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FAIRYTAIL転生伝 ~ 黒き魔王は妖精と共に ~

作者:ラドゥ
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プロローグ

 
前書き
どうも。元にじファンユーザーで今は主にアットノベルスに作品を投稿させていただいてますラドゥと申します。

この作品は元はにじファンに投稿していた作品で現在はアットノベルスとハ―メルンにも投稿している作品です。

暇つぶしにでもお楽しみください。 

 
サイド:???

はじめまして。俺の名前は“夜神(やがみ)悠斗(ゆうと)”という。

突然だが、俺には一人の優秀な妹がいる。


名前は“夜神(やがみ)麻里亜(まりあ)”。

今年中学二年生になる我が妹は運動神経抜群で、部活の水泳部ではエースで、大会では常に上位をマーク。頭もよく、妹が家に持ち帰るテストで九十点以下の点数は見たことが無い。

容姿はモデルをやれるほど可愛らしく、本屋で何度か妹が表紙を飾る雑誌を見たことがある。ネットで妹の名前を検索してみたらかなりの人気モデルだということがわかった。

まさに「マンガや小説の中でしか見たことが無い」という言葉がふさわしい完璧超人だ。



そんな妹の兄である俺はどんな感じかと言うと、はっきり言って平凡以外のなにものでもないだろう。

運動は空手部に所属し、日々練習に励んでいるからそれなりに得意だが、勉強は赤点こそとらないが高得点もとらない程度。テストの点数は八十点もとれればいいほうだろう。

容姿は自分で言うのもなんだがあの妹と血がつながっているだけあってそれなりにいいほうだと思うのだが、モテた試しがない。

まさに『THE・平凡』といってもいいステータス。もしファンタジーな世界に産まれていたら俺の職業欄には『村人A』の一文字がさんさんと輝いていただろう。


そんな平凡な俺は妹とはあまり仲が良くない。というかたぶん嫌われている。

まあそれもしょうがないかもしれない。中学生二年生といえば思春期真っ最中。そんな妹からしたら自分より劣る兄貴を自分の兄とは認めたくないのかもしれない。


まあそんなわけで、俺と妹は日常ではお互いを避け合って暮らしている。しょうがないだろ?俺もわざわざ自分を嫌ってるやつの近くに好んで近づきたくないし。


そんな日々を送っていたある日のこと。


俺が部活の練習を終えて帰る途中で携帯に母親から「マリアがもう帰ってきてもよい時間なのにまだ帰って来ていないのだがなにか知らないか?」という電話がかかってきた。

なんであいつと不仲な俺にそんなこと聞くかなと思いながらも一応母親の問いかけには答える。

「友達のとことかじゃないのか?」
「それが誰のところにも来ていないらしいのよ」
「ふーん。じゃあ彼氏とかでもできたとか?」

あいつよく告白されるらしいからなあ。そろそろできてもおかしくないだろ。…そうなったら親父が修羅になりそうだが。

そんな俺の言葉に「それならいいんだけど…」と心配そうな言葉を返して黙り込む。?なんか様子がおかしいな?


「どうしたんだよそんな心配そうな声出して?なに、なんかあったの?」

あいつは遊びたい盛りの年齢だ。このくらいのことなら今までも何回かあったはずだが・・・。


「実は最近このあたりに通り魔がでるらしいのよ」
「通り魔?」
「そう、通り魔」



なんでも隣町で二人ほどナイフで刺して現在逃走中なのだとか。



「というわけであんたちょっとマリア探しに行ってくれない?」
「・・・なんで俺が」
「だってあなたこれからもう予定ないでしょ?」



まあ、確かに友達との予定もないしまっすぐ家に帰る予定だったけどさ。


「それじゃあお願いね?私も心当たりを探してみるから」
「あ、ちょッ!…切りやがった・・・はあ。しゃあねえか」



俺は溜息一つつき、携帯をポケットに仕舞うと、とりあえずマリアの通う中学校への通学路を探すことにする。

そんな簡単に通り魔となんか遭遇しないだろうと思いながらも、万が一のこともあるので一応探すことにする。…まあなんだ。嫌われていても一応たった一人の妹でもあるからな。心配だし。

まあそんなわけで俺はマリアの姿を探しに街へと探索にむかったのだが、


「どこいったんだあいつ…」



あいつが通う中学校の通学路、近所の本屋やコンビニ。ゲームセンターなど、心当たりは全て探してみたが、俺の妹の姿はどこにもなかった。

さすがの俺も焦りがでてきた。さらわれたのではないかと心配していると、


「――か!」
「うん?」




なにか今聞こえたような・・・。



「―――れか!誰か助けて!!」
「ッ!?この声は!」



暗闇の中で聞こえた女の悲鳴。


それはマリアの、俺の妹の助けを求める声だった。

そのせっぱつまった声に、声の聞こえてきた場所にむかう俺。

そしてそこには普段の強気な表情とは違う、尻もちをつき、怯えたような表情の妹と、にたにたと笑いながら妹にむかってナイフをふりかざす男の姿があった。



「マリア!!」



その光景に一気に頭に血がのぼった俺は、男の顔に全力でとび蹴りをくらわせる。


「家の妹になにすんだこのクソ野郎!!」
「ぶべらッ!?」



ドバアアン!と音を立てながら男が吹き飛ぶ。



そんな男に目をくれず、俺は呆けたような表情でこちらを見ている妹に駆け寄った。



「大丈夫かマリア!!」
「へ、え?あ、兄貴がなんでここにいんのよ!?」
「母さんからお前がまだ帰っていないって連絡がきたから探してたんだ!それより怪我はないか?」
「え!あ、うん。大丈夫だけど…」



その言葉を聞き、俺はようやく落ち着き、ほっと息をはいた。

「そうか。・・・よかったお前が無事で。心配したぞ?」
「?なんで兄貴が私の心配なんかすんのよ?」


不思議そうな顔でマリアが口を開く。

いや、なんでってお前そんなの決まってるだろうに。


「兄貴が妹の心配してなにが悪いんだよ」



いくら中が悪くても、いくら嫌われても妹の心配をしない兄貴なんていない。

そう告げると、マリアは一瞬なにを言っているのかわからないという顔をしたが、俺の言葉の意味を理解すると顔を赤面させてそっぽを向いた。



「い、いきなりなに恥ずかしいこと言ってるのよ、ばか兄貴!」
「?なにが恥ずかしいんだ?」



ただたんに普通のことを言っただけのつもりだったんだが・・・。

不思議そうにそう言う俺をしばしマリアはジト目で見据えていたが、呆れたように息をはくと「ああそういえばあんたはそういうやつだったは」とつぶやいた。

…あれ?なんかバカにされてね?

マリアのしょうがないやつを見るような目つきに若干いらっときたが、そこは兄の威厳(笑)のためにぐっと耐えると母さんに妹発見の一報を入れるために携帯を取り出し母親の短縮を押そうとしたそのとき、



「ああああああああああああ!!!」
「ッ!?」

その声にとっさに後ろをふりむくと、先ほど吹き飛ばしたはずの通り魔がナイフを構えながらこちらにむかったもの凄い勢いでつっこんできた。

俺はとっさにそれを避けようとしたが、すぐ後ろにマリアがいたことを思い出す。


「ちッ!」


避けたらマリアが巻き込まれると思った俺は、とっさにその男の腕を捕まえ受け止める。


「くけけけけけけけけけけけけけけけけ」
「ぐうう、がああッ!!」


薬でもやっているのか、不気味な笑い声をあげる男の思わぬ力の強さに手こずりながらも殴り飛ばす。


そして追撃を加えようとしたのだが、


「カァ!」
「な、くッ!?」


男はいつの間に持っていたのか、手の中に握っていた砂で眼つぶしをしてきた。

不意を突かれた俺はそれを防げなく、そのままくらってしまった。そして、






ぐさッ!


「ひゃは♪」
「ぐうッ!?」


脇腹に激痛がはしる。どうやら刺されてしまったらしい。

それを見て通り魔の男は勝ち誇ったような笑いをあげる。

それを見て思う。この男をそのままにしておけば、確実にマリアに害を及ぼす。



(この男をこのままするわけにはいかねえッ!)


そう思った俺は痛みに耐えながらも男の髪を掴み、その顔に頭突きをくらわす。


「ぐぺッ!?」


思わず倒れた男に俺はそのまま馬乗りになり男の頭を殴りつける。


「ぐがッ!?」


さらに殴る殴る殴る殴る殴る。俺は男が意識を無くすまで殴り続けた。


「が・・・あ・・・ああ・・・」


男の顔がぼこぼこになり、完全に無力化できたことが確認できた俺は、そのままその場で倒れ伏した。


「兄貴ッ!?」

マリアが悲鳴をあげながら近寄ってくるのを感じたが、もうそれにかまう余裕がなかった。


(体の力が・・・抜けて・・いく)


どうやら血を流しすぎたらしい。もう体を動かそうとしてもまったく力が入らなくなっていた。意識も遠くなってきた。


「兄貴!兄貴ちょっとしっかりして!!」


叫びながら俺の体を揺さぶるマリア。見るとその瞳からは大粒の涙が流れていた。


(こいつ・・・、こんな表情するんだ?)


思えばここ数年、こいつの顔は殆どしかめっ面でしか見たことがなかった気がする。

そこで俺はあることにふと気付き苦笑する。

俺はそれほどこいつと向き合おうとしなかったことに。


(そ・・・りゃあ・・見たこと・ない・・・はずだわ・・な。見ようと・・しなか・・・ったん・だから)


薄れゆく意識の中で思う。こんなことになるのならいくら嫌われていてももっとちゃんとこいつと話しあっておくべきだった。






そうすれば、たった一人の妹に嫌われたまま死ぬなんてことにならなかったのに。





「マ・・リ・・ア・・・」
「な、なに・・・?」






「ごめ・・・ん・・な?」




そうして男の意識は闇の中へと沈んでいった。






「あ、兄貴?ちょっと、嘘でしょ?そんな・・・いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!!?」



自分が救った者に深い悲しみを刻み込んだまま・・・・・。









『ほう、なかなかおもしろい男だ。魂も強さもなかなかなようだし……。決めた。今回はあの男にしよう』 
 

 
後書き
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