| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

銀色の魔法少女

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十九話 人造兵器・アリシア

side ALL

「そう、彼女は既に死んでいたのだよ」

 遼の言葉がその場に響く。

 しかし、それを理解できるのは管理局員であるクロノと事件に深く関わっているフェイトとアルフだけ。

 つまり、なのはとユーノは全く分からなかったが、初めて見る死体に驚きを隠せないでいた。

「……テスタロッサという苗字を聞いた時から、彼女が関わっているとは思ってはいたが」

 ここで気がつく。

 プレシアを知っているのはフェイトたちだけであって、もし、クロノまでが知らなかったらとてつもなく説明が面倒だったのでは!? と遼は思った。

『死後だいたい二、三週間、ちょうどジュエルシードがばらまかれた頃だ』

 みんなの動揺を他所に、向こうのクロノは淡々と状況を説明する。

「え、そんな、私、ちゃんと、母さんと話たし、会ったよ」

 震えでうまく言葉を出せないフェイトに、更なる事実が突きつけられる。

「そう、つまりは今まで彼女に成り代わっていた人物がいたことになるな」

 ここでクロノとユーノは気がつく。

 プレシアを殺し、フェイトとアルフを操っていたのは誰かに。



「そうじゃろう、レイ・テスタロッサ、いや、それとも偽プレシアと呼べば良いか?」


「レ、イ…………」

 フェイトは驚き、彼を見る。

 その瞳には信じられないといった思いが感じられる。

「……まさか、こんな風にバレるとは思ってなかったよ」

 レイは諦めたように、アルフに向き直る。

「アルフだね、全部バラしたの、確かに殺したと思ってたけど、やっぱり物語の強制力ってやつなのかな」

「じゃあ、アルフが、いなくなったの、も」

「そう、僕がやった、ちょうど変身を解いてアレの調整をしていたところを見られちゃってね」

『アレ、とは彼女のことかな?』

 画面がまた切り替わる。

「え」「うそ!?」「そんな!?」「まさか!」「…………(うわぁ、やっぱりあった)」
 今度はレイとアルフ以外の全員が驚いた。

 そこには、幼い全裸のフェイトが液体で満たされたガラスの中に浮いていたからだ。

『彼女の名前はアリシア・テスタロッサ、プレシアの実の娘であり、フェイトのオリジナル体だ』

「……彼女が最後に研究していたのは使い魔を超える人工魔道士の生成だった」

 クロノがそう呟く。

『彼女ね、昔事故で娘さんを亡くされてるの、その子の名前がアリシア、フェイトっていうのは当時のプロジェクトにつけられた開発コードなの』

 エイミーがそれを引継ぎ、説明する。

『そう、フェイトが生み出されたのはアリシアの代わりとなるため、しかし、それも失敗し、今度はジュエルシードを集め、アルハザードに行こうとした、けれど、レイが関わったことで事態が急変した』

 向こうのクロノが詳しい資料を映し出す。

『レイはアリシアとジュエルシードを利用して最強の兵器を造り出そうとしたのさ、ジュエルシードをその身に宿し、無限に活動できる人造兵器、たとえ大砲をくらっても動き続け、その腕で山も砕く』



『その兵器の名はアリシア、人の形をした、人ならざる者だ』



 ここで、フェイトの精神が限界を迎えた。

 母親の死、レイの裏切り、アリシア、そして自分の出生の秘密、はフェイトには耐え難いものだった。

「フェイト!?」

 アルフがフェイトを抱きとめるが、その瞳には光がない。

「無理もないが、今は治療する時間も惜しい、……ユーノ、彼女をアースラに送ってやれ、アルフはここに」

 何か言いたそうにしていたアルフだったが、それが最善だと分かっていたため、大人しくフェイトをユーノに託す。

 ユーノが消えると、向こうのクロノが再び話し出す。

『マスターとアルフの情報からだいたいの察しはついていたが、まさかこんなものを造るなんて、とてもじゃないが正気の沙汰じゃ――』

「それが?」

 向こうのクロノの言葉を遮り、レイが話しかける。

「確かに僕、いや、俺の計画がバレはしたが、結局それだけだ、貴様らには俺とアリシアを止めることはできない」

「それはどういうことだ!」

 クロノが叫ぶ。

 アリシアが発見されたこの状況で、彼がどうやって逆転するか想像できなかったからだ。

「ほぉ、この戦力差を覆す術を、主は持ち合わせおるのか?」

「だから、そうだと言ってるだろ、魔法を使う限り、あんたらは俺には勝てない」

「じゃあ、試してやろうか!」

 クロノが目にも止まらぬ速さで魔力光弾を放つ。

 それはレイにも防げる速度ではなかった。

「な!?」「嘘!?……」

 なのはとユーノが驚くのも無理はなかった。

 レイの額にそれが当たったかと思うと、瞬く間に消えてしまった。

「あれはレイのレアスキルさ! レイが触ると、魔力が全部吸い取られちまうんだ!」

 アルフが叫ぶ。

「なるほど、確かに、魔法では勝てないとは、事実のようじゃな」

 焦るクロノたちとは異なり、遼は至って冷静だった。

 こういう時のシュミレーションはクリムと嫌というほどやってきたからだ。

 それはAMF対策だったが、この状況にはちょうど良かった。

「レイの相手は我がする、主らは……、アジトにあるアリシアの確保を」

「いや、その必要はない」

 遼の言葉を遮り、レイは魔法陣を展開する。

「おいで、アリシア」

 レイの目の前に、あのカプセルが現れる。

「っち、もう完成しておったのか」

「本当はもう少しジュエルシードを集めてからの方がよかったけど、まあ仕方ない」

 そう言うと、彼は懐からジュエルシードに似た宝石を取り出す。

『クロノ君! あれ、ジュエルシードと同等のロストロギアだよ!』

「そう、今回だけならこれで十分、あんたらを殺した後に残りをゆっくり奪うとするさ」

 カプセルが割れ、アリシアの体が空気に触れる。

 そこに、胸の中央にそれを埋め込む。

「さあ、目覚めの時間だよ、アリシア」

 その言葉に反応して、彼女は目を開ける。

 ゆっくり、本当にゆっくり彼女は歩き出す。

 同時に光の粒子が集まり、彼女のバリアジャケットを造り出す。

「さあ、これからは殺戮の時間だ」

『ア、アア、ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 アリシアが泣き叫ぶようにその声を辺に響かせる。

 その声を合図にして、ここに、後にジュエルシード事件、別名レイ・テスタロッサ事件と呼ばれる出来事の最終決戦が幕を開けた。 
 

 
後書き
レイの特典:

『魔力吸収』触れたものの魔力を吸い取ることができる。

追伸;
次回、いよいよ刃君復活! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧