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コシ=ファン=トゥッテ

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第二幕その一


第二幕その一

                 第二幕  見事な大団円 
 朝デスピーナがチョコレートを摘み飲みしていたその部屋で。フィオルディリージとドラベッラは困り果てた顔をしていた。その横にはデスピーナが立っている。
「ささ、チョコレートを」
「ええ」
「有り難う」 
 大きな窓のすぐ側の席に向かい合って座る姉妹はまずはそのチョコレートを受け取る。白いカップに注ぎ込まれたその黒いチョコレートが見える。
 しかし姉妹はそれに手をつけず。ただそこに俯いて座っているだけであった。デスピーナはそれを見てそと声をかけるのであった、狙ったタイミングで。
「おや、どうされました?」
「どうって」
「それは」
「ですからですよ」
 またここぞとばかりに言うデスピーナだった。
「迷えばです」
「迷ってはないわ」
「私もよ」
 姉妹は少しムキになってデスピーナの今の言葉に言い返した。
「そんなのはとても」
「ないわよ」
「私はお嬢様方の忠実な友人ですよ」
「ええ、それはわかってるわ」
「私もよ」
 姉妹は何だかんだでデスピーナを信頼し好きである。これはデスピーナも同じで実のところ三人はそれぞれ親しい間柄なのであったりする。
「それはわかってるわ」
「頼りにしてるわ」
「では私が言いたいことはわかりますね」
「わかっているからこそよ」
「それだけは」
 やはりここでも拒む姉妹であった。
「駄目なのよ、何があっても」
「神に誓って」
「神は寛大ですよ」
 デスピーナはドラベッラが神の名を出すとここでも仕掛けた。
「必ず許して下さいますよ」
「ではどうしろというの?」
「それで」
「ですから」
 そしてまた言うのだった。
「恋は楽しむものですよ」
「また言うのね」
「その言葉を」
「どんなチャンスも逃がさずに」
 このこ考えは変わらないのだった。
「心変わりも操を守るのもその時次第ですよ」
「その時代次第って」
「やっぱりいい加減なのじゃ」
「殿方を上品に惹きつけそれで信用し過ぎないように」
 デスピーナの言葉は続く。
「あれもこれも召し上がられて」
「まるでお菓子じゃない」
「あれもこれもって」
「そう、恋は甘いお菓子のようなもの」
 そのタイミングでチェリーパイを出してみせてきた。
「ささ、これもどうぞ」
「あっ、有り難う」
「それじゃあ」
 姉妹はその出されたパイを見ながら礼を述べる。見れば少しずつではあるが彼女達はチョコレートも飲みはじめているのであった。
「とにかくですよ」
「ええ」
「どうすればいいの?」
「楽しむことです」
 またこう言うデスピーナだった。
「恋を」
「貴女はそう言うけれど」
「私達はそれは」
「誰でもできることです」
 デスピーナの方が一枚上であった。
「そう、誰にでも」
「とんでもないこと言うわね」
「そうやって私達を悪の道に誘うの?」
「女の勝利の為には御二人もやられることです」
 今度出したのは女の勝利だった。
 
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