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ニュルンベルグのマイスタージンガー

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第一幕その十一


第一幕その十一

「ここに参上」
「ニコラウス=フォーゲルさん」
「おや?」
「あれ?」
 しかしここでマイスター達が周りを見回すのだった。
「おられない?」
「今日は?」
「風をひいておられまして」
 ここで徒弟の一人が述べてきた。
「それで今日は」
「それは残念」
「御大事に」
「そして」
 コートナーはフォーゲルの欠席を確認してからまた述べた。
「ハンス=ザックスさん」
「はい」
 ところがここでダーヴィットがにやにやとして名乗るのだった。
「こちらに」
「こらっ」
 ザックスはそれを聞いて自分の後ろに立っているダーヴィットを咎める目で振り向いたのだった。
「私が名乗る。変なことはするな」
「あっ、すいません」
「全く。とにかくいますので」
「わかりました。そして」
 また話を進めるコートナーだった。
「シクストゥス=ベックメッサーさん」
「いつものザックスさんのお隣で」
 そのザックスの隣で笑っていた。
「青春の韻を学んでおります」
「おやおや、お若い」
 コートナーも彼の今の言葉を聞いて笑う。
「それではウルリッヒ=アイスリンガーさん」
「ええ」
 青い目の老人であった。
「ここに」
「ハンス=フォルツさん」
「どうも」
 中年の男である。
「おりますよ」
「ハンス=シュワルツさん」
「こんにちは」
 無愛想な雰囲気の男だった。
「殿を」
「これで皆さん揃っておられますね」
 コートナーは点呼を終えて述べた。
「それでは記録係の選挙に移りましょう」
「いえ、それは」
 ここでフォーゲルゲザングが言うのだった。
「明日のヨハネ祭の後でいいのでは?」
「やけに急いでおられませんか?」
 ベックメッサーも首を傾げさせてコートナーに問う。
「何でしたら私の役ですからすぐにでも」
「それはいいとしまして」
 ここでポーグナーが口を開いてきた。
「皆さん、宜しいでしょうか」
「はい、どうぞ」
 コートナーが彼の言葉に頷いた。
「お話下さい」
「御存知の通り明日はヨハネ祭です」
 彼もまたこのことを言うのだった。
「緑の野にも花咲く茂みにも」
 そうしてさらに語るのだった。
「人々は集い歌い踊り」
「実にいい日ですな」
「日頃の気懸かりを忘れ胸に喜びを讃え誰もが楽しむ日です」
 こう言うのである。
「マイスター達もこの時は教会の生真面目な稽古を中断しそのうえで街中に繰り出し」
「そうです。実にいい日です」
「それが明日です」
「広々とした牧場で即興に歌い人々に聴いてもらいます。そして」
 言葉は続く。
 
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