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コシ=ファン=トゥッテ

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第一幕その二十


第一幕その二十

「まさかとは思うけれど」
「どうなのかな」
「助かったのはいいですけれど」
「それは祝福いたします」
 姉妹はまたきっとして語る。
「ですがそれでもです」
「私達の心は変わりません」
「おやおや、さらに狼狽してきたね」
「いい感じよ」
 アルフォンソとデスピーナは今の姉妹の言葉にさらにほくそ笑む。
「このままこのまま」
「大路に入ったみたいね」
「どうか接吻を御願いします」
「なりません、それは」
「何があっても」
 どうしても拒む姉妹を見て二人は。またしても嘆いてみせてきた。
「一度だけです」
「さもないと」
 また懐に手を入れてみせてきたのだ。
「また毒を」
「生きている必要がありません」
 そしてまた言う。
「是非接吻を」
「御願いします」
「そうです」
 デスピーナは絶好のタイミングでまた姉妹に話した。
「ここは御二人の言葉通りにして下さい」
「そんな・・・・・・」
「それだけは」
「是非共です」
「そうですな」
 良識派と思われているアルフォンソも話すのだった。
「そうしないと御二人は助かりませんから」
「私の貞節はどうなるの?」
「私の心は」
 姉妹はそれを聞いてまた項垂れるのだった。
「それでどうなるの?」
「私達は」
「いや、いい流れだよ」
「やっぱり僕達の恋人だよ」
 二人は姉妹の心の奥底を見ることができなかったのだ。
「さて、明日はいよいよ」
「千ツェッキーノでパーティーだな」
「二人はまだわかっていないみたいだな」
 アルフォンソはその二人を見て呟く。
「もうかなり危ないのに」
「女心と秋の空」
 デスピーナもわかっていた。
「必死なことは揺れ動いている証なのに」
「さて、揺れ動けばさらに揺さぶって」
「確実なものにできるわ」
「これだけ怒っているのに」
「いや、ひょっとしたら」
 グリエルモはここでまた思うのだった。
「フェランド、まさかと思うけれど」
「何だい?」
「いやさ、今二人共怒ってるじゃないか」
「うん、確かに」
「それがだよ」
 グリエルモの言葉は続く。
「それが変わるとしたら?」
「変わるって?」
「そうだよ。碇の焔が恋の焔にね」
「まさか」
 フェランドはそれをすぐに否定するのだった。
「そんなわけないじゃない」
「気にし過ぎかな」
「そうだよ」
 フェランドは笑って言うのだった。
「有り得ないって。それはね」
「いや、ひょっとしたら本当に」
「変わるっていうのかい?」
「人の心も変わるものだからね」
 やはりそれはわかっているのだった。グリエルモにしろ。
「だから若しかしたら」
「ううん、まさかと思うけれど」
「僕もそうは思っているよ」
 自分でもそうだとは言う。
「それでもね。ひょっとしたら」
「確かに」
 ここで遂にフェランドの心も動いてしまった。
「その可能性はゼロじゃないよね」
「確実じゃないかも」
 グリエルモの方が揺れ動いてしまっていた。
「本当にまさかと思うけれどね」
「だよね。本当にまさかだけれど」
「あら、二人も」
「そうみたいだね」
 そしてそんな二人の心の動きはデスピーナとアルフォンソからも確認された。
「揺れてきてるわね」
「さて、これでいいな」
 二人はにんまりとしていた。そうしてそのまま流れを見るのだった。四人は揺れ動き二人は落ち着いている。そんなはじまりであった。
 
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