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連邦の朝

作者:連邦士官
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第33話 ロマリアとトリステイン

 
前書き
お待たせさせてしまいました。
すみません。 

 
ワイアット達の会談は、やがて外交交渉に及んでいった。

その頃、ロマリアでは

「非常に!非常に不味いねぇ!アンドレーア君?」
教皇が、何時もの事だが狂ったように資料を見ながら叫んでいた。

「教皇様、落ち着いて下さい。また、警備が飛んできます。」
側近アニェーゼは、教皇を宥める。

「落ち着いて下さいもなにも、私の支持率が下がっているのだよ?下がり過ぎている、ただでさえあの誇りで飯が食えると思ってる勘違い騎士団と自分の取り分しか考えていない似非僧侶、狂信的な信者から私は、嫌われているのに、このままでは、私は天命により抹殺されかねない状況なのだよ。」
教皇は興奮した様子でそう言った。

「だから、教皇様は焦ったり怒ったりしているので? 」
アンドレーアは、口元に笑いを貼り付けている教皇に聞く。

「ダメダメだねぇ。アニェーゼもアンドレーアも…」
教皇は、わざわざやれやれとした大きな、そして勿体つけた動きで話した。

「では、これは一体?」
アニェーゼは、苛つきつつも教皇に聞く。そんな様子を見ながらアンドレーアは、教皇自体に悪気は無くとも自然に相手を焦らしたり煽ったりする癖は、アニェーゼも私もよく知っているのに、よく苛つくなぁと呑気に考えていた。

「大半の者が失策や失政の後は、危機しか無いと考えてかかっている。失敗の後の危機は、一転すればそれはまた、甘美なそして巨大な好機でもあるのだよ。」
教皇は、聖職者よりも捕食者と言う言葉が似合うニタァと言う動きの笑いを浮かべながらヘラヘラしなが、言った。

「真面目に答えて下さい。猊下!」
アニェーゼは、怒った。教皇が司教の時から付いているアンドレーアさえ不快に思う言い方だったのだアンドレーアよりも、遥かに教皇との付き合いが無いアニェーゼが怒るのも無理は、無かった。

「何時でも、私ほど現実に向かって真面目な人間は、居ないと思うよ?現実に生き過ぎたばかりに理想を求めてさ迷う求道者達に嫌われてしまったがね。」
ロマリアの中では、数少ない教皇の理解者であるアニェーゼが自分の事を少し他人行儀な言い方をしたのに傷付きながらも、それを隠す様にフッと笑う教皇。

「では、教皇様何を為さるんですか?」
アンドレーアが教皇に聞いた。

「先ずは、小手調べ“たまたま”荒くれ者の傭兵団が国内で暴れまわり、その隙を突き隣国が攻めてくるってのはどうだろうか?」
教皇は、笑いながら問う。

「何とも!」
「それは!」
二人とも酷く驚いた様子で教皇を見た。

「そう!その顔堪らないねぇ。笑いが止まらずに何処からか込み上げてくる気がするよ。だから、こう言うことは、止められんのだ。全くねぇ。」
教皇は、恍惚の表情を浮かべながら二人を見返した。

「教皇様…」
アンドレーアは、これさえ無ければ凄く魅力的で有能な人に見られるだろうにと考えていた。

「教皇様!まさか、その為だけに我々教会が信徒に手をかけると言うのならば、私は抜けさせてもらいます。」 アニェーゼは、教皇の案に不信感を抱いた。
元々、アニェーゼは教皇がロマリアを、更には、ブリミル教の信者を守り利益をもたらすと言うから、付いて来ていた人材なのだ。
彼女は、若くしてロマリアの孤児院全体の長であり、人材育成から書類仕事まで大体の事をしてしまえる才気溢れる女であり、その女性的な肉体と知的で尚且つ優しげな美貌を持つ彼女は、修道女でありながらも男からも女からも人気が高く、現教皇の数少ない支持率は彼女に対するものと思ってよいほどのものだった。

「アニェーゼ君?君は、私を理解しきれてないねぇ。信者の問題では、一番怖いのがここにいるだろう?アンドレーア君?君は、理解しているのだろう?理解しきれてない彼女に教えてあげたまえよ。」
教皇は、にやつきながらアンドレーアに話題をふった。

「教皇様、つまりは“ある”国の新教徒を狩るということですね?」
アンドレーアは、教皇に話を戻した。

「ふふふっ、ハハハハハハハハ!その通りその通りだよ、アンドレーア君!!君は、察しが早く理解力が高い!凄く優秀な男だな!ハッハッハッハ。」
教皇は、更に上機嫌になりアンドレーアを誉めた。

「有難うございます。」
アンドレーアは、教皇に礼を言った。

「…狂ってる。」
誰に聞かせる訳でもなくアニェーゼは、呟いた。

ロマリアでは、多くの人が気付かずにゆっくりと、ゆっくりと狂気が上層部を蝕み、そして、中間層に狂気と言う名の水が、染み渡り下部から大衆に狂気が、回り始めやがては狂気に飲まれていない常人が、狂人として吊し上げられる結果となる。

ロマリアからトリステインに話は、戻る。

それは、外交問題について話合っていた時の事だった。

「各自、意見を聞きたい。ロマリアについてだが、私は次期教皇にマザリーニが就くのが一番良いと思う。これについてはどうかね?」
サラッとワイアットは、爆弾をこの議会に、投下したのだった。

「陛下!」「そっそれは…」「何と!」「フゥム、何とも奇っ怪な。」
各員は、驚きの余りに顔が引きつり歪み、その歪んだ口から辛うじて残った理性が驚いた感想を口から吐き出していた。

「皆さん、今陛下が言った通り私は、これより腐敗と悪い慣習が蔓延するロマリアの教皇選に出て改革していきたいと考えております。」
マザリーニは、淡々とそれがまるで自身が定められた運命であるかの様に言った。

その後、全員が意見を述べた。概ね皆賛成とのことで会議は、閉幕した。

フラッと出たワイアットは、自身が気づかぬ内に口許に笑みを浮かべて呟いていた。
「腐った木の枝は、切らねばならん…どんなに痛みを伴ってもな…」
ワイアットの呟きは、やがてハルケギニア全土を震撼させることとなるある事件の始まりに過ぎなかった。
 
 

 
後書き
非常に、遅れてすみません。

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