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ニュルンベルグのマイスタージンガー

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第二幕その二十三


第二幕その二十三

「弟子をやらせるか!」
「死ね、その手を放せ!」
「天罰だ、これは!」
「何やってるのこれ!?」
 今度は女達が出て来て騒ぎに声をあげるのだった。
「この騒ぎ」
「あれはうちの人じゃない!」
「うちの息子が。何をしているの!?」
 闇夜の騒ぎの中に家族を認めて皆あっと驚く。
「早く止めないと。大変なことになるわよ!」
「水よ水!」
 そして誰かが叫んだ。
「水をかけないと」
「水!?」
「どうしてなの?」
「それで頭を冷やさせるのよ!」
 そういうことであった。
「だからここは早く!」
「水をなのね?」
「そうよ、お鍋でも壺でも瓶でもやかんでも!」
 とにかく水が入っているのなら何でもであった。
「早くかけて。騒ぎを止めて!」
「ダーヴィット、何処なの!?」 
 マグダレーネも喧騒の中で恋人を探していた。
「何処にいるの、一体」
「まだ追ってくるのか!?」
「あいつは何処だ!」
 その中でまだ逃げ惑うベックメッサーに探し回るダーヴィットだった。
「何てしつこい奴なんだ!」
「逃がしてたまるか!」
 とはいっても相手が何処にいるのかさえわかっていなかった。
「何処にいやがるんだ、あの野郎」
「ちょっとダーヴィット」
 マグダレーネもとにかく必死にダーヴィットを探し回っていた。
「その人は違うのよ」
「あれ!?レーネの声?」
 ここでダーヴィットはふと立ち止まって周囲を見回すのだった。
「何処だ?何処にいるんだ?」
「この野郎!」
「御前か!」
 その彼にも相手を間違えて殴り掛かって来る者がいるのでそれも大変だった。
「うわっ、また来たよ!」
「さっきはよくもやってくれたな!」
「これはお返しだ!」
「何でこんな場所に!」
 喧嘩は滅茶苦茶でありダーヴィットもどうしようもなかった。それでもマグダレーネは必死に彼に対して叫ぶ。しかし彼の姿は見えてはいない。
「あの人はベックメッサーさんなのに」
「書記さん?」
「あの人までここにいるのか?」
「まずい、見つかったか」
 ベックメッサーは自分の名前が出て来てぎょっとなる。
「まずいぞ、このままじゃ」
「エヴァ、大変だぞ」
 その中でポーグナーが家の中で言っていた。
「この騒ぎは。ちゃんと戸締りをして寝なさい」
 彼女が家の中にいるとばかり思っているのだった。
「いいな、ちゃんとな」
 こう娘に告げたと思ってからそのうえで家の外に出た。彼は寝巻き姿だったがそれでも出て来ていた。この時ザックスは騒ぎがはじまってすぐに家の中に一旦身を隠していたが扉をそっと開けて様子を伺い続けていた。ヴァルターはエヴァを自分のマントに多い菩提樹の陰に身をひそめていた。
「全く。何でこんなことに」
「戦争より酷いわ」
 ヴァルターもエヴァも呆然とするばかりで動けない。その間ポーグナーもマグダレーネを探していた。
「水よ、早く水をかけて!」
「持って来たわ!」
「私も!」
 ここで皆やっと水を持って来た。そうしてそれを思いきりかけるのだった。
「うわっ、今度は何だ!?」
「これって一体!?」
 しかしこれで皆頭が冷えそのうえでやっと我に返った。そうして落ち着きそのうえでそれぞれ家に帰っていく。ザックスはそれを見てまずは呆然となっているダーヴィットを見つけ頭をがつんとやってからそのうえで家に放り込み返す刀で菩提樹の陰のダーヴィットとマグダレーネを見つけそのうえで二人も家の中に入れてしまった。
「さあ、こっちへ」
「えっ!?」
「今度は何!?」
 二人には何が何だかわからない。しかしそのまま家に入ってしまった。マグダレーネはポーグナーにエヴァと間違えられ彼の家に引き入れられた。
「さあ、寝よう」
「あれっ、私はこっち?」
「何かよくわからないが寝よう、もう」
「はい。それじゃあ」
 彼女も何が何なのかわからないまま家の中に入る。何はともあれ騒ぎは終わるのだった。
 ベックメッサーも散々に打ち据えられた姿でほうほうのていで退散する。服も帽子もリュートもぼろぼろでよれよれになって去っていく。一人寂しくであった。
 暫くして何も知らない巡検が来る。そうして言うのだった。
「皆さん、鐘が十一時を告げました」
 町の喧騒の結果は何故か目に入っていない。
「悪魔に魂をおかされぬよう幽霊や妖怪に御用心」
 いつもの言葉である。
「神を讃えましょう」
 こんな話をしてから場を去るのだった。ニュルンベルグの町の騒ぎは何事もなかったかのように終わり後には何も残ってはいなかった。
 
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