| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

銀色の魔法少女

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十話 復活 前編

side 遼

 アリシアは一直線に私に襲いかかった。

 速さはそれ程でもなかったが、目に見える魔力量だけでも私の体を貫くには十分な量の魔力が溢れ出ている。

「くっ!」

 遼は強化した剣で受けて止めるが、そのまま共に海中に落下する。

(面倒だなぁ、一番相性が悪い私にアリシア、その他をあいつが相手、戦略としては間違ってないだろうけど、どう考えてもなのはたちのこと舐めてかかってる)

 海底に到着する頃になってようやくアリシアが離れる。

 その様子から察するにどうやら海中でも呼吸可能、いや、そもそも呼吸してるかどうかも怪しい。

(水中戦なんてやったことないけど、好都合)

 私は緊急用の水中呼吸器を取り出す。

 クリムの魔改造により、呼吸できる時間は10~15分くらいに伸びてはいる。

 しかし、気休め程度でしかない。

(全力で戦えるとしたらその半分、長くて7分かな)

 これは元々戦闘用ではなく、まさに緊急用だから戦闘を想定して造られてはいない。

「――――――――――――――――――――――――――――――!!」

 そんなことを考えているとアリシアがまた襲いかかってくる。

 けれど、海水に邪魔されて先ほどより遅い。

(そして、水中なら防御は私の方が上)

 アリシアに向けて手をかざす。

 少し魔力を込めただけで海水が凍り、即席の盾ができる。

 その盾に阻まれて、アリシアの腕は遼に届かない。

 水が無限にあるこの状態で、私に傷をつけるのはほぼ不可能。

 たとえ、これが破壊されても新しく造ればいい。

 けど、問題はその先だった。

(7分、その間にあいつをなんとかするか、私が上に行かないと、確実に死ぬ)

 7分、それが私の残りの寿命。

 それまでにこの状態から脱却しないと、私は窒息して死ぬ。



side ALL

「シグルドさん!」

 なのはが叫ぶも遼には聞こえず、彼女は海中に落ちる。

「なのは、あいつのことは後だ! 今は目の前の敵に集中しろ!」

 そう言われて、なのははレイに目を戻す。

「魔力吸収、確かに厄介なスキルだが!」

『ブレイズキャノン』

 クロノが熱量を伴った砲撃を放つ。

 魔力ではなく熱による攻撃、確かにこれならば魔力吸収は発動しない。

 しかし、

「ダメだ! それじゃあ防がれる!」

 アルフが叫ぶも、時すでに遅く、レイは自分の本来のデバイスを展開し終わっていた。

「掻き消せ!」

 レイの槍が、クロノの砲撃を砕く。

 槍が廻り、クロノの魔法を粉々にしていく。

 結果、クロノの砲撃はレイにダメージを与えることはできなかった。

「あれが、レイのデバイス、『乖離剣・エア』だよ……」

 アルフが伝えるその剣の姿はまさに異形だった。

 柄は黄金、刀身は円柱状の三段重ね。

 それは剣というよりも岩を砕くドリルに近かった。

「あれが近づくやつを皆砕いちまう、フェイトの本気の雷撃だって通らない」

 この場にいる誰もが絶望した。

 つまり、AAAクラスの砲撃も無効化されるということだ。

 そんなものに、どうやって勝てばいいのか思いつかなかった。



 そう、たった一人を除いて。



『Divine Buster』

「!?」

 ピンク色の魔力砲がレイを襲うが、それを片手で打ち消す。

 皆、なのはの方を振り向くと、うつむいていたなのはが話し出す。

「確かに、あなたには魔法も攻撃も通用しないし、私じゃ勝てないかもしれない、けど!」

 なのははレイジングハートをレイに向ける。

「シグルドさんはまだ戦ってる! 全部知ってたはずなのに諦めてない!」

 全員が気がつく。

 アルフからレイのことを聞かされていたのなら、当然エアや魔力吸収のことを知っているはず。

 だが、遼はそれでも作戦を決行した。

 つまり、勝ち目があると考えていたからだ。

 確認を取ろうとクロノが遼に連絡しようとしたその時、予想外の出来事が起こった。

『Infinity Buster』

 ディバインバスターよりも数段強力な赤い魔力砲がレイを襲う。

「何!?」

 レイは咄嗟にエアでそれを掻き消す。

 皆がボーゼンとする中、上空からバカ高い笑い声が響く。

「わはははははははははははははははははははははははははははははは!!」

「この頭に障る声は……」

 レイはいやいやそいつを見上げる。

「ちゃんと殺して、時空間に放り投げたはずだが」

「は、その程度でくたばる俺ではないわ!」

「よく言うよ、傷だらけで漂っていたところをアースラに保護されたくせに」

 呆れた様子でクロノが補足する。

「………………ふぇ?」

 なのはに至っては思考が停止していた。

 そこにはなのはたちの怨敵こと、紅生刃が堂々と佇んでいたからだ。

「ピンチの時に駆けつけるのがヒーローってもんだ! 流石に傷がひどくて今まで動けなかったが、これからはそうはいかない! 艦内放送で全て聞かせもらった、これ以上のブレイクは俺が許さん!」

 流石に原作ブレイクとはなのはたちの前で言いづらかったのか、少しぼかした言い方になる。

「いくら雑魚が集まったところで、俺の勝ちはかわらないよ」

 レイには自信があった。

 たとえ心臓を潰しても復活してくる刃を相手にしても、負ける気など全くなかった。

 しかし、事態は再び急変する。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 悲鳴と共に巨大な水しぶきが真下から巻き起こる。

 体のいたるところを凍らされたアリシアが吹き飛ばされたのだ。

 次いで、もう一人海中から上がってくる。

「3分30秒、なんとか時間内には脱出できたか……」

 そう普通に呟く遼だったが、彼女も無傷ではなかった。

 重いもので肋骨三本の骨折、左腕にヒビ、クリムが体内で全力で治してはいるが、回復が追いついていない。

 遼はそのままなのはの元へ行く。

「なのは」

「は、はい!」

「よく言った」

 そう言ってなのはの頭に手をのせる。

「ふぇ?」

「少し前までただのおなごだったそうじゃが、とてもそうとは思えんくらい立派じゃったぞ」

「へ、へへへ」

 遼に褒められて嬉しそうだったなのはだったが、彼女から漂うある臭いに気がつく。

 そう、彼女から漂う血の臭いに。

「シグルドさん、あの、どこか怪我を?」

「ん? なあにカスリ傷じゃ、問題はない」

 もちろん嘘だった。

 なのはもそれはわかっていたが、遼がそう言うので聞けなかった。

 ちなみに、この行為にとても腹を立てている人物がいた。

「おい! なのはは俺がおとす予定なんだ、勝手な手出しをするな!」

 もちろん、紅生 刃である。

「そう戯言を申すな頭に響く、それに今はそんなことを言っている場合ではなさそうじゃぞ」

 そう言って遼はアリシアに目を戻す。

「あれ程凍らせたのにもう復活しよって、実に忌々しい奴じゃ」

 なのはと会話している間に全身の氷を溶かしたアリシアは、既に次の攻撃の準備に入っていた。


 
 

 
後書き
刃の特典:

『不死』心臓や頭を潰しても死なないし、腕を切り落としても再生する。だが、その分時間がかかる。



今日と明日は長いので連続投稿になります、
楽しみにしてください! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧