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黒子のバスケ 無名の守護神

作者:stk
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第八話 初めての敗北

「クロちゃん!」
僕はすぐさまクロちゃんの所に走っていった。
もちろん黄瀬くんがわざとでないことくらい分かっているから攻めることができない。
頭から血が出ていると言うことで止血を最優先とするべきだと考えて僕は救急箱を取りに行った。
まだ第2Q中盤。
クロちゃんいなければこの試合は本当に海常の圧勝で終わってしまう。
それはさすがにつまらなすぎる。
出来れば第4Qまでには出てほしい。
そうすれば火神との新たな連係を思い付くかもしれない。
確率は低いと思うけどね。
でもその方が面白い。
「相田監督。これを使って応急処置を頼みます。」
「分かったわ。」
今の僕の選手だからそばにいることはでいない。
だけども出来ることはあると思った。
「武内監督。ちょっと提案があるんですけど。」
「なんだ。」
「僕はこの試合にもう出たくありません。僕が出ると今よりも点差は開きます。それでは先輩達の成長(レベルアップ)には繋がりません。」
「たしかにそうだな。わかった。今日は残りの時間このメンバーで行く。」
「ありがとうございます。」
こうして僕はこれ以上今日の練習試合に出ないことを決めた。
ただ僕がしたのは相手を見くびっていたのかもしれない。
クロちゃんが抜けてから誠凛は二年生が思っていたよりも強かった。
点差は思っていたよりも開かず、流れが変わりそうな勢いだった。
その中心になっているのは主将(キャプテン)の日向先輩。
日向先輩のスリーポイントを上手くいかしている。
また伊月先輩の才能(イーグルアイ)もいい働きをしている。
小金井先輩もいい動きをしている。
入れるところはしっかり入れている。
守備(ディフェンス)もしっかりしていて、海常の流れに負けないでいる。
新設校にしてはしっかりしている。
そうして試合はどんどん進んでいった。
誠凛は海常に少しずつ点差を縮め始めていた。
それはネズミがトラに抗っているようにしか見えなかった。
絶対的な力の前に諦めない。
誠凛にとっての武器はそれなのかもしれない。
でも越えられない壁は存在する。
諦めないからといって壁を越えられると言い訳ではない。
絶対的な実力差は諦めではなんともならない。
スポーツにおいて実力こそが一番である。
クロちゃん。
もう大丈夫なんだ。
第3Qがまだ三分半残ってるよ。
ここで出てどうなるかは見物だね

「第3Q終了です。」
結構不味いかも。
点差がほとんどない。
クロちゃんが出てから戦況がひっくり返された。
一人の選手の参加でここまでかわるんだ。
でも体力(スタミナ)だけを見てみると圧倒的に海常が有利だ。
誠凛が勝つには次の第4Qをとるしか選択肢は残っていない。
「水野。試合に出れるか?」
「えっ?」
いきなり声をかけられたので驚いてしまった。
と言うか僕が試合に出ないといけないの?
たしかにこのままだとどうなるかは分からないけど、先輩たちの成長(レベルアップ)を考えると出ないほうがいい気がする。
「もう少し待ってください。この後の戦況が先輩たちにとって大事なことのハズですから。」
「負けるかも知れないんだぞ!」
「それです。その気持ちを先輩たちが持ってくれればいいんです。」
心から勝利を望む気持ちと危機感を。
僕としては危機感のほうが大切だと思います。
逆転されると言う思いを持てば今まで以上に丁寧になると思いますし、いい経験にもなります。
もし公式戦で似たような状況になった場合は同じように対処出来るようになるのですから。
「それでは第4Q始めます。」
「お前ら!負けたは許さんぞ!」
誠凛のみなさん。
勝てる確率の低い試合で精々抗ってみてください。
「スゲー。誠凛がいきなり決めたぞ。」
「どんどん強くなっているよな。」
五月蝿い観客(やじうま)だな。
試合に集中できないっちゅうの。
試合に出てないけどね。
「水野。出てこいよ。決着つけようぜ!」
「火神くん。試合中ですよ。」
クロちゃんの言う通り試合中だよ。
僕ばかり見ていてもダメ。
だって黄瀬くんがコート内にいるのですから。
そんなことをしていると勝てる確率はかなり低くなりますよ。
でも返事くらいはしてあげましょう。
「キセキの世代がコート内に二人います。黄瀬くんとクロちゃんのことです。ですからそちらにキセキの世代同等も力を持つ選手がいれば試合に出ましょう。」
「だったらいます。」
答えたのはクロちゃん!
一体なんの根拠をあって
「火神くんが。」
火神のことを同等何て言ってるの?
たしかに火神はそこらにいる選手よりは強い。
でも僕たち、キセキの世代と比べれば実力差はハッキリしている。
火神はまだ弱い。
まだだよ。
黄瀬くんも気づいているけど火神にはオンリーワンのセンスがある。
それはキセキの世代と同じもの。
でもまだ発達段階。
だから「まだ。」と言う表現が正しい。
「ゴメン。出ないよ。」
僕は出ないといった。
違う見解をすれば火神がキセキの世代より劣っていると言っているようなものだ。
それに火神は気付いたらしく、点を沢山取り始めた。
残り数分で誠凛が同点にまで追い付いた。
これに関しては驚くしかなかった。
でも同点になると黄瀬くんも本気になり、今まで以上に点を取っている。
まさに第1Qと同じ状況である。
取ってはまた取り返され、ずっと同じことが繰り返されている。
残り一分。
93対91。
仕方がない。
「監督。行ってきます。」
「水野。絶対に点を取られるなよ。」
「はい!」
よし。
行こう。
「海常。メンバーチェンジです。」
よし。
マークにつくのはやっぱりクロちゃんだよね。
「またですか。水野くん。僕よりも点を取っている先輩をマークしたほうがいいのではないですか?」
「違うよ。この流れを作っているクロちゃん。クロちゃんがこのコートで一番危険な人物なんだ。だからクロちゃんにはボールを渡さない。」
僕は日向先輩からクロちゃんにわたるはずだったボールをカットした。
「笠松先輩。」
速攻で攻撃すれば守備(ディフェンス)がないに等しいから確実に
「いかせねぇ!」
火神。
いつの間に戻っていたの?
「行かせないっスよ。」
黄瀬くん。
多分だけど火神はパスをだす。
でも伊月先輩か日向先輩かはわからない。
「先輩!たのみます!」
くっ。
動けない。
伊月先輩のシュートが決まった。
同点にまたなってしまった。
そこからもかなりのハイスピードで点を取り合った。
残り15秒。
98対98。
「守るんじゃダメ。攻めて。」
こっちも同じだよ。
決めてください笠松先輩。
「なっ。」
どうしてお前は変なところで現れるんだよ。
僕自信も攻めに加わっていたせいでクロちゃんのマークが抜けていた。
そこをつかれた。
「とめろ!」
監督。
僕では間に合いません。
頼むなら
「黄瀬くん。止めてください!」
僕も急いで戻ってるけど間に合わない。
えっ。
目を失いそうになった。
クロちゃんがシュートを・・・違う。
これはアリウープだ。
てか火神の浮いてる時間がなげぇ!
黄瀬くんより飛んでるんじゃない。
「これで終わりだからな!」
マジ。
まさか負けた?
ブザービータは反則だろう。
「そんな・・・。」
僕の目から涙出ていた。
「黄瀬。泣いてねぇ?」
「水野もだ。」
キセキの世代として勝負をしていた黄瀬くんと僕。
負けるのは初めてだ。
「100対98で誠凛高校の勝ち!!」
「「ありがとうございました!!!」」
僕と黄瀬くんは挨拶のあと、外の水道に向かった。

「オレら。負けたんスね。」
「黄瀬くんは頑張っていました。悪いのは僕です。もうちょっと早く出ていればこんなことにはならなかったのに。」
二人は水で頭を冷やしていた。
「まさか負けるとは思わなかったんだよ。」
「見にきてたんスか。緑間っち。」
僕はこっそり退散しよっかな。
「どこにいくんスか。」
「水野。お前にもガッカリしたのだよ。お前は頭がさえるのに判断が遅かった。」
「すいません。」
「一体なにをしに来たんスか?」
僕も気になります。
一体どうしたんですか?
「地区予選であたるので見に来たが正直話にならないな。」
遠回しに僕たちが弱いって聞こえるんだけど。
「先に謝っておくよ。秀徳高校(オレたち)が誠凛に負けると言う運命はあり得ない。」
絶対勝ってやる。
緑間におれの絶対守備(パーフェクトディフェンス)が通用するかはわからない。
でもきっと勝てる。
今の誠凛ならきっと。 
 

 
後書き
次回は一気にインターハイ前までやりたいと思います。 
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