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コシ=ファン=トゥッテ

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第二幕その十二


第二幕その十二

「本当に。こればかりは」
「君達は優しくて魅力的で神から頂いた頭から爪先までの優雅はまさに宝」
 グリエルモはそれは認める。
「けれどそれなのに君達は浮気をする。全く信じられないが僕は君達女が大好きだ」
「僕もだよ」
 フェランドは今度は口を尖らせてきた。
「けれどすぐ浮気をする、恋人達が文句を言うのも当然だ」
「今僕は非常に怒ってるよ」
 フェランドはそれを隠そうともしない。
「理性と感情が酷く対立して混乱している。これではアルフォンソさんに笑われるかな」
「そうやって怒るのが余計に悪いぞ」
「そうだな。じゃどうするべきか」
「僕もやるべきなのか」
 こう思いはじめるのだった。
「やはり」
「おお、ここにいたんだね」
 そのアルフォンソがここで来たのだった。
「どうだい?流れは」
「最悪ですよ」
 フェランドはその顔を思い切り顰めさせて彼に言い返した。
「貴方のおかげでね」
「いやいや、そうではないよ」
 しかしアルフォンソはにこやかに笑って述べるだけだった。
「決してね」
「何でそう言えるんですか」
「フォオルディリージさんにしろわからないよ。いや」
「いや?」
「確実に裏切るね」
 にこやかに笑って断言するのだった。
「保証していいよ、この私が」
「いやいやアルフォンソさん」
 ここでグリエルモが笑って彼に言ってきた。
「フィオルディリージに限ってそれはないですよ」
「そう思っているんだね?」
「思ってますよ。ですから」
 そしてここで言うのだった。
「千の半分ですから五百ツェッキーノを」
「さて、それはどうかな」
「どうかなとは」
「明日の朝まで時間はたっぷりあるじゃないか」
 この主張を変えようとはしない。
「そうじゃないかい?」
「勝負は勝ったようなものですけれど」
「軍人の約束ではないのかい?」
 さりげなく二人の急所を突いてもみせる。
「わかったら明日の朝まで待つんだ」
「明日の朝までですか」
「それまで」
「そうだ」
 二人に対して告げるのだった。
「いいね」
「まあそこまで仰るのなら」
「僕達も」
「木の枝にいる小鳥を売る人間についてどう思うかね?」
「そんな人間いませんよ」
「っていうかそんなことやったら詐欺師ですよ」
 二人はそれが他ならぬ自分達であったこと、あることはわかっていない。
「まさか。そんな」
「絶対にいませんよ」
「そういうことだよ。じゃあ明日の朝までな」
「わかりました」
「とりあえずお昼ですけれど」
「うむ、では三人で食べよう」
 アルフォンソが二人を誘った。
「さて、何がいいかね?」
「そうですね。スパゲティでも」
「食べますか」
「ではそれだ」
 この時代のスパゲティはナポリかローマでしか食べられなかった。チーズをまぶしてそれで手で取って食べていたのである。食べる前にその手を顔の上まで掲げるのが食べ方である。
「三人で食べよう。美味しくな」
「ワインでも飲んで気を晴らして」
「楽しく明るく」
 フェランドは憮然として、グリエルモは明るく、そしてアルフォンソはにこやかに。三人でスパゲティを食べに行くのであった。そのナポリ名物の。
 
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