黒子のバスケ 無名の守護神

「みなさん。おひさしぶりで～す。」
体育館内には火神もいた。
しかしまだ木吉さんの姿はない。
どうしたのかな？
「水野。心配したんだぞ。」
へぇ～。
火神が心配してくれたんだ。
「あんなに派手に倒れやがって。足を痛めてなければ青峰なんかに頼らなくても済んだのに。」
「気持ちだけで嬉しいよ。」
かすかにだけど後から足音が聞こえてきた。
「ウィース。」
声のしたところをみると木吉さんがいた。
中学時代に試合したときと外見があまり変わっていなかった。
「さあ。練習しようぜ！」
そして何故かユニフォームを着ている。
「「「え～と・・・。久しぶりだな木吉・・・。」」」
「おう。」
だれも突っ込まないの？
「いやなんでユニフォームだよオマエ！！」
「久し振りの練習でテンション上がっちまってよ。」
「やる気あんのか?あんのか！」
それにしても前会ったときとかなり印象が違うよ。
だけど分かることもある。
それは前会ったときと同様に諦めが悪いと言うことだと思う。
「なけなしの高校生活三年間を懸けるんだからな。やるからには本気だ。目標はもちろん・・・どこだ！」
えっ?
「は?」
「いやI・H（インターハイ）の開催地って何処だっけ？」
「「毎年変わるしもう負けたわ！！今目指してんのはＷＣ（ウインターカップ）だろ！」」
なんか不安になって来た。
「そうか！じゃあＷＣ（ウインターカップ）は今年はどこだ？」
「「ＷＣ（ウインターカップ）は毎年同じだよ！！」」
そうそう。
ＷＣ（ウインターカップ）は毎年東京だもんね。
「山登るなら目指すのは当然頂点(てっぺん)だ・・・が景色もちゃんと楽しんでいこーぜ。」
なんだろう。
この違和感は？

なんか火神のプレーが荒いような気がする。
何て言うか徐々にキセキの世代に近づいている気がする。
周りに頼らない自分一人だけのバスケスタイル。
でも僕自信は嫌いじゃ無いけどね！
でもクロちゃんは嫌なんじゃないかな。
クロちゃんはチーム一丸のプレースタイルに拘っているはず。
なんか複雑だなぁ～。
どっちでもいいけど誠凛のことを考えるならクロちゃんの方が正しいのだろう。
でもそれで良いのかな？
それだと火神のプレーを邪魔しているような気がする。
と言うか殺している。
本領を発揮できないやり方では青峰くんは倒せない。
そしてクロちゃんと連携しても今のままでは勝てない。
ならどうすれば良いのかな？
苦渋の決断だよ～。
「勝負してくんねぇ?一対一(ワンオンワン)。スタメン賭けて。」
なんだろう。
木吉先輩の目がなんかおかしい。
絶対に裏があるはず。
いったいなんなんだろう。
気になっちゃうよ。
それに無冠の五将と呼ばれる木吉先輩のブランクにも相当興味を持ってるんだよね。
それで最大の力を予想してキセキの世代と比べてみたい。
こんなときに桃井さんがいると便利なのにな～。
「いいすけど・・・ブランク、相当あるんすよね。手加減とかできねぇすよ。」
「もちろんだ。本気で頼むぜ。」
気になる勝負だけど結果は分かりきっている。
勝つのは火神だ。
火神はオンリーワンの才能を持つ選手。
言わばキセキの世代と同じ。
だから一対一(ワンオンワン)は得意なはず。
それに比べて木吉先輩はブランクが相当ありチーム一丸のスタイル。
勝敗はこれだけで予想が可能だ。
「水野くん。」
突然呼び掛けられたが問題はないよ。
だって慣れてるもん。
「なに?」
「木吉先輩の足を見てください。」
「えっ?足？」
僕はクロちゃんに言われた通り木吉先輩の足を見ると声を出して笑いそうになってしまった。
「クロちゃん。木吉先輩は気づいているのかな？」
「分かりません。でもスゴいです。上履きで火神くんと互角な勝負をするなんて。」
それは予想外なんだよね～。
でも上履きの方が軽いから動きやすいのかな？
でも僕は絶対上履きなんかでプレーはしないから。
だって上履きも壊れちゃうし、やりづらそうだし。
「あっ。」
木吉先輩の反応が遅れた。これはもう決定かな？
と思いきや木吉先輩が凄い速さ（スピード）で追い付いてきた。
さすがは無冠の五将と言ったところでしょうか。
でも練習を積んできた火神に勝てるわけはないよ。
「火神の・・・勝ちだ！！」
分かりきったことを。
でも僕もほんの少し木吉先輩を応援していたかも知れないから黙っておこう。
「参った！俺の負けだ。約束通りスタメンは君だ！」
「・・・ウス。」
あれ?
火神は帰る気なのかな？
なんか入り口に向かっているような。
「・・・じゃあ、オレ先あがります。」
やっぱり帰るんだ～。
予想通り過ぎるでしょ。
「なっ・・・何やってんだよ木吉！！」
「いやー、強いなアイツ。」
バコッ。
監督にハリセンでおもいっきり叩かれているし。
「じゃなくて！！アンタが外してどーすんのよ！？」
それは仕方がないですよ。
「しょうがねぇだろ。ブランクなんて言い訳にならねーし。これが実力だ。」
「「実力だ。」じゃねーよ。ボケすぎだ。足元見ろ！」
さすが主将(キャプテン)です。
「練習中からなんか変だとは思ったんだよ。」
・・・。
「お前、ソレ上履きじゃねーか。ダァホ！」
やばい。
場が静まり返った。
「・・・いっけね！」
「「素かい！！」」
素だったんですか。