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IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年

作者:Shine
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第05話

 
前書き
更新が遅れて誠に申し訳ないです。

今週は色々と学校の行事が重なってしまい、疲れて更新できませんでした。

言い訳は無意味ですが、取り敢えず書いときました。

え~、では前書きに移ります。

今回は、シャルルとラウラの転校回です。

あとは、少しオリジナルが入ったりしてます。

それではどうぞ。

 

 
次の日の朝、一組は喧騒に包まれていた。その理由というのは……。

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました」

転校生が来た。何故こう、このクラスは転校生が多いのか甚だ疑問だが、気にしたら負けな気がするので気にしないことにします。

「お、男?」

「はい、日本には同じ待遇の人がいると聞いて本国から・・・」

「きゃああああああああ!!!」
「男、男よ!!!しかもふた……三人目!!!」
「しかも今回は守ってあげたくなる系の!!!」
「ああ、このクラスでよかった!!!」

二人目、絶対『二人目』って言おうとしたよね。途中で言い直してくれるのは嬉しいけど、知ってる?途中で訂正された方がダメージって大きいんだよ。言い直さないのも中々来るけどさ。

「あ~、騒ぐな。静かにしろ」

織斑先生はそうぼやいていた。大声を出さないあたり、本当に静かにさせるつもりはないのだろう。

「み、みなさん静かにしてください!もう一人いますので」

そう言われて、もう一人の転校生を見てみると凄く無愛想な顔をした女子がいた。いかにも、『話しかけんじゃねぇ、話しかけてきたらハッ倒すぞ、オラ』って感じである。ザ・無愛想の名に相応しいと俺は思う。

そんな事を思っていると、その転校生に睨まれた。『ふざけたこと考えてるんじゃねぇよ、コラ』と言われているような気がする。何なの、この学校。読心術習ってる特殊な奴が集まるんですかね。

「・・・・・・・・・・・」

その転校生は山田先生が何を言っても口を開かず、山田先生が教室の隅で泣いていた。メンタル弱いな、山田先生。その様子を見ていた織斑先生呆れたように口を開いた。

「・・・・・挨拶しろ、ラウラ」

「はい、教官」

ビシッと言う効果音が似合うくらい綺麗な敬礼をしていた。ザ『軍人』って感じやな。よし、俺の中ではあいつのあだ名は軍人さんだ。

ふざけたことを考えてると、また睨まれた。しかも、さっきよりも目の凄みが増している。こ、怖いっす、ふざけたこと考えないんで、その目やめて。チビっちゃう。

千冬はと言うと、その俊吾の様子を見て『学習せんな、貴様は』みたいな目をしていた。そして、ラウラに対して口を開く。

「ここではそう言うな。今はもう教官じゃない。私のことは織斑先生と呼べ」

「了解しました」

ビシッ踵を合せ、手を横に付けた。そして、こう言った。

「ラウラ・ボーデビィッヒだ」

「…………」

…………それだけっすか。俺が何を言ってもどうせロクなことにならないから黙るけどさ。

「あの~、以上ですか?」

「以上だ」

俺達の疑問を口にした山田先生だったが、ばっさり切られていた。そして、また教室の隅で泣いていた。…………あとでフォローしとくか。

「!!貴様がっ」

ラウラはそう言い、いきなり

バシンッ!

小気味がいいくらいの綺麗な張り手を一夏に繰り出した。一夏は一体何があったのか分かっていないようで放心状態だった。

うわ~、痛そう。…………あだ名、軍人さんから理不尽さんに変えようかな。

俊吾はラウラにまた睨まれた。しかも、ご立腹らしく超怖い。

ラウラの視線にビクビクしていると、やっと状況を読めたらしく一夏は席を立って

「何すんだよ!」

と、少しご立腹だった。まぁ、当たり前ですよね。俺なら何も言わないで誰もいないところで泣きますけど。

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

と言い残し、席に座った。クラス中が微妙な空気に包まれるが千冬さんがまた面倒臭そうに言った。

「あ~、これでSHRを終わる。各自着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同で行う」

そう言うとみんなは準備を始めた。さて、こんな空気の教室にいるのは苦痛でしかない。さっさと逃げよう。

「ああ、それと大海と織斑。デュノアの面倒を見てやってくれ」

ですよね~。はぁ…………一夏に任せて俺はサボろうかな、面倒見るの。

そんな事を考えていると、千冬が俊吾を睨みながら

「返事はどうした?」

と言った。俺にプライバシーって物は存在しないんですか、そうですか。……まぁ、いいけどさ。

「……了解です」

それを聞くと千冬は満足したような顔をして、外に出ていった。それと入れ替わるかのように、シャルルが近づいてくる。

「君たちが織斑君と大海君?僕は……」

「あぁ、ちょっと待ってくれ、自己紹介の前にさっさと移動しないとあれが来る」

「あれ?」

デュノアは何のことだか分かっていないらしい。大丈夫、俺も口にしなかっただけで分かっていない。

一夏に先頭を任せ、廊下に出ると女子の大群が目の前に広がっていた。

「お、あれが噂の転校生くんか!」

あぁ、これか。転校生を目当てにした上級生と同級生が押しかけてくるやつか。俺の時は見つけた瞬間『…………普通じゃん』みたいな変な空気が流れて、即解散となった。実機試験のあとは、多少生徒に追い掛け回されたが……。

俊吾が変にしみじみしていると、一夏が

「黛先輩、インタビューを後でさせてあげるので少し足止めしてくれませんか?」

と言った。あぁ、確か新聞部の部長だっけ。試験の後に少しだけインタビューされたわ、ほんの10数分。ちなみに、一夏は30分らしい。

「マンツーマンのインタビューだったらいいよ~」

「じゃ、それでいいです」

「は~い、みんな待ってね~。転校生君の情報はきちんとこの黛薫子がきちんとインタビューしますので・・・・・」

黛先輩はそう言って、女子の大群を食い止めていた。ほう、一夏も中々考えるじゃないか。こんな事も出来たんだな。少し見直したわ。

一夏達はそのあとは、快適に第2グラウンドまで行くことができた。

「ふぅ、何とか着けた。デュノア大丈夫か?」

「な、何とかね。ははは・・・・」

まぁ、驚くだろうな、あの大群は。俺も驚いたもん。

「さて、早く着替えないと遅れるんじゃないか、一夏、デュノア」

俊吾は区切りをつけるようにそう言う。

「うん?あ、そうだな。早く着替えようぜ、二人共」

「いや、俺はもう終わってるけど」

「早っ!俊吾早いな!じゃあ、デュノア早く……」

「僕も終わったよ」

「二人共早いよ!くそ、俺も早く着替えないと!」

一夏は服を脱ぎだした。さて、俺はもう行こうかな……。遅れて織斑先生の出席簿という名の凶器攻撃受けたくないし。

「さて、デュノア行くか」

「そうだね、そろそろ行かないと遅れるもんね」

「ま、待って二人共!」

「あ、大海君。僕のことはシャルルで良いよ」

「そうか?なら俺も俊吾でいいぞ」

「ちょ、マジで待って二人共……」

余裕の二人に対して、切羽詰まっている一夏。この後、一夏だけが出席簿アタックを食らったのは明白である。

◇   ◆   ◇   ◆

「さて、集まったな」

みんなが集まったのを見計らって千冬はそう言った。2クラスの合同授業なのでかなり人数がいる。

「では、今日は最初に模擬戦を行う。人選はそうだな…………大海、鳳!前に出ろ!!!」

え、何で俺?しかも、何で相手が鳳さん?

「あの、織斑先生?この人選は一体?」

「まぁ、待て。その理由は直ぐに分かる」

そのまま少し待っていると、空から声が聞こえた。

「ど、どいてくださ~~~~い!!!」

この声は……山田先生?山田先生が目視出来るんけど…………あれ、機体制御出来てないよね?あのままだと墜落…………。

俊吾がそう思った矢先、本当に墜落した。一夏を下敷きに。

ドカーーーーーーーーーーン!!!

もの凄い土煙が立つ。そして、何故だろう。いい予感はしない。

土煙が晴れると、一夏と麻耶が確認できる。一夏は白式を展開しており、怪我はしていない。が、問題があった。体勢である。一夏が麻耶を押し倒す形になっている。そして、右手で胸を鷲掴みしている。

ほら、言ったじゃないか。一夏は絶対に爆弾を投下するんだよ。

「……んん?」

一夏が意識を取り戻したようだ。そして、立ち上がろうとして手に力が入る。

「ああん」

「え?」

一夏はまだ状況がつかめていないようだ。

「あ、あの織斑君?こういうことは、お互いを良く知ってから行うものであって……」

山田先生も満更じゃないらしい。恐るべし、イケメンエネルギー。そして、それの代償か。俺の隣と生徒が並んでる中から2名程、物凄く睨んでいます。こりゃあ、後で追い掛け回されるのが妥当だな。

そんないつまでも動かない二人に千冬は

「……山田くん?」

と一言で物凄い圧力をかけていた。山田先生じゃなくて山田くんって所が、なお怖い。

「は、はい、すみません!!!」

山田先生は物凄い勢いで一夏から離れた。必然的に一夏は地面に落ちた。

「では、これから山田先生と模擬戦を行ってもらう」

え、マジで?言っちゃ悪いけど、山田先生ドジでダメやん。
考えていることが分かったのか、千冬は

「大丈夫だ、今のお前たちなら負ける」

と言った。
それはないでしょ。だって、山田先生だもん。

「山田先生、お願いします」

「は、はい」

麻耶は上昇していった。俊吾と鈴もそれについていく。

◇   ◆   ◇   ◆

「ここら辺で問題無いでしょう」

グラウンドから大分高い場所に来てから、麻耶はそう言った。

「それでは始めましょう」

麻耶はそう言うとライフルをコール。
山田先生が使っている機体はラファール・リブァイブ。俊吾が好きな機体である。

黒天慟の元にもなったこの機体は使い手によって化物になる。相手が第三世代であろうと、だ。そのくらいのポテンシャルを持っている。ちなみに、黒天慟は第三世代機だ。

「いきます!」

麻耶はそう言うと、ライフルで射撃を始める。俊吾と鈴はその場から離れ、回避を始める。

「さて、鳳さん。どうする?」

俊吾は回避しながら鈴に話しかける。鈴も同じように回避しながら答える。

「どうするってどういう意味?」

「いや、このまま逃げてるのもいいけど、戦法はどうするのって意味」

「そうねえ……」

鈴は回避しながら考えているが、俊吾は回避に余裕がなくなってきていた。麻耶の射撃は回避先を的確に撃ってくる。まだ回避できてるが、どうも避けきれる自信はない。

そういえば、何となく機体が変な感じするなと思ったけど設定変えてたんだ。動きやすいは動きやすいけど、どうもまだ慣れない。もう少し改良を加えたほうが良いかもな。

「とりあえず、私が突っ込むわ。フォローよろしく」

あ、やべ、そういえば、どうするか聞いてたんだ。忘れてた。

俊吾はその思いを知られないように、すぐに返した。

「え、突っ込むの俺の方が良くない?」

「どうして?」

「いや、鳳さんは龍砲っていう見えない砲台があるわけだし。それに、射撃だって鳳さんの方が上手いし」

「……あんた、それ本気で言ってる?」

鈴の言葉には少し、怒気が含まれていた。

「あんたと何回か模擬戦して分かったけど、私よりもあんたの方が射撃技術は上。悔しいけどね。だから、私が前に出るの。あんたを信頼してるんだからね」

……そんな風に思われてたんだ。じゃあ、俺も期待に添えないと。

「あと、私のことは鈴って呼びなさいって何度言えばわかるの?」

「あはは…………分かったよ、鈴……さん」

「まぁ、及第点ね。それと、ちゃんとセシリア達も名前で読んであげなさいよ。結構、地味に来てるみたいだから、あの二人」

何か悪いことしてたんだな、三人に。終わったら、頑張って名前で呼ぼう。

「じゃあ、鈴さん。全力でフォローするから攻め、よろしく」

「じゃあ、任せたわよ!」

鈴はそう言って飛び出していった。接近してくる鈴に対し、麻耶は落ち着いて目標を鈴に変える。俊吾は麻耶が攻撃しないよう、ライフルをコールして阻止する。

鈴は俊吾のフォローもあり、かなり麻耶に接近していた。そして、鈴は青龍刀をコールして麻耶に切りかかる。麻耶は腕に備え付けられているシールドで鈴の攻撃を防御するが、つばぜり合いの様な状態になり完全に無防備である。

俊吾は遠距離からの狙撃で麻耶のシールドエネルギーを削っていく。麻耶は劣勢と思い、シールドで鈴の青龍刀を弾く。鈴もそれを上手く利用し、距離を取る。だが、逆に麻耶はシールドを盾に鈴に接近していく。

途中まで鈴も俊吾も理由がわからなかったが、遠くで見ていた俊吾は麻耶の意図が読めた。

「鈴さん、下がって!」

「え?」

俊吾の叫びも虚しく、鈴は麻耶の攻撃にさらされる。麻耶はシールドを影にして、その影で右手にショットガンをコールしていたのだ。麻耶に攻撃されるまで鈴はそれに気付かなかった。いや、気付けなかった。完全に死角だったのだ。

俊吾は遠くにいて、その死角の外にいたわけだが、鈴への注意が少し遅れた。そのせいで、鈴は麻耶のショットガンをまともに食らってしまった。俊吾は鈴をフォローするために、鈴に近づく。途中で麻耶にサブマシンガンで牽制をしたが、麻耶は俊吾の攻撃を避けながら、鈴に攻撃を続けた。

…………凄い。

俊吾は麻耶に攻撃しながらそう思っていた。回避をしながらの正確な射撃。ブレない機体制御の軸。ハイパーセンサーの360見渡せるという機能を最大限活かしながらの回避。それが遠くから見ている俊吾には分かってしまって、素直に凄いとそう思った。

俊吾は鈴の近くに行くと、シールドをコール。鈴と麻耶の間に入った。

「鈴さん、大丈夫?」

「何とかね……。流石、IS学園の教師って事かしら」

鈴も麻耶が行っている技術に気づいたらしい。

「これからどうする?」

「このまま同じ戦法でもジリ貧よね……」

「そうだね」

少しの間、二人で先方を考えていると俊吾が気づいたことが一つ。

「……あれ、銃声が止まってる」

そう、静かになっているのだ。さっきまでシールドに打ち込まれていた弾の音と銃声が聞こえなくなっていた。嫌な予感を胸に秘め、索敵をする。すると、上から影が降りてくる。

上を向くと、麻耶がバズーカを構えながらそこにいた。麻耶がバズーカを放つ。俊吾と鈴は完全に不意打ちだったので、回避ができなく、二人仲良くグラウンドに落ちていった。

◇   ◆   ◇   ◆

落下の途中で完全にバランスを崩した二人。俊吾はこのまま落ちたら痛いだろうな、と思っていた。が、そこで気づいた。このまま落ちたら、鈴の方が危なくないか?と。

そう思うと、何故か気になるのが俊吾。バランスを崩した中で鈴を見つけ、手元に引き寄せ抱き寄せる。

「ちょ……何して」

そのまま落ちていき、俊吾は何とか自分を下にし

―――ドカーーーーーーン!!!

落下した。麻耶が地面に激突した時と同様に土煙が上がる。そして、土煙が晴れてきたとき俊吾は

「っつ~…………っと、鈴さん。大丈夫?」

と、自分の胸元に話しかけた。

「う、うん。大丈夫……」

鈴は状況を理解しているのかしていないのか、曖昧にそう言った。鈴は俊吾の腕にスッポリと埋まっている状態である。だが、その状況を理解すると物凄い速さで俊吾から離れた。

「な、何してんのよ!あんたは!!!」

「いや、あのまま落ちたら鈴さんが痛そうだなって思って……」

「ISは絶対防御あるから痛くないでしょうが!!!」

あ、そうでした。完全に忘れてた。

俊吾は一人、やっちまった感を出していると鈴が

「でも、まぁ……ありがと」

と言い残し、その場から離れていった。周りの人の証言によると、頬が染まっていたとかなんとか。俊吾は立ち上がり、周りを見渡すと視線が俊吾に集中していた。何事かと思うと、千冬が近づいてきた。

「……次に移行してもいいか?」

あ、もしかしなくてもあれですか。今の一部始終を見てたから変に気まずかったと。そりゃそうだよね。野郎が女子抱きしめて落ちてきたんだ。変態に思われても仕方ない。うん、仕方ない。

実際はその全く逆である。あの期待制御のできない場面で良く鈴を抱きしめ、なおかつ自分を下に出来たな、と満場一致で思っている。『お前、あの条件で良く鈴を助けたね。見直したよ!』みたいな感じである。俊吾の株が上がった瞬間である。

「では、専用機持ちの織斑、大海、オルコット、鳳、デュノア、ボーデビィッヒの六名に別れて実習を行う。では別れろ」

あ、それが今回のメインっすか。俺たちが戦わされたのは、見せしめっすか。まぁ、良いですけど。

そう言われ、みんな各々の行きたい場所に散らばった。だが、大半はシャルルと一夏のところに行く。

まぁ、ですよね。一夏はイケメン、シャルルは美男子。そりゃあ、集中もしますわ。あ、俺のところはって?あはは、来るわけないだろ?何人か、遠くでこっちをチラチラ見てるけどな。まぁ、あいつらは一夏達の所に行きたいが、あまりに人が多いから妥協して俺のところに来ようとか迷ってるとかそんな感じだろ。

「デュノア君の専用機ってどんなの?」
「私、デュノア君の操縦みたいな~」
「フランスってどんな国?」

俊吾がそんな事を考えている間、シャルルは女子からの質問攻めにあっていた。

「この、馬鹿者共!誰が固まれと言った!出席番号順に別れろ!!!」

千冬が見かねてそんな事を言っていた。みんなも渋々といった形で別れた。

俺のところに来た人達は可愛そうだね。だって、完全にハズレだもの。冴えない方の男子だもの。……自虐的になっていても虚しいだけだから、さっさと終わらせよう。

「あ~、さっさと始めようか?」

「いいけど…………始める前に一つ質問いいかな?」

あら、早速不手際ですか……。厳しいな。え~と、確か今話しかけてきた子は鷹月さん……だっけかな。

「さっきさ、鳳さんを助けたのってなんで?」

「何でって……そりゃあ、あのまま落ちたら鈴さんが痛いだろうなぁって思ったからだけど」

「怖く……なかった?」

「う~ん、確かに怖かったよ?落ちて鈴さんにISの絶対防御のこと言われるまでそのこと忘れてたしね。だけど、分かってても俺は助けたかな、多分だけど」

最後の方は言ってて気恥ずかしくなったので、多分を付けた。本当は絶対助ける。

「じゃあ、最後にひとつだけ……鳳さんだから助けたの?」

「いや、別に鈴さんだから助けたってわけじゃないよ。あの状況だったら、誰でも助けたと思う。……じゃ、質問終わりだね。始めようか」

俊吾はその後、段取りに従い授業を終えた。

ちなみに、先程の鷹月の質問で俊吾の班の女子の俊吾への評価が『あいつ、もしかして凄い?』から『凄い……ちょっと格好良いかな?あ、でも一夏とシャルルには適わないけど』に変化した。

◇   ◆   ◇   ◆

丁度、お昼休み。一夏は食事に誘われていた。例によっての3人だ。それに一緒にお呼ばれされた、シャルルと俊吾。

ここは校舎棟の屋上。天然芝が敷いてあり、いい緑色をしている。空も同じく綺麗な青色をしている。ここで昼寝したら気持ち良いだろうな……と思っていた。

「さぁ、一夏さん。召し上がれ♪」

食事に誘われたいたというのは、三人でお弁当を作り一夏に食べさせるというものだった。

……何で俺を誘った、シャルルはともかく何故俺を。完全に空気じゃないか……。というか、購買部で買ったパンを持ってきてよかった。備えあればなんとやらだな。

セシリアが作ってきたのはサンドイッチだった。色取り取りの野菜を使っており、見栄えがかなり良い。イギリスではサンドイッチは結構ポピュラーらしい。

「お、うまそうだな。いただきます」

一夏はそう言って、サンドイッチに手を伸ばし、それを食べた。

「ど、どうですか?」

セシリアが心配そうな声でそう訪ねるが、一夏から返事はない。というか、顔色が面白いくらい変わる。そしてこの瞬間、俊吾は悟った。『セシリアは料理が下手』と。サンドイッチが料理と言えるのか甚だ疑問だが、サンドイッチで顔色が変わるほどの不味さは壊滅的と思われる。

ようやく一夏は口を開く。

「あ、ああ、凄く特徴的だと思う」

流石の一夏もストレートに言わなかったか……。よっぽどだな。

「まぁ、それは良かったですわ♪」

セシリアさん、今の一夏のセリフに褒めてる要素あった?俺は遠回しに不味いって言ってる気がしたんだが。

「ほら、俊吾も食べろよ。凄い特徴的だから食べてみる価値はあるからさ」

こいつ、俺を巻き添えにしやがった……!シャルルには食わせないのに、俺だけ巻き添えにしやがった……!だが、そうはいかん!

「いや、俺もうお腹一杯だからやめとくよ。一つ分も食べられないし」

「だったら、一口だけ食べてみろって」

あ、これ断れないパターンや。

「……じゃあ、ひとつだけ貰おうかな」

くそ、負けた……。

俊吾は一夏から貰った、セシリアのサンドイッチを食べる。

!!!?!?!???!?!?!?!?!?!?
口の中に衝撃が走った!!!辛い?苦い?甘ったるい?酸っぱい?生臭い?どの言葉を使っても今の口の中の状況を伝えられる気がしない。それほど『不味い!』。というか、やべ~。汗止まらね~。脂汗止まらねえ~。口に入ったサンドイッチも出せね~。今出したら吐ける自信がある。

俊吾は無理にサンドイッチを口に押し込み、何とか飲み込んだ。

……出来れば、何か口直しが欲しい。脂汗止まらないし。

そう思っていると声を掛けられた。

「……あんた大丈夫?」

鈴であった。俊吾を心配して話しかけてくれたようだ。

「……割と大丈夫じゃない。というか、何か口直しが欲しい」

「……じゃあ、これ食べなさいよ」

鈴は持っていたタッパを開いた。中には酢豚が入っていた。玉ねぎ、豚肉、ニンジン、ピーマンがバランス良く入っており、見栄えがかなり良い。俊吾は食べようとしたが、ある思いが一瞬頭をよぎる。

あれ、これセシリアと同じパターンじゃね?

さっきと同じ条件だった。フラグが立ちまくりだった。

突如動きを止めた俊吾。鈴も途中でその理由に気づき

「大丈夫よ、セシリアよりは絶対に美味しいから」

と言った。俊吾はその言葉を疑ったが、どうでも良くなった。早く口直しがしたいのだ。じゃないとまずい。
俊吾は、鈴に渡された箸を使い、酢豚を一口食べた。

程よく効いた酸味、ほのかに香る野菜本来の旨み、肉もちゃんと下ごしらえしているようで柔らかく文句なしで美味しかった。そこら辺の定食屋で食べる酢豚とは味付けが違っていて、これが本場の味か……と俊吾は思った。

あ~、一夏も羨ましいな……。こんなに料理がうまい幼馴染がいて。箒さんの弁当も『ザ・日本の弁当』って感じがしてすごく美味しそうだし。と言うか、うまいうまい一夏が言ってるし。そして、いつの間にか鈴さんもあっちに参加してるし。つか、さっきまでここにいたよね?移動するの早くない?

あ~、爆発しねぇかな……。あのリア充爆発しねぇかな…………。

俊吾がそんな事を思っているとシャルルが近づいてきた。

「一夏、モテモテだね」

「まぁ、一夏はイケメンだからな」

「俊吾はモテないの?」

「いや、俺がモテるわけないだろ。一夏がイケメンのせいで俺の普通さが際立ってるし」

自分で言うのも悲しいものがあるけど。

「普通なら、さっきの実機授業の時、鳳さんを助けなかったと思うんだけどな……」

またそれか…………。そんなに、俺がヘマしたのを弄りたいのか……。やめて欲しいっす。

「普通は自分を犠牲にしてまで、誰かを助けるって今年ないと思うんだ。何で俊吾は鳳さん助けたの?」

「まぁ……単純に、鈴さんがあのまま落ちたら痛そうだなって思ったからだけど」

まぁ、本当の理由は別にあるんですけど。あ、この理由もちゃんと5割分はあるけどね。

「ホントにそれだけ?」

変に鋭い奴め……。

「それだけじゃないけど、言わないでおくよ。聞いて気分良いものでもないし。機会があれば話すよ」

「うん……聞けるの、楽しみにしてるね!」

楽しみにされても困るんだけどな……。ま、いっか。

シャルルは仕切り直しという感じで、また話し始めた。

「それと、僕思うんだけど、男の人の価値って顔だけじゃないと思うんだ。むしろ、性格の方が大きいと思う」

シャルルはどこか考えるように言っている。

「だから俊吾も自信持っていいと思うよ?」

微笑みながらシャルルは言った。

……………あれ、何か今背筋がゾワッてなったんだけど。これって女子苦手センサーが発動した時と一緒なんだけど…………。あ、あれか。シャルルが男の娘だから勘違いしたんだ。そうに違いない。

「まぁ、頑張ってみるよ」

動揺を悟られないように出来るだけ自然に、俊吾は言った。

「あ、そろそろお昼休み終わるね」

「そうだな……あいつら止めて戻るか」

今、箒、セシリア、鈴の三名は一夏独占マッチなる物をやっていて、よく分からない争いをしている。そんな様子を見ていると、俊吾はだれかさっさと告白すればいいのに……と思った。

面倒以外の何者でもないが、俊吾は三人の争いを止め、教室に戻った。

◇   ◆   ◇   ◆

そして、放課後。俊吾は少し急いで第7整備室に向かっていた。何故急いでいるかというと、シャルルに捕まっていた。何かと俺に付き纏い、教室から出るのが遅れた、という訳だ。

「はぁ……急いだせいで少し疲れたな」

疲れながらも、第7整備室についた俊吾。ドアを開けると、簪はパソコンを打鉄弐式に接続しプログラミングをしていた。遠目からでは何をしているのか分からないが、難しいことをやっているのだろう。

「悪い、簪さん。少し遅れた」

俊吾は謝罪の意味を込めそう言った。

「……別に大丈夫」

簪は俊吾が今そこにいるのを知ったようだった。俊吾はコンソールを取ってから、簪に近づいた。

「今は何してるんだ?」

「今は……武装のプログラミング……」

武装のプログラミング?何か自動制御の武器でもあるのか?

「差し支えなければ、なんの武器か教えてくれない?」

「……マルチロックオンシステム……高性能誘導ミサイル…………」

「それって……あの、打てば全自動で処理してくれるってミサイル…………?」

「そう……」

「うそ!マジで!!!うわ、すげ~!!!ちょっとプログラム見せて!!!」

俊吾は異様に興奮していた。前人未到の完全全自動ミサイルが開発されているとは風の噂程度には聞いていた。その噂と思われていたものがある。しかもプログラムがだ。エンジニアを目指す俊吾にこれほど嬉しいことはない。

「あ~、なる程、この部分が自動操縦の部分、ここがロックオンシステムの基盤か……いや、だけど、これは、ミサイル自体の性能を上げるプログラム……?」

周りが見えなくなるほど熱中した俊吾を簪はただ見ていた。そして、俊吾が我に返る。

「……あ、ごめん。いきなり興奮して…………」

「私も最初は……そんな感じだった……私もISが好きだから……」

……俺は少し簪さんを誤解していたかもしれない。ISを作るのは楯無さんに対抗するためだけだと思っていた。実際、それも理由になっているだろうが、簪さん自身もISが好きなのだ。だからこそ頑張れるんだ、この子は。

「そっか……じゃあ、俺は昨日の続きするな」

結局、昨日は仮のエネルギー回路だけだったからな。今日は回路だけでも完成させないと。

二人はそれぞれの仕事に戻り、作業を始めた。

1時間後、俊吾は回路の接続が完全に終わった。

「よっし、終わった」

細かい調整は、簪さんと相談して決めよう。さて、簪さんの方を覗いてみるか……。

「簪さん、どんな感じ?」

「うん……やっぱりここまでくると……難しい…………」

まぁ、そりゃあそうだ。プログラミングが命のミサイルだ。そう簡単にできたら苦労はしない。……あれ、だけどこれって理論だけは完成してなかったっけ?確か……匿名で日本政府に送られてきたとか……。普通の高校通ってた時だから、ちょっとあやふやだな……。

「簪さん、ちょっと貸して」

「はい……」

簪は俊吾にパソコンを渡す。

「確か、俺の記憶が正しければ……」

俊吾は待機状態にされている黒天慟をコアネットワークに繋ぎのデータフォルダから一つのフォルダを開封する。

「………………ビンゴ!」

「え……?」

「多分、明日には終わる」

「どういう事……?」

「えっと、最近新しい理論が発表されただろ?あれって、マルチロックオンシステムの理論だったんだよ。それで、ISのコアネットワークを通して資料見たらビンゴだったってわけ。性能は落ちるだろうけど、マルチロックオンシステムに変わりはないと思う」

「良く……覚えてるね……」

「ISの事だけは覚えるんだよ、自然とね」

「ありがとう……もしかしたら、来週には……出来るかもしれない……」

「その言葉は完成してから言って欲しいな」

「分かった……完成した時、改めて……言わせてもらう……」

「楽しみにしてるよ。っと、もう時間か……」

時計を見ると6時を少し回ったところだ。

「簪さん、少しこのデータ借りていい?明日には完成できると思うから」

「分かった……任せる……」

「よし、任された!」

俊吾はパソコンを持って立ち上がった。

「さて、寮に戻ろうか」

「うん……あの、俊吾君」

廊下に出たとき、簪は俊吾を呼び止める。

「今日……一緒に夜ご飯食べない……?」

「ああ、ご一緒させてもらうよ」

「だったら……私のおすすめ……教えてあげる……」

「お、そいつは楽しみだ」

それから二人は食堂に行き、ご飯を食べた。二人の仲が良くなったのは必然である。あくまで、仲が良くなっただけだが。

二人が食堂に行った時、その場に居合わせた者は衝撃を受けたようだ。地味男子が女子と一緒にご飯を食べていたからだ。色々と関係が考えられたが、地味男子だったらいいか、とその場は収まった。

◇   ◆   ◇   ◆

俊吾は簪と別れたあと、自室に戻っていた。そして、中に入ると一夏とシャルルがいた。

「あれ、二人共どうした?」

「お、やっと帰ってきたな俊吾」

「今ね、部屋割りをどうするか話してたんだ」

あぁ、なるほど。3人だから、だれかは一人部屋になるわけか。

「僕、一応鍵貰ってきたんだけど、部屋は自由にしろって織斑先生に言われて」

あの人は……。何もシャルルが一人部屋になれば済む話だろう。あ、でも、異国で一人にさせるのも気が引けるか。

「千冬姉も適当だな……」

「適当なのは否定しないが、色々考えてると思うけどな、今回は」

「そうか?」

「勝手に思ってるだけだけどな。ま、いいから部屋決めよう」

正直言って、俺はシャルルと同じ部屋になって仲良くやれる自信はない。学校で休み時間一緒にいるくらいならいいが、部屋となるとまた別だ。そもそも、シャルルはお昼の悪寒から少し苦手だ。と言うわけで、俺が抜けるか。

「まぁ、決めようとか言ったけど、俺が一人になれば解決だよな」

「なんでそうなんだよ」

「なんでと言われても……俺が一人になりたいから?」

「疑問形かよ!」

「良いじゃんか、俺が抜けるで」

全く、一夏は面倒だな……。ツッコミは良いキレなんだが、少し言葉のレパートリーが少ないかな。

「僕は……出来れば俊吾と一緒がいいな……」

シャルルがボソッと言った。一夏は聞こえていたみたいだが、俊吾は聞こえないふりをしていた。

「シャルルはそう言ってるけど、俊吾はどうするんだ?」

畜生……わざわざ言い直さなくていいよ、聞こえないふりしてたのに。全く、新しい理由を考えねば……。あ、あれがあったじゃないか。

「悪いけど、俺ちょっと国から人には言えないような書類預かっててそれを処理しなきゃならないんだ。だから、一人部屋の方がありがたい」

大嘘である。簪にもらったマルチロックオンシステムをプログラムを完成させなければならないのは本当だが、機密書類でも何でもない。

「そう……なら仕方ないかな……」

「それより、二人はご飯食べてきたのか?」

「いや、まだだけど」

「俺、もう食べてきちゃったから食べてきたらどうだ?」

「そうだな……そうするか。俊吾、取り敢えず部屋の荷物の片付け宜しくな」

「了解」

「あ、僕、荷物だけ持ってきちゃうね」

シャルルは渡された鍵の部屋に行った。数分後に戻ってくると、鍵を俊吾に渡し一夏と食堂に向かった。

「さて、荷物を早く持っていくか」

俊吾は荷物を持ってシャルルに渡された鍵の部屋に向かった。部屋番号は『1028号室』だった。近いと思ったが、廊下を挟んでいるため意外と遠かった。

無事に部屋につき、荷物を使うものだけ出し、パソコンを起動。作業に取り掛かった。

「よし、早いとこ終わらせよう」

その後、大体4時間弱掛かり、終わったのは11時過ぎだった。俊吾はシャワーを浴びて、寝ることにした。


 
 

 
後書き
え~、どうでしたでしょうか。

何を書けばいいんだか分からなくなってしまった作者です。

あ、後書きですよ?本編は問題なかった…………よね?

よし、気にしない!

で、後書きですね。

え~と、気づいたかもしれませんが段々と俊吾君が一夏に文句を言い始めてます。

これにもちゃんと一応意味あります。

性格が悪くなっているだけではありません。

あと、鈴とも少し仲良くなったりならなかったり。

簪とは一歩進んだ仲になりました。

え~、あと書くことないな。

次の更新楽しみにしててね!

…………うん、やめよう。普通に言おう。

更新楽しみにしててください。

では。
 
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