倒すのだから」
レミーラで明かりを確保しつつ、進んでいく。
階層は一段、また一段、と降りていく。

分かれた道があった。どちらかが正解で、どちらかが不正解の道だ。
「……ん」
ハルカは胸元を見た。ロトの印が光っている。中央の赤い宝石部分から光線が放たれた。
「正しい道を、示しているんだ……ロト様が、教えてくれている」
ロトの印の光の指す方向へ、ハルカは歩き出す。
少しすると、上に向かう階段があった。
「…?」
わけのわからないまま、階段を上る。今ハルカにはそれしか方法はない。
上の階へあがると、近くに更に上り階段がある。
ハルカは更に上がる。すると……。
「!?」
人影が見えたと思ったが、そいつは人ではない。肌の色が明らかに違う。
人の耳がない。頭はとがった耳のような突起物が水平方向に伸びている。頭には布を巻いているようだった。
服は青いローブ、紫色のスカーフ。そいつは、何かを持っていた。
何か……それは、ロトの紋章のついた剣であった!
「誰だ!」
ハルカは警戒して剣に手をかけようとした。ところが、
「違う、俺は敵ではない。お前は……勇者だろう?勇者ロトの血を引く、勇者なんだろう!?」
彼は叫んでいた。なにやら、真剣で、少し、怯えていた。
「そうだけど……。君は、誰なんだ?見たことのない、“ひと”だけど」
彼は、息荒くして、汗をかいていた。緊張している様子も見受けられる。
「……俺は……竜王の息子だ」
「!?」
信じられない言葉が現れた。
「竜王…の…息子?」
「ああ。誰も知らないよな。竜王には俺と言う息子が居たんだ。そして、もちろん」
「君の母親も居た……」
ハルカにとって初耳の事実。竜王には、妻と息子がいたのだ!
「ああ。でも、俺の親父は、……酷い親父だ!世界を闇に染めるとか言い出して……狂い始めたんだ!」
「それで……」
「ああそうだ。俺の親父は、元々忌まわしき大魔王の居た城を占拠し、……アレフガルドを荒らし始めたんだよ。魔物を凶暴化して、町を滅ぼして……」
「僕の両親、ローラ姫の母親を」
竜王の息子――竜王子は頷いた。更に彼は、
「アレフガルドに現れる前……闇に染まった父さんは……俺の目の前で……目の前で……母さんを!!」
怒り来るって叫んだ。ハルカにも竜王子の言うことは理解できた。
「最低だな、竜王……」
ハルカも低い声でこう呟いた。怒りに震えていた。
「そうだろう!?名前……ハルカか。勇者ハルカ!お願いだ。これ、これで俺の父さんを倒してくれ!俺は殺されなかったけれど、父さんに力を奪われた。だから戦えない……それに、これは使いこなせなかった。でも勇者ハルカ、お前なら、これを使いこなせる!絶対に!」
竜王子は持っていた剣をハルカに手渡す。ハルカは手に取ると、剣を抜いてみた。驚くほど軽い。
「これは……ロトの剣!」
「そうだ。伝説の勇者ロトが使っていた“王者の剣”なんだ。子孫のお前なら、…」
「ああ、使いこなせるさ。見事に僕の手にフィットしている」
ハルカは竜王子から少し離れ、剣を振る。美しい軌跡が描かれる。
そしてその後、剣を腰に挿す。サイズは自由自在に変えられる。
「そうだ。良かった。……会えて、良かった」
竜王子は背中を壁に着けて、ズルズルと座り込んだ。
「……僕もさ。君……竜王子の意思、僕がかなえてみせるよ」
「勇者ハルカ、ありがとうな」
安堵か、竜王子は力無く笑った。笑みが消えると、怒りの表情になる。
「俺は親父を許さない……いや、もうあれは、俺の親父じゃない……。ああ、すまない勇者ハルカ」
「謝る必要は無いよ。君も僕も、“竜王”を憎み嫌っているんだね」
「ああ、」竜王子はハルカに向けて力ない笑顔を見せた。感謝をしようと必死に笑顔を保つ。
ハルカは竜王子に向けて、ベホイミをかけた。
「少しでも、君に元気になってもらいたい。僕を信じて。……僕は行くから」
竜王子はハルカの手を握る。「こんな俺でも、役に立てたかな」
「立てたさ。……じゃあ、ね」
「ああ。俺のためにも、お前の為にも、ここの世界の人たちの為にも、竜王、俺の親父を倒してくれ」
「ああ、僕が、倒すからな」

竜王は悪となり、彼の妻(恐らく竜王妃)を殺し、息子(竜王子)を捨てた。
そして新たな妻にしようと、ローラ姫をさらった。
その前に邪魔者を消そうとハルカの両親を物理的に、ローラ姫の母親を呪いという方法で殺した。
最初から、ハルカは竜王を倒すつもりではあった。しかし、誰もから恨まれる様な極悪非道な奴だと、改めて知った。
腰に挿しているロトの剣が光る。(炎の剣は魔法の道具袋に入れた。竜王子に差し上げても良かったが、竜王子はそれを断った)
(僕は……絶対にっ!!)
その時、音が鳴った。

音の主は王女の愛、つまりローラ姫からであった。
「ああ、すみませんね、ローラ姫」
今までかけてこなかった事に侘びを言った。時間間隔が無く、どれくらい時間が経っていたかは解らなかったが、かなりの時間が経っているようにハルカは思えた。
「いえ。ハルカ様も大変だったのですね。一週間も……」
「そうですかそんなに…」
「ずっと篭っていらっしゃったのね。大丈夫ですか?ハルカ様」
「大丈夫。いくらか休憩と食事もとっています。呪文の力にも助けられ、何とかここまで来ています。ロトの剣も手に入れました。後、もう少しです」
ハルカはローラ姫に、竜王の息子、竜王子にであったことを話す。
「まあ……!竜王は息子がいたのですか!」
当然の驚きである。
「ええ。竜王子は、善の心を持っていました。彼が悪に染まったと言う言葉……もしかしたら竜王の一族は本来なら悪の存在ではなかったのかもしれませんね」
ハルカは勇者ロトが見せた竜王に対する反応、それを思い出していた。断定は出来ないが、勇者ロトが見た『卵』の正体が竜王もしくは竜王一族だとすると、竜王は本来は悪の存在ではなかった可能性も高いのだ。
「そうですね。……ハルカ様、貴方の声が聞けてよかった……生きて……帰ってきてください。ハルカ様をわたくしはお慕いしています」
「僕も、貴女を…」
ハルカはローラ姫の声を聞けてほっとする。いつもの方法で会話を終えると、魔法の道具袋に入れて、再び歩き出す。

それから更にどれくらい歩いてきたのだろうか。
突入してから一週間もたっているとは。時間感覚が狂うはずである。
床が整地されたような平らな土に変わったとき、ハルカは目的地に近づいたと悟る。
「待て」
「お前は」
「私は死神の騎士だ」
またハルカの目の前に魔物が現れる。悪魔の騎士を赤く染めた魔物。
「竜王の元へは行かせない!ベギラマ!」
ハルカはとっさに避ける。その際、しりもちをつくように少し転んでしまった。
体勢を立て直すと、ロトの剣を抜こうとする。
しかし意思とは違い、手を死神の騎士の方にかざしていた。
「ベギラマ返しか?良かろう…」
死神の騎士は余裕で笑っていた。
「ああ、その通りだ。お前のより威力の高い物を見せてやる。ベギラマ・スパーク!!」
「!?」
それは、デイン系を習得できないハルカが考え付いた、ベギラマを強化した魔法だった。それは炎と言うより閃光もしくは雷光の光だった。光は一気に死神の騎士を攻め立てる。
1分も経たずに、死神の騎士は崩れ去る。
「先に行ってやる。そして竜王をね」

最下層。
一気に明るくなる。
「目的も近づいたようだな……」
そこも強力な魔物が棲みついていた。ハルカはロトの鎧姿に姿を変える。そして、次々と魔物を倒していく。
ロトの剣は明らかに今までのより強かった。
(ロト様の剣!)
与えるダメージは大きい。

そして、赤いカーペットが見えた。竜王が近くにいると言うことを示している。
(……竜王!)
胸が高まる。夏から倒す為に鍛えてきた。今、その時が来た。

いよいよ、ハルカは最終決戦へと向かう。勇者ロトの子孫として、一人の勇者ハルカとして! 
 

 
後書き
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後書き。
竜王の息子・竜王子について。
オリジナルキャラ。父親(竜王)にあまりにていないかもしれない。それは、彼が母親似か父親(竜王)に嫌悪感を抱いているから。何故出したのかと言うと、DQ2に竜王の曾孫がいますよね?それで色々考えた結果です(おい)。 
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