沖縄料理

「じゃあ早速焼くな」
「頼む」
　ぎらりとする目で応えた、周りにはアメリカ兵達が軍服のままでいてそのステーキを美味そうに食べている、親父が彼等とどういう縁があるのか見極めようとしていた。
　それを食べながら見抜くつもりだった、それでステーキを頼んだ。
　すぐに焼けて鉄と木の皿の上でじゅうじゅうと音を立てバターを乗せたステーキが来た、そのステーキをフォークとナイフで食べると。
「これは・・・・・・」
「美味いだろ」
「これでこの値段か」
「だから沖縄では普通なんだよ」
「嘘みたいな話だ」
「だから嘘じゃないんだよ、ウチナンチュー嘘吐かないよ」
　西部劇のインディアンの様な言葉だった。
「さあ、食ってくれよ」
「ああ、それならな」
「そrで他に何を頼むんだい？」
「他にか」
「ああ、タコライスなんてどうだい？」
　親父は笑ってこの料理も話に出して来た。
「それはどうだい？」
「タコライス？蛸を入れた飯か？」
「ははは、そう言うと思ったよ」
　親父は良馬の言葉に顔を崩して笑って返した。
「絶対にな」
「違うのか」
「それも食べてみるかい？」
「ああ、頼む」
　良馬は親父の言葉に応えた、そのうえでステーキを食べる、見ればマッシュポテトもついておりサラダも一緒だ。サラダの野菜も新鮮でステーキもまた。
「これであの値段はな」
「いいだろ」
「夢みたいだ」
　実際にこう思った、言葉にそのまま出したのだ。
「本当にな」
「沖縄じゃ夢じゃないんだよ」
「これが普通か」
「そうだよ、今タコライスも出来たよ」
　こう言ってそのタコライスも出して来た、それはどういったものかというと。
　白い皿の上に御飯がチキンライスの様に置かれている、その上に細かく切ったレタスにトマト、それと焼いた挽肉があった。
　それを見てだ、良馬はこう言った。
「蛸はないな」
「さっきも言ったけれどないよ」
　こう返す親父だった、ここでも笑顔だ。
「肉にトマトだよ」
「それにレタスか」
「ああ、元々はタコスから来た料理でさ」
「タコス？」
「メキシコの料理だよ、この店でもそうだけれどアメちゃんの兵隊さんが多いからさ」
　親父は良馬に話しながら店の周りを見回す、今もアメリカ軍の兵士が多い。
「そこにはメキシカンもいてさ」
「メキシコ系アメリカ人か。差別されているらしいな」
「その辺りの事情は知らないけど沖縄にはタコスがないからさ」
　だからだというのだ。
「飯にこうしてタコスの具をかけて作ったのがな」
「このタコライスか」
「美味いぜ」
　親父はにっと笑ってその白い歯をきらりとさせてきた。
「存分に食いな」
「わかった、じゃあステーキを食ってからな」
　肉は熱いうちに食う、これは鉄則だ。
　それで食べ終えてからだ、タコライスを口に入れると。
　目を大きく見開いた、そして言うことは。