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魔笛

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第二幕その五


第二幕その五

「私はです」
「私は?」
「それはしません」
 こう言うのである。
「そう、何があっても」
「何があってもなんて」
「昼と夜は決して一つにはなれないものです」
 これが彼女の考えであり今それを出したのである。
「昼とは何があっても」
「しかしそれは」
「パミーナ」
 女王の言葉はさらに厳しく険しいものになった。
「御前が若しここに留まるならば」
「どうなるのですか?」
「私は御前を護ることなぞできはしません」
 それを厳粛に告げた。
「何があろうともです」
「何があろうとも」
「そう、何があろうとも」
 こう告げるのである、
「昼の世界にいるならば決して」
「ですが昼の世界もまた」
 その昼の世界を知った娘が知ろうとしない母に言うのだった。
「夜と同じだけ多くのものがあります」
「多くのものがと!?」
「お父様はすべての善良と悟性も知っておられます。悪人ではありません」
「言ってはならないと言った筈です」
 やはりザラストロに対しては感情を露わにさせる。
「決してです」
「ですが」
「昼の世界は夜を消そうとしている」
「それは思い込みでは」
「闇は光によって消えるもの」
 それはどうしてもというのだ。
「この世を光で覆おうとしているのです」
「闇ではなく夜なのです」
 しかしパミーナは眉を困惑させた形にさせて母に話す。
「そして光ではなく昼です」
「同じものです」
「違います。昼と夜は互いに存在し合い世界を創るものです」
「言うことはもうありません」
 言葉を遮った。そのうえで娘にあるものを出してきた。それは。
「これは・・・・・・」
「わかりますね」
「この短剣でお父様を」
「昼の世界なぞ不要です」
 あくまでこう言うのだった。
「わかりましたね」
「ですが。私にはそれはとても」
「黙りなさい!」
 こう叫んでであった。女王はその感情を遂に爆発させた。そのうえでパミーナに告げた。
「地獄の復讐が私の胸の中で煮えたぎり死と欲望が私の中を巡り炎と燃える」
「そんな・・・・・・」
「御前の手であの男を殺さない限り、昼を遮らない限り御前は私の娘ではありません」
 こう言うのだった。
「永遠に勘当され見捨てられ親子の絆は一切絶たれます」
「お母様との・・・・・・」
「御前の手でザラストロを殺さぬ限りは!復讐の神々よこの声を聞き給え!この私の誓いを!」
 こう叫び姿を消した。後には夜だけが残った。それは決して闇ではなかった。
「どうすればいいというの?」
 パミーナは一人残され項垂れていた。
「私はどうすれば。お父様をだなんて」
「まあまあ」
 しかしであった。モノスタトスは頃合いを見て出て来てだ。にこやかに笑って言うのであった。
「そんなに落ち込まないでいいじゃないか」
「貴方は」
「いや、逃げなくていいよ」
 そこから慌てて去ろうとするパミーナににこやかさを作っての言葉だ。
「何なら俺が力になるさ」
「私の?」
「そう、だから」
「だから?」
「俺と付き合わないかい?」 
 これが話の本題だった。
 
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