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ドン=ジョヴァンニ

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第一幕その十三


第一幕その十三

「不貞で不実な男です」
「不実な?」
「そうなのですか?」
「そうです。前に私を欺き」
 このことも二人に話すのだった。
「そして今貴方達も欺こうとしているのです」
「アンナ、この方は」
「ええ、そうね」
 オッターヴィオとアンナはエルヴィーラの真摯な話し方とその表情から真実を悟った。
「嘘はついていない」
「ええ、絶対に」
「この御婦人はです」
 ジョヴァンニは二人に対してもツェルリーナに話したのと同じように話すのだった。
「分別を失っているのです」
「いえ、あまりそうは」
「思えませんけれど」
 だが二人は今は彼の言葉をそのまま聞こうとはしなかった。
「この御婦人はどうも」
「嘘を言われる方では」
「二人だけにして下さい」
 ジョヴァンニはこの場の難を避ける為にこう二人に提案した。
「この方もそのうち鎮まるでしょうし」
「いえ、ここにいて下さい」
 だがエルヴィーラは当然こう主張するのだった。
「そして私の話を」
「やはりここはあの御婦人の話が」
「そう思うけれど」
 二人も二人でかなり迷いだしていた。
「あの方は本当の苦しみを語られているし」
「けれどあの方の言うことも聞いてみなければ」
「どうしてこの人を懲らしめてやろうかしら」
「どのようにしてこの場をやり過ごすか」
 エルヴィーラもジョヴァンニもそれぞれ考えていた。
「この裏切り者を何とかして」
「この窮地を何とかして」
 二人はそれぞれせめぎ合っていた。そんな二人を見ながらオッターヴィオとアンナの二人は二人で一つの決断を下したのであった。
「よし、ここは留まりましょう」
「そうしよう」
 オッターヴィオはアンナの今の言葉に頷いた。
「そして事情を見極めましょう」
「そうするとしよう」
「あの方の態度も話し方も」
 アンナはここでエルヴィーラを見て話した。
「分別を失った様子はありませんから」
「そうだね。どうもね」
「これはまずいな」
 ジョヴァンニは決断を下した二人を見て苦い顔で呟いた。
「私がここで消えたらこの二人は私を疑うぞ」
「あの御二人はわかってくれるわ」
 エルヴィーラはジョヴァンニと逆に希望を見出していた。
「それなら」
「あの御婦人は」
「分別を失っておられます」
 ジョヴァンニはここでもオッターヴィオにこう答える。
「あの方は」
「裏切り者です」
 エルヴィーラはアンナの問いに答えていた。
「不幸な御婦人です」
「嘘つきなのです」
 そのうえでまたお互いをこう指し示す。
「ですから信用なさらないように」
「信じて頂きたいのです」
「やっぱりここは見極めましょう」
「そうしよう」
 やはり二人はこの場に留まる。ジョヴァンニにとってはまことに都合が悪い状況だった。それで苦い顔をしているとやがて騒がしさに人々が集まってきたのだった。
「もう騒ぐな」
「騒ぐなですって!?」
「そうだ。人が集まって来たではないか」
 ジョヴァンニはその集まってきた人々を指し示してエルヴィーラに抗議する。
 
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