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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第41話 幾ら欲しくても限度は守ろう

 はてさて、弁天堂新機種【3TS】を巡って血で血を洗う壮絶な争いはいよいよクライマックスへと迫っていた。
 並居るオタク達を押しのけ、見事栄光の決勝戦へと進出する事が出来た10名の若者達。
 この若者達がたった1台の新機種を巡って壮絶なバトルをする事になるのである。
「それでは、まず第1回戦から始めたいと思います!」
 相変わらずテンション高めの店長が何時の間に用意したかと思われるボックスの中に手を突っ込む。
 ゴソゴソと適当に動かし、中から紙切れを一枚だけ取り出し自分の目の前で広げる。
「まず第1回戦は………【OOEDO JUNGLE】をプレイしていただきます!」
 タイトルが出た途端、回りでオタク達の大歓声が上がった。此処でこのゲームに関する情報を少しだけ説明しましょう。
 


OOEDO JUNGLEとは、突如江戸から人類が居なくなり、動物だけの世界となった。その世界でプレイヤーキャラとなった動物がひたすらに生き残るサバイバルハンティングアクションゲームなのである。
 え? 似た様なゲームを知ってるですって? それはきっと気のせいですよ。



 そんな訳で第1回戦はこのゲームが当てられた。後は誰がそれをプレイするかである。
「動物が主人公ならば俺が行こう」
「流石はザフィーラだ。伊達に狼やってる訳じゃなさそうですねぃ」
 壇上へと上がるザフィーラ。対する対戦者は、なんと神楽であった。
「まさか、此処で貴様と当たる事になるとはな」
「カモ~ン。手加減なしで勝負してやるアルよ」
「臨む所だ。主の為にも負ける訳にはいかん!」
 早速火花を散らす両者。因みにこのゲームの勝利条件だが、長く生き残った方が勝者……では案外すんなり決着がつきそうなので、制限期間10年とし、その間により多くカロリーを摂取出来た方を勝者とする。
 と言うルールとなった。
 因みにザフィーラは狼を選び、神楽はウサギをチョイスした。それぞれ各々の得意そうな動物を選んだらしい。
 そんな訳で早速ゲームが開始された。
「ふむ、要するにこの廃墟となった江戸の町で只ひたすら生き続ければ良い事だろう? 簡単な事だ」
 タカを括るような発言をしつつ、ザフィーラがコントローラーを操作する。流石は守護獣なだけあり狼の扱いも慣れた物である。
 次々と獲物をハンティングし、お腹を満杯にしていく。
「どうやらこのエリアは穴場だったようだな。獲物が多くて助かる」
 ザフィーラが今居るエリア、かぶき町通りは現在小動物の宝庫となっており、その中でザフィーラの操る狼は餌に困ることはまずなかった。
 この調子であれば余裕の大勝利は間違い無し。そう思っていた正にその瞬間であった。
 建物と建物の間に生えていた茂みの中から何か黒く巨大な物体が勢い良く跳び出して来たのだ。
 それは瞬く間にザフィーラの操る狼を仕留めて、地に伏せさせてしまった。
 其処に居たのは巨大な大型犬のモンスターであり、お腹の部分に可愛い犬の顔がついているへんちくりんな生き物だった。
 俗に言う【天使と悪魔が同棲している】様な生き物であった。その生き物は狼を仕留めた後、地面に穴を掘り頭以外を全て埋めてしまった。
 そんな狼をバックに画面にデカデカと【貴方は食べられました】と書かれる結果となった。
 その画面を前にして、ザフィーラは青ざめたままアングリと大きく口を開いていた。
「言い忘れましたがこのゲームには宇宙から輸入した生物も操作キャラに含まれます。その性能や習性も忠実に再現してありますのでこの様な場面も再現されるのです」
「び、微妙な所でリアルなんだな………」
 ガックリと項垂れるザフィーラ。すると、画面が突如フラッシュバックし、再びスタート地点に狼が立っていた。
「尚、今回の勝負は何回死んでも即再プレイ出来ます。ですが、その際には今まで食べたカロリーは全てリセットされますのでご注意下さい」
 店長の言う通りであった。見れば時間は経過したままだが摂取カロリーは0になっていた。
 つまりまた一からやり直しになってしまったのである。
「ぶははははぁ! ざまぁ見ろアルゥ! これで私の勝利は確定したも同然アルなぁ!」
 振り出しに戻ってしまったザフィーラを鼻で笑う神楽。そんな神楽と言えば順調に草を食みまくり摂取カロリーをグングンと伸ばしていた。
 そんな神楽の操作するウサギの目の前に、一匹の巨大な犬が姿を現した。
 つぶらな瞳を持ち、舌を出して可愛らしげに迫って来ている。
「おぉ! あれは間違いなく定春アルゥ! 定春もこのゲームに出ていたアルなぁぁ!」
 その姿は間違いなく神楽のペットである定春に酷似していたのだ。そんな定春そっくりの犬に神楽の操るウサギが近づく。
 突如、犬の目つきが変わった。その目は正しく狩りを行う狩猟者の目であった。
 その途端、大型犬は大きく口を開き、そのウサギを一口に食べてしまった。
 そして、同様に神楽の画面にも【貴方は食べられました】と書かれていた。
「さ、定春が……定春がぁぁぁ―――!!!」
 コントローラーを手放し、神楽は絶叫しだした。無理もない。神楽が飼っている定春と同じ姿をした犬がまさかまさかのハンティングであったのだから。
 普段の定春からは想像出来ない光景でもあった。
 何はともあれ、お互いにゼロからの再スタートとなってしまったのであり。
「おぉっと、まさかまさかの急展開ぃぃぃ! 先ほどまでリードしていた筈の神楽選手がまさかの急転落! そして入れ替わりにザフィーラ選手が僅差で抜いているぅぅぅ!」
 何時の間にか実況側に回った店長。マイク片手にノリノリである。
 時間的にもそろそろ正念場な感じであり、期限である10年まで後1年を残す限りとなった。
 因みにこのゲーム、1年が約5分で経過してしまうのだ。従って後5分の勝負となる。
 因みに、神楽はまた0からの再スタートとなってしまったのに対し、ザフィーラは先ほどの教訓を生かし慎重に狩りを行っていた。
 その為か、二人の摂取カロリー差は200kカロリー近く開いている。
 しかも、神楽はウサギな為他の動物を捕食する行為が出来ない。地道に植物を探す必要がある為必然的に肉食動物と出くわす危険性が高かったのだ。
「勝負あったな。この分なら俺の逃げ切り勝利確定だろう」
「ぐぬぬ………」
 勝ち誇った顔をするザフィーラに悔しそうに歯噛みする神楽。誰もがザフィーラの勝利を確実な物だと認識し始めた、正にその瞬間であった。
 突如ザフィーラの操る狼に向かい一本の槍が放たれた。幸いその槍は狼には当たらなかったが、その直後にけたたましい雄叫びが木霊した。
 なんだなんだと回りがざわめく中、それは現れた。
 なんとそれは、武器を持った大量のお猿達だったのだ。いや、只の猿じゃない。
 原人、そう! 原人だったのだ。原人達がザフィーラの操る狼目掛けて襲い掛かってきたのである。
 その光景にザフィーラは顔面蒼白となってしまった。哀れ、正しく哀れ。
 ザフィーラの操る狼は原人達の手によりズタズタに引き裂かれて皮を剥ぎ取られそのままお持ち帰りされてしまったのである。
 そして、これまた画面に【貴方は食べられました】と表示された直後に試合終了のゴングが鳴らされた。
「其処まで! 勝負とは常に非情な物です。原人達に食べられたザフィーラ選手は0kカロリー! それに対し、神楽選手のウサギは地道に草を食んでいた為に1200kカロリーを摂取しました。よって、神楽選手の勝利となります!」
「キャッホォォイ! ビクトリーアルゥゥゥ!」
「む、無念………所詮獣では人には勝てんか」
 諸手を挙げて盛大にガッツポーズを決める神楽に対し、口惜しそうに膝を折りその場に沈むザフィーラ。
 かくして、第1回戦は無事終了したのである。ってな訳で時間もないのでさっさと第2回戦に進んでもらう。
「次に挑戦して貰うソフトは………【拳骨】このゲームをプレイして貰います」
 説明しましょう。



 拳骨とは巷で有名な格闘ゲームである。難解なコマンド入力が評判だが、同時に自由度の高い格闘戦が評判であり、熟練のプレイヤーが操作すれば忽ち即死コンボの連打が叩き込まれると言うヌルゲーマーお断りに玄人専門ゲームなのである。



「こう言う類なら俺が出るべきだろうな。のほほんとしたゲームなんざ俺の主義に反する」
 そう言って壇上に上がったのは土方であった。それに対し、壇上に上がってきたのは、何と沖田であった。
「総梧、てめぇ……」
「フッ、ゲームの世界ってのが案外癪ですが、まぁそれも良いでさぁ。此処で因縁のケリつけさせて貰いますぜぃ、土方さん」
「上等だぁ。こっちもてめぇを叩きのめして後顧の憂いを断ってやらぁ!」
 お互いに激しく火花を散らし、双方コントローラーを握り締める。
「死ねぇ、土方あぁぁぁ―――!」
「うおわぁ!」
 よりも前に沖田がいきなり飛び掛ってきた。弾丸の如き飛び蹴りを僅差でかわした土方だが、突然の行いに驚愕を感じていた。
「お前馬鹿か! これはゲーム対決なんだよ! ゲームで対決しろや!」
「おぉっといけねぇや。つい何時もの癖がでちまいやしたぁ」
「何時もの癖って……まぁ良い」
 流石にこう何度も馬鹿騒ぎで締めては飽きが来てしまう。と、言う訳で今回は大人しくゲームを行う事となった。
 因みに土方の扱うキャラは【ニ島平七】と言うご老体のキャラであり、対する沖田は【狭間真】と言う若者キャラであった。
 対決する場所は何所かの道路っぽい所。まぁ、場面を書くとかなり文章を書かないといけないのでこれくらいにしておいて、とにかくバトルが勃発した。
「覚悟しろやぁ、土方ぁぁぁ!」
「二度とそんな真似が出来ないように畳んでやるよ総梧ぉぉぉ!」
 互いに啖呵を切ると同時にゲーム画面でもバトルが勃発した。
 流石は屯所でもゲームを嗜んでるだけあり双方ともハイレベルな格闘バトルが行われていた。
 平七が乱打コンボを打ち込めば、すかさず真がカウンターを放ち、そのままコンボに持ち込もうとすれば返しに平七が投げ技を放つ。
 見てても楽しい超ハイレベルな抗争が行われていた。互いのライフゲージは徐々に減って行き、やがてはお互い虫の息状態となっていた。
「そろそろケリつけるといきやしょうかぃ、土方さん!」
「望む所だ!」
 ここ一番とばかりに双方がジャンプする。恐らくジャンプキックからの即死コンボを叩き込もうとしたのだろう。そして、それは双方ともに考えていた戦法だったようだ。
 その結果、互いの蹴りが互いの急所にクリーンヒットしてしまい、同時にライフポイントが尽きてしまい、二人同時に地面に叩きつけられてしまった。
 大地に倒れ、微動だにしない両キャラクター。そして、その両者の画面一杯に【DKO】と言う文字が刻まれた。
 要するにダブルノックダウンである。そして、それと同時に会場一帯に流れる静まり返った空気。その空気の中、土方と沖田の両者はこれはどうすべきなのか。
 そう思っていた時、店長が口を開いた。
「おぉっと、これは稀に見るダブルノックダウンとなってしまいました! と言う訳なので、この場合は両者とも失格となります!」
「なんだそりゃああああああ!」
 悲痛の叫びを挙げる土方。そんな土方を無視し、早速第3回戦が開始された。
「さて、第3回戦は【不思議魔女っ娘ととこちゃんVS】テレビで人気の魔法少女アニメ、不思議魔女っ娘ととこちゃんのキャラクターを用いたシューティングアクションです! 形状は縦スクロールシューティング形式を取っており、並み居るヒビビンガー帝国の怪人達を強力魔法で撃退してやりましょう」
「はいはいはぁぁぁい! これ私がやる!」
 ゲームの名前に不思議魔女っ娘ととこちゃんが出て来た時点でなのはの目の色が変わり、説明が終わった途端いの一番に物凄い勢いで手を挙げて自己をアピールし始めた。相当なまでにやりたかったのだろう。
「うむ、元気の良いお嬢ちゃんだ。それじゃお嬢ちゃんにはこのゲームをプレイして貰おう」
 意気揚々と壇上に上がるなのは。心なしか何時もよりも嬉しそうだ。それに対して壇上に上がってきたのはヴィータであった。
「ちびっ子がやるんなら私がやるに決まってるだろ? どっちが上かこれでハッキリとさせてやるよ!」
「フフン、不思議魔女っ娘ととこちゃんで私に勝てると思ってるの? ヴィータちゃん」
「言ってろ、その台詞をそのまま敗北フラグにしてやるよ!」
 今回も今回で火花をぶつけあう両者。やる気は充分なようだ。特になのはは自分の好きなアニメがゲーム化したが為に何時も以上に気合が乗っているようにも見える。
「今回のゲームのルールですが、このゲームは生憎対戦ゲームはなく協力ゲームですので、第1ステージを協力プレイでやって頂き、スコアの多い方が勝利者となります」
 今度は第1回戦と似た感じのスコアアタック対決の様だ。そんな訳で対決がスタートした。
 因みにこのゲームはまだ開発中のゲームらしく操作キャラが主人公のととこちゃんしか居ない。
 因みにこのととこちゃんの纏っている戦闘用の衣服がなのはのバリアジャケットと酷似しているように見えると言うのは余談だったりする。
 早速第1ステージが開始された。
 と、同時にいきなり弾幕の如く雑魚敵がわんさかなだれ込むと言う事態が勃発しだした。
「ちょ、ちょっと待てぇぇぇ! なんだよこれ、幾ら何でも敵多すぎだろうがぁ!」
「このゲームは開発中ですのでこう言ったバグも含まれるとの事です」
「バグとかそう言う問題じゃねぇぇぇ!」
 批難を言ってる暇すらない。両者の目の前に怒涛の如くヒビビンガー帝国の雑魚敵がわんさか降り注いでくるのだ。ヴィータ自身それを捌くだけでもかなり苦戦を強いられている。
「くそ、捌くのだけで手一杯じゃねぇか! だけど、それは向こうも同じ事。今頃苦戦で顔面蒼白の状態で………」
 チラリと、ヴィータが隣でゲームをやってるなのはを見た。その時の絶句感と絶望感と言ったら、後世にも伝えたい程だったと本人は豪語している。
 なのはの目は燦然と輝いている。それだけじゃない。手の動きが明らかに凄まじかったのだ。
 まるで、指が何本もあるかの様な速さでボタンを次々と押していくのだ。
 のろくさ動くいびつな動作なヴィータとは対照的に、機敏な動作でまるで撃墜王の如く次々に雑魚敵を蹴散らしていくなのは。
 その腕前の差には観客全員が騒然とするほどの事だったといえる。
「こ、これは凄いぃぃぃ! こんな超展開一体誰が想像したぁぁぁ! 若干9歳と思わしき女の子がまさかまさかのハイプレイ! プロ顔負けの超絶プレイを見せていますぅぅぅ!」
 店長の実況もハイスペックとなっている。
 此処で読者の皆様に簡単なご説明をさせていただこう。なのはは普段はしっかり者で万事屋の裏稼業も的確にこなすやり手なのだが、遊びの事になると普段は30パーセントしか使わない力を残り70パーセント全て使って遊びに費やす事が可能なのである。
 その為、自分の趣味の事や楽しい事になると途端に活き活きしだし、その動きは正に年相応の子供に見えたり、時には全然見えなかったりする時もあるのだから驚きである。
 そんなこんなで第1ステージもいよいよ終盤へと差し掛かり、遂に第1ステージのボスキャラが登場してきた。
【シャ~~ッシャッシャ~~! 良く此処まで来たなぁ羅漢仁王堂ととこよ! このアオダイショウ男様がケチョンケチョンにしてやるわぁ!】
「ぬぉっ! 第1ステージからいきなりグロテスクな怪人が出たよ。ってか、このアニメの主人公の苗字って羅漢仁王堂ってのか? 魔法少女アニメの癖にめっちゃごつい苗字だぞコレ!」
 色々とツッコミ所満載なようである。が、このアニメを舐める位の勢いで見まくっていたなのははこれまた輝いており。
「ぬおぉぉぉ! これって原作第3話【ととこちゃん大変身】に出て来た怪人アオダイショウ男だ!」
「何でそんなリアルな名前の怪人なんだよ! 素直にへび男とかで良いじゃねぇかぁ!」
 率直なツッコミを言う。だが、バトルが勃発するとツッコミなんて言っていられる余裕なんてなかった。
 まるで第1ステージの冒頭に出て来た怒涛の雑魚敵の群れが可愛いく思えてしまう程殺戮的な攻撃が押し寄せてきた。しかもこの攻撃は先の雑魚敵とは違いショットでは消すことができない。避けるしか道がないのだ。
「ぬぐおぉぉぉ! 何だこの殺戮的な攻撃はぁぁぁ! こんなの反則級じゃねぇかぁぁぁ!」
「尚、このゲームのジャンルは【超激辛シューティングゲーム】となっております。この難しさもゲーム全体からしてみれば簡単な部類と言えますね」
「間違いなく詰みゲーだろこれ!」
 もう泣きたくなる状況であった。だが、自分がこれなら相手も同じ筈。
 そう思い、隣のなのはを見ていたヴィータだったが。
【必殺! ととこちゃんボンバー!!!】
 突如、なのはの操作するととこちゃんが極太のビーム砲を発射した。その威力はアオダイショウ男を一発で消し炭にするほどだとか。
 そして、アオダイショウ男が消し炭になった辺りで第1ステージクリアとでかでかと文字が刻まれていた。結果は、まぁ見ての通りなのだが、当然なのはのぶっちぎり勝利であった。
「いえぇーい! ビクトリー!!!」
「ま、負けた……」
 勝利したその喜びを体一杯に表現するなのは。それとは対照的に地面に膝をつき悔しそうに歯噛みするヴィータ。
 まぁ、根っからの遊びマスター兼自称ゲーマーであるなのはに初心者であるヴィータが勝てる道理などある筈がないのだが。
「さてさて、盛り上がってきました所で第4回戦と行きましょう。第4回戦は【寺門通とダンスミュージカル】人気アイドル、寺門通と共同開発したリズムゲームとなっております」
「キターーーーーー! これ来たでしょ! 俺の時代キターーーー!!!」
 なのはとはまた違ったテンションで騒ぎ出すのはご存知志村新八であった。
 因みに、ツッコミとかがないのは単にキャラクター達がサボってるだけですのであしからず。
 そんな訳で壇上に意気揚々と上がる新八。その新八に挑戦するべく壇上に上がったのは、なんとはやてであった。
「なんや新兄ぃ。何時もとテンションが違うなぁ」
「当然じゃぁ! 寺門通親衛隊隊長志村新八! お通ちゃん絡みのゲームとありゃぁ勝つっきゃねぇ!」
 どうやら寺門通絡みだと俄然強気になるようだ。そんな新八に果たしてはやてが勝てるのかどうか?
 そんな感じでゲームがスタートした。
 因みに、今回挑戦する曲目は勿論寺門通の曲【お前のかあちゃん××】である。
 が、残念ながらこれは小説なので音声は流れません。どうしても音声が欲しいと言う人はネット上でダウンロードするなり鼻歌混じりに歌うなりして貰えば幸いです。
 そんな訳でゲームが開始された。結構レベルの高い曲ならしく、表示されるボタンの山がかなりのスピードで降り注いでくる。
 が、寺門通親衛隊隊長モードとなった新八であればこれ位をこなす事は何とかこなせる。汗ばみながらも必死にこれを行っていた。
 しかし、はやてもそれは同じであった。いや、僅差ではやての方が上手い。
 次々とリズム良く表示されたボタンを押していく。しかも新八はノーマルヒットなのに対しはやてのそれは全てがクリティカルヒットなのだ。
 最初こそそれ程差はなかったのだが、何時しか差が開きだしてしまい、何時しか月とスッポン並であった。
 そんな感じで曲も終わり、結果発表が報じられた。
 当然、結果は新八の惨敗であった。ガクリと膝を落とす新八。寺門通絡みの勝負で負けたのだからそのショックも相当大きかったりする。
「フフフ、海鳴市に居た頃は足が不自由やったからなぁ。本の他にもゲームとかもやりまくってたからその腕前はかなりのもんやと自負しとるんやでぇ」
「ま、参りました……考えてみたら僕、ゲームあんまりやってなかったんだっけ―――」
 素に戻った為か何時もの新八に戻っている。それにしてもやはりゲームとか遊び関連はやはりお子様の方が断然強い、と言うのが証明されたと思われる。
 そんな感じで順調? に回を重ねていき、遂に最後の第5回戦へと話が進んだ。
「第5回戦は……【THEロボゲー】その名の通り巨大ロボットを操縦して貰う新感覚のアクションゲームとなっております」
「よりによってこんなゲームかよ」
 愚痴りながらも銀時が壇上へと上がった。
 そして、最後の一人と言う訳でシャマルもまた同じく壇上へと上がるのであった。
「あら、銀さんとの組み合わせなんて珍しいわね」
「そう言えばそうだな。この際だからさっさと終わらせて帰りたいよ俺は」
 何所へ行ってもやる気の欠片もない銀さんだったりする。そんな訳でコントローラーを握る。
 銀時は白いロボットを操り、シャマルは緑色のロボットを操る。
 え? 説明が不十分だって? もう面倒だからこれ位で勘弁して下さい。
 そんな訳で、早速ロボゲーをプレイしようとした途端、問題が勃発した。
「ちょっ、何だこれ? 操縦し難いぞ!」
 いきなり操作の面で四苦八苦している銀時であった。どうやらこのゲーム、コントローラーの端についているL・Rボタンと両足が連動しているようだ。特にゲームなんてやってこなかった銀時にいきなりこの難解な操縦は無理と言えた。
 それに対し、シャマルはすぐに慣れたのか綺麗に前進している。
「ちょっ、お前、慣れるの早すぎ!」
「ホホホッ! 操縦に不慣れな貴方自身の腕前の悪さを呪いなさい!」
 ハンドルを握ると性格が変わるみたいに豹変したシャマル。そのシャマルの操る緑色のロボットが不慣れな動きの白いロボットを忽ちボコボコにしていく。
 もう、軽くリンチであった。緑色のロボットが殴る蹴るをするのに対し、白いロボットはただされるがままの状態となっており、最終的には一撃を入れる事も出来ずそのまま撃沈。
 逢えなく銀時の敗北となってしまった。
「くそぉ、俺ぁゲームなんざやった事ねぇんだよ!」
「ウフフ、負け惜しみはみっともないわよ。可愛い娘さんの見てる前で恥ずかしいと思わないの?」
「るせぇ! 俺はなぁ、常に負け惜しみと言い訳だけは絶やさないように生きてんだよ!」
「どんだけ情けない生き方してるのよ貴方は」
 流石に呆れ果てるシャマルだったりした。
 とにもかくにも、そんな訳で先ほどの10名から事情はあったが、とりあえず4名に絞る事が出来た。
 本来なら5名に絞る筈だったのだろうが、まぁそれはそれとして置いておくとしよう。
「さて、それでは大決勝戦と行きましょう。挑戦して貰うゲームはこちら!【ダイスでRPG】ロールプレイングゲームとボードゲームの合作と言う画期的な内容のゲームとなっております。尚、今回のゲームに限り、上位者は先の6名の中からサポート要因として好きな人を一人つける事が出来ます!」
 所謂救済処置と思わしき方法であった。まぁ、予想外の事態が連発してしまった以上仕方ないと言えば仕方がないのだろうが。
「それじゃ、私はお父さんとやるね」
「おう、俺達のコンビなら優勝間違いなしだぜ!」
 なのはは当然銀時とコンビを組む。親子の絆に勝る物はない事を自負しているようだ。
「それやったら私はトシ兄ちゃんにお願いするわ」
「フッ、頼まれちゃしょうがねぇ」
 口ではいやいや言いながらも内心嬉しそうな土方。
「うっし、ザッフィー! 私とやるアル!」
「む、1回戦と同じ組み合わせとなったか」
 神楽は適当にザフィーラを使命。どうやら犬になれると言う事に決めた道理があるようだ。
「それじゃ、私は新八君と一緒にやろうかしら」
「よ、宜しく」
 半ばはにかみながらもシャマルの隣に歩み寄る新八。やはりリリカルキャラは誰でも美形なので緊張しているのだろう。それとも、只の思春期の現れであろうか?
「それでは、メンバーが決まった所で、大決勝戦の開始でぇす!」
 開始と同時に指定された8人のキャラが画面に表示されたボードへと転送されていく。
 その世界はRPGで良くある中世の世界を彷彿とさせた世界であった。
 そして、その世界の上に多数のマス目がつけられている。どうやらこの上を渡って移動するのであろう。
「ルールは簡単。自分のキャラクター、もしくはサポートキャラクターがゴールにたどり着いた時点で。そのコンビの優勝となります。ですが、このゲームには多種多様なトラップなどが用意されていますのでご注意して下さい」
 店長の注意を言われ、それを聞いていたのか、はたまた聞き流していたのかは微妙だが、とにかくゲームがスタートされた。




     ***




「うっし、まずは俺だな」
 第一番手は土方であった。ダイスを振りマス目を見る。出たマス目は【3】であった。
「3か、微妙な数字だな」
 出た目に半ば不満感を抱きながらも、土方は3マス先に進む。すると床のパネルが突如光だし、土方の前にモニターが現れた。

【株に失敗! 所持品全て没収!】

「なんじゃこりゃあああああああああああ!」
 いきなりとんでもない物が表示された。そして、それと同時に土方のキャラクターが発光し、それが止んだ途端、何と土方のキャラクターは哀れパンツ一枚となってしまったのである。
「ぶはははは! 何だその格好! めっちゃ哀れだぜぇ」
「ダサいアル! マジでダサいアルよぉぉ!」
 ここぞとばかりに銀時と神楽が笑う。他にもなのはやはやてもゲラゲラと笑っているのが見えた。
「くそ、これがトラップかよ。幾ら何でも酷すぎるだろ」
 愚痴る土方であったが、仕方ない。これもトラップなのだから。
「さて、次は俺だな。ま、あんなパンツ一丁みたいな姿にはならないように気をつけるか」
 そう言いつつ銀時はダイスを振る。何と、出たのは【6】であった。
「おっしゃぁ! ついにギャンブルの女神様が俺の元に降臨して下さったんだなぁ!」
 意味不明な事を言いつつも銀時はマス目を渡る。途中で土方に対しアッカンベーをしたのは余談ではあるが、そのまま6のマス目へと着地する。
 すると、またしても発光し、モニターが表示される。

【ドラゴンに挑み返り討ち! HP1まで低下】

「うげええええええええええええ!」
 更に酷いトラップであった。そんな銀時の元へ突如ドラゴンが上空から飛来し、猛烈な火炎を容赦なく浴びせてきた。そのマス目から逃げる事が出来ず、そのまま無残に丸焼けとなってしまった。
 その際に、銀時の断末魔の悲鳴が聞こえてて来たのは言うまでもないのだが。
 そして、ドラゴンが飛び去った後、其処に残っていたのは前進包帯まみれとなりアフロヘアーとなった銀時が松葉杖片手にギリギリで立っている姿であった。
「ひ……ひでぇ……」
 涙を流しつつそんな事を呟く銀時。なんともシュールなゲームであった。
「それじゃ、次は私の番ね」
 次にダイスを振ったのはシャマルであった。因みに出た目は【2】である。
 そのまま2マスを進むが、今度のマスは全く発光しなかった。どうやら外れのようだ。
「ホッ、良かった」
 安心したのか溜息を漏らすシャマル。しかし、画面が地味だったが為か会場では不満の溜息が漏れているのは余談だったりする。
「よぉし、それじゃ次は私だねぇ!」
 意気揚々とダイスを振るなのは。しかし、その結果出た目は【1】であった。
「あぅぅ」
 マス目の酷さに愕然とするなのは。そのまま隣の1マスへと移動すると、これまた床が発光しだす。そしてモニターが映りだす。

【道端に徳川埋蔵金を発見! 所持金1万Gアップ!】

「キャッホーーイ! 何だか分からないけどお小遣い増えたぁ!」
 とても嬉しそうにはしゃぐなのは。まさかまさかの展開に土方と銀時の双方が恨めしそうな目で見ている気がしたが、なのはは別に気にしてはいない。
「次は私の番アル!」
 さて、先ほどの様なラッキーが出るのか? そんな感じで神楽がダイスを振る。
 出た目は【5】だった。そんな訳で5マス進むと、またしても床が発光しだす。

【モンスターハンターへと転職。マイターン戦闘が発生し、勝利すれば所持金アップ!】

「ぬおぉぉ! 念願の職ゲットアルゥゥ!」
「っておい、それじゃ今の俺達全員無職って事か!?」
 パンツ一丁の土方が驚愕の顔をする。既に就職している身としては辛い現実なのだろう。
「そ、それじゃ次は僕ですね」
 今度は新八がダイスを振る。出た目は【4】であった。まずまずの出である。
 そんな訳で4マス進むと、またしても床が突如発光し、モニターが輝きだす。

【失敗した株を買収し、成功を収める! 失敗したプレイヤーの所持品が全て自分の所持品に】

「え!?」
「お、俺の全財産んんんんんんんん!」
 何と、目の前に土方が没収された装備一式と持ち物一式が送りつけられた。そして、それを見て涙を流す我等が土方。パンツ一丁な為かかなり嘆かわしい。
「ほな、次に私の番やね」
 そんな訳で次を飾るのははやてである。ダイスを勢い良く振り上げる。出た目はなのはと同じく【1】であった。当然埋蔵金ゲットになるかと思ったのだが、それは違った。

【飛鳥時代の古代遺産を発掘! 所持金10万Gアップ】

「うっひょおおおおおおおおおお! 一気に成金やああああああああ!」
「な、何故? 何故こうも後半ばっかり出が良いのばっかなんだ?」
 後半のメンバーばかり良い思いをする中、悪い出目を出した銀時と土方は思わず泣きたくなってしまった。
 そんな中、ラストを飾るはザフィーラである。片手でダイスを振り出た目を見る。
 目は【3】であった。
「十四朗と一緒か。なんとなく嫌だな」
 まさか、パンツ一丁にされる訳ないだろうか。不安を抱えつつもザフィーラは土方と同じマスへと進む。そして突如床が発光し画面が表示される。

【町で偶々出くわした女と一晩宿を共にした結果、毒を貰った! 毎ターン毒ダメージ】

「ぐぼはああああああああ!」
 突如吐血するザフィーラ。どうやら速攻で毒ダメージが来たようだ。しかも、その毒の理由がなんとも卑猥な内容だったりする。
「ザフィーラ、あんまりお盛んなのも大概にしぃやぁ!」
「主、せめてそんな事は言わないで下さい」
 後ろからはやての声援がくるが、逆にそれが痛々しかった。




     ***




 そんな訳でこんな感じのゲームが展開していた。しかし、マス目の酷さや理不尽なトラップの内容の数々により銀時達は皆かなり苦戦を強いられる結果となった。
「ぜぇ……ぜぇ……」
「はぁ……はぁ……」
 気がつけば、銀時と土方の二人がゴール目前まで迫ってきていた。因みに他の者達は居ない。どうやらかなり後方に居るのだろう。
「長かった、本当に長かったぜ」
「あぁ、全くだ」
 満身創痍の状態となった二人の脳裏には、これまでの波乱万丈な旅路が走馬灯の様に思い出されていく。
 ドラゴンに丸焼きにされたり、株に失敗したり、馬を買ったら鞍を買い忘れてそのまま逃げ出されたり、伝説のアイテム回収クエストをしていたら途中で期限切れになってしまったり、途中でなのはが道を間違えて冥界に行ってしまったり、はやてが途中で攫われたお姫様を救う為に魔王城へ行ってしまったりと、正しく波乱万丈な物語が展開しているのであった。
「って言うか、あいつらのせいで俺達苦労してないか?」
「ったく、冥界の奴等強すぎなんだよ! 俺達未だにレベル1だぞ」
 苦し紛れな言葉を漏らす二人。その頃、なのははと言えば―――




【ま、まさか……この冥界の王【ベルゼバァブ】が人間ごときに敗れるとは】
 冥界の王と呼ばれた巨大な怪物を倒す一人の少女の姿が映っていた。少女の手には魔法少女が使うステッキの様な物が握られているが、何故かステッキの先端が血で汚れている。
 恐らくこれで鈍器の様に殴って倒したのだろう。
「これで冥界は平和になる。皆も安らかに眠れる筈だね」
 そう言っているなのはは実に逞しく成長していた。姿形は9歳のまんまだがそのパラメーターは正しく歴戦の勇士を思わせる風貌だったりした。
 んで、はやてはと言えば―――




【あぁ、有り難う御座います、勇者はやて。よくぞ、この私を救ってくださいました】
 魔王城に居座っていた魔王を蹴散らし、見事お姫様を救出したはやて。
 しかし、そんなはやての目は異様な輝きを見せていた。それだけじゃない、何故か口からは涎が垂れている。
 それもそうだろう。何故ならこのお姫様、かなりのボインちゃんだったのだ。正しくはやて好みの超絶美人だったのだ。
「うひゃひゃ~~! 我が世の春じゃああああああ!」
【え? きゃああああああああああ!】
 変な奇声を上げるや否や、いきなりお姫様に飛びつき胸の谷間に顔を埋めてくるはやて。
【お、お止め下さい勇者はやて。こんな所でそんなごむたいはぁぁ!】
「もう我慢ならんわぁぁ! 勇者なんてどうでもえぇ。この際魔王にでも何でもなったらぁぁぁ!」
【あ~~れ~~~】
 そんな訳で、はやては暫くゲームそっちのけでお姫様と散々楽しい夜を過ごしたと言うそうだ。




「あいつら、好き放題やりやがって」
 二人の行いは銀時達でも丸見えであったりした。二人共ゲームの本筋そっちのけでサブシナリオに力を入れているようだ。
 丁度そんな時、遥か後方で爆発が起こった。爆発が起きたのは新八のキャラクターの様だ。
 尚、その内容と言うのが【転移装置の実験に失敗! ゲームリタイア】であった。
 早い話がライバルが減ったと言う事になる。
 これは嬉しい話だ。そう思っていると更にモニターが表示された。

【戦場に舞い降りる天使となった! 戦争が終わるまで休み byシャマル】
【モンスターハントに失敗! HPが全回復するまで休み by神楽】
【運命の出会いを果たし、リア充となる! ゲームを忘れて幸せな人生を送る! ゲームリタイア! byザフィーラ】

 どれもこれもトラップ絡みの内容であった。しかも、内一人はまたしてもリタイア状態。これならば確実に勝利間違いなしであった。
「ふっ、どうやら俺の勝利は確定のようだな。てめぇは後方で無様に震えてな」
「んぐっ!」
 悔しそうに歯噛みする銀時。だが、ダイスの順番を破る訳にはいかない。悔しいが指を咥えて見ているしかない。
 そんな訳でダイスを振る。だが、出た目は惜しい事に【3】であった。
「チッ! 肝心な所で!」
 舌打ちしつつマスを進む。ゴールに進むには1を出さなければならない。が、3を出した為にゴールから2マス戻る事となる。
 そして、戻った床が突如発光しだす。

【闇の権力に支配される! 世界を救うどころじゃねぇ! ゲームリタイア】

「な、なんじゃそりゃあああああああああ!」
 再度この叫びであった。とまぁ、そんな訳で闇の権力の力によりゲームを強制退場させられる土方。なんともシュールな光景であった。
「ぶはははは! ざまぁねぇなぁ土方! さて、それじゃ俺もゴールさせて貰うとすっかぁ」
 勝利を確信し、ダイスを振る。だが、運命の神は此処に来て銀時にそっぽを向いてしまった。
 出た目は何と【2】であった。
「ちっ、まぁ良い。この次に期待だな」
 そんな感じでゴールへと行き、再度先ほど居た床に降り立つ。すると、またしても床が発光しだす。

【大魔王が降臨なされる! 大魔王の絶大な力により世界は崩壊した! 全員ゲームリタイア】

「ううぇえええええええええええええええええええ!」
 顔面蒼白した銀時の目の前に、巨大な大魔王が降り立つ。その姿は禍々しさと恐怖さを兼ね備えた完全武装を思わせる風貌を纏った巨人であった。
 その巨人が町を次々に焼き払っていく。その結果、全キャラクター全てが灰となってしまい、画面いっぱいに【全員失格】とデカデカと表示される結果となった。
 その結果を前に銀時はコントローラーを置き、頭を掻き毟りながらも、
「いやぁ、やっぱゲームは一日一時間が決まりだなぁ。これ、良い教訓―――」
 言葉は其処で途切れた。その直後に涙目になり激怒しまくったなのはの跳び蹴りを食らったのは言うまでもない。
 ゾロゾロとオタク達は退散し始めた。これから起こる坂田銀時の蹂躙ショーになど興味ない。
 だが、折角苦労して来たのだから何かしら買って帰ろう。そう思ったのかオタク達は皆ゲームコーナーへとなだれ込み既存のゲームを買い漁り、渋々帰って行ったと言う。





    ***




「店長、上手く行きましたね」
「あぁ、今回も大成功だったな」
 客の居なくなった店内で、店員と店長の二人がほくそ笑んでいた。しかも、ドス黒い笑みを浮かべて。
「最新ゲームが発売したと同時にそれを入荷したと旗を立て、やってきたオタク達に適当な理由で販売出来ないと豪語する。それで何かしら既存のゲームを買わせる。相変わらず店長の商売上手さには頭が上がりませんよ」
「褒めても給料は上げんぞ。しかしまさか、100台入荷すると言っておきながら実際にはこれ1台しか入荷していないと言う事実にあのオタク達は気付くまい」
 そう、この店で3TSは実は1台しか入荷してなかったのだ。つまり、100台入荷した、と言うのも運送中に事故が発生した、と言うのも実は真っ赤な嘘だったのだ。
 そして、適当な理由でオタク達を引き寄せ、これまた適当な理由でゲームのPVも兼ねたゲーム対決を行わせ、オタク達に適当なゲームを買わせていく。これこそが店長の策略だったのだ。
「この調子で最新機種が出たらまたこの戦法を使うんでしょ?」
「愚問だな。そうする事で売り上げが伸びる。そうなればお前達の給料もうなぎ昇りになる事間違い無しだぞ」
「在庫処理も出来てこちらとしては楽ちんですからね。本当にオタクってのは良い鴨ですよ」
「全くだ」
 誰も居ない店内で店員と店長の不気味な笑い声が木霊した。その二人の企みを知る人物は、誰も居ない。




 余談だが、この戦法は今から数ヶ月後に行われたが、別店舗が普通にゲーム機を販売していた為に逢えなく頓挫したと言うのは記憶に新しい話でもある。




     つづく 
 

 
後書き
次回【生魚は醤油を付けて食べろ!】お楽しみに 
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