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魔笛

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第一幕その七


第一幕その七

「おいらはもうこれで」
「いえ、貴方もです」
「そういうわけにはいきません」
「女王様は仰いました」
「えっ!?」
 それを聞いて唖然とするパパゲーノだった。
「それはどういうことですか?」
「ですから今言ったままです」
「その通りです」
「貴方もあの悪人ザラストロの寺院に」
「ちょっと、冗談じゃないですよ」
 パパゲーノはそれを聞いて咄嗟に怯えた声をあげた。
「何でおいらがそんな」
「嫌だというのね」
「勿論ですよ」
 有無を言わさぬ口調だった。
「ザラストロっていうのは悪い奴ですよね」
「ええ、そうよ」
「その通りよ」
「そんなのは」
 全く以てというのだ。
「死にたくないですから」
「それで嫌だというのね」
「その通りです」
 かなりムキになってさえいる。
「王子がいるのに?」
「タミーノ王子が魔笛を持っているというのに」
「それでもですよ」
 あくまで行こうとしない。
「何でそんなおっかない奴のところに」
「それでは仕方ないですね」
「そこまで言うのなら」
「じゃあそういうことで」
「これをあげましょう」
「貴方に」
 侍女達はこう言ってあるものを出してきた。それは。
 銀の鐘だった。細い銀色の台の上に同じく銀色の棒が木の様にありそこに無数の小さな鐘がそれこそ枝の葉の如くある。それだった。
「どうぞ」
「これをあげましょう」
「鐘をですか」
「そうです。その鐘が貴方を守ってくれます」
「その音が鳴れば何があってもです」
「貴方を守ってくれます」
「そうですか。だったら」
 それを言われてやっと納得する彼だった。
「行ってもいいですけれどね」
「じゃあそういうことで」
「宜しいですね」
「これで」
 こんな話をしてやっと行く気になるパパゲーノだった。
 そしてだタミーノは今度は侍女達にあることを聞くのだった。
「それでなのですけれど」
「それで?」
「どうしたのですか?今度は」
「まだ何か」
「その寺院ですが」
 彼が問うのはそれだった。
「一体何処にあるんですか?」
「ザラストロの寺院ですか」
「そこですね」
「はい、そこは何処に」
 場所をであった。どうしても聞きたいのだった。
「それについても心配は無用です」
「ほら、見なさい」
「彼等を」
 白い眩い服を着た三人の少年達が出て来た。三人とも赤い目をしていて純粋な金髪である。その彼等が出て来たのである。
「彼等が導いてくれます」
「ですから何の不安もなく」
「行きましょう」
「わかりました」
 タミーノは彼等を見てようやく頷いた。
 
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