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SAOもう一人の聖騎士

作者:ビビック
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追想~灰色の流星~

 
前書き
さて、長らく何もできず一周年記念すら出来ませんでした・・・・・・・・とは言え、シュピーゲル君による、GGO追想諞いよいよクライマックスです。ては、どうぞ! 

 
「ラァァアアアア!」

ズン!と言う音が聞こえるほど強烈な踏み込み。その際に前に移動した重心から流れるように体を捻り、渾身の斬り上げを放つ。強烈な踏み込み、アバターの体重、さらには遠心力まで完璧に剣に乗り、速さと重さを兼ね備える理想的な一撃だ。
・・・・・・しかし、そんな一撃でもこの蟷螂は小揺るぎもしない。

「ッ!」

予想より遥かに速いスピードでノックバックから回復した蟷螂が恐ろしい速度でブレードを振り下ろす。左の一撃はほとんど反射的に放った斜め斬りが間に合ったが、右の一撃には回避を余儀無くされた。自らを両断するであろう攻撃を膝を折って姿勢を低くすることでかわし、その曲げた膝を一気に伸ばして跳躍。大きく蟷螂と距離をとる。

だが、クラディールが稼いだ時間、作った隙を見逃すほど、彼らは未熟でも臆病でも無かった。

空中へ跳躍し、ダインが自らの得物を構える。その細長い体のどこにそんな筋力補正があるのか、なんと片手でSIGを構え乱射。その際に左手の武器腕を展開し、超大口径の滑空砲を発射する。蟷螂はすんでのところで頭を傾けかわしたが、予想以上の大口径に回避が間に合わなかったのであろう。右の複眼と触角が完全になくなっている。

「はぁぁぁぁぁぁッ!」

ダインの空中からの強襲に続き、ペイルライダーのショットガンが火を吹く。蟷螂を覆い尽くすかの如くばらまかれる散弾。しかし、空中に対応していたAIは前肢を掲げ、交差させたブレードで防御をしただけだった。

・・・・・・・しかし、空中での反動で吹っ飛ぶペイルライダーは、この時ニヤリ、と笑っていた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

燃えるような雄叫びと共に、シュピーゲルが突貫。その速さは最早人間の視覚が捉えるには不可能な速度にまで達している。見えるのは灰色の流星のみ。それに付いてくる光の帯が、なぜだかいやに眼に焼き付く。
右手の光剣を引き、突きの構え。掲げられた蟷螂のブレードの真下を抜け、中世の騎士の突進(チャージ)めいた突きを放つ。SAO初期、まだシュピーゲルの兄であった男の、最も得意とした技。細剣最上位剣技、『フラッシング・ペネトレイター』。

(兄さん・・・・・・)

神速と呼ばれる速度まで達しているはずなのに、シュピーゲルの思考はゆっくり、かつ穏やかだった。

(兄さんは、確かに、笑う棺桶の幹部として人を殺めた。数多くの人を悲しませたこの行為は、絶対に赦されてはならない。その罪は重く、必ず償わなければならない罪だろう。だけど・・・・・・・)

加速した思考が、脳の奥深く、あの地獄で塗りつぶされた記憶から、何かを掬い取る。

(だけど・・・・・・兄さんは!どんなことになっても、僕の英雄だったんだ!はじまりの街で絶望に沈んでいた僕を、救い、導いてくれたのは、他の誰でもない、兄さんだったんだ!だから兄さん・・・・・・・、僕の・・・・・・・英雄よ!)

「僕にっ、力を貸してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

しかし、無情にも蟷螂は彼の疾走に対応し、ブレードを振り下ろしていた。

(まずッ・・・・・・・!)

バギィィィン!

「新川君、前だけを見てなさい!」

超高精度の狙撃。ダインとペイルライダーが蟷螂のAIを誘導している間にシノンは狙撃体勢に入っていたのだ。流石に『予測線のない一撃』には対応出来ず、シュピーゲルを両断せんとしたブレードが砕け散る。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

灰色の流星が、蟷螂の胴体に巨大な穴を開けていた。

「やった・・・・・・・んだよな?」

ダインが呆然としながら呟く。目の前にあるのは、倒れ伏す蟷螂の残骸のみ。

「そうだ!斑猫はどこに行った!?」

慌てて周囲を警戒するが、人の気配は存在しない。

「そうか・・・・・・・じゃあ、早くログアウトして菊岡の野郎に報告しに行こう。出来れば、安全にグロッケンでログアウトしたいが・・・・・・・ってなにしてんすかシノンさん?」

隣を見ると、シノンがシュピーゲルにおぶさり、手足をシュピーゲルに絡ませていた。ダインとペイルライダーは一度見ているため気にしていないが、初めて見るクラディールからすれば奇行以外の何物でも無いだろう。

「?何って、新川君に送ってもらうのよ。それじゃ三人共、リアルでね~」

気まずい雰囲気の中、逃げるように駆け出したシュピーゲルがどんどん小さくなっていく姿を見て・・・・・・

「「「嘘ぉぉぉぉぉぉ!?」」」

取り残された猛者達の絶叫が鳴り響く。

「ねぇ、シノン・・・・・・・」

「何かしら、新川君」

「また今度、兄さんの面会に行こうと思ってるんだ・・・・・・・その、シノンを紹介しに、ね?」

「うん・・・・・・・良いよ」

GGOに夜が来る。早くグロッケンに着かなきゃな、とシュピーゲルは走る速度を上げた。 
 

 
後書き
終わった・・・・・・そうそう、自分でいい人にしといてなんだけどシュピーゲル君砕け散れ。 
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