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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-2 第8話

Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-2
勇者としての始動
第8話

夜中、ハルカはふと目が覚めた。
ドラゴン・セサヴァーになす術もなく敗北したあの時。本当に悔しくて仕方がなかった。
(僕が負ける……!!畜生!)
悔しさのあまり壁を叩きつけようかと思った。しかし、迷惑になるのでさすがにやめた。
体が震える。このままではいけないと、強く思う。
数回深呼吸して、何とか落ち着いた。そしてフッと笑う。
(僕は負けず嫌いなんだな)
冷静になったハルカは、まだ自分は強くなっていないんだと悟った。
(特訓だな。……もう寝なければ)
こうして、少しの間だけ起きたハルカは、再び朝への眠りについた。

翌朝。まず仕立て屋で元の鎧兜の姿に着替えた。
さすが国家公認の仕立て屋だけあり、完璧に直されているだけでなく、どこか強化したような感じがするのだ。
「何か、丈夫になりましたね」
「ああ。……強化したんだ。より攻撃に耐えられるようにな。お前は只者ではない、そう思ったからな」
やはりそうか。ハルカは感激のあまり、財布からお金を取り出そうとしていた。
「いや、タダだって。ハルカ。これはオレからのサービスなんだ。お金は要らないぜ」
「あ……どうも有り難うございます!」
もしかしたら僕の事ロトの子孫だって分かっているかもしれない、と一瞬思った。
(そうでなくとも、僕は期待に応えなければならないよな)
ハルカは仕立て屋の男とがっちり握手を交わした。
「頑張れよ、勇者ハルカ」
男の言葉はハルカの正体を見抜いているのか、いや、「勇者」という言葉は勇気ある者と書く、ハルカのことを勇敢な戦士だと思ってのことかもしれない。
どちらにせよ、ハルカは男の言葉に頷いた。
(僕は勇者……そう、勇者なんだ)

次に、マイラにいた若い女、クレアの夫ダンのことについてどうしているか、教会の修道女に聞いた。
すると、教会が併設している診療所にダンがいる、との事だった。
修道女に案内され、ダンのいる病室に着いた。
「こんにちは、初めまして。僕はハルカと申します」
「……ん?なんだ?私に何か用か?」
「あの、あなたはクレアさんの旦那さんですよね?クレアさんから伝言があります。“私は大丈夫だから、安心して”です」
実は前に“私はあなたの事を忘れません”の部分があった。ハルカは忘れたわけではない。ダンが亡くなってしまったものだと思っての伝言のメッセージだったのだ。ダンが生きていたと解った時、そこの部分は言わないでおいたのだ。
「クレア…………すまないな。私のせいで迷惑かけて。ああ、ハルカといったな。《キメラ便》に使う紙を貰ってきてくれないか。私はこのように動けないんだ」
「解りました。クレアさんに伝言ですね」
生きているのならば何故すぐに伝えないのか、それは恐らく、クレアのことを思ってあえて伝えなかったのだろう、ハルカはそう考えた。
修道女にレターセットを貰い、ダンに届けると、ダンは嬉しそうに受け取った。
「ハルカよ、ありがとうな」
ダンはお礼として少しのパンをハルカにくれた。
「僕が貰ってもいいんですか?あなたの食事ではないのですか?」
「ああ。今はパンより粥の方が食べたいと言っておいたからな」
ハルカはダンと少し談笑した後、診療所を後にした。

そして、セサヴァーへのリベンジの為の修行に出かけようとした時だった。
足元にコロン、と銀色の指輪が転がってきた。
(……ん?)
拾い上げると、それはサファイアが埋め込まれた美しい指輪だった。
(そういえばもう明日からサファイアの月だったな。でも、これは誰のだろう?)
辺りを見回してみても、たくさんの人々が通り過ぎていくだけ。
(うーん、どうしたものか)
しばらく考えた後、持ち主を探そうと決めた。
「あの、この持ち主、誰か知りませんか?」
「う~ん、あ、若い男が泣き顔で何かを探していたけど、聞いてみなよ」
「ありがとうございます」
泣き顔で探していたということは、よほどこの指輪が大事なものだったのだろう。結婚指輪だろうか?
ハルカは聞いた情報を元に若い男を探す。

と、噴水近くで涙目になって探す若い男の姿があった。
「あ、あの」
「な、何……あー!それ、その指輪!」
「ああ。街中で落ちているのを見つけましたけど、あなたの物ですか?」
「そうだよ!これは僕の恋人ナナにあげる誕生日プレゼントなんだ!あれを無くしたらナナに嫌われちゃうと思って僕は……うっうっ」
男は泣き顔でハルカから指輪を受け取った。ハルカは男の様子に少し戸惑っていた。男はハルカに抱きつこうとしたのである。さすがに男も抱きつくのをこらえたのだが。
「ありがとうよ!格好いい戦士よ!……僕の名前はロッコ。自分で言うのもなんだけど、ドンくさくて情けない男です」
失礼と思いながらも、ハルカは納得してしまう。痩せ型の体系に、顔はどちらかというと女顔という感じで、服も少し破けていた。けれど、人は良さそうだから、恋人がいるんだろうな、とも思った。
「僕はハルカ。アレフガルドを旅しているラダトーム戦士団の者です」
「ああ、そうでしたか!あ、お礼……」
「いいですよお礼なんて」
ふと指輪を見つけただけから、お礼はなくても大丈夫、とハルカは思っていた。しかしロッコは何かを思いついたようだ。
「あ、あなたに情報をお教えしましょう。マイラに、妖精の笛が眠っているという話を僕は聞いたことがあります。温泉施設の近くに埋められているとか。その妖精の笛は、不思議な力を持つ笛で、最近凶暴化したメルキドのゴーレムを落ち着かせる能力があると聞いています。あなたなら役に立つと思いますよ」
これは初めて聞いた。ハルカはロッコの言葉をしっかりと覚えておくようにした。いつか必ずメルキドに行く時が来るだろうから。
「ありがとう。ロッコさん。ナナさんとずっと仲良くしてくださいね」
「ああ、ハルカさん、ありがとうございます!あ、僕はこれで」
ロッコは足取りも軽く、賑わう街の中を走り去っていった。
ハルカは、緊張した気持ちが少し和らいでいくのを感じた。
(ロッコさん、頑張って)

そして少し遅い朝食をベンチで食べた後、リムルダールの外へ、ハルカは駆けた。
鋼の剣を握り締め、リカント族や骸骨族等をを次々と倒していった。
あせらず、疲れた時は休憩をし、それでもひたすら鍛える為に闘っている。
セサヴァーを倒す為、ローラ姫を救う為、そして竜王を倒す為、ハルカは闘い続けた。
その時、レミーラを習得した。明かりの呪文だが、ハルカはマヌーサ代わりに目くらましの術としても活用した。
そして、複数の敵が襲ってきた時だった。
「そこの勇者よ、これだけの数を相手にすることは出来ないだろう」
「出来るさ。ロト様だって複数の敵相手に戦ってきたんだから」
「お前はロトの子孫かもしれんが、ロトでは…………っ!?」
ハルカは複数の魔物たちを漢字の一のように一気に切り裂いていく。
「……“横一文字”!!」
新たなる技を習得した。魔物たちは一撃にして一気に全滅した。
「く、くそうっ……貴様」
「僕はお前たちに負けるような奴にはなりたくない」
シュウウウッと消滅していく魔物たちを冷たい目でハルカは見た。
(今、僕が負けることは許されない)

その後、一日かけて南の島に出た。
そこは聖なる祠があるところだった。
その近くには小さな集落があった。
ハルカはそこへ寄る。集落の中は十数人の人々がひっそりと暮らしていた。家も質素なわらぶき屋根である。そこの住人の1人は、「聖なる祠のおかげで何とか襲撃されずに済んだんだ」と言っていた。
「おや、久しぶりのお客さんだ」
入り口の近くにいた老人が立ち上がり、ハルカを歓迎した。
「こんにちは。お邪魔してもよろしいですか?」
「ああ。ただし、この近くにある祠には不用意に近づいてはならん」
その言葉にハルカは少し身構えた。いつか行くことのなるであろう場所であるからだ。
「危険なんですか」
「いや、あそこの賢者は気難しい人でな、どんな人でも、何を言っても、『愚か者よ、出て行け!』と大声で叫ぶのだ。あの賢者が受け入れた人など今まで誰もいないんじゃ」
「……なるほど」
身構えるのをやめると、ハルカは頷いた。
(今の僕は近づかないほうか賢明だな。ロト様の伝言の神器を僕は何一つ持っていない。恐らく……)
「解りました。近づきません(……今は)」
「そう、それがいい」
ハルカは証拠となる品がなければ認められない、そう判断したのだ。
一旦、鍛える為に外に出て、凶暴な方のキメラや、お金持ちのモンスター、ゴールドマンなどを何体も何十体も倒していった。
その際、聖なる祠の近くまでには行ったものの、当然入ることはしなかった。
(今は入らない、けれどいつか入るからな)
そうハルカは心に誓った。

数時間後、集落に戻り、そこで一晩を過ごした。
「お主はもしかして古の勇者ロトの子孫か何かかね?」
老人(言い忘れていたが、自分は長老だと言った)が、ハルカの姿を見てそういった。
「……!?何故判ったのです?」
「当たりか。まあ、理由になってないかも解らんが、お主以外にここ周辺の魔物と渡り合える人間など、ほとんどいなかったからな。おぬしはただの人間ではない、もしかしたら特別な人間である、そしてお主は勇者ロトの子孫ではないかと思ったのじゃ。わし等はここで自給自足しながら生きているのであって、一歩も外に出たことはない。外部の情報は、魔物が旅人を襲った際に頂戴したものや、事切れた旅人からのメモを頂戴して得ているのだよ」
長老は淡々と語った。確かにあまり理由にはなっていないかも知れないが、魔物のことを考えると、納得できた。
隣にいた孫娘らしき若い女が、
「では、とらわれのお姫様も助けるのですよね?……私、ローラ姫は憧れる方ですから、心配で」
と言った。ハルカは大きく肯いた。
「もちろん、今、そのために僕は鍛えているのです」
「そうか。……お主には期待している。竜王軍を倒すほどの若者であると、頑張るのだぞ」
「……解りました。僕が、何としてでも任務を遂行させていただきます」
長老とハルカは固い握手を交わした。
そして、しばらくして夜が明けた。

さらに数日後、ハルカは沼地の洞窟前に立っていた。
「今、リベンジの時。セサヴァー、今度はお前を倒す。そして、僕は、ローラ姫あなたを助け出して見せます!」
そう誓い、洞窟の中へ突入を決行した。
いよいよ、決戦の時だ。

――次回から、Chapter-3。 
 

 
後書き
ロッコとナナはゲームとは違った感じになってます。
そして次回はいよいよです。 
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