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ニュルンベルグのマイスタージンガー

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第二幕その八


第二幕その八

「貴方達のような人の妬む人達のところにいるより」
 ザックスに向けた怒りの言葉であった。
「何処か他所でってことよね」
「そうさ」
「陰険で下らない親方達のいる所より人の心が暖かく燃えるところがいいのね」
「お嬢様」
 いいタイミングでまたマグダレーネが声をかけてきた。
「宜しいでしょうか」
「あっ、そうね」
 ここでやっと彼女に気付いたエヴァだった。
「レーネ」
「はい」
「今いくわ」
 こうマグダレーネに顔を向けて告げてからまたザックスに顔を戻して言う。
「ここでは何も慰めはなかったわ」
「済まないね」
「ここはたまらない樹脂の匂いがするわ」
 ドイツの言葉で辛い運命に落ちたという意味である。
「むしろ火が点いて燃える位なら」
 そしてさらに言うのだった。
「幾らか暖かくなるでしょうにね」
 もっと酷いことになれば同情する人も出るという意味であった。エヴァはここまで言うと怒った顔のまま立ち上がりそのうえで自分の家に戻ろうとする。マグダレーネはもう家の前に立っていてそのうえでエヴァに対して声をかけるのだった。
「こんな遅くまで」
「御免なさい」
「旦那様が御呼びですよ」
「お父さんに言って」
 ここでマグダレーネに対して頼むエヴァだった。
「私は部屋で休んでるって」
「それは駄目よ」
「けれど」
「それに困ったことになっていまして」
 マグダレーネはここで困った顔をエヴァに見せて告げるのだった。
「ベックメッサーさんがですね」
「あの人が!?」
 ベックメッサーの名前をここで聞いてさらに不機嫌になるエヴァであった。
「また何て?」
「私に言ったのです。お嬢様がですね」
「ええ、私が」
「夜お部屋の窓のところに立っていて欲しいって」
「どうしてなの?」
「歌です」
 マグダレーネが述べたのはこれであった。
「何か素晴らしい歌を歌ったり演奏したりしてお嬢様の関心を得たいそうで」
「そんなことなの」
 話を聞いて溜息のエヴァだった。
「嫌よ、そんなの」
「そうですか」
「そんなことをしても私の気持はね」
「わかりました。ところで」
 ここで周りを見回しだしたマグダレーネだった。そのうえで怪訝な顔で言うのであった。
「ダーヴィットは何処に」
「ダーヴィットさん!?」
「はい。何処に」
 心配する顔になってまた言うのだった。
「いるのかしら」
「私に言われても」
 わかる筈がないと返すエヴァだった。
「ちょっと」
「さっききつ過ぎたから」
 籠のことを反省しているのだった。
「ですから」
「それであの人を探しているのね」
「はい」
 エヴァの言葉にこくりと頷くのだった。
「だからです」
「それでも見えないのね」
「何処に行ったのかしら」
「もう寝たのではなくて?」
 自分もそうだからこう述べたエヴァだった。
「そうじゃないかしら」
「そうでしょうか」
「ええ。それにしても」
 ここで顔を曇らせるエヴァだった。
 
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