コシ=ファン=トゥッテ
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第一幕その三
第一幕その三
「それで如何ですかな」
「はい、千で」
「それで御願いします」
「そして誓って欲しいことがあります」
アルフォンソは二人が賭けに乗ったのを見てあらためて言ってきた。
「宜しいでしょうか」
「何でしょうか」
「誓いとは?」
「貴方達の恋人には言葉や身振りでこの賭けを悟らせない」
彼が言うのはこのことだった。
「それで宜しいでしょうか」
「ええ、いいですよ」
「誓います」
二人は特に考えることなくすぐに返事をした。
「軍人の名誉にかけて」
「誓いましょう」
こうして二人は誓うのだった。アルフォンソはそれを聞いてさらに言うのだった。
「そして何でも私の言う通りにやって下さい」
「はい、それもまた」
「誓いましょう」
やはり二人の言葉は変わらない。そしてそのうえで言うのだった。
「まあその千ツェッキーノで遊ばせてもらいますよ」
「御馳走を食べさせてもらいますよ」
「そう、そして宴の場で」
「女神のセレナーデを聴きたいな」
「ふむ、それではその宴に」
アルフォンソは穏やかにそのにこやかな二人に対して告げる。
「私も呼んでもらいたいのですが」
「はい、是非共」
「御呼びしますよ」
「そう。そしてその宴の場で何度も」
三人は何だかんだで仲良く話していく。
「乾杯しましょう」
「愛の女神に対して」
こうして三人は賭けをすることになった。三人共それぞれ自信に満ち溢れていた。そしてその頃。海が見えるのどかな庭園に二人の美女がいた。二人は緑の絨毯に紅の薔薇が咲き誇る庭に椅子を置いて座り二枚の肖像を見ていた。
二人共奇麗な白い絹のドレスを着ている。そして羽根が付いた帽子も白だ。服は両方共白づくめであるが片方は髪はブロンドで青い目をしていてふくよかな顔をしている。何処か子供めいた顔立ちであるが気品をその全体にたたえていた。まだ若いが充分な貴婦人である。
もう一人もまた小柄だが茶色の髪に緑の目をしていてこちらは顔が細い。鼻がやや高く顔は引き締まっている。知的な感じがそこにはある。
二人はそれぞれその肖像をうっとりとして見ている。そうして言い合うのだった。
「ねえ、グリエルモはどうかしら」
「姉さん、フェランドは?」
それぞれの恋人のことを話しているようである。
「口元が奇麗で顔全体が気高くて」
「眼差しが燃えるみたいで」
「男らしさと優しさが一緒にあって」
「優しいけれど威厳があって」
二人の言葉は続く。
「ドラベッラ、そう思うでしょ?」
「フィオルディリージ姉さんも」
二人の名前も言い合う。
「私は幸せよ。若し心が変わることがあれば」
「そうよ。生きながら愛の女神の罰を受けるわ」
「ええ、そうよ」
「きっと」
また二人で言い合うのだった。しかしここでそのブロンドの美女フィオルディリージはふと表情を曇らせてそのうえで言ってきた。
「けれど今日は」
「どうしたの?」
「何か馬鹿げたことをしてしまいそうな」
その曇った顔で話すのだった。
「何かをしたくてむずむずするような。そんな気がするのよ」
「そんな気が?」
「若しグリエルモが来たら」
妹に対しても述べるのだった。
「私がどんな悪戯をするか見ていて」
「実は私も」
ここでドラベッラも言うのだった。
「何か普段と違うわ。すぐにも結婚してしまいそうな」
「手を見せて」
フィオルディリージは妹に対して話してきた。
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